主人公はあの人の娘!?苦難多き少女のヒーローアカデミア 作:ユリアンヌ
今のところは変更はしないまま今の状態で進めて行こうと思います。
万が一、姪と伯母に変更する際はまた前書きにてお知らせいたしますm(_ _)m
では引き続きストーリーをお楽しみ下さいm(_ _)m
オールマイトがグラントリノと電話で話している一方、その話題の張本人である友里絵はというと───……。
「…どうしよう…入りづらい……」
病室にたどり着いたはいいが何故か病室の前に立ったまま中に入れずにいた。
その理由は病室の番号の下に書かれた患者の名前にある。そこには緑谷出久の名前とその他に轟焦凍、飯田天哉の名前。保須で緑谷と一緒にヒーロー殺しと戦った二人の名前だ。同じクラス、同じ理由で病院に運ばれたのだから三人が同室であっても何ら不思議はないのだが問題はこの二人とは一切面識がないということ。
二人のことは体育祭で見たので知っている。けれど逆に向こうはこちらのことを知らない。体育祭では予選は通過しないよう上位42名以下、他の競技も体調不良を装って出ていないので彼らが自分のことを知っている可能性はほぼゼロ。
緑谷と顔見知りだということも知らないはずだ。
しかも自分は普通科の人間で何の接点もない。そんな自分が緑谷と顔見知りな上に、いきなりお見舞いに現れたら変に思われるかもしれないという不安にかられた。
そもそも、よく考えてみると緑谷とはよく話はするが友達という関係ではない。
そう考えていた所に中から彼らの笑い声が聞こえて来た。
ハンドクラッシャーという、不思議な言葉が出てきていたが、楽しそうな雰囲気に完全に中に入ることが出来なくなってしまったのだ。
中に入れないまま既に5分は経過している。
「困ったな……このまま帰ることも出来ないし…」
何か良い方法がないかと考えているとこの状況を変えてくれる事態が起こる。
「…ん?おい、扉の前に誰かいるぞ」
きっかけになったのは轟の言葉。
ふと扉に目をやった時にドア硝子に人影があることに気づいたのだ。
「……!!」
や……やば!!
気づかれたことに友里絵は焦る。
「え、本当だ。人影が……」
「しかし入って来る気配がないな」
「看護師じゃなさそうだな……」
「…僕ちょっと見てくるよ」
松葉杖をつきながら緑谷がゆっくりと扉に近づく。
ど……っどうしよう、来る!
周りを見ても隠れられそうな所はない。
というか今更隠れても手遅れである。
ガラッと勢いよく開けられる扉。テンパった結果、友里絵は背を向けてその場でしゃがみ込み頭を抱えるという全くもって無意味な行動をしていた。
「え…っあれ!?成切さん!?」
「で…デクくん……」
友里絵の姿を見て緑谷が叫ぶ。
「何だ?緑谷くんの知り合いか?」
「そうみてぇだな」
「な……何で成切さんがここに……っ?学校は……っ?オールマイトはこのことを知ってるの…!?」
死角に入って飯田と轟からは友里絵の姿は見えないが、状況と緑谷の反応から何となく察し呟やく二人。
しかし友里絵が何故ここにいるのかわからない緑谷は一人困惑していた。
が、飯田と轟に聞こえないようにすることだけは忘れないでいた。
「…トシおじさんからデクくんのことを聞いたから心配で……。学校はにちゃんと連絡して遅刻の許可を貰ってここに来たんだけどトシおじさんには黙って来ちゃった……」
「え…っ何で………?ひょっとしてまた喧嘩……?」
「ううん……そうじゃないけどちょっと事情があって…………」
オールマイトには言わずに来たと答える友里絵に緑谷はまた二人の間に何かあったのではないかと心配になった。友里絵は違うと言うだけでそれ以上は言わなかった。
喧嘩じゃないのか……。
けど成切さん…何かいつも以上に暗い顔をしているような………。
「そ…それより……」
「…なぁ緑谷。知り合いなら中に入ってもらった方が良いんじゃねぇか?」
「そうだぞ緑谷くん。そんな所で立ち話していても仕方ないだろう」
「あ…そうだね。とりあえず病室に入って成切さん」
「う…うん……」
小声で話をし続けている二人に少し不思議そうに思いながらも轟が声をかけ、友里絵を中へ入れるよう促し飯田も轟の後に続く。
友里絵は戸惑いつつもゆっくりと中に入った。
「その制服……雄英(ウチ)のだな。普通科の奴か?」
「あ、うん。名前は成切友里絵さん。事件のことを知って心配して来てくれたみたい」
「は……はじめまして。雄英高校一年、C組普通科の成切です……」
制服を見た轟が友里絵が雄英生であることに気づく。
緑谷は頷きながら友里絵を二人に紹介し友里絵も挨拶はしっかり行う。
「はじめまして、俺はA組クラスの委員長をしている飯田天哉だ。よろしく頼む成切くん」
「よ…よろしくお願いします…」
「俺は轟焦凍だ。緑谷に普通科の知り合いがいたんだな…」
「あ……はい…まぁ…。
でく…
あれ……?成切さん今緑谷くんって
それに僕の時は普通に話すのに二人には敬語を使ってる……。喋り方もぎこちない感じだし緊張してるのかな……?
お互いに紹介をする中、緑谷は友里絵が「デク」から「緑谷」に言い直したこと、自分の時と違って二人に敬語を使っていることに疑問を抱く。
けど、成切さんのあの様子……。
緊張してるというより二人と話すのを
………そういえば、さっき病室に入るよう言った時も一瞬
……!
そうか。飯田くんと轟くんは成切さん秘密を知らない人間だし、直接会うのは初めてだから素で話せないんだ……。
それに普通科の成切さんがヒーロー科の僕と親しくしてるのを変に思われるかもしれないから余計対応に困ってるのかも…。
しまった…余計なことしちゃったかな……。
ほんのわずかな間で事情を察した緑谷。
同時に安易に友里絵を紹介したことを後悔する。
「なるほど。
しかし成切くんは今日は学校じゃないのか?
というか何故そんな堅苦しいんだ?」
「あ…成切さんは初対面の人だと極度に緊張しちゃうんだ……。
学校はわざわざ遅刻の連絡をしてこっちに来たみたい……」
「そ…そうなんです…。
ありがとう…デクくん」
「ううん、僕も気づくのが遅れてゴメンね…!でも二人ともすごく良い人だから普通に喋っても大丈夫だと思う…」
「それはわかってるけどいきなりは無理だよ……」
申し訳ない気持ちから出来る限りのフォローをする緑谷。そんな彼の思いを瞬時に理解した友里絵は話に合わせまたコソッとお礼を言った。
対する緑谷も二人に見えないようにゴメンの仕草をして謝る。
「人見知りというわけだな。まぁ…それは仕方ないとしても遅刻は良くないな。いくら心配だったのだとしても遅刻はいけないことだ」
「いや…無断じゃねぇならセーフなんじゃねぇか?連絡したって言ってんだから」
「もちろん悪いことなのはわかっています……。私のおと……おじさんはまず怒るでしょうし覚悟はしてます…。
ですが、普通に学校へ行っていてもきっと授業に集中出来なかったと思います……。電話やメールだと誤魔化されるかもしれなかったので直接来た方が確実だと思いましたし……。それにどうしても確かめたいことがあったので…」
飯田にも遅刻のことは指摘されたものの、緑谷がフォローに入ったことで少し慣れて来たのか、だいぶ話せるようになってきた。
「確かめたいこと?緑谷くんにか?」
「はい…」
「え、僕に?」
緑谷は不思議に思い首を傾げる。
成切さんが僕に確かめたいことって何だろう…?
わざわざ病院に来てまで確かめたいこと……。
成切さんが僕に話があるとしたらオールマイトに関係のあることなんじゃ……?
「……あ、でもお二人にも一応関係していることなのでお二人でもいいと言えばいいんですけど…」
「俺達にも?
是非聞かせてくれるか?」
「わかりました……」
……本当は良くないかもしれないけど下手に隠すと怪しまれるかもしれないし、怪しまれない程度に話そう……。
友里絵はまた少し迷ったあと小さく頷いた。
「…今回の事件……私はヒーロー殺しを捕まえたのは本当はあなた達であることを知っています……」
「「!?」」
「え…っ!?」
成切さん、それは話しちゃマズイんじゃ……!?
流石に怪しまれちゃうよ!?
警察と一部の人間しか知らないことを友里絵が知っていることに轟と飯田は驚いた表情になり、事情を知っている緑谷もそのことを二人に話す友里絵に驚いた。
「あ…心配しないで下さい…。他言するつもりは一切ありません…。私のおじさんも実はヒーローやってて今回の事件にもちょっとだけ関わっているんです。
警察の人な中に知り合いもいて、その人からも詳しく聞いたみたいで、私にも話してくれたんです…。それで事件のことや三人のことを知って……」
あ…上手い……。オールマイトのことだとバレないギリギリの範囲で誤魔化してる。
けどなんかオールマイトとグラントリノとごっちゃにしなってるような…?
実際に事件に関わっていたのはグラントリノで警察に知り合いがいるのはオールマイトだし…。
あ…でもオールマイトは現場にはいなかったけど雄英の教師で事件に巻き込まれたのは
あながち間違ってないところがすごい…。成切さんって表情に出やすいし感づかれた時は焦ったりするけど、実は誤魔化すのは得意なんじゃ……?
と、意外と心配はいらなさそうな感じでフォローはいらなかったんじゃないかと思うくらいだった。
「成切くんのおじさんもヒーローだったのか……。それで確かめたいこととは?」
「え…えっと、皆さんは"個性"を使ってヒーロー殺しと戦ったんですよね…?でも資格未取得者なので規則違反をしているから…その……」
「…なるほどな。つまりアンタはおじさんから話を聞いて違反をした俺達がどうなったのか知りたかったわけか……」
「成切さん…」
友里絵の目的が規則違反をしたことによる安否確認であると理解した轟が納得したように呟いた。
そういうことだったんだ…。それで成切さんは規則違反を犯した僕達を心配して……。
「だ…大丈夫だよ成切さん。丁度朝、警察の所長が来てその話をしたんだけど、今回のことはエンデヴァーの功績ってことで取り計らってくれるみたい。ただ…そのエンデヴァーとグラントリノ、飯田くんの監督をしてたマニュアルさんが代わりに監督不行き届きということで処分されるみたい……」
「そ…そっか、とりあえず生徒側にはお咎めはないんだね…良かった。
代わりに処分を受けるプロヒーローの人達はちょっと気の毒だけど……」
「アイツの手柄ってのは気に入らねぇけどな……。つーか…本当に悪いと思うのも緑谷と飯田んとこのプロヒーローだけだ」
「轟くん……(汗)」
轟は自分の父親のエンデヴァーを嫌っているのでグラントリノやマニュアルはともかく、エンデヴァーが処分を受けようが気にしないようだ。
何はともあれ、緑谷達三人の処分云々については特に何もないことに安心はすることは出来た。
「ところで俺からも質問なんだが、成切くんと緑谷くんとはどういうきっかけで仲良くなったんだ?体育祭の日に知り合ったと言っていたが……」
「あ、それは成切さんが落とし物をして僕が拾ったのがきっかけだよ」
「でもそしたら今度はデクくんも落とし物をして、私が拾って届けました。
それからは度々話すようになって…」
「ん…?
「あ……」
緑谷と仲良くなったきっかけを聞かれ二人で説明をする中、気が緩んだのか友里絵はうっかり「デク」と呼んでしまいハッとして口を押さえた。
「成切…緑谷のことをデクって呼んでんのか…。
麗日と一緒だな」
「う…うん。デクで良いって僕から成切さんに言ったんだよ。けど初対面の二人の前でいきなり呼ぶのはどうかと思って躊躇ってたんだよ。クラスも違うし…」
「隠しててすみません……」
友里絵は「デク」呼びしている事実を二人に隠していたことを謝った。
「いや…別に仲良くなるのにクラスは関係ないんじゃねぇか?特に気にする必要もねぇと思う」
「轟くんの言う通りだ。
そういえば先程成切くんは病室にすぐに入って来なかったがもしかして同じ理由だったからなのか?」
「そ……それも一理あるんですけど、その…私はデクくんと仲が良いだけですし、楽しそうに話しているのが聞こえたので友達でもない私が入って邪魔をしたらいけないと思って………」
「え、僕達友達じゃないの!?」
「え……だって私みたいなのがデクくんの友達になんて……」
「そんなことないよ!僕はもう友達だと思ってたし!」
「確かに仲良いのに友達じゃねぇってのは変な話だな」
「ああ!緑谷くんの友達なら俺達とももう友達だ!」
「友達……」
そう呟いた途端、友里絵の目から涙が零れた。
「え…っちょ……っ!?成切さんどうしたの!?僕何か変なこと言った!?」
「飯田がいきなり俺達もとか言うからじゃねぇか…?」
「む!?た…確かに会ったばかりでいきなり過ぎたな……。済まない成切くん!」
「ううん…違うよ。みんなに友達って言ってもらえて嬉しくて……。私……友達っていなかったから三人も友達が出来て嬉しい……」
あたふたする三人に友里絵は嬉しそうに微笑んだ。
「………。
(少し叱るつもりでいたがまァ今回は勘弁しといてやるか……)」
そして病室の外では友里絵の行動を叱る為にグラントリノが病室の前まで来ていたが、会話を聞きその気はすっかり消え失せたのだった。
以上第28話終了です。
閲覧してくださりありがとうございました。次回はオールマイトと友里絵、それぞれの視点でのお話になります。
ご意見等ありましたらぜひお願いします。