主人公はあの人の娘!?苦難多き少女のヒーローアカデミア 作:ユリアンヌ
どんどんいきます。3話目です。
仮眠室に入るとオールマイトはお茶を出してくれた。
「はい、お茶」
「あ…ありがとうございます」
「それでさっきの続きだが、話す前にこれだけは守ってくれ。今から話すことは誰にも言ってはいけない。一切他言無用で頼む。いいね?」
「は…はい…」
いつになく真剣なオールマイト。強く念念押しをされ、思わずごくりと息を飲み込んだ後ゆっくりと頷いた。
い…いよいよあの人の正体が……!
「彼女は成切友里絵。今は魔持軽結衣と名乗っているようだが昔面倒を見ていた私の娘なんだ」
………………………………。
「ええぇぇぇぇ!?オ…ッオールマイトのむす……!?」
突然のカミングアウトに驚きのあまり声を上げた。
「シィーーーーッ!!声が大きいぞ緑谷少年!」
「あ…!す…すみませんつい…!
けどオールマイトって独身のハズじゃあ…っ?」
自分の口に指を当て注意するオールマイトに慌てて口を押さえ謝ると、すぐに聞き返す。
「もちろん血の繋がりはないよ。彼女は昔起きた敵犯罪をきっかけに引き取った子なんだ。当時彼女はまだ幼い子供で、父親は事故で既に他界していたし、母親も事件の時に亡くなってしまって他に身寄りがいなかったからね。当然だが、ワン・フォー・オールの事も彼女は知ってるよ」
「でででで…でも、そんな話今まで聞いたことないしニュースでもやってなかったのに…。それが本当だとしてもちょっと信じられないというか、そもそも何でオールマイトが引き取る必要があったのかがわかわからない……。事件がきっかけ?だとしても血の繋がりがないのならオールマイトにとっては他人であって引き取る理由はないわけで…ブツブツ…」
事のいきさつを話すオールマイトだったが、何故それで彼女を引き取るに至ったのかが分からず緑谷は再びブツブツと呟き始めた。
「否定から入る所は相変わらずだな緑谷少年。だが、彼女のことは公表されない様に誤魔化して世間から隠していたから知らないのも無理はないさ」
「え…そ…そうだったんですか?」
「ああ。いくら実の娘じゃないとはいえ、このことが世間に知れたら当然騒ぎになるだろうし、彼女を狙う敵も必ず出てくる。彼女に危険が及ばないようにする為には誤魔化す必要があったからね」
半信半疑の緑谷にオールマイトは友里絵の身の安全の為に周りの協力を得ながら誤魔化し続け、世間から隠していた事を明かした。
「な…なるほど…。ですが魔持軽さん…いえ、成切さんがオールマイトと他人であることにかわりはないですよね?そうまでして読録さんを引き取った理由は何なんですか?」
「それはな、彼女の母親との約束だったからだ。「自分にもしものことがあった時は私に友里絵を任せたい」とね…。彼女の母親とは友人関係で付き合いも長く私にとって大切な方だったんだ。だからこそ幼くして両親も居場所も失ってしまった女を放っておけなくてね…。
これが本当に赤の他人だったらさすがに私も引き取ったりはしないよ」
「で…ですよね…」
そ…そりゃあそうだよな……。いくらなんでも赤の他人を訳もなく引き取るなんてオールマイトがするわけがない…。
ていうかオールマイトじゃなくてもやらないか……。
ごもっともな回答に苦笑いを浮かべる。
「━━と、彼女と私の関係や経緯についてはとりあえずそんなところだ。現在は見た通り拒まれてしまっているけどね…」
「そ…っその拒まれる理由は何なんですか…?話を聞く限り今は一緒に暮らしていないみたいですし、彼女との間に一体何が………?」
「そのことなんだが、何故彼女があんな態度をとるようになったのかは私にも正直わからないんだよ。何しろ彼女は5年……いや、6年前に当然いなくなってしまっていて君から話を聞くまで彼女がここにいることを知らなかったし、今どこで暮らしているのかさえわからないんだよ」
「え!?」
その質問に対し、まさかの返答。一瞬耳を疑った。
「い…いなくなったってじゃあ成切さんは家出をしたってことですか!?」
「ああ、そういうことになるね…。
もちろんすぐに行方を追ったんだが結局見つからず、以来ヒーロー活動をしながらずっと彼女を捜し続けていたってわけさ」
「だとしても何で家出なんて…………。
第一、6年前って確かオールマイトが大怪我を追った事件があった時じゃあ……」
家出という事実に驚く緑谷。しかも友里絵が家出した時期が丁度、6年前の大事件と重なっていた。
「そう……彼女がいなくなったのは正にあの事件の直後なんだ。それで私も、もしかしたらそれが理由じゃないかと思ってはいるんだよ…。他に思い当たることって言ったらそれしかないし、もしそれが原因だとしたら彼女のあの態度や行動にも一応頷ける…」
「ど…どういうことですか…?」
緑谷はその言葉の意味が理解出来ず首を傾げる。
「実はあの事件の時、彼女もその場にいたんだよ…。人質としてね…」
「人質!?」
なんとオールマイトは事件当時、友里絵も人質として敵に捕らわれていたという更なる驚愕の事実を打ち明けた。
「そうだ。当時、敵はどうやって調べたのか友里絵が私の娘であることを知っていて、彼女を拐って人質にしたんだ……。幸い彼女は無傷で取り返す事が出来たんだが、事件後もかなりショックを受けていたからね……。今も気にしてる可能性はある…」
「じ…じゃあつまり成切さんは事件のことは自分のせいだと思い込んでるってことですか?」
「あくまで推測さ。事件に巻き込まれたことで私の側にいることを恐れて離れた可能性だってある。
ただ単に嫌われたってだけかもしれないしね…」
「そんな………」
そう…今のはただの推測であり確証はどこにもない。だからこそオールマイトは自信を持って言うことが出来ず苦笑した。
「──にしても、まさかあの子が雄英に入学していたなんてな…。
しかも偽名が魔持軽とは……。彼女らしいと言えば彼女らしいが、こんなにすぐ近くにいたのに気づかなかったなんて……。これじゃあ嫌われても仕方ない…」
オールマイトはすぐに気づけなかったことに後悔を感じていた。
もっと早く気づいていればもしかしたら入学時から会えていたかもしれない。
そんな思いがオールマイトの心をどんどん暗くして行く。
オールマイト…すごく辛そうだ……。
そりゃあそうだよな……。ずっと一緒にいた成切さんが急にいなくなって、ようやく会えたと思ったら今度はあんな風に拒まれて…。
だけど……………。
"あなたは黙ってて!全部あなたのせいよ……!"
あんなこと言われちゃったけどあの時の成切さん…すごく寂しそうな目をしていた…。オールマイトは嫌われた可能性についても話してたけど、あの目は決してオールマイトを嫌っている感じじゃなかった…。
話の内容には成切さんがオールマイトを嫌いになるような要因なんてどこにもなかったし、なにより言葉や態度では拒絶していたけど「嫌い」とは一言も言っていない……。
もともと優しい性格だったなら尚更だ。
そう考えると成切さんが6年前に起きた事件を気にしているんじゃないかっていう推測の方が可能性は高い気がする……。
これまでの友里絵の言動を振り返るが、どうも腑に落ちない。考えれば考える程その不自然さは増していく。
そもそも、彼女が本当にオールマイトを嫌っているならなんで彼の出身校である雄英に入学してるんだ?
オールマイトが雄英の教師になったのはたまたまだから仕方ないにしても普通、入学自体避けるよな……?
あのマスコットだって………。
……待てよ?そういえば何でオールマイトはマスコットを見ただけで彼女のだって分かったんだろ……?
ふとマスコットのことを思い出し、疑問が頭を過った。
それを確かめる為、思いきってオールマイトに聞いてみた。
「あ…あの、オールマイト。少しいいですか?」
「ん?なんだい?」
「どうしてオールマイトはあの時マスコットが成切さんのだって分かったんですか?なんだか確信があったみたいでしたが……」
「ああ…それはな、あのマスコットは私が昔彼女の誕生日にあげたものだったからだよ」
「え、そうなんですか!?」
「…と言っても私も100%確信があったわけじゃないよ。むしろ半信半疑だったからこそ直接会って確かめようと思ったんだ。まだあれを持っていてくれたのは意外だったけど、あげた時はあんなポンチョはなかったからね」
「……」
コラボ商品じゃなかったのかと一瞬思いたくなったが、そこはぐっとこらえ少しずつ確信へと考えが変わっていく。
やっぱりおかしい。
オールマイトがあのマスコットをあげた時にはポンチョはなかったのならポンチョだけ後から成切さんが自分で着せたってことになる……。
成切さんはオールマイトの事を嫌ってなんかいない…。今でもオールマイトの事が好きなんだ。
だからマスコットを今でも持っていて落とした時もわざわざ探しに戻って来たんだ…。あのマスコットは成切さんにとってとても大事なものだったから………。
「…それはきっとオールマイトからもらったものだったからじゃ……」
「え?」
「多分ですが、成切さんはオールマイトのことを嫌いになんてなっていないと思います……。でなければあんな風に探しに来たり今でも大事に持ってたりしないと思います」
「緑谷少年……」
僕のもただの勝手な推測だからまだわからないけど、成切さんの行動がそれらを裏付ける十分な理由になるし全ての事に納得もいく……。
何よりそうであって欲しいと僕自身が願ってる。
これもまた根拠は何一つない推測。
けれどオールマイトの悲しそうな表情は見ていられない。
可能性を願い、自分の思いを正直に伝えた。
「…すみません。僕のもだだの推測でしかないのに何か生意気なことを言ってしまって………。けど成切さんはせっかく見つかったオールマイトの大切なご家族なんですよね…?なのにお二人がずっとこのまま関係だなんて僕嫌で……」
「いや…そんなことはないよ。ありがとう緑谷少年。そう言ってくれて嬉しいよ。大丈夫、私も彼女との関係を諦めたワケじゃない。もう一度ちゃんと彼女と話してみるつもりさ。
ま、休みが明けてからになるけどね」
「オールマイト……」
偉そうなことを言ったと謝るも、その言葉が嬉しかったのか、オールマイトは気持ちが少し楽になりまた笑みを浮かべた。
ただ、今日が体育祭だったことで明日、明後日と学校は休みに入ってしまう為、彼女と話が出来たとしても早くて2日後になる。
「…さてと。とりあえず今日はこのくらいにして終わろうか。あまり居残っていると相澤くんに怒られてしまうだろうからね。それに君も体育祭で疲れているだろう。今日は帰ってゆっくり休むと良い。何かあればまた連絡するから」
「あ…はい、そうですね…」
随分話し込んでしまったようで、時計を見て話を切り上げる。
時間のこともそうだが相澤は怒ると鬼のようでとにかく怖い。その恐ろしさはオールマイトはもちろん、緑谷も十分に身に染みてわかっていた。
怒られない為にも早めに帰った方が良さそうだ。
素直にオールマイトの指示に従うことにし、本日の二人の密会はこうして終了した。
えー………細かい編集をしている時に気づきましたが、主人公の名前が「読録」になってる部分がありました。一応一通り見て訂正しましたがもしまだ「読録」になっていたらご指摘下さると有難いです。
ちなみに「読録」は"よみとり"と読み、成切になる前の一番最初に考えたら名前です。