主人公はあの人の娘!?苦難多き少女のヒーローアカデミア 作:ユリアンヌ
区切ります(^^;
緑谷が送ったメールはすぐにオールマイトの目に入った。
「(緑谷少年からメール?)」
メールには友里絵が自分を尋ねてきたことと場所を変える為に今屋上に向かっていることあり、更に最後の文には話をしてみると書かれていた。
それは遠回しに屋上へ来て欲しいというメッセージだった。
「(マジかよ…。全く無茶だけはするなよ緑谷少年…!)」
メッセージを受け取ったオールマイトは急いで屋上へと向かった。
そして、先に屋上へとやって来た緑谷と友里絵。周りには二人以外に人はおらず、まだ雨が降っていて出られないので屋根の下で話をするつもりのようだ。
「…それで何で成切さんは僕の所に…?」
「…これ…渡そうと思って…」
友里絵が差し出して来たのは小さなメモ帳だった。
「あ!これ僕の…っ確かポケットに入れてたのに…!何で成切さんが!?」
「朝貴方が下駄箱の所に落としたのよ…。気づいてなかったの…?」
そう、緑谷が朝下駄箱の前に落としたのはメモ帳だった。それは普段プロヒーローに関する記録や授業の際に使っており緑谷にとってはなくてはならない大切な必需品なのだ。それを友里絵はあの時に拾っていたのだった。
「そ…そうだったの!?全然気づかなかった…!」
「本当に気づいてなかったのね…。あなたも相当うっかりというか、何であなたまで落とし物して気づかないのよ…」
素で気づいていなかった様子の緑谷に友里絵は小さくため息をついた。
「はは…確かに…。今度は僕が拾って貰う立場になってるね…。
でも成切さん…人目をすごく気にしてたのに何でわざわざ…?職員室に届けるとか、さっき君が伝言をお願いしてた切島くんに預けるとかすれば簡単だったのに…」
「だって…落とし主がわかってるならちゃんと直接返ないといけないと思って…。貴方には一応マスコットを拾ってもらった恩もあるし……」
緑谷の問いかけに対し友里絵は気まずそうな声で答えた。
そっか……。それで直接返しに来てくれたのか。最初はちょっと怖い感じだったけど根は好い人なのかも…。
「あ、ありがとう成切さん。本当助かったよ」
「……」
「実はこのメモ帳、ヒーローのこととか授業で参考になったことをメモしたもので僕にとっては大事な物なんだ。だからなくしたら大変だった……って成切さん?」
緑谷は嬉しそうに安堵しながらお礼を言うが、友里絵の様子がおかしいことに気づき彼女に呼び掛けた。
「成切さんどうかしたの?」
「…いや、普通はそうだよなー…って思って…」
「え?」
「普通落とし物を拾ってもらったらお礼を言うのが当たり前なのに私は言わなかったから…」
「あ…」
その言葉に緑谷は三日前のマスコットを拾った時のことを思い出した。
そういえばあの時僕、成切さんに睨まれたんだった…。成切さん気にしてくれてたんだ……。
やっぱり彼女は本当はただの優しい普通の女の子なんだ……。
「しかもあの時睨み付けちゃって…その…ごめんなさい…マスコット拾ってくれてありがとう…」
「ううん、気にしないで。僕もあの時はちょっと気配りが足りてなかったし…」
申し訳なさそうに謝る友里絵に緑谷は気にしていないことを伝え、自分にも非はあったと答えた。
「じ…じゃあ私はもう戻るから…。それだけ伝えたかっただけだし…」
「あ、待って…!何で成切さんはオールマイトのことをあんなに拒むの…!?」
話は終わったと言わんばかりに立ち去ろとする友里絵を緑谷は慌てて引き止める。
「…それは貴方には関係ないし話す必要もない…」
「関係なくなんかないよ!だって僕はオールマイトの弟子だから……!」
「…!それ…私に言っちゃっていいわけ…?「
その言葉に友里絵は足を止め振り向いた。
「だって君はもうそのことを知ってるよね…?最初に僕とぶつかった時も一瞬怯んでたし、僕がオールマイトと深く関わりのある人間だってわかってたから慌てて立ち去ったんじゃないの…?」
「………」
緑谷の問いかけにだんだん無言になっていく友里絵。
「成切さんが持ってたあのマスコットだって昔、誕生日にオールマイトからもらった物なんだよね…?でもその時はポンチョはなかったって……。それってポンチョは成切さんが自分で買って着せたって事だよね…?オールマイトのことは避けてるのにどうして彼からもらった物はアレンジまでして今でも持ってるの……?」
「…………」
問いかけを続ける緑谷に対し、友里絵は黙ったままだった。
「マスコットを落とした時も慌ててわざわざ探しに戻って来たのも、あのマスコットが成切さんにとって大切だったからじゃないの……?僕がこのメモ帳を大切なのと同じで……。
成切さん……本当はオールマイトのこと………」
「……もういいよ緑谷出久くん。それ以上言わなくても……」
するとずっと無言だった友里絵の口が開いた。
「本当貴方って人のこと詮索してくるよね…。それに凄くお節介…」
「うん……自分でも余計なお節介をしてるって思うよ。だけどどうしても放っておけなくて…。それに余計なお節介はヒーローの本質だってオールマイトが言ってたから……」
「ほんとあの人らしいね…。全然変わってない………」
先程までの険しかった友里絵の表情が和らぎ小さな笑みがこぼれた。
そして少し間を空けてから静かに語り始めた。
『正直に言うよ…。あなたの言う通り、私はあの人のことを嫌ってなんかいない…。むしろ感謝してるよ。身寄りのない私を引き取って育ててくれたんだから……』
「それじゃあどうしてオールマイトのことを…」
緑谷も友里絵に聞き返す。
「……6年前の事件のことはもうあの人から聞いた……?」
「え…あ…うん……。オールマイトが
友里絵から突然の質問の連続に困惑しながらも答えていく緑谷。
「ならその事件に私が関わっていたことは…?」
「それも連休前に聞いたよ…。成切さんが
次に6年前の事件について知っているかを聞かれ首を縦に振る。
その後の自分が6年前の事件に関わっていたことについても知っているかという質問に対しては頷いてから、家出はそれがきっかけではないかとオールマイトが考えていることを友里絵に伝えた。
「…何だ、気付いてたんだあの人……」
「…ってことはやっぱり成切さんは6年前の事件は自分のせいだと思い込んで家出を!?」
その言葉で確信を持った緑谷が叫んだ。
やはりオールマイトの推測は正しかったのだ。
「まさか……。確かに責任を感じてる部分はあるけど、家出をしたのはもっと別の理由…』
「別の…?それって一体…?」
しかしそれは本当の理由ではないらしく否定し別の理由があると告げた。
「私があの人の元から離れようと思ったきっかけが6年前の事件であることは間違いないよ…。でも最大の理由はふたつある…。ひとつはあの人があの事件で大怪我をしたから。ふたつは私の存在があの人の足枷になると思ったから…」
「あ………足枷って…どういうこと読録さん!?」
緑谷は友里絵が足枷と言ったことに衝撃を受け再度聞き返す。
「あの人は私を引き取ってからずっとあらゆる危険から守ってくれてたの…。普段は事件だって聞くとすぐに飛んで行っちゃうけど、もしに私に何かあった時は必ず駆けつけて救けちゃうくらい大切にしてくれてて………」
「そ…それはそうだよ。だって成切さんはオールマイトがわざわざ引き取ってまで育てた娘なんだから大切にするのは当然じゃないかな」
「だからだよ。あの人にとって私はそれだけの存在ってことでしょ。だからきっと私が側にいたら今でも私の事を守ろうとするに決まってる。けどあなたももう知っての通り、あの事件であの人は衰弱してしまい昔みたいに活動することは出来ない…」
「あ…」
それを聞いてハッとした。
彼女の言葉が何を意味するのかすぐにわかったからだ。
「なのにあの人は今でも多くの人を救おうとヒーロー活動を続けてる…。しかも今は雄英の教師の仕事だってあるのに私なんかに構ってたら只でさえ短い活動時間が余計に短くなって活動全体にも支障が出ちゃう…。だったら私なんていない方がより多くの人を救けられるし、活動に専念出来るでしょ?」
「だ…だからって何も成切さんが出て行かなくても……!オールマイトだってその辺はちゃんと考えてるだろうし…」
「…じゃああの人といてもし私の存在が
「成切さん…」
悲痛な思いで全てを打ち明けた友里絵。
緑谷はそれをただ聞いていることしか出来なかった。
「だからあの人の元を去ったの…。それからは外に出る時は必ずフードを被るようにしたし、なるべく目立たず過ごすようにもした…。ヒーロー科じゃなく普通科を選んだのもその為…。ただ雄英を選んだのは学校くらいは好きな所に行きたかったから…。雄英はあの人の出身校だけど別に通うだけなら問題はないんじゃないかと思って…」
「そうか……だから雄英に入学を…」
「ええ…。けどそれがまさか雄英の教師になるなんて全くの想定外だった…。
かといって学校を辞めるわけにもいかないし、とにかくあの人と接触はしないように気をつけてたし体育祭ではわざと上位から外れた…。その後の競技も体調不良を理由にして出てない…」
「そ…そんなことまで…!?」
いくらオールマイトから身を隠すため為とはいえ、さすがにそこまでやっていたとは思わず声を上げた。
「そりゃそうでしょ。雄英体育祭はTVで生中継されるビッグイベント…。私の姿が映るのは極力避けなきゃいけないし、あの人にも見つかっちゃうでしょ…?まぁ…例えあの人が雄英の教師になってなくてもそうしてたけどね…。元々目立たない様にするつもりだったし…』」
「…………」
そういうことだったのか……。
まさか成切さんがそこまでしてたのは予想外だったけどこれで彼女がオールマイトを避ける理由がハッキリした……。
成切さんは成切さんなりにオールマイトを守ろうとしてたんだ……。
自分が犠牲になることでオールマイトとの関係を周りに悟られない様にする為に……。
だけど…………。
「で……でもそれじゃあ成切さんは何も出来ないじゃないか…。好きなこともやりたいことも全部我慢しなきゃいけないなんて……」
「そんなのは覚悟の上だし、それであの人を守ること出来るなら私一人が我慢することぐらい構わない…。平和の象徴の損失に比べたら私一人の人生なんてどうでもいいし……」
「どうでもいいって……っ
そもそも、いつまでも隠し通せる事じゃないし、例え今バレてなかったとしてもいずれはバレてたと思うよ…!」
一人で何もかもを背負い込もうとする友里絵を阻止しようと緑谷は必死に訴えかける。
「もちろんそれだってちゃんとわかってるし、私だっていつまでも隠し通せるなんて思ってなかったよ…。ただ、こんなに早くバレるつもりもなかった……。いけないことだってわかっててもやっぱりあの人にまた会えたことが嬉しくて側に行きたい気持ちを抑えきれず、これまで何回も仮眠室に行った……。そして今回あなたと鉢合わせてしまいあの人にも知られてしまった…。完全に私のミス…」
「…っそんなことないよ!!」
「…!」
彼女の自分を責め、まるで後悔するかのようなその言葉を遮るかのように叫んだ。
「成切さんは間違ってなんかいない!オールマイトに会いたいって思うのは悪いことなんかじゃないよ!」
「悪いよ……。言ったでしょ…?私がいたらあの人の負担が増えるし
「それは成切さんが側にいてもいなくても変わらないよ……。それにいくら離れててもオールマイトが聞き付けてやって来たら意味なんてなくなるでしょ……?」
「それは………」
正論を言われ言葉を詰まらせる。
いくらオールマイトの元を去り、バレない努力をしてるからといってバレない保証はどこにもない。
つまり、どこにいようと見つかれば結局は同じことなのだ。
「成切さんの気持ちはわかるよ…。でもじゃあオールマイトの気持ちはどうなるの…?オールマイトはずっと成切さんを捜し続けてたんだよ…?それでやっと君を見つけたのに、理由も分からず拒まれてすごく悲しそうだった…。今からでも遅くないよ。すぐオールマイトの元に戻って…」
「……そんなの無理に決まってるじゃない…。いくらあの人の為とはいえ、勝手にいなくなってひどいこともいっぱい言った……。今更どの面下げて戻れって言うの…?私はもう元の関係に戻るつもりもあの人の所に帰るつもりもない…」
「成切さん…っ!?」
友里絵はオールマイトの元へ戻る意思がないことを告げその場から立ち去ろうとした。
「理由は教えたんだからもういい行って良いでしょ…?貴方と関わるのもこれが最後…二度と会わない…。それに貴方が何と言おうと私の意志は変わらないし、それで本当にあの人に愛想尽かされたとしても私は構わない……」
「悪いがそれはないよ」
「…!オールマイト!
(良かった…来てくれた…!)」
「!?」
ところがそこへオールマイトがトゥルーフォーム姿で現れた。
彼の突然の登場に友里絵は驚きのあまり言葉を失い、緑谷はオールマイトが来てくれたことにホッと胸を撫で下ろしていた。
「話は全て聞かせてもらったよ……。やはりそういう事だったんだな友里絵……」
「な…何でここに…」
「僕が伝えたんだ……。ここに来る前にオールマイトにメールを送っておいた…。もしかしたら元の関係に戻れるきっかけになるかと思って……」
動揺する友里絵に緑谷は自分が事前に知らせておいたことを素直に話した。
オールマイトと友里絵。二人のことを本気で心配しての行動だった。
「本当に済まなかった友里絵……。思えば君には昔から我慢ばかりさせてしまっていたな……。そのせいで辛い思いをさせた…許してくれ…」
「そんな…私は別に……」
「君がそこまで私を気遣ってくれていたなんてすごく嬉しいよ。でもね、私が君を守っていたのもヒーロー活動を続けているのも全て私の意志でやっていることなんだ。平和の象徴としてより多くの人達を救け、君のことも父親として守り続けたい。だから緑谷少年が言ったようにそのことで君が悩んだり背負い込む必要なんてないんだよ」
「で…でもそれであなたに危険が及んだら………。また前みたいに私が捕まったりでもしたら……」
優しい声で話すオールマイト。
それでも彼が危険に晒されることを気にし、素直に受け入れることができずに迷っている彼女の様子を緑谷はただ黙って横から見守る。
「確かにその可能性は否めない…。実は以前、塚内くんって言う警察の友人からも似たようなことを言われていたんだ。「私的な理由で出動するべきじゃない。優先的に救ける人物がいれば逆に犯罪の陽動や人質などに利用されてしまう」…とね。まぁ…君がいなくなった後の話だが…」
「だったら…っ」
「そうはいかないよ。塚内くんの言うことは最もだが、これが自分の娘となれば話は別だ。大丈夫、私は簡単にやられたりしないよ。むしろ君がいないことや安否を把握出来ないでいることの方が私に辛い…」
「…………」
「私の所に戻るのが難しいと言うならそれでも構わない。だがせめて昔のように接してはもらえないだろうか……」
友里絵の頭を撫でながら大丈夫だと答えた後、自分の所に戻って来るとまではいかなくても普通に接してほしいと切に頼んだ。
「…怒ってないんですか…?私のこと…」
「ん?何で私が怒るんだい?」
「だって…勝手にいなくなった上にあなたにひどいことを沢山言ったから…」
「けどそれは私のことを思っての行動だろう?私の為にしてくれたことなのに怒るなんて出来ないよ。
それは君が一番よく知ってるんじゃないかい?」
「…………」
友里絵の問いかけに対しオールマイトは怒る意思がないこと示すと優しく微笑みかけた。
「友里絵自身はどうしたいんだ?私のことは関係なしに素直な気持ちを言ってごらん?」
「…私も本当は一緒にいたい……。本当は離れたくなんてなかった……。でも…それは許されないことだって思って……っ私は側にいちゃダメなんだって…っ私のせいで…あなたが危ないくなるのは嫌だったから……っ」
「成切さん…………」
オールマイトの言葉が引き金となり、今まで抑えていた感情が一気に溢れ出し友里絵は大粒の涙をポロポロと流した。
「大丈夫…大丈夫だ。今日までの長い間よく耐えたな…。辛かっただろう、ありがとう友里絵…」
「ふ…っうぅ…っ」
そんな友里絵をオールマイトはそっと自分の側へと寄せるとそのまま抱きしめ背中を撫でた。
……成切さん…よっぽど辛かったんだ……。
当然か………。これまでずっとオールマイトの為だけに自分の気持ちを偽って来たんだから……。
今ならわかる……。
成切さんがこれまでどんな思いで今日まで過ごしてきたのか…。普通なら到底耐えられることじゃない……。
だけどこれでもう、成切さんがそんなことをしなくて済む……。長い苦しみからやっと解放されるんだ…。
二人の様子を静かに見守っていた緑谷も自分のことのように喜び笑みを浮かべた。
んー……やっぱりまだ文が長いですなぁ…(-_-;)
けど良い区切り場所がないんですよねぇ…(TT)
とりあえず緑谷くんが落としたのはメモ帳でした~。
これは完全に私の勝手な設定でございます。
もし持ってても朝からポケットに突っ込まんでしょう。
閲覧ありがとうございました。