主人公はあの人の娘!?苦難多き少女のヒーローアカデミア 作:ユリアンヌ
その後、麗日とも別れ緑谷も自分の職業体験先へと向かった。
新幹線で45分の場所にある街中をオールマイトからもらったメモを頼りに歩く。
「オールマイトすら恐れるヒーロー…「グラントリノ」。聞いたことない名前だけどすごい人に違いない!」
ヒーローオタクである緑谷でさえ知らないグラントリノというヒーロー。オールマイトから話を聞いた後、自分でもいろいろ調べてみたが結局有力な情報は得られず謎のまま職業体験に来ることになってしまった。
それでもオールマイトの担任だった人なのだからすごい人であることは間違いだろうと思っていた。
「すごい人に違い…
ない…」
………のだが、辿り着いた場所は明らかにオンボロの廃屋のような建物。
とてもじゃないが、すごい人がいるとは思えなかった。
「(頂いた住所は合ってるぞ…)
雄英高校から来ましたー…緑谷出久です…。よろしくお願いしま…」
扉を開け挨拶をしながら中に入ろうとした緑谷があるものが目に映りピタリと止まる。
彼の目に飛び込んできたもの。それは大量の真っ赤な液体の上に倒れた老人の姿だった。
「あぁああああ死んでる!!
「生きとる!!」
「あぁああああ生きてる!!
ホッ」
叫び声を上げてすぐに顔を上げる老人。ここで緑谷は安心の意味も含め二度目の叫び声を上げた。
「いやぁあ切ってないソーセージにケチャップぶっかけたやつを運んでたらコケたァ~~~!」
「(紛らわしすぎる…)」
起き上がり普通に喋り出す老人。彼がグラントリノ本人のようだが、どうやら赤い液体は血ではなくえただのケチャップで転んだ際にぶちまけたらしい。
本当に紛らわし過ぎる話だ。
「誰だ君は!?」
「雄英から来た緑谷出久です!」
「何て!?」
「緑谷出久です!!」
「誰だ君は!!」
「(や…やべェ!!)」
ヨボヨボとした状態で、まるでボケているかのように同じことを繰り返し尋ねるグラントリノ。
実は彼のこの問いかけにはちゃんと意味があっての事なのだが、緑谷がその意図を知るのはもう少し先になる。
今はまだボケたおじさんとしか思っていなかった。
オールマイトの先生だ…相当なお歳とはわかっていたけどコレは…。
「飯が食いたい」
「飯が!!」
「俊典!!」
「違います!!」
コントとも言えるようなやりとりを続けた後、流石に対応に困ってしまいスマホを取り出した。
「す…すみません、ちょっと電話してきますね
(とりあえず彼の仕上がりっぷりをオールマイトに報告……)」
「撃ってきなさいよ!ワン・フォー・オール!
どの程度扱えるのか知っときたい!」
雰囲気も喋り方も先程とはうって代わり緑谷のコスチュームが入った鞄を(勝手に)開けながらワン・フォー・オールを撃ってくるように言うグラントリノ。
緑谷は意表を突かれたかのような表情でグラントリノの方を向いた。
な……何だこの人…急に…。
「良いコスじゃん。ホレ着て撃て!」
「あ…あの……」
そんな緑谷をよそにグラントリノは彼のコスチュームを引っ張り出す。
あまりの様子の違いに戸惑いつつも緑谷はグラントリノに声を掛けようとした。
「誰だ君は!?」
「(だ…っダメだぁぁぁぁ!!)」
が、しかしまた直ぐに元に戻ってしまい緑谷は再び絶叫した。
「っ~~~~~……。
僕…早く…早く力を扱えるようにならなきゃいけないんです……!オールマイトには…もう時間が残されてないから……。
だからこん……おじいさんに付き合ってられる時間はないんです!失礼します!」
焦る気持ちから緑谷はさすがに苛立ちを感じ始め、とうとう我慢の限界に達してしまいグラントリノに対してキツイ言葉を発してしまう。
そして緑谷は頭を下げるとUターンをし、建物から出ていこうとした。
「だったら………」
「え…」
するとグラントリノは一息吸った後、まるでバネのように目にも止まらぬ速さで建物内を飛び回り、緑谷の前に回り込んで扉の上の壁に張り付いた。
「だったら尚更撃ってこいや受精卵小僧」
「雄英の体育祭をTVで観た。あの力の使い方、てんでなっちゃねぇ!正義の象徴No.1ヒーローと言われちゃいるがあの正義バカオールマイトは「教育」に関しちゃ素人以下だぁな」
壁に張り付いたまま話すグラントリノの迫力に圧され、緑谷は固まりながらもオールマイトが言っていた言葉を思い出す。
「"さあ!!始めようか有精卵共!!"」
同じ言い回し…トボケ方も…。
この人やっぱりオールマイトの先生!!
「力の使い方が見てらんねぇから俺が見てやろうってんだ。さァ着ろやコスチューム」
「…よろしく…お願いします!」
グラントリノの実力を間近で見て間違いなくオールマイトの先生であることを認識した緑谷はニッと笑い、自分の力を見て貰うようお願いした。
準備の為、早速コスチュームに着替えようとする緑谷はまず取説(※取扱説明書)の紙に目を通した。
そこにはコスチュームの修繕にあたり、材質やデザインを弊社の独断で多少の変更させてもらったと書かれていた。
変更理由についてはその方が絶対にカッコいいから…らしい。
「えー…」
勝手に材質やデザインを変えて来るなんてサポート界は発目さんみたいな人ばかりなのかな…。
なにはともあれ…母製スーツβ初陣だ!
「準備…整いました」
着替えを終え準備が出来たことをグラントリノに告げる。
「ならやれ」
「ほ…本当に良いんですか…?正直まだ完全に使いこなせてないしもっと開けた屋外じゃないと…。もしうっかり100%で撃っちゃったりしたら…グラントリノさんのお身体が…」
ワン・フォー・オールを使うことを躊躇う緑谷。万が一の事態を考えグラントリノに向かって撃つ事に迷っているのだ。
「やれやれ…ウダウダとまァ────」
「え?」
「じれったいな」
「ぎゃ!?
実践形式!?」
そんな彼を無視し構わず再び飛び回るグラントリノ。背後から緑谷の背中を蹴りを入れ電子レンジの上に着地。
当然のことながら電子レンジはガシャン!!と大きな音を立てて壊れた。
「さっきので俺の実力が見えなかったか」
「!?」
「ワン・フォー・オールの9人目の継承者がこんな湿った男とは…オールマイトはとことんド素人だァな」
「……っ!!
ぶっ!!?」
なんとか体勢を整えようとするがグラントリノのあまりの速さについていくことが出来ずニ発目の蹴りを食らってしまう。
速すぎる!どんな"個性"だ!?
「った…!」
そしてまた一発攻撃を受ける。
いや…違う!隠れる隙もないこの状況なら悠長に正体を探るよりもとりあえず動きを止めたいぞ!
「(電子レンジの中で卵が割れない…イメージ!!)」
右手に力を集中させ構える。
2回背後をとられた!
なら……!
「!
分析と予測か」
また背後を狙ってくると予測した緑谷は体をひねり後ろを向いて戦闘体勢に入り向かって来たグラントリノスにマッシュを撃った。
「だが固いな…そして意識がチグハグだ。だからこうなる」
しかしその攻撃は簡単に避けられグラントリノによって床に押さえつけられてしまった。
「絶対捕まえたと思ったのに…!」
顔を押さえつけられたままの緑谷が悔しそうに呟く。
「それだよ。騎馬戦や本戦でのワン・フォー・オールの利用方法…。自分でも理解は出来てるハズなのに…オールマイトへの憧れや責任感が足枷になっとる」
「足…枷?」
「「早く力をつけなきゃ」それは確かだが時間も敵もおまえが力をつけるまで待ってくれはしない。ワン・フォー・オールを特別に考えすぎだな」
「つまりどうすれば…!」
「答えは自分で考えろ。俺ァ飯を買ってくる。掃除よろしく」
「ええ…!?」
グラントリノの言葉の意味がよくわからず答えを求めるがグラントリノは答えは自分で考えるべきだと判断し教えてくれず、彼は飯を買ってくると言って外に出た。その際ちゃっかり部屋の掃除も緑谷に押し付けていた。
オールマイトへの憧れが足枷に……。
それってどういう………。
「それと、一つ言い忘れとったが」
「わぁ…!?まだ行かれてなかったんですか!?」
買い物に行ったと思われたグラントリノがひょこっと扉から顔を覗かせ、緑谷は驚きビクつく。
「もし俺がいない間に上にいる奴が起きて来たら買い物に行ってるが直ぐに戻るって伝えとけ」
「え…グラントリノさんの他に誰か一緒に住んでいる人がいるんですか?」
グラントリノが言い忘れていたと言って告げたのは同居人が一人いるということだった。
「娘俺が預かって面倒を見てる娘が一人な。まぁ孫みたいなもんだ。昨夜辺りから体調を崩してたんで念のため今日は学校を休ませてる」
「そ…そうなんですか…。
………ってだったら尚更さっきの実践外でやるべきだったんじゃ…!?」
その同居人が病人だと知った緑谷はハッとしながら屋内での先程行った実践形式の戦闘はまずかったのではないかと思いグラントリノに指摘した。
「まぁ細かいことは気にするな。それよりもあいつはオールマイトに関わることを極端に嫌がるからな。接触する際は十分に気をつけた方が良いぞ」
「え…?」
それを聞いた瞬間、その人物が誰なのか直ぐに察しがついた。
自分が知る限り、そんな人物は一人しかいない。
オールマイトと関わることを極端に嫌がるって………。
しかも女子学生……。
いや………まさかな……。
けど………。
「あ…あの…もしかしてですけどその人って成切さんって言う名前の人じゃ……?」
「ん?何だ、知っとったか小僧」
思いきって確かめてみると、思ったとおり、友里絵のことだった。
「(やっぱり……!)
本当にここに成切さんが!?」
「…その様子だと既にもうあいつと接触もしとる様だな…。
まぁ良い……詳しい話は後だ。とにかくそういうわけだから任せたぞ」
「ちょ…っ待……っ!」
そう言ってグラントリノは緑谷が止める間もなく今度こそ本当に出て行った。
行っちゃった………。
けどグラントリノさん…成切さんとオールマイトが和解したこと知らないみたいだった……。
もしかして読録さんグラントリノさんに言ってないのかな……?
ていうか、成切さん身体大丈夫かな……?
緑谷がそう思っていたその時───。
「トリノおじさん…?何か凄く大きな音がしたけどどうかした……?」
二階から友里絵がゆっくりと降りてきた。
「…!成切さん!!」
「み…緑谷出久くん…!?え…っ何でここにいるの…!?」
当選この場にいるハズのない緑谷の存在に友里絵は驚く。
「今日から一週間職場体験で僕はグラントリノさんに指名を受けて来たんだよ。今は買い物に行っちゃってていないけど…」
「あー………なるほどそうだったんだ。そういえば昨日の夜トリノおじさんがそんなようなことを言ってたけど、あなたのことだったんだ…。なんでこうもあなたと縁があるのかな……不思議」
「そ…それより成切さん体調不良って聞いたけど大丈夫なの…?顔も赤いし寝てないと…」
緑谷が事情を説明すると納得した様子の友里絵。グラントリノから前日話を聞いていたらしいがそれが緑谷だとは思いもしなかったようだ。
一方の緑谷は驚いてはいたものの友里絵の身体を心配し気遣っていた。
「大丈夫…。ちょっと熱はあるけど意識はハッキリしてるし普通に元気もあるよ。それにこんな散状の部屋見たら寝てる場合じゃないし……。
何よあの殺人現場みたいな床と壊れた電子レンジ……」
大丈夫と答えながら友里絵は悲惨な状態の部屋を見て呟いた。
「あ…あの床はケチャップをかけたソーセージを運んでて転んだらしくて、電子レンジはさっき実践形式の戦闘をした時にグラントリノさんが踏んづけて壊しちゃって……」
「さっきの大きな音はそれか……。全く…屋内で飛び回るとか何考えてるんだろあの人……」
それを聞いた友里絵は呆れながらため息をついた。
「僕も一応グラントリノさんに屋外でやった方が良いって言ったんだけど問答無用で始めちゃって…」
それについては緑谷も同意見で肩を落としながら呟いていた。
「あの人も大概無茶苦茶だからね…。とりあえず掃除しなきゃ……」
「え…っちょ……っその身体でやるつもりなの!?」
「だってあなたにやらせる訳にはいかないでしょ?」
「いやいやいや…!!成切さんこそ休んでてよ!掃除は僕がやるから!グラントリノさんからも掃除するよう言われてるし!」
弱った身体で掃除をしようとする友里絵を緑谷は慌て止めに入る。
「(…雑用まで押し付けたのかあの人……)
大丈夫だって。ほら、よくインフルにかかっても元気な人いるでしょ?あれと同じだよ。今日だって本当は学校休むつもりはなかったんだけどトリノおじさんに学校行くって言ったらダメって…。
皆勤賞狙ってたのに…………」
「(学校に行こうとしてたのか…!)
そ…そりゃあ熱があれば普通に止められるに決まってるよ……!とにかく掃除は僕がやるから……!』
「掃除をする為にここに来たんじゃないでしょ。良いから私がやる…」
熱があるにも関わらず学校に行くつもりだったと話す友里絵。掃除も自分ですると言って一歩も引こうとせず、緑谷は仕方なく妥協案を伝える。
「じ…じゃあ成切さんはチリチリ係で…。あと箒やバケツとかの準備をお願い…」
「…さりげなく超簡単なのにしたね…。まぁいいんだけど…」
少し不満そうにしながらも友里絵は渋々了承し掃除に必要な道具の準備を始めた。
…………………。
やっぱりグラントリノの「受精卵小僧」の所で切るべきだったか………。
閲覧ありがとうございました。