ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢 作:鈴見悠晴
偉大なる航路、後半の海。通称“新世界”、過酷すぎる環境に逃げ場を与えない赤い壁とカームベルトの中。海賊王ゴール・D・ロジャーの死から始まった大海賊時代といわれる今ですら、ここまでたどり着くことができるモノは一握りの猛者だけ。
かつて栄えた国ががあった島、紛争の後に人っ子一人として住むことができなくなった島。
500年ほど前までは学校があった場所に作られた不自然な地下への階段を降りていくとまっすぐな廊下がどこまでも続いている。暗い、昏い廊下。
形はボロボロに見えるが、作りはしっかりしている廊下を二人組が歩いて行く。先を進む男は太巻きの葉巻を一度吹かすと古びた重厚な扉の前に立ち止まった。
「MS.オールサンデー開けろ」
背後を歩いてきていた女性は一度肩をすくめると、何も言わずにドアを開けた。
ドアの向こうには5つの椅子と円卓を置かれた大部屋が広がり、すでに3つの椅子には誰かが座っていた。
「おいおい、ワニ野郎。ずいぶん待たせるじゃないか、お前らしくもねぇ。フッフッフ」
趣味の悪いピンク色の羽をかたどったコートを羽織った男が笑みを貼り付けた顔で、振り向きざまに嫌みを吐く。
「クハハハ、お前と違ってこっちは大仕事を終わらせてきたんだ。口じゃなく、手を動かせばどうだ?できるんならな。」
お互いの言葉に両者明らかに眉間に大きなシワが寄る。
空気が明らかに張り詰めていき、まるで大気がひび割れたかのように伝播していく中、オールサンデーと呼ばれた女性と、ピンクのコートに身を包んだ男の背後に立っていた黒い羽根コートを着た男がそっと距離を取る。
視線がぶつかり、感じられる者たちはとんでもない覇気の衝突に身構えた。殺気が部屋に充満していき、二人の能力が周囲に影響を与えていくが、それを意に介さぬ笑い声が二つ。
「フハハハ」
「キーシッシッシ」
一人は両手の指にはめた金の指輪を光らせながら、もう一人はその巨体を揺らしながら大きく笑った。
「そのあたりにしておいたらどうだ二人とも、そろそろあいつも来るだろう」
手癖なのか指ぱっちんをならした指輪の男の言葉に、不気味な雰囲気を帯びた大きな男が反応した。
「あいつはこの安っぽいアジトを気に入っているからな、キーシッシッシ。暴れでもしたらぶち切れられちまう、それはそれで面白そうだがなぁキッシッシ」
二人の言葉に頭が冷えたのか、苦虫をかみつぶしたような顔で葉巻を咥えた男が椅子に座ったことで場を支配していた緊張感が霧散した。
各々眼の前の机に置かれた酒を飲み、時間を潰すこと数分。目を合わせようとすらしない彼らが待ち望んでいた男がやってきた。
“コツン、コツン”
小さい、しかしとてもよく聞こえる足音が扉の向こう側から聞こえてきた。なにかステップでも踏んでいるのか独特なリズムを刻んだ足音が近づき、止まる。
ドカン!!
ドアをご機嫌に蹴り飛ばして入ってきた男は、少し乱れた緑色の髪をなでつけて部屋をじろりと見渡した。
「んん~、お前ら久しぶりだなぁ。変わらず会えて嬉しいね、ここは未だに地獄の釜のそこだ」
真っ白の肌に真っ赤の口紅が頬まで染め上げ、真っ赤な三日月を描く。
その男の登場にこれまでまるで死んでいたかのような空間に生気が吹き込まれる。それはまるでこれまで動いていなかった工場が電気を得て動き出したかのようだった。
不機嫌そうに眉を潜めた葉巻の男が左手につけたかぎ爪の義手を机の上に音を立ててのせる。
「さっさと座れ、そして聞かせてもらおうか。俺たちが何のために動かされたのか、その目的をな」
言葉に込められた苛立ちも、威圧感も何のその、すでに座っていた4人の前を歩いて、一番奥の上座に腰掛けると一枚の手配書を中央の机に叩き付け、その中心に懐から取り出したナイフをぶっさした。
「計画ぅ、知りたいか同盟者よ。HAHAHA、そんなたいそうなもんじゃねえ。ただこのクソッタレな世界をひっくり返すだけだ!!」
肩を揺らしながらピンクのコートを着る男がナイフを引き抜いたとき、その手配書に書かれていたのは“カイドウ”の4文字。
「フッフッフ、こいつはイカレてる」
「ん~、儲けの気配は感じるが…」
「ここは悪夢の入り口だな。キッシッシ」
「クハハ、これがお前のやりたいことか?なあJOKER」
その手配書への反応はまちまち、驚くモノ、笑うもの、リベンジに打ち震えるモノ、思考の海に潜るモノ、そして愉快そうに嗤うもの。
『HAHAHA!!これは序章さ。これから始まるんだよ、終わりが来るぞ、終焉が迫るぞ。強者だけの戦争?くだらない。地獄の門が開かれたんだ。神の時代も、皇の時代も全て俺たちが終わらせてやるのさ。HAHA、HAHAHA!!!』