ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢 作:鈴見悠晴
炎をかき消すような砂塵の中、、常人では立つことすら困難な環境になった刃武港。キングは空を見上げる。
「サー・クロコダイル。……海賊狩りで名を挙げた男だったな、どれほどのモノかと考えていたが、なるほどこれは強いな」
既に地面は、この周辺の大気一体から水分が消え失せている。一部ではあまりの高温にガラス化している大地を踏みしめるキングが鋒を向ける。
「気に入った。俺が勝ったら俺に直属の部下に成れ」
返事も求めずに振り抜かれた刀が体を通り抜けていく。
「ずいぶんと自信があるようだな、だがご自慢の刀も当てれねぇなら意味がねぇぞ」
クロコダイルは攻撃が当たる部分だけを変形させることでその攻撃を回避していた。
『砂漠の金剛宝刀』
返す刀で放った砂の刃だったが、躱され、防がれ結局キングに傷をつけることもできなかった。
その瞬間見聞色が確かに見た。振り下ろされた右腕が切り落とされる未来を。
とっさに引いた右腕に刃が振り下ろされることはなく、すさまじい速度でキングが突っ込んできた。
「相当見聞色を鍛え上げているらしい。だがなぁ、そういう相手とはもう既に戦ったことがあるんだ!!」
タックルからその火力を上げて上空に飛び上がっていくキングを逆につかみ返したクロコダイルはその笑みを深くした。
「俺の体は水を奪う。……焼き殺される前に貴様をミイラにしてやろう!!」
火力を上げるキングの炎に身を焼かれていくクロコダイルと、確実に水を奪われて蝕まれていくキング。どちらが先にやられるのか。互いの意地の張り合いになりかけたその瞬間、鳥かごの中に一人の男が宙から降ってきた。
「ウォロロロロ、そこまでにしとけお前ら。もうこの戦争は終わったんだからなぁ」
涙を流しながら酒樽を傾けるカイドウは、一人の死体を投げつけた。
「もうその男は死んだ。俺は今何もしたくないんだ。わかるだろう。とっとと帰れ」
圧倒的な強者のオーラを垂れ流しにしながら、脅しをきかせるカイドウだが、クロコダイルもドフラミンゴもそちらには意識が向けられていなかった。
投げつけられたその男の体はボロボロで、誰か判別することも難しい。だがその服装と特徴的な髪色からJOKERだということが考えられた。
座り込んだカイドウは、ほかの人間のことなど全く気にせずに酒をあおる。
「……お前が俺に勝てるわけがないだろうが」
そう言い切ったカイドウだが、皮膚のいくつかの部分が溶け、刀傷や銃弾の傷をいくつもこしらえてい覇気も弱っているその姿からは死闘が繰り広げられたことは想像に難くない。
だが、たった一つ確かなことは最後に立っていたのはカイドウだったと言うことだけだ。
ボスを失った二人がカイドウに一矢報いようと攻撃する可能性に思い至っていたキングはいつでも動けるように構えていたが、彼らは予想以上に冷静だった。
「ふん、バカが。結局死にやがった」
火傷に切り傷をいくつもこさえたクロコダイルは吐き捨てるようにそう言うと、片腕を失っているドフラミンゴの元まで行くと担ぎ上げようとするが、ドフラミンゴは己の足で立ち上がった。
「カイドウ、最後に一つ聞いておきたい。あの人は嗤って死んでいったか?」
「死に顔を見ていけば良い。今にも動き出しそうな、いつもの笑みだ」
カイドウのすすり泣きながら答えた言葉にドフラミンゴは嗤いだした。
「フッフッフ、そうか嗤っていたか。フッフッフッフ……なら、計画を続けよう」
クロコダイルが能力を使い、砂塵が上がり、収まったときには二人ともいなくなっていた。
「良かったのか、カイドウさん」
二人を見送ったキングが問いかけると、泣き上戸になっているカイドウが酒樽をからにしてこう言った。
「あいつらが死んだところで、大して流れは変わりゃあしない。その証拠に奴らの部下が見つかっていない。……備える必要がある、あのバカが連れてきた新時代のうねりは俺をも飲み込みかねん。……世界が大きく変わるぞ」
カイドウは時代のうねりをその身に感じ取った。この戦争で大きく戦力を落とした百獣海賊団はこれまでとは違う拡大路線をとることになる。配下の海賊団を増やしながらカイドウはさらなる力を求めて“悪魔の実”に大きなこだわりを見せ始める。
この戦争の後にJOKERを中心に作られた同盟は解消された。
ギルド・テゾーロはその行方を完全にくらませた。現在では死亡説が主流になっているが、時たまシャボンディ諸島付近で似た男の目撃情報が出てくる。
ゲッコー・モリアは新世界に拠点を構えている。一大勢力を生み出した彼らは縄張りを次々に増やしている。傘下の海賊団も増やしている彼らは新世界の入り口を抑えており、新世界に来たばかりの連中のほとんどがモリアに討ち取られている。
サー・クロコダイルもその行方をくらませている。だがテゾーロと違いその生存は確実でミイラを乗せた筏が流れ着いたというニュースが報じられている。
さらに、CPがいくつか壊滅させられたという情報が上がってきており、前半の海に戻ろうとしているのではないかという噂が上がっている。
ドンキホーテ・ドフラミンゴは二代目JOKERを襲名した。彼が生み出した組織、システムを受け継いだドフラミンゴは多くの紛争や戦争に顔を出しながら、その勢力を拡大している。裏世界の王としての役割を果たしている彼の影響で、JOKERの死の影響はほとんど無かった。
『ぷるぷるぷる、ぷるぷるぷる、ガチャ。「……こちらガレーラカンパニー。んまーゼファーさん、お久しぶりです。……船の整備ですか、問題ありませんよ。……ええ、ドッグを開けさせましょう、最新型の船ですからね。うちの連中も喜ぶってもんです。ではお待ちしています」』
突然の上客からの予約に対応したガレーラカンパニー社長、アイスバーグはそばに控えていた秘書の“カリファ”に声をかけた。
「そういうことだ。すぐに誰か職長クラスを空けてくれ。誰がいける?」
カリファが手元の手帳を素早く確認する。
「カクとルッチが担当の業務をほとんど終えていますので、二人でよろしいかと」
「ああ、ならそれで頼んだ」
そう言われたカリファはすぐに社長室を離れて、カクとルッチを呼び出した。
「プランCの連絡が来たわ」
現在はほとんど使われていない倉庫の中に集まった三人の中で一番最初に口を開いたカリファの言葉にカクが目を見開く。
「……死んだのか、あの男が?カイドウ噂通りの男じゃのう」
その衝撃的なニュースに動揺しているカクを置いて、ルッチが指示を出す。
「それで、追加のミッションは与えられたのか?」
「テゾーロ氏をマクロに預けるまでの護衛よ」
「なるほどな。……今から指揮権は俺に移ったんだな」
目をつむり肩を組んだルッチの言葉に、カリファはうなずくことで肯定の意を示す。
思考を巡らしたルッチは最初の指示を出した。
「ジャブラに連絡を入れろ。ここから先、信頼の置けない同胞はいらん。長官殿には消えていただく」
その冷酷な判断を止めるモノはここにはいなかった。
「わかった。その連絡はわしがやっておく……一度戻らんと都合も悪そうじゃしな」
電伝虫が使えないような連絡である以上、直接話すことが望ましい。カクがその面倒な役を買って出る。
「彼の意思は我々が継ぐ。CP9が彼の理想を体現してみせる……闇の正義の名の下に!!」
数日後、マリンフォードやマリージョアでいくつかの事故が相次いで発生した。どうやら武器の管理に問題があったらしく責任者が首になった。
死者が複数、重傷者も多かった。その多くが高齢だったこともあり、引退するモノも多かった。
結果としてCPやマリージョアに赴任している人間などがかなりの数入れ替わった。その多くが支部のメンバーや経歴が謎に包まれているモノだったが、なぜそのような人事異動が行なわれたのかに関しては全く語られることはなく。また異論も出なかったらしい。
巨大な円柱型の水槽。いくつものパイプが繋がれたその水槽を下からいくつかの泡が昇っていく。
「おっ、いけそうだね。久しぶりにジャッジに連絡を取ったかいがあったというもの」
その光景に満足がいったのか、目の前の計器にいくつかの数字を打ち込んだ男が深く椅子に座り込んだ。
その男の鼻歌に、計器が奏でる機械音、そして中心に置かれた水槽を昇っていく水泡の破裂する音。それだけがこの研究室にこだましていた。
いったんこの話はこれにて完結となります。
もちろんここまで様々な匂わせ的な登場をしたキャラクターが中心になったこの後の話も作っていますが、そちらはまだもう少し時間をかけて推敲しようと思っています。
ここまで読んでいただいた皆様本当にありがとうございました。
つたない文章で読みにくかったとも思いますが、ここまで読んでいただいて感謝しかないです。できれば感想や評価などしていただけると次への励みになります。
最後に少しアンケートをしたいので、応えていただけるとありがたいです。
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