ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢   作:鈴見悠晴

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第二章 英雄たちの楽園
水面下


CP9、正式名称は「世界政府直下暗躍諜報機関 サイファーポールNo.9」

世界政府が保有する諜報機関“CP”その中でも特殊なこの組織はエニエス・ロビーに拠点を置いているが、ほかのCPとは違いその存在が一般市民に知られることはない。海軍本部大佐以上の地位につかなければ噂以上の情報は知ることすら許されない。CP9がここまでの機密となって居る一番の理由、それは彼らに与えられている一つの非人道的な超法規的な権限にあった。

 

それが非協力的な市民の殺害許可。非協力的というのは極論犯罪者ではなくとも殺すことができると言うことなのだ。こんなモノはいくら世界政府とは言え表に出すことができない。世界政府の持つ暗部こそがCP9に凝縮されていたのだ。さらに0から9まであるCPの中で特定の地域に根ざしていない組織はCP9だけで、CP9の人間にはどこでも情報を得ることができる諜報能力と、対象を暗殺することができるだけの優れた暗殺能力が必要とされる。つまり彼らはほかのCPよりも優秀で、頭が回る。そんな彼らが自分たちの考えで動かぬように常に彼らには優秀な人間が上司として配属されていた。しかし今の代の長官は少数精鋭の彼らの行動を限定する首輪には少々甘く、また無能すぎた。

 

本来存在しない役職、CP9長官についていたスパンダムはいつも通りオフィスで電伝虫に向かって怒鳴りつけて仕事を行なっていたが、その日は少しいつもと違う妙な違和感を覚えていた。

このエニエス・ロビーという島では多くの人間が働いており、常に海兵が見回っているはずのこの島で今日は奇妙なほどに人と出会わない。人とすれ違うことも一切無かった。いつもであれば敬礼をしてくる連中や中に報告に来たやつに珈琲を頼むのだが、それもできない。おかげで喉が痛くなってきたスパンダムは、なかなか記憶にない状況にてっきり見回りの兵士がサボっていやがると思い、怒りをため込むが吐き出す先もない。普段ならば行かない給湯室に向かい珈琲を自分で入れようかとしたときに長官室の扉が開いた。

 

「ああ、長官殿。悪いんだが、少しここで待っていてくれるとありがたいんだがな」

扉の前に仁王立ち、動く気配を見せないCP9諜報部員のジャブラになぜか嫌な予感がした。

「……ジャブラ、お前なぜここにいるんだ。今は任務中だろう?」

本来ここにいてはいけない部下の姿に、ナニカ緊急の要件かと心構えをしたとき、ジャブラが紙の束を差し出した。

「ああ、だが緊急の案件だ。俺一人でも戻るべきだと判断した。こいつを見てくれ」

差し出された報告書を少しためらいながら受け取って、躊躇しながら最初のページを開いた瞬間だった。

 

ブスリ

 

「ッは」

体を強烈な衝撃が突き抜けていった。

先ほどまで目の前にいたはずのジャブラの姿が消え、横に立っているのを理解する。

それと同時に自分の体に穴が開いているのを確認する。中から大切な何かがあふれ出していく感覚に、強く押さえ込むが止めどなくあふれてくる真っ赤な血に混乱していた頭が少し冷静さを取り戻す。

問い詰めようと大声を出そうとしたが、その声を出すこともできない。拳銃も近くにはない、最近手に入れた悪魔の実を食わせた刀のファンクフリードも手に届くところにはない。当たり前だ、ここは世界政府の司法を司るエニエス・ロビー。こんなところで武器が必要になるようなことは想定もしていない。

 

「ああ、なんてこった。どうやら事故が起こったらしい、暴発事故とはついていない」

わざとらしくつぶやいたジャブラが手についた血を拭き取ると、目の前に爆弾と内側から破裂したように見える拳銃をそっと置いた。

「じゃあな、仮にとはいえ俺たちの指揮官になれたんだ。満足だろ?最もあんたの指示を聞いたことはなかったがな。……唯一感謝していることがあるとすれば、俺たちをあの男に会わせてくれたことだ。その点だけは感謝してるよ」

そう言って立ち去っていくジャブラの後ろ姿を見て、ようやく理解した。俺は裏切られたのだと。そしてもう助かることはないと……暗殺部隊としての側面を持つCP9に殺される以上何の目撃証言も、証拠も見つからない。唐突にやってきた終わりに視界が赤く染まっていき、目の前の爆弾に取り付けられた時計の長針が12を指す。

 

爆炎と爆音が鳴り響くその前に既にスパンダムは息を引き取っていた。今回の件は世間一般にはエニエスロビーで起こったガス事故として処理された。

さらに世界政府内では一切の疑いもなく、スパンダム氏のミスによる兵器の暴発として処理され、彼の父親であるスパンダイン氏ですら今回の件を間抜けな息子の重大なミスと捉え、一切の異論を唱えることはなかった。

 

今回の件を受け、世界政府は代理でハーヴィー・デント氏をCP9長官に指名した。全ては彼の残した計画通りに……

 

では新しくCP9の長官に任じられたハーヴィー・デントとは一体何者なのか?

完全に無名の男かと思われた彼だが、実は30年以上前にだが彼の経歴は海軍にも残っている。当時、太陽の騎士と呼ばれて、海軍本部でもよく知られた海兵だった。その強い正義感から生まれるカリスマに魅了されて彼を慕うモノも多く、たいした手柄を上げていた訳ではないが、いつかは元帥へとの声もちらほらと上がっていたほどだった。

しかし彼の名前はある日突然、海軍から消えて、その役職をインペルダウン署長に変えていた。一体なぜそのような人事異動が行なわれたのかは語られることはなかったが当時一つの噂が立った。

彼は天竜人の求婚を断った。

この噂の真偽はわからないが、これ以降彼の活躍は一切といってほどに聞こえてこなくなり、20年ほど昔に起きたインペルダウン脱獄事件の責任をとり、彼は署長の職を辞した。

これ以降、彼の記録は一切残っていない。なぜ彼が復職したのか?この20年間一体何をしていたのか?全ては謎に包まれている。

 

 


 

普段使っている電伝虫ではなく、潜入任務に従事している部下達からの連絡用電伝虫が珍しく持ち主を呼び出していた。

「おーかーきー」

『あられ、俺です』

「んん、……ドレークか。何のようだ」

『最近海賊達の、特に裏側の世界で妙な動きがあります。ロシナンテから何か報告は上がっていませんか?』

「……いや特には上がっていないが。あいつも最近はなかなか連絡を挙げられないようだから遅れているのかもしれん。だがまぁ心配はイランだろう」

 

海軍本部元帥に昇進した際に与えられた部屋で電伝虫と会話をするセンゴクは、息子同様にかわいがってきた部下を心配するような様子を見せながら信頼感を感じさせる声で答えていた。

いつものように部下自慢を始めようとしたセンゴクの言葉を遮ってドレークは言葉を挟む。今回はそんなのんきなことをやっている余裕はないのだから。

 

「“海軍狩り”聞き覚えは?」

端的だが鋭さをはらんだドレークのその声はセンゴクのまなざしを鋭くさせるのに十分なモノだった。

 

「……“海軍狩り”、いやそんなモノの報告は上がってきていない。どういうことだ」

「まだ裏世界で少々出回っているだけの代物ですから、仕方ないでしょう。それよりも何も報告は上がっていないんですね。てっきりドフラミンゴ、いやJOKER主導だと考えていたんですが……」

「それで、一体どういうことだ?まさか連中、革命軍のように海軍基地でも襲おうというのか」

「いえ、現物は後で送りますが、簡単に言うと奴ら海軍や世界政府の役人に懸賞金をつけやがったんです」

「なにぃ!!」

 

その上でドレークの報告はまさに衝撃的な内容でセンゴクは衝動的に大声を出してしまい。誰かに聞かれていないかと肝を冷やして周囲を確認する。

「それもこのリスト、ただ事じゃありませんよ。新世界から、前半の海、北の海を中心に優秀な人間だけに絞られている。もしここにいる人間が消えちまったら……考えたくもありませんね」

ドレークの沈黙は今回のことの重大さを示している。本来海軍の人間がどこに所属しているかや、どういったことを成し遂げたのかなどは重要機密で間違っても一般人の手に入るようなものではない。しかしそう言ったリストが出回っていると言った以上、彼らには所属といった機密情報だけでなく懸賞金をつけられるだけのデータを入手したことに他ならない。

「大問題だぞこれは」

 

裏切り者の存在、そこに至らないわけがない。今から訪れる面倒ごとの数々にセンゴクは頭を抱える。しかも本来こういったことの調査を得意としているCPは、海賊サー・クロコダイルの手によって大きな被害を受けており、現在立て直しのさなかで今はまともに機能していない。八方塞がりのこの状況に頭痛がしてきたセンゴクはとにかく一度落ち着くことにした。その上でロシナンテから報告を受ける必要がある。

「一度切る。何かわかればまたかけ直す」

 

そう言って電話を切ったセンゴクはそのままロシナンテからの直近の報告書を探そうとするが、彼の部屋にノックが響く。

「……後にしろ」

今はほかのことを考えたくないと断ったその瞬間

「こっ困ります。いくら中将殿とは言え許しも降りていませんし」

「大丈夫じゃ、いいからのけ。おっ、センゴク、わし良い茶を持ってきたんじゃ。せんべい出せ」

引き留めている若い海兵を押しのけながら盟友ガープが入ってきた。

「……今は取り込み中だ、ガープ!!」

この時張り上げたセンゴクの声はマリンフォードに響き渡り、昼寝をしていた青雉が目を覚ましたとか、していないとか……

 


 

昔宙を飛ぶ海賊と呼ばれた男がいた。彼は当時白ひげやゴール・D・ロジャーと互角に戦い、多くを支配下に置いた。その姿はまさに支配者でいつしか海の皇帝という称号を与えられた一人になって居た。

そんな彼を船長として生まれ、一度滅んだ金獅子海賊団とやばれる海賊団は一部を除いて別の海賊団に吸収されるか独立していった。その直接の原因であるシキのマリンフォード襲撃事件は衝撃的なニュースで、船長を失った彼らの多くは元は船長だったモノも多く、トップを失った組織では次々と独立や吸収でその数をみるみる減らしていった。

 

それでも一部の忠誠心が高いメンバーは彼を待ち続けた。そしてシキが収監されたのは脱獄不可能と言われるインペルダウンだったが、彼は仲間の期待に応えて見事に脱獄して見せた。もちろん失ったモノは多かったが、この事件はシキに思考の海につかりきるのに十分な2年という時間と、環境を与えた。新しい計画を立てたシキはこれを機に表社会から姿を消した。その上、裏社会ですら名前を聞くことがなくなったシキは、裏側に詳しい連中ですら見つけることが難しい。もしくはあんなやつはもう死んだと言われるようになっていた。

 

それでも彼とのパイプを持つモノは少数だが、存在する。そんな数少ない男の一人が、使者として彼の元に送られた。

 

巨大な戦艦が一つ、宙からゆっくりと降りてきて着水する。

「やべぇ、旦那。あんた能力者なんだから中に入ってくれ」

巨大な戦艦の着水の衝撃で大きな波が起こってしまい、あまり大きくない船でここまで使者を運んできた“マクロファリンクスの魚人”マクロが慌てた様子で船首に立っている男に声をかけるが、声をかけられた当の本人は全く気にかけていなかった。

海水が船首に降り注ぐその瞬間不思議な光景が広がった。船の甲板に降り注ごうとした海水がナニカに押しのけられたかのように広がっていき、まるで海水が船を避けて言ったかのように見えた。

 

「問題ない」

端的にそう言い切った男はじっとシキの船艦を眺めると、そのままシキの乗り込もうと足を進めて、飛び移る寸前で一度足を止めた。

「感謝する、マクロ。だが、今すぐにでもここから離れるべきだ。もし交渉が決裂した際にはお前達の命の保証はない」

「そりゃ無いぜ、旦那。おれらが逃げちまったらあんたはどうやって帰るつもりだい?んん。安心しな、俺らは責任もってこの仕事やってんだ。この左胸のタイヨウに誓って同士を見捨てたりはしねぇんだよ」

能面のように一切読み取れない表情だったが、その言葉に込められた意思を確かに読み取ったマクロはその言葉を正面から否定する。元人さらい、現運び屋を自負する彼の言葉に部下の連中も併せて声を上げる。

 

「そうだぜ、旦那。俺たちゃ泣く子も黙るマクロ一味ってね。引き受けた仕事を途中でけつまくるなんてことはしねぇのさ」

「任せときな、もしもの時には俺たちが責任もって連れ帰ってみせるぜ。やり遂げるまでが仕事ってね」

 

そう告げる彼らだが、その足は細かく震えており、顔面は蒼白。それでも強がりであろうともこちらを気遣い、陽気にそういう彼らの姿と言葉に能面のような表情だった男が少しだけ、表情を緩めた。

「そうか、だがもしもの時にはお前達だけでも逃がしてみせよう」

そう言い切った男の表情はまた硬く、能面のようになったが、最初とは違いそこには決意とともに優しさが感じ取れた。

 

飛び移った先、戦艦の甲板には血の気の多そうな連中が包むように端を埋め尽くす。ただ眺めてくるだけの男もいれば、殺気を浴びせてくるモノもいる。それでもその中心を堂々と胸を張って進んでいく。

決してなめられぬように、もう既にここから交渉は始まっているのだから……

 

背後に多くの部下を控えさせて、どかりと座り込んだ奇抜な格好をした舵輪を頭に埋め込んだ男の元に足を進める。すると頭に男が手を挙げて、指を振った。するとどこからか宙を浮いてやってきた椅子が目の前にそっと着地した。

「まぁ、座れ。しかし面白い男を寄越したもんだな、一体誰の指示できた?」

「JOKERの指示だ。だがここには俺の意思できた」

「ジハハハハ、面白い。お前の意思か……聞いているぞ。そのお前の意思は本当にお前の意思か?まぁそこは良いだろう。俺には関係ない。質問を変えようか、お前はどの立場で来たんだ。世界政府か、海賊か、革命軍か」

そう聞いてくる彼はまるでからかうような態度で、周囲を囲んでいる連中もこちらをなめた嘲笑が聞こえてくる。

 

「彼の、いやDの意思を継ぐモノとして」

ここまで常に笑みを浮かべて、全く読めなかったシキの顔つきが変わる。左の人差し指を下ろすと一瞬で宙からもう一隻の戦艦が降りてくる。

「お前らそっちの船に移れ。俺はこいつとさしで話す」

そう言い切ったシキの表情は今までのおちゃらけたようななめた態度はなりを潜め、過去世界を支配するとさえ言われた大海賊としてのものが表に出ていた。そのあまりの変化に彼の部下から戸惑う声も上がったが、シキの視線一つで顔を真っ青に染め上げた彼らはおとなしく彼の指示に従い船に乗り込んでいった。

 

「くっく、ジハハハハハ。ジハハハハハ!!」

乗り移っていく部下を眺めながらついに我慢ができなくなったのかシキが大きく笑い声を挙げる。しかし、そこにあったのはこれまでのなめたような笑顔ではなかった。大海賊としての狂気を感じさせる嗤いは、あのJOKERが使えた男だということを証明するかのようで、相対していた男はそこにドフラミンゴと同じようにJOKERの影を重ねた。

 

「ハァ、あいつが残した最後の手土産がお前か。あの馬鹿らしい……さすが俺の右腕だ」

「JOKERから伝言を預かっている。聞くか?」

「ああ?、いらん。どうせろくなモノじゃあるまい」

 

そう言ったシキに男は一つの“貝”を投げて渡した。受け取ったシキはそれを一目見ただけで“トーンダイヤル”だと見抜いた彼は、捨てるようなことはせずに自分の懐にそっとしまい込んだ。

「ならそれを渡しておく。それで、協力してもらえると思って良いか?」

「ジハハハハハ、そいつは話を聞いてから決める。だが、話を最後まで聞くことは約束しよう」

 

そう言って交渉のテーブルについたシキ、彼は最大の難関を乗り越えた。

JOKERが死んだことによる影響は表の世界ではほとんど感じ取ることができなかった。しかし、水面下での動き、さらには別の戦争の誘発など誰も気にもとめないところで事件は動き出していた。この流れはもう誰にも止められない。JOKERの死はあのワノ国での戦いはきっかけに過ぎない。もう既に歯車は動き出した。一部の連中はもう気づいていた。この800年のゆがみがついに止められなく成って時代を飲み込もうとしていることを……




今回初めてDCコミックのキャラクターを登場させました。
第二章では何人かDCのヴィランを登場させようかなと思っているのですが、もしあまり出してほしくない方がいれば、アンケートのほうに回答ください。

DCキャラはあまり登場させないほうがいい?

  • どんどん登場させてほしい
  • 登場させないでほしい
  • どちらでも構わない
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