ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢   作:鈴見悠晴

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始まる混沌、会ってはならない大事件

世界政府にとって、海軍本部にとって守らなければいけない“聖地”マリージョア。本来であれば限られた人間だけが入れるこの場所に、多くの王族が集っていた。

 

唯一マリージョアの入り口とも言える“レッドポート”に海軍の軍艦とは違う船が一隻着港した。

船の名は“ホワイトタイガー号”ゼファーがその私財から建造した大型帆船で、多くの海兵がここで訓練を積み、操船を学んだ。

「ゼファー先生、こちらに制服を用意させていただきましたので」

王家護送の任を果たして船から下りてきたゼファーに新兵が駆け寄り、正義の羽織を渡そうとする。

「いらん。俺はここに海軍としてきてるわけじゃねぇ」

「しかし、先生は元とは言え大将だったお方です。是非こちらの方をお使いください」

「……新兵。お前の掲げる正義は何だぁ」

新兵を軽くあしらっていたゼファーは足を止めて彼に向き合った。

「これにはお前ら海兵が掲げる正義を刻むんだ。今の俺には必要ない代物だ」

じっと目を合わされて答えられた新兵は言葉を失い、一つうなずくことしかできなかった。

「ああ、やっぱかっこいいなぁ。ゼファー先生、お待ちしていました待合室はこっちです」

「クザン聞いてるぞ。大将として頑張っているらしいじゃないか」

「いやぁ、まぁぼちぼちです」

先についていた青雉の背中を叩きながら歩いて行くゼファーの周囲には自然と海兵達の輪が生まれていた。

「先生、復帰なさらないんですか」

「俺を何歳だと思ってるんだ。もう隠居させろぉ」

「先生、この後是非一つお手合わせ願います」

「ああ、時間があればな」

「先生」「先生」「先生」

我先にと声をかけてくる海兵には教え子達が多く、うれしそうな表情を浮かべた後に、よく教室なんかで見せた恐ろしい笑顔を見せた。

「お前ら、いったん職務に集中しろ!!」

その言葉に蜘蛛の子を散らすように散らばっていく教え子達に苦笑の笑みを浮かべる。

「クザン、これもお前の役目だぞ」

我関せずという姿勢を取っていた青雉に覇気を込めた拳でげんこつを落とす。

もう一つか二つ苦言を呈しておこうとしたが、彼の視界の端に数隻の船が映り込んだ。

「クザン、あの船は何だ?……海軍の軍艦じゃないな」

「ああ、……あれは奴隷船ですわ。何でも動く床を作るとかで、大規模な工事をしようとしてるらしく」

「……あまり見ていて気分の良いものじゃないな。いくぞ」

多少顔をしかめて話すクザンに先を促すように歩き出す。もうその船に興味は無いと態度で示した姿が青雉には違和感を与えた。しかし先生も丸くなったのかと、違和感を頭から振り払うようにクザンも足を進めていった。

 

そう言って足を進めていく彼らの背後で、レッドポートに到着した奴隷船からテゾーロが奴隷商人として姿を見せた。

「悪いね、商品の納入に来た」

そう言って書類を提示されたテゾーロに受付の兵士が明らかに嫌そうな顔をする。

「おいおい、そんな態度で良いのかよ。俺たちゃあんたの上司に頼まれて商品を運んできたんだぜ」

「チッ、さっさと通れ」

乱雑に通行許可を出した兵士を見てテゾーロが一言つぶやいた。

「若いな」

そう言って肩をすくめた彼は変装用に使っていたカツラを後ろに放り投げた。

変装を解いていくテゾーロの背後に所狭しと詰め込まれていた人間や魚人の奴隷達には、ここに送り込まれてくる奴隷達とは違う点があった。彼らの中に死んだような瞳を持つモノは一人もいなかった。よく言えば活きの良い連中、そのままを伝えれば戦意に満ちた連中はテゾーロに率いられてマリージョアに乗り込んだ。

 

世界会議一日目、この日は一切の問題も無く過ぎ去った。

しかし、王族の護衛として入ってきている猛者や、一部の海兵は何か胸騒ぎを感じていた。

そして、二日目の朝彼らの予感を証明するかのような事件の報告が上がる。

金獅子のシキ率いる海賊艦隊がマリンフォードを襲撃したというのだ。

 


 

マリンフォードにけたたましく鳴り響くサイレン。この音が鳴るのは二度目だ。一度目は約20年前、大海賊と呼ばれていた男がその身一つでここに乗り込んできたときのモノ。

そして今は……

海軍本部の上空を埋め尽くすような大量の軍艦が朝焼けをしている宙を黒く塗りつぶす。

「ジハハハハ、あのときはずいぶんと世話になった。だから今回はしっかりと部下を連れてきたぞ、さぁ、あのときの続きを始めようか。本当の海賊の恐ろしさを教えてやる!!」

上空を埋めつくす海賊たちの中でたった一人だけ船に乗らずに自分の力で宙を飛んでいる男の咆哮に合わせて、時の声がこだまする。

「今すぐに民間人を避難させろ!!、戦闘員は迎撃準備だ、急げ」

声を張り上げたセンゴクだったが、状況はまたしても変わる。突如として街のいくつかの部分で破壊音が聞こえてきた。

何体かの巨大な怪物が街を破壊しているのを確認したセンゴクは、中将クラスの人間に急いで対処を命じると自分も一際被害が大きいと思われる場所に急いだ。すでに砲弾が何発も撃ち込まれているにもかかわらず、一切ダメージを受けた様子のないあの怪物たちには今ここにいる中将達では対応が難しいということをセンゴクは理解していた。民間人を守らなければいけない海軍の長としての責務で、この場における海軍の最高戦力は封じられた。

混乱が広がっていくマリンフォードに、海賊を多く乗せた戦艦が降りてこようとするが、設置されている大砲なども海から来る想定はしていても、宙からの想定などはしていない。

どうすることもできずに顔を蒼くする海兵が後ずさりをすると、そこに一人の海兵が立っていてぶつかる。

「邪魔じゃ、のいとれ」

真っ赤なスーツに正義の羽織を着込んだ男は両腕を大きく引いて、限界まで胸を張ると、その両腕が地面が彼自身が熱波を放ちどろりとした溶岩へと変わっていく。

『流星火山!!』

すさまじい勢いで連射される溶岩の拳が降りてくる軍艦を迎え撃つ。一発でも当たれば、炎上し中には火薬に引火したのか爆発する船もある。中には無傷で落ちてくるモノもあったが、その多くが被弾しバランスを崩して無事に到着することはできていなかった。

「お前も海兵なら、情けない面をさらすなぁ!!」

宙から降ってきていた船がいなくなると、先ほど自分にぶつかってきた若い海兵を怒鳴りつける。

今の赤犬は怒りに震えていた。このようなことはあってはならない。今もまだ聞こえてくる市民の悲鳴に戦闘音、そちらの方に向かい一秒でも早く攻めてきた海賊達を根絶やしにしようと走り出したそのとき、自分の真後ろで悲鳴が聞こえた。

「そいつは無理だなぁ、こいつは知っちまったのさ。海の支配者である海賊の本当の怖さをな」

さっきまで顔を蒼くしていた海兵は、その首を切り飛ばされたのか頭部がなくなっており、もう動くことのない体は、シキが義足として使っている刀に貫かれていた。だが、先ほどまでおびえていたような表情を浮かべていた彼だが、その両手にはしっかりと彼の刀が握られていた。

倒れた海兵の手にしっかりと握りしめられた刀を奪い取ると、その刃を指の腹でなでるとシキは嘲笑うような表情で赤犬を見た。

「安物だが、しっかりと手入れされてる。きっと世界の平和を守ろうと必死に向かい合ったんだろうなぁ。きっと何度も訓練をしたんだろうなぁ。だが、残念!! 彼の夢も希望もここで終わった……どうしたサカズキ、彼を守れなかったことでも気にしているのか?」

「……そいつが死んだんは、弱かったそいつの責任じゃ。わしら海兵は市民の生活を守るため強うないといかん。わしが怒っとるんはここまで好き放題やらせた自分自身と、お前がそこの海兵の誇りを穢したことに対してじゃ!!」

沸騰したマグマの拳を振り抜いた赤犬の一撃をシキは拾い上げた刀一本で受け止めた。

「ハッ、誇りぃ。そいつで戦いに勝てんのか、この俺に勝てるのかぁ。なぁ、サカズキぃ!!」

そのまま足につけられた二刀がサカズキの体を襲う。覇気をまとった攻撃にえぐり取られていくが、体を変形させてできる限り回避し、喰らった部分もマグマで再構築することで見た目上のダメージはないに等しい。しかし、内面は違う。確実にダメージを蓄積した今の一連の攻防に、怒りで冷静さを失っていたことに気づいた赤犬はかぶっていた帽子を深くかぶり直しもう一度シキと向かい合った。

「忘れていないか、俺がここを襲撃したとき。ガープとセンゴク二人がかりでようやく抑えたんだ。今のお前はあいつらよりも強いのか?」

「20年も前の話じゃ。お前も衰えとるじゃろうが」

シキがもう一本、戦いの余波で倒れてしまった海兵の刀を拾い上げて。周辺のモノを切りつけるとそれら全てが重力に反して浮かびだした。

それに併せて、赤犬も体の体積を拡げて大地も溶岩となっていく。

主力と言える人間が全て出払ってしまっている今、普段であれば対応することができる攻撃に後手後手に回ってしまっている。センゴクも今は巨大な怪物を相手にしていて援軍もこれない。

中将クラスではなかなか怪物を倒すこともできていない。数割の連中はマグマで打ち落としたモノの無事に降り立っている海賊が暴れている。

グズグズしているわけには行かない赤犬が一気に火力を上げていく。

『獅子威し“地巻き”』

しかし、先手をとったのは赤犬ではなく、シキだった。わざとらしく浮かべた瓦礫は陽動、本命は地面そのもの。瓦礫と化した家を飲み込みながら複数の獅子をかたどった土砂が赤犬を包囲する。

『大噴火!!』

土砂のホールとなり上空からつぶさんと迫ってくる獅子を打ち破り、燃やし尽くさんとそのこぶしを突き上げる。

溶岩の拳と流れ来る土砂が衝突し、全てを燃やし尽くした赤犬が次の一撃に備えるが、彼に次の一撃が来ることはなかった。

 

いち早く倒すべきだった。せめてここで押さえ込んでおくべきだったシキが逃げたことに気づいたときにはもう遅かった。赤犬は一人マグマに焼かれた荒野に一人立ち尽くしていた。

 

必ずここで倒すという決意で挑んでいた赤犬に対して、シキにとってこれはデモンストレーション。本命は別にある。シキがここで赤犬と最後まで戦わなければならない理由などどこにもなかったのだ。

20年前のあの頃とは違う。宙を飛ぶ海賊は堂々と宙を飛んで逃げ出して見せた。

DCキャラはあまり登場させないほうがいい?

  • どんどん登場させてほしい
  • 登場させないでほしい
  • どちらでも構わない
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