ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢 作:鈴見悠晴
聖地マリージョアに似つかわしくない爆音が響き渡る。
集められている王族を守るために海兵が会議場に乗り込む。ここに集められている海兵は困難な訓練を乗り越えてきたモノだけ。
彼らは王族の避難のために緊急事態のマニュアルに従って動く。その動きは迅速で、素早く避難を完了させようとしていた。そんな多くの海兵の動きに反して動く連中がいた。
彼らはみな海兵の服装をしておらず、全員が真っ黒のコートを羽織っていた。
その先頭に立ち歩いて行く男は、荒事の前のルーティンとして吸引器を一吸いすると、もういらないとばかりにその手で握りつぶす。
その行動の意味を知っている人間は悲しみをこらえるかのように目を伏せる。
彼らの向かう先は天竜門、今彼らがいるパンゲア城のさらに先。天竜人の住まう神の地、本来海軍も立ち入れない場所にまっすぐ足を進めていく彼らの前に一人の長身の男が立っていた。
「あらら、やんなるね、どうも。悪い予感ばっかり当たりやがる。この先に何の用です?ゼファー先生」
とても悲しそうな表情を浮かべて立っているのは現海軍大将青雉。部下もつれずにここに来たのは彼の自信の表れ、そして本当にこんなことになるとは思っていなかった。
自分の恩師がこんなことをするなんて……最後まで信じられなかった。
「一度だけ言うぞ。そこをどけクザン」
右腕につけている機械の義手で握りこぶしを作ったゼファーの姿を見た青雉は自らの師をここで止めることを決意した。
「残念ですよ、ゼファー先生」
瞬間的に周囲の気温が下がっていき、パンゲア城の床を霜が覆いつくしていく。
その霜が到達する前にゼファーが床を殴り壊す。多くの破片が浮かび上がり、その瓦礫が地面につく前に凍りつくしていく光景に全員が息をのむ。
「お前らは先に行け!!俺も後から合流する!!」
「行かせねぇよ」
「邪魔はさせん」
左右に散会し奥に向かおうとするゼファーの部下たちを通すまいと壁に手をつく青雉。
瞬時に距離を詰めたゼファーが右肩から突っ込む。
海楼石でできた義腕に壁に叩きつけられた青雉だが、ゼファーの突進を喰らう前にしっかりと通路を氷の壁で封鎖していた。
しかしその壁を一瞬で破壊するものがいた。ひときわ目を引く巨体。体中につけられたチューブの数々、ガスマスクのようなマスクをつけた男が氷を殴り壊しこちらを睨み付けた。
そのマスクの奥から見える眼光からは正気を感じることはできなかった。
「先に行くぞZ」
しかしその声はとても理性的で、落ち着いている印象すら与えた。
青雉はぶち破った氷の壁を通っていく連中をただ見ることしかできなくなっていた。正確には目の前にいるゼファーから目を離すことができなくなっていた。黒いコートを脱ぎ捨てたゼファーはその威圧感を増しており、青雉は否応なしに理解させられた。ゼファーは本気でここに来ていると。
頭の裏を乱暴に引っかき回す。
「もうどうしようもねぇぞ。あんた世界政府を敵に回すつもりか!!」
「ああ、当たり前だ。やはりお前は甘すぎる。世界政府の犬の象徴である海軍大将が敵の前でそのような顔をするな、クザン!!。オハラでも、サウロの前でもそのような顔をさらしたのか」
顔をゆがめながらも反論の言葉を返すこともできない青雉にゼファーがしびれを切らす。
「俺は天竜人を殺し、既存の世界を破壊する!!俺の名はZ、さぁこの俺を止めてみろ。“青雉”‼」
その言葉に青雉の動きが止まり、彼の体をゼファーの左腕が覇気をまとって殴り飛ばした。
数メートルほど吹き飛んだ青雉だったが、彼の頭の中にあったのは自分が海軍大将に任命されたときの会話だった。
「ゼファー先生、ついに俺も大将になりましたよ」
ゼファーの自室、まるで秘密基地のようにカスタムされているこの部屋が大好きだった。
ことあるごとにここに忍び込み、さぼっていた。普段からゼファー先生は忙しく、この部屋にいることはまれで見つかりにくかった。もし見つかったらげんこつが降ってきたが、そんな時間が好きだった。
「馬鹿もん。お前なんぞまだまだ半人前よ、クザン」
「いやいや、これでも青雉って名前までもらってるんですよ」
「はっ、青雉ぃ?何をいっちょ前に。半人前が、まぁ一人前になったらそう呼んでやる」
「あらら~そいつは困った。ゼファー先生にかかったらいつまでたっても半人前だ」
「そら、昇進祝いだ。男ならこれを飲め、シェリー酒だ。俺のおごりだからぐいっといけ」
自分のことのように喜んでくれる人だった。いつも叱られて、でも嬉しそうで、良いことがあったら笑いながらシェリー酒を飲んでた。いつかこの人に認められたかった。
でも、それはこんな形でじゃなった。
立ち上がった青雉は額と口から流れた血をぬぐい、こちらを強く睨みつけてきた。強い覚悟に作られる表情にゼファーは満足げにうなずく。
「そうだ、それでいい。いい表情をするようになった」
にやりと口角を上げたZは右腕を持ち上げて覇気を込める。
青雉も能力で氷の刃を作り出す。
駆け出した二人の攻撃が交錯する。
「好き放題やってくれている。まさかこんなところにまで侵入を許すとは」
真っ白のスーツに身を包んだ仮面の男たちが、爆発の起こった場所近くで犯人と思われる人間を包囲していた。
囲まれていた連中は子供に、魚人、本当にこんなことをしでかしたのかものかもわからない。見た目だけで考えれば逃げ惑う奴隷のようにも感じられる。しかしそうではないという確信を彼らに与える人間がいた。
「死んだという報告を受けていたがな、ギルド・テゾーロ」
サングラスに紫のスーツ、金の指輪それらすべてが彼が黄金帝だということを示していた。
「まぁいい。君の反乱もここで終わりだ。我々は皆六式を収めた超人、君たちのような寄せ集めの軍隊ではどうにもならんよ」
白スーツの連中のトップの発言は的を得ていた。テゾーロの連れていた戦士たちでは、勝つのは難しいどころか不可能に近い。目の前に立ち塞がっているのはCP0、諜報機関サイファーポールの最上位に位置する彼らは世界最強の諜報機関。この間に広がっていたのは絶対的な戦力差と言えた。
もし彼らが戦うのが目の前の連中なら
「なるほど、この程度で超人とは笑わせてくれる」
白スーツのうちの数人、白いマントですっぽりと体を覆っていた連中がが突然仲間を殺すと羽織っていたマントとマスクを叩きつけた。
その下には真っ黒のスーツが着こまれており、マスクの下の素顔はCP0にとってよく知られたものだった。
「CP9、ロブ・ルッチ!!」
「ここは俺と、カクとジャブラで十分だ。ほかは急ぎ彼らを神の地へ」
ルッチの指示で手際よく動き出した彼らを止めようとCP0も動くが、その前に指示されたCP9カクとジャブラが立ちふさがる。
「いや、カク。君も彼らと一緒に行きなさい。私が残ろう。どうやら因縁の相手がいるようだからね」
「…了解です」
CP0が動き出そうとしたとき、まるで散歩に出かけるように動いたモノがいた。
カクの後ろに音もなくたっていた仮面の男がそっと肩をたたいて入れ替わると、彼の視線はCP0の一人の男に向けられていた。
「ハーヴィー・デント!! だから私は反対したんだ。こいつは絶対に裏切ると言ったんだ」
「フン。まだそんなことを言っているのかい。僕は20年前にすでに裏切っているよ」
仮面越しにでも明らかな怒りを見せる男はこの男のことを知っていた。目の前にいる仮面の男、CP9長官につい先日就任したハーヴィー・デントはゆっくりと仮面を取って見せた。
「そっちの名前は捨てたんだ。いつもみたいに呼んでみろよ。あざけるようにツーフェイスと」
仮面の下に広がっていたその姿は右と左で全く違うものが広がっていた。片側は優しい表情を浮かべた顔が、もう片側にはひどいやけどの跡が広がっていた。筋肉の筋や、歯茎までくっきりと見えるその顔に周囲のCP0が息をのむ。
「さぁ我々が、本当の超人をお見せしよう」
ロブ・ルッチのこの言葉にCPの頂上決戦が始まった。
先陣を切るのはいち早く能力を使って接近したジャブラ。人数で有利をとっているCP0は一体多数の形を崩すことなく、遠距離から嵐脚や指銃で追い詰めようとするが、ジャブラはそれを全て鉄塊で受け止める。
『鉄塊拳法』
同じ六式を修めている人間でも、その練度はそこに費やした時間と努力で異なる。特に適正の強かった鉄塊に関してジャブラ以上に向き合ったモノはいない。
鉄塊の状態を維持しながら動く。全身を鉄の塊のように硬化させているにもかかわらず、ジャブラは瞬歩で距離を詰める。この動きができるのはCPの中でもジャブラだけだ。
「ひゅう、君まだ新入りだろ。月歩に無駄が多いぜ」
明らかに練度の低いやつを選んで距離を詰めると、とっさに撃ったであろう指銃を鉄塊で受け、嵐脚で切り捨てる。
「ハッハァ、まぁ次はないがな」
確実に弱いやつから落としていく。彼の戦い方もあるが、あえて、多くの攻撃を受けながら、突進したことで全体を見たときに包囲の形が崩れていた。戦い方や普段の言動などから勘違いされがちだが、ジャブラは極めて高い戦術眼を持っている。彼の大立ち回りで崩れた包囲の穴からテゾーロ達が抜け出していく。
人数の余裕もあったのか、包囲を抜けたテゾーロ達に意識をそらした連中を狙ってルッチが動き出した。
『指銃』
一度に二人を同時に屠ったルッチは鋭い眼光を投げつけると、残忍さを溢れさせる声を響かせた。
「あと6人」
剃を使用し狙いをつけた一人の元に距離を詰める。先ほどと同じように心臓めがけて指銃を撃ち込む。
『鉄塊』
固められた筋肉に指が絡め取られ、人差し指が第一関節あたりで止められる。
「おごったな。ロブ・ルッチ!!」
鉄塊を使った男のその言葉に合わせて二人のCP0が飛びかかってきた。だがロブ・ルッチは一切慌てることなく目の前の男の鉄塊の上から嵐脚で首をたたき切ると、あふれ出る血をその身に浴びながら
『紙絵』
二人の攻撃を躱すと、すれ違いざまに急所に指銃を撃ち込んだ。
「あと3人」
唇近くについた血をなめとると、残りの獲物に目を向けた。
多人数相手の大立ち回りを続けるルッチとジャブラとは違い、CP0のボスと“ツーフェイス”ハーヴィー・デントは向かい合ったまま動かなかった。
ツーフェイスはその手に持ったコインをもてあそびながら余裕を感じさせていたが、CP0は対照的に余裕を感じさせなかった。神の地へと向かっていった連中を止めないといけない彼は自らの責務と過去の失態を前にどちらを優先すべきか決めかねていた。
「どうした、追いかけないのか?お前ならすぐにでも追いかけると思っていたがな」
「黙れ、あのとき俺はあのときお前を殺し損ねた。だからこそ今回はしっかりと殺さなければいけない」
「あのとき?一体お前はどのときの話をしている?フィッシャー・タイガーのマリージョア襲撃事件の時か?シキのインペルダウン脱獄事件の時か?それともお前が俺の妻を殺したときか?」
世間話をしているかのような態度だったツーフェイスが一気に殺意を放つ。
殺気に反応してとっさにCP0のボスが剃で距離を詰めるが、一切反応がないツーフェイスに指銃を放った。するとぎょろりと火傷の奥から見える眼球が動くと、指銃が体に穴を開ける直前に右手で受け止められた。
反撃に備えようとしたCP0の目の前ですんだ金属音が響いた。
ツーフェイスの左手から放たれ、舞い上がったコインが回転しながら浮き上がり、落下する。コインが地面に落ちるとき特有の音を鳴り響かせたコインを確認したツーフェイスは底冷えするような恐ろしい声で呟いた。
「表だ」
表に書かれた焼け焦げた女神の瞳がCP0を貫いた。
ツーフェイスが仮面の上から銃口を突きつけて、一切の躊躇無く引き金を引いた。
つけられていた仮面が割れて、その奥の額から血がにじみ出していたが、CP0のボスは鉄塊で致命傷を避けていた。
その姿を見てツーフェイスは言葉に反してうれしそうな表情で、CP0は表情に怒りを刻み込んでいた。
「何だ、死ななかったのか。さっきので死んでおけば楽だったのに……コインが示したんだ。お前は今日俺が殺す」
「何も学んでいないようだな、あのときもお前は俺を殺せなかったんだろう!!」
彼らの因縁は深く、戦いはまだ始まったばかり……
DCキャラはあまり登場させないほうがいい?
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どんどん登場させてほしい
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登場させないでほしい
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どちらでも構わない