ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢   作:鈴見悠晴

15 / 28
マリージョア 大決戦

ボロボロになったマリンフォード、そこではまだ多くの海賊が暴れていたがシキをはじめとした大物達の姿はもう既にそこにはなく、金獅子海賊団に新しく所属した海賊達がついに海兵達に倒され始めていた。

 

怪物達が倒されて、センゴクやモモンガといった強者達が海賊達を殲滅しはじめた。そんな中、赤犬はシキの姿を探していたが、彼を見つけることはなかなかできなかった。しかし、戦況はまた変化する。

 

混乱している戦場の中、マリンフォードの入り江に船が入ってきた。

本来であれば絶対に許さない侵入だったが、この混乱の中、堂々と入ってきた戦艦を、砲弾の雨を降らせるこの船を止める手段も人員もこの時のマリンフォードにはいなかった。

 

主力を中心としたシキはその船に乗り込んで、そのまま立ち去ろうとしていたが、それを許さない海兵がいた。

船の上に空気を踏みしめながら赤犬が敵地に飛び乗った。

「このまま逃がしてもらえると思うちょるンか?」

怒りと殺気を振りまきながら体全身をマグマに変えた赤犬がシキを睨み付ける。

 

視界にすら入っていなかったシキの部下が赤犬に襲いかかる。彼らももちろん覇気を修めている。しかし彼らの攻撃は赤犬の実体を捉えることができない。歯牙にもかからずに燃やし尽くされていく。

彼の立っている場所から煙が上がり始める。

「あんまり粋がるなよ若造が……インディゴ!! こいつらを連れて行け。この男は計画の妨げになる。俺がやる」

 

地上に落とされていた船が一隻、マリージョアから一気に飛んでくる。

シキの部下達が一斉に乗り移るか、海に飛び込んでいく。そんな彼らに向かってマグマの腕を伸ばそうとした赤犬だったが、その距離を介さずにシキが脚を振り上げる。

そこから放たれた斬撃がマグマの腕を切り飛ばす。

 

コントロールを失ったマグマの腕はただのマグマの塊になり、船の甲板を燃やしながら固まっていく。

シキに向き直った赤犬が意識をシキに向けた隙に、別の船に乗り移ったシキの部下達が海に飛び込んだ連中を引っ張り上げる。

 

「そいじゃ、船長行きますけど。目的地に行くためにはあんたの能力が必要ですから、ちゃんと追っかけてきてくださいね」

船首に立った科学者風の格好をした男が、シキに向かって声を張る。

 

それに応えることがなったシキだが、彼の部下達は意に介する様子もなく、一気に準備を進めて目的地に向かって走りだした。そんな彼らを見逃した赤犬は先ほどまでとは違い、マグマを大きく広げることはしなかった。煙を上げてはいるが、膨れ上がらせるようなことはせずにその拳のまま一気に距離を詰める。

 

それに対してシキが人差し指をクイと上に上げる。それに合わせて彼らの足場の甲板が浮き上がり彼らの間に入り込む。それを意に介することなく踏み込んだ赤犬が正統派の正拳突きを放つ。間に入っていた甲板の木材を燃やして、砕いて、その拳がシキも一緒に貫くかと思われたが、彼の拳をシキが受け止めていた。

 

その高温にシキの掌が煙を上げるが、そんなことを気にせずにシキが赤犬を放り投げる。

「俺の船を燃やしてんじゃねぇぞ」

「だったら守ってみんかい!!」

 

何とか空中を蹴り上げて、姿勢を持ち直した赤犬だったが、空中はシキの土俵。建て直す隙など与えないとばかりにシキが数多の斬撃を放つ。

その斬撃の密度にすぐさま赤犬は回避ではなく防御を選択する。最大限の武装色で包み込んだ両腕をクロスに組み、斬撃を受け止め船上に戻ろうとするが、それをシキが許さない。斬撃の中を突っ切ってきた赤犬に向かい大きく振りかぶった拳をぶち当てる。

 

先ほど赤犬が見せた正拳突きとは正反対に振りが大きいテレフォンパンチだが、その分当たれば効く。

互いの覇気の衝突に海が波立ち、船が軋む。

 

ガードの上からのパンチに赤犬のダメージはほとんど無いが、先ほど斬撃を受けながら稼いだ距離がなくなる。

六式を修めている人間として、海に墜ちるようなことはないがこのままだとまずいことは明白だった。思いがけずに敵のフィールドで戦ってしまっている現状に一筋の嫌な汗が背中を伝う。

 

目の前の海賊の余裕を浮かべている笑みに、赤犬は目の前の男の評価を上方修正する。海賊王ゴール・D・ロジャーに勝てず、老いた白ひげと戦いもしない。海軍に捕まってインペルダウンに収監されていて、頭に舵輪をはやしたこの男は、今もまだ獅子に例えられた全盛期に近い実力を残している。

元々やつは二刀流の剣士だった。先刻の戦闘から今もそのスタイルは変わっていないモノと考えられる。その両手に剣を持たせてはならない。

 

決意を新たに赤犬はまた、距離を詰める。ふわふわと浮かぶこの男をたたき落とし、地上での戦いに持ち込むために。チラリと陸上との距離を確認し、そちらの方に誘導しながら戦闘を続行する。

戦況はシキ有利、赤犬は空中でその実力を発揮できずにいた。

 

 

パンゲア城の一角、最初は廊下だった場所は、今では完全に崩壊してそこを中心にいくつかの壁をぶち抜いて、天井にもいくつか穴が開いていた。元は本棚や、壁、家具だったモノは完全に氷に包まれており、そこに立つ青雉は何度も殴り飛ばされて何カ所も血を流していた。しかし、彼のその動きからはダメージを一切感じさせずZは動きがどんどん良くなっているように感じていた。

逆にZは大きな攻撃は一撃も食らっていないが、どんどん過酷になっていく環境に息が上がっていく。吐く息も真っ白になり、皮膚にまで霜が降っていた。あまりに下がりすぎた気温に鉄腕の表面で水分が凍り付いて、関節部分などの動きが確実に悪くなっていた。

 

一足で距離を詰めたZがモーションの少なく、出が早い左手の突きを半身になるだけでかわした青雉に大きく振りかぶっていた右腕を叩き下ろす。それを氷の刀で受け止めた青雉だったが中に入っていた爆薬の爆発で青雉を吹き飛ばす。普通の人間なら吹き飛ばされた咲きで地面にぶつかり、壁にぶつかることは致命傷になるが、ロギア系はそうはいかない。

 

多少氷が割れてもすぐに元に戻る。そのダメージは0に等しい。追撃をかけるがZの目の前に巨大な氷の塊が目の前に迫る。

『アイスブロック パルチザン』

そこで一度追撃が止まり、防御に転じさせられる。迫る氷の槍を全て右腕で砕き落とすが、その頃には青雉は体勢を立て直している。

「止めだ」

一言つぶやいて、右腕の鉄腕を外した。あまりに冷えすぎた鉄腕が右腕を蝕んでおり、鉄腕自体の動きも鈍くなっている。これだったらない方が良い。

 

ガシャガシャと音を立てて落とした鉄腕を背後に低く腰を落としたゼファーは拳を中心に覇気をまとっていく。

先ほどまでの右腕を盾にするための右腕を前にした構えではなく、左腕を前に右腕の大きく引いた半身の構え。右腕の出所を隠して、一撃で決めるための構え。

 

黒腕と呼ばれていた大将時代に多用していたこの構えから放たれる右拳が彼の代名詞だった。

拳骨のガープ、仏のセンゴクと並び称されていた男だが、その構えから先ほどまで向けられていた殺気や圧力というのは消えていた。

 

そこにあるのはまさに無の境地。無駄な考えを一切感じさせない瞳に嫌な予感がする。

互いになかなか動けない硬直状態から、変化が生まれ始める。この気温の変化について行けていないのか、Zの吐く白い息が見えなくなってきていた。

ここで動いてしまった青雉を攻めることはできないだろう。そこにいるZの姿は意識を失っている用で、見聞色の覇気から来る情報も明らかに弱ってきていたのだから……

 

決して油断なく距離を詰めた青雉だが、彼の氷の刀は左腕で簡単にいなされた。

「許せよ、クザン。これが老獪さだ」

先ほどまで無くなりかけていた生気が一気に吹き返し、おそらく生命帰還の応用なのか一瞬で体温が戻ったのか体を覆おうとしていた霜が一瞬で蒸発する。

 

青雉が左腕をまっすぐにZに向けて伸ばす。この右拳が放たれる前に体の芯から凍らせるという覚悟を持って伸ばすがサングラスに触れる少し手前で、その腕は止めさせられた。

放たれた右拳が青雉の腹部に突き刺さった。いくつかの骨が折れる音がするが、それでも青雉は意識を手放すことはなかった。口元から血を吐き出しながらもう一度手を伸ばそうとした青雉にZがラッシュをたたき込む。

それでも倒れなかった青雉だが、その意識はもうそこにはなかった。ラッシュを止めたZに向かって倒れ込んでくる青雉を受け止めたゼファーは何度か背中を叩いた。

「よくやった、よく踏ん張ったぞ。クザン」

意識を失った青雉を人目につきやすい場所まで運んで自分の黒いコートを掛けたZは仲間達の向かった天竜門へと向かっていった。

 

 

 

天竜門、神の地へと目前まで迫りながらZの部下達はここを越えることができずにいた。

この天竜門に配備されていた最強の海兵“拳骨”のガープは裏切り者の彼らを殴り飛ばしていた。

「ワッハッハ、良い考えじゃったがここにはわしがおる。諦めろ若造ども」

その身一つでここを通ろうとする人間全ての心をおるほどの圧力を発していたガープに、元海軍中将の男すら戦う意思を放棄してしまっていたところ、一人の男が彼らの前に歩み出た。

 

「拳骨のガープ、悪いがここは通して貰うぞ」

その男を表現する言葉があるとすれば“巨岩”。とにかく大きく……デカイ。身長だけでなく肩幅、威圧感、全てがここに圧縮されたような存在感のある男がガープの目の前数メートルという距離まで詰め寄った。

「何じゃ、殴ってこんのか?」

「何だ、殴られたかったのか?」

距離が詰まるごとに緊迫感は上がっていき、お互いの挑発するような発言の数秒後、両者の拳が空を切り裂き顔面に突き刺さった。

 

上から殴られたガープはとっさに額で拳を受けることでダメージを減らした。逆にしたから殴られた巨漢はつけていたガスマスクのようなモノが吹き飛んだ。

そのマスクの下から出てきた素顔にガープだけが反応を示した。一瞬驚きを見せたガープの腹部にヤンキーキックがたたき込まれる。体重をしっかりと乗せられた一撃であいた数メートルの間合いでガープが声を荒げる。

 

「なぜお前がそこにいる。ベイン!!」

「久しぶりだな。ガープ、よくもまぁ今の今まで気づかなかったモノだな」

「お前はレベル6に収監されていたはずだ。脱獄などありえん!!」

「当たり前だ。最初から俺は収監などされてはいない」

 

短く交わされた会話。ベインの体に取り付けられているパイプのようなモノから薬剤が流し込まれていく。

目は赤く充血し、狂気をはらんだような獣の雰囲気が溢れる。

まだ会話を続けようとしたガープの懐に詰め寄ったベインがその拳をもう一度振り下ろす。

だがそのスピード、パワーそれら全てが先ほど放ったモノよりも上。同じように反撃しようとしたガープの拳が当たる前にベインの拳が突き刺さる。

 

「俺の体は実験台だ。俺の体を元に生み出された技術の数々、お前達海軍が享受するモノに他ならない」

見た目に反した冷静で、理性的なその声が天竜門前の広場に響き渡る。今の彼の会話を遮るモノは誰もいない。

「罪人の俺が外に入れるだけでありがたいと思え、だそうだ。どう思うガープ?俺は本当に咎人か?世界政府のメンツのために犯罪者にされた俺を、お前は嗤っていたのか」

「入り口がどうであれ、犯罪を犯したのは事実じゃろうが。一体お前さん一体その拳で何人殺した?」

吹き飛ばされて額から血を流したガープが複雑そうな表情を浮かべて立ち上がった。

 

「何人殺したか、それをお前が聞くのか?一体お前は何人の海賊を殺した?それに俺はどうすれば良かったんだ。あのとき死んでいれば良かったと、お前は仲間にそういうわけだ。……やめだこの話はどこまでも平行線だろう」

 

そう言ったベインの体は先ほどまでと違いさらに大きくパンプアップされていた。

ガープも今まで羽織っていた正義のコートを脱ぎ捨てると両の拳をボキボキと鳴らした。

 

ガープの突き出された右拳をベインは喰らいながら体をロックする。背後から捕まえたベインが一気に持ち上げて投げ飛ばした。頭から地面に突っ込むかと思われたところだったが、体をひねって受け身をとるとすぐさま立ち上がろうとするが、ベインがそこを狙って拳を打ち込む。

ガードの上からでも容易く吹き飛ばすその一撃にそんパワーで名をはせてきたガープの体を浮かせる。

 

ガープもやられたままでは終わらない。相打ち上等の覚悟でそのパンチをえぐりこむ。長身のベインの腹部に突き刺さった拳骨に、ベインの動きが一瞬鈍くなるとそこからは互いに攻撃を食らいながらのラッシュをたたき込み続ける。男の意地と意地のぶつかり合いの形相を呈してきた肉弾戦。その拳が止まることはない。どちらかが倒れるそのときまで

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。