ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢   作:鈴見悠晴

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復活祭

援軍として追いかけてきた多くの軍艦、六式を修めた多くの海兵が宙をかけながらシキを捉えようとしていた。

戦闘が始まった当初こそシキ優勢で続いていたが、多くの軍艦が追いついて、海兵の援護から徐々に戦況は拮抗していた。

 

到着した軍艦を浮かせて、中には海の中に突っ込まされま軍艦もあったが、海面に浮かぶ軍艦を足場とされるようになってから、シキは慎重さを見せ始めており、その戦闘は長引いていた。

 

徐々に押し込み始めているという実感のあった赤犬や海兵達は攻勢を強めていったが、シキが懐から小電伝虫を捕りだして一気に高度を上げていったシキに見つめることしかできなかった。

いくら空を翔ることができても、宙を飛ぶシキに追いつくことはできない。一気に距離を生み出したシキは何か思いモノを持ち上げるようにゆっくりと両腕を持ち上げた。

 

「時間だ。楽しかったぜ、若造ども」

シキの両腕に合わせて、軍艦に大量の海水が持ち上がっていき、振り下ろされた両腕に合わせて全てが一斉に降ってきた。

 

例え月歩を使えたとしても回避しきれない速度で落下してくる質量に、多くの海兵が呆然としてしまう。

数名の中将達が船を切り裂き、周囲の部下達を安全圏に放り投げるが、その程度は焼け石に水。月歩を使えない海兵達は海面から顔を出し墜ちてくる軍艦を見つめることしかできない。

 

「全員目を閉じて、海に飛び込めぇ!!」

動くこともできない海兵もいる中、誰よりも前に進んだ赤犬が全身をマグマに変えて、限界以上の熱量を放出し始める。彼の指示に従って多くの海兵が一気に海に飛び込んだ。中には能力者もいたが彼らも飛び込んだ。

『赤嚇新星!!』

見るモノの瞳すら焼き切るような超高温が、周囲を襲う。海の表面すら蒸発するような暑さに、降ってきていた海水も一瞬で蒸発し、軍艦も発火した。

 

搭載されていた火薬に引火して爆発を産むが、そんな船も全て溶岩になっていく。

爆炎も、軍艦も全て溶岩へと変えた赤犬がそれら全てを宙に向かって放った。

限界以上まで溶岩を生み出して、温度を上げすぎた赤犬は力尽きたように海に墜ちていった。

 

巨大な太陽のような溶岩の塊が迫ってくるシキがにやりと笑って腰に差された二本の刀を抜き放った。

『獅子・千切谷』

両手両足から放たれる無数の飛ぶ斬撃が溶岩を切り裂いていく。

徐々に徐々に小さくなっていく溶岩が、最後には50センチほどの大きさになってしまい、刀に突き刺さっていた。

 

「業物程度じゃもたねぇな」

溶岩を切り裂く斬撃を放った刀を見ると、刃こぼれなどは一切無いが刀身がゆがみ、持ち手の部分などが割れてきてしまっていた。

シキは一目見た刀を両方ともぽいと投げ捨てると、そのまま一気に姿を消した。

 

 

天竜門前の広場、ベインを中心としたZの部下達は皆取り押さえられていた。

ガープも数カ所血を流している場所はあったモノの、致命傷と言えるようなものはなく。ベインはもう身動きができない状態に追い込まれていた。

 

何カ所も破れてしまっている服を脱ぎ捨てたガープは、もう油断してしまっていた周囲の部下達を叱りつけた。

「まだ終わっておらんぞ!!」

パンゲア城の方から、一人の男がボロボロになりながらこちらに歩いてきていた。

 

「海は見ている、世界の始まりも〜♪海は知っている、世界の終わりも~」

 

どこからとってきたのか、笹のような形状をした草の葉を加えたZは不敵に笑った。

「……ゼファー、お前が、やったんじゃな」

「まさかお前がここにいるとは想定外だったぁ。お前が天竜人を守るとは」

互いの表情は対照的で、暗い顔をしているガープとは対照的にZは晴れ晴れとした表情を浮かべていた。

「だが、ここで止まるわけにはいかん。通してもらおうか」

震え始めていた右足を強く叩くと、Zは臨戦態勢をとった。

 

「わしもダメージは受け取るが、お前ほどじゃない。悪いことは言わん、投降しろ」

説得を続けようとするガープの言葉を聞かずに、突っ込んだZの拳を簡単に躱し拳を放った。

先ほどまで極寒の状況で戦っていた男の拳には普段のスピードも力も無く、自身に向かってくる拳を避ける能力も残っていなかった。

容易く顔面を捉えたガープの拳がZのサングラスを割った。

何とかこらえるZが崩れ落ちかけた体を支えて、もう一度パンチを放とうとしたのに会わせて放たれたカウンターのパンチを正面から受けて、ついにZは立ち上がらなかった。

 

CPの戦いは一方的なモノだった。

CP0に所属していた人間が弱かったわけではない。彼らも皆六式を修めたまごうこと亡き超人である。

しかし、CP9とCP0の間にあった差はそれだけ絶対的なモノだった。その差をわかりやすく示すために、道力という数字がある。これは六式の習得度などを表す数字だが、六式を使って戦う相手であれば、これは直接的な戦力差になる。

 

CP0の道力はばらつきはあれ500から1000ほど、10が武器を持った衛兵だと言われていることを考えれば、十分超人だが、この場で戦うCP9で一番低い人間ですら、2000を超えているのだ。その戦力差は絶対的なモノで、CP0はその数的有利を活かせずに死んでいった。

 

そしてその差はボス同士の戦いでも変わらなかった。

真っ黒焦げに燃え尽きた、人間だったモノの前にどかりと腰を下ろしたツーフェイスは大量の返り血を浴びたスーツのポケットから一本のたばこを取り出した。

「幸運の女神は僕を見つめた、君が死んだ理由はそれだけのモノだ。それよりも感謝しておこうか、言い声で啼いてくれた。彼の目覚めにふさわしいだろう。世界はもう一度悪夢に陥るんだから」

死体に一服しただけのたばこを押しつけて消すと、ツーフェイスは墜ちていたコインを拾い上げて周囲を見渡した。

 

「さぁ、迎えに行こうか。我々の王がお目覚めだ」

「もう既に布石は撃ってあります、後は彼が立ち上がるだけですから」

もう既に戦闘を終了していたルッチがツーフェイスに替えのスーツを差し出した。

それに着替えようとするツーフェイスの周囲を警戒したような姿勢を崩さないジャブラが軽口を叩く。

「しかし、大したお人だ。普通人間は自分が死ぬことをよしとはできないはずなんですが」

「全くその通りだね。さて、彼らと合流しようか」

何もなかったかのように歩き出した彼らだが、猛烈な血のにおいと死の気配をまき散らしながら堂々と歩いて行った。そんな彼らの行き着いた先は一つの研究室だった。

ホーディー・ジョーンズが率いる魚人と奴隷の混合軍がその扉の前でそのときを待ちわびていた。

 

ツーフェイスの到着を待っていたかのように彼が来た瞬間に扉が開いた。

中にあったのは巨大な計器とカプセル。その中には彼らが王と仰ぎ、つい先日死んだはずのJOKERが入っていた。

「到着したようだね、さぁ持って行ってくれたまえ。実に良い研究をさせてもらったよ」

扉の前で手を広げ歓迎の意を示す人間に反応しようとしたホーディーを抑えて、ツーフェイスが声を出した。

「協力、感謝しています、ドクターペガパンク。しかし彼はまだ目覚めていないように思うのですが?」

「心配いらない、先ほど意識レベルの覚醒を確認している。後数分もすれば目を覚ますよ。もしかしたら記憶の混濁が見られるかもしれないが、一時的なモノだ。それより早く運んでくれ。あまり見られたくない光景だからね。僕はこの研究施設を手放す気は無いよ。 ……ああ、JOKERにつたえてくれこれは貸し一つだ」

早口でまくし立てる神経質そうな男の言葉にうなずいたツーフェイスは一つうなずいた。

それに合わせて彼の部下達とホーディーがカプセルに歩み寄った。

 

「ほら、プリンちゃんを早く出してあげて。肉体は再建できてるけど、筋肉とかは衰えてるから君が運んでね」

カプセルの奥から一人の女性が現れた。

金髪の髪をツインテールに結んでいる、併願の女性は博士然とした格好を崩しながら指示を出していき、それに反対する人間は一人もいなかった。

「クインゼル博士、お仕事お疲れ様でした。それともハーレイクインとお呼びした方が?」

ツーフェイスの言葉ににっこりと頷いた彼女は今にも踊り始めんばかりに上機嫌だった。

「ええ、ハーレイクインと。これからはプリンちゃんと同じ船に乗れるのよ。ああ楽しみだわ、ほらグズグズしないでとっとと運びなさい!!」

大声を出したハーレイクインに急かされるままに、運びだそうとしたホーディーの目の前でギョロリとJOKERの瞳が動いた。自分の力でカプセルから這い出ると、いつもの高笑いが響いた。

「HAHAHAHAHA」

この時レッドライン上空の雲が雷雲となり一つの雷を落とした。

 

 

JOKERをつれたホーディとCP9、ハーレイクインはレッドラインにピタリとつけた一つの船に乗り込んだ。

「神の復活か、的を得ている」

その船は海軍の軍艦だったが、金獅子のシキの能力で浮いていた。

しかし船首に立ち一番に出迎えた男は船長であるシキではなかった。彼はドカリと座り込んでおり、こちらを確認すると満足そうにうなずくだけだった。

 

船首に立っている男は聖書を胸に抱えた男は能面のような顔をゆがめながらホーディーたちを見つめていた。彼はシキとの交渉を終えてからここまでの案内に、巨大生物をマリンフォードに飛ばすなど裏方として働き続けていた。世界政府に所属している暴君としての顔と、七部海としての海賊の顔、そして革命軍としての三つの顔を持つ男はいまだに自分の選択を悩んでいた。JOKERに従うことが本当に正しかったのか?彼の復活は本当に行うべきなのか?そんな不安をJOKERは吹き飛ばした。

 

たとえ一度死んでいようと、よみがえった直後であろうと、JOKERはJOKERだった。

それだけで十分である。自分の残り少ない人生をドラゴンではなく、この男にかけると決めたその時から、JOKERこそが世界の破壊者だと、信じているのだから。

 

ここにきて革命軍とも、海賊とも、別の路線を取り出したくまだが、もう彼は己の役目を果たし切っていた。ただ死んでいくだけだった彼は最後の時間を燃やし尽くそうとしていた。

暴君と呼ばれた男は自らにいくつもかけていた鎖をついに外した。手負いのくまは最後に何を残すのだろうか?

 

今回の事件は大きな被害を残した。

その最たる例は三名の天竜人が殺害されたことだろう。神の地に侵入したギルド・テゾーロの手によって多くの奴隷が逃げ出し、天竜人が殺害された。

 

マリージョアはボロボロになり、マリンフォードもまともな機能を残していなかった。

海軍の大敗北であるとともに、世界政府の敗北になったこの事件だが、実情とは違う形で世界中に報じられた。今回の事件の首謀者は元海軍大将ゼファーであると発表され、彼をはじめとしてベインや元海兵はインペルダウンに収容され、テゾーロを代表に数名の人間は処刑が行なわれた。残された人間は情報を求めて様々な取引や拷問が行なわれた。

 

無謀な犯罪者を倒したという情報規制が行なわれたが、1社だけ真実とともにJOKER復活の報を世界に伝えた。

世界経済新聞社。彼らの記事は飛ぶように売れ、JOKERの復活は世界中に広がった。

 

この新聞の三面に書かれた記事を誰も気にしていなかった。

「ハハッ、こっから先が新世界か……お前らいくぞぉ」

彼らが掲げた海賊旗にはスペードが描かれていた。




これで第二章は完結となります。
次回が最終章になりますが、こちらはまだプロットだけになりますので、少し時間がかかります。
ゆっくりとお待ちください。
評価、感想が作者のやる気を掻き立てますので是非お願いいたします。
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