ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢 作:鈴見悠晴
悪夢の始まり
とても優しい
彼は、いや彼女もだ。
アイツラはあまりにも無知だった。なのにいっちょ前に善人を気取り、自分たちは人間だ、人間の生活をするべきだとほざいた。人間の生活も知らずに、自分たちを人間だと思い込んだ奴らは純粋培養の天使だった。
溢れる金と、権力。人間の悪意で育てられた俺達が
これまで向けられたことのなかった人間の悪意や敵意。庇護を失った俺たちは全てを失った。力、権力、財力、それら全てはそろっていて初めて意味をなす。高い、高い授業料を払って、俺が墜ちてから最初に学んだことだ。
そんなときだった、あの男と出会ったのは。あの男はそんな俺と同じ目線で語り、イカれた目標を肯定した。
アァ、悪酔いをした。立ち上がろうとすると足下がふらつく。バランス感覚を失っている。そのままソファに倒れ込んで、サングラスの奥の瞳を閉じる。眠ろう、今日はきっとよく眠れるそんな気がする。
意識を失っていく中で、誰かが黒いコートを掛けた。
「んん~、こんなところで死んでくれるなよぉ餓鬼ぃ。掃除が大変だからなぁ HAHAHA」
首根っこのあたりを捕まれて、持ち上げられる。街のチンピラにやられて痛む体を荷物のように雑に運ばれる。
俺をつかんだ男は周りにぶっ倒れているチンピラどもを躊躇鳴く踏みつけながら、ボロボロの病院の廃墟に向かって歩いていた。
「兄貴!!」
倒れていた連中の仲間か、何人かのチンピラが踏みつけられている仲間を見てこちらに声を荒げてやってこようとしたとき
「おい、てめぇ何してくれてんだよ!!」
「……うるさい連中だな」
『ドグン!!』
ため込まれた圧が一気に解放されたような
そうだ、これはあいつとの出会いだ。今思い返すと散々だ。いや、あの頃から最悪だと感じていた。だが、あいつはなぜか力をくれた。
スラム街の中でも決して近づいてはならないと言われる廃墟群、巨大な病院の廃墟を入り口としたそこはとある海賊のアジトだった。
彼らはなぜか俺達家族に手を出さなかった。ただ嘲笑い、時には残飯を寄越すこともあった。俺たち家族はあいつらのアジトの近くに住まいを構えていた。
彼奴等のアジト辺りに居るとチンピラなどにも手を出されにくい。元天竜人の俺たちは海賊の恩恵を受けて何とか命を繋いでいた。しかし、ついに母が息を引き取った。
殺されてもいい位の覚悟を決めて俺はあいつの元を訪れた。俺はナニカがほしかった。このくそったれな世界をぶっ壊せるナニカを。そんな命知らずな俺をあいつは嗤ってもてなした。
「HAHAHA、力が欲しい?なかなか強欲だなぁ、だが気に入った。この手をつかめばお前はもう戻れないぞ、さぁどうするMR.ドンキホーテ」
しっかりと握った俺の手を握り返し、不気味な笑みが三日月を描いた。
「お前はどうやら運が良い。悪魔の実を知っているか?」
あいつは俺に力をくれた、だがそれ以外には何もくれなかった。悪魔のように嗤うあの男は俺にマリージョアへの道を見せた。
「マリージョアに行きたいぃ。なかなか面白い戯れ言だな、試しに父親の首でも見せればどうだ?裏切り者の首、プライドの高いバカどもは喜びそうじゃないか。HAHAHA」
だが、見せるだけで、手を貸すことも何もなかった。
それでも俺は恩を感じていたし、漠然とあいつの船に乗るんだと思っていた。
「力の使い方も知らん糞餓鬼は俺の船にはいらねぇ。せいぜい力を磨くがいい。HAHAHA、契約を忘れるなよ。HAHAHA」
そう言ってあいつは俺が乗るのを拒否した。ここからの数年、ただただ退屈な日々を過した。
俺はあいつの懸賞金の額が上がっていくのを新聞で知るだけになった。平和で、退屈、あいつは全ての敵対勢力をすりつぶして去って行った。もうこの街にも、この国にも、
その一方であいつの一味は常に時代の中心で大暴れをしていた。そこには混沌があった。生の実感を感じさせる衝動と復讐、世界の破壊がそこにはあった。
あいつが作る混沌を俺は見ているだけでいいのか、俺が世界をぶっ壊すんだ。
あの日に自分を動かした熱が、あの廃墟に足を向けさせた熱がもう一度俺を突き動かした。
「フッフッフッ、JOKER。俺はあんたの残した椅子はいらねぇ。俺は傍観者でも、役者でもない。そこは俺の場所だ!!」
磨きぬいた能力に覇気、圧倒的なカリスマ。ノースブルーをすさまじい勢いで席巻し、落ちた天夜叉が時代の中心についに舞い戻った。
天夜叉 ドンキホーテ・ドフラミンゴ 懸賞金 5000万