ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢   作:鈴見悠晴

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海賊とは

ジンベエ達、魚人海賊団の地上の拠点として使われている無人島の砂浜にジンベエと副船長兼船医を務めていたアラディンが座り込んでいた。

 

海を無言で見つめているジンベエの体には包帯が巻かれており、かなりひどい状態だった肩口の傷もようやく塞がってきていて、時間の経過を感じさせた。ジンベエは自分の立場に縛られて、魚人島に帰れずに地上で傷を癒やしていたが、それもプラスにつながっていた。ゆっくりと考え直す時間を与えられたジンベエはこの島に来てから長く保っていた沈黙をようやく破った。

 

「わしらは間違えたのかもしれんな」

「間違えないようなやつはいない。間違えた上でどうするかが大事なんだ。タイの親分は人間と敵対したが、不殺の心得は破らなかった。マクロも人攫いになったが、今では奴隷達の多くを保護してる。俺たちも今から何をするのかが試されてるのさ」

 

副船長として、ジンベエとの関係性も長いアラディンは、彼が何を考えているのかをなんとなく理解していた。その上で彼が自分なりの答えを出すときまで待っていた。アラディンの言葉を聞いたジンベエは深くうなずいた。

 

「今更生き方は変えられん。タイの兄貴の意思も、オトヒメ王妃の意思も知ってる以上このままやらせてもらう。何よりわしらは海賊じゃ。好きなようにやって何が悪い」

吹っ切れたような表情のジンベエを見て、満足げな表情を浮かべた。そんな彼らの雰囲気を察したのか、周囲で伺っていた連中がジンベエによってきた。自然に人が集まってきて、笑い声が起こる。これも一つの海賊としての才能。

 

この場において人一倍その才能を持っていたのはジンベエともう一人。王の血統を持つ男はジンベエが悩み抜いている間にタイヨウの海賊団の面々に完全に溶け込んでいた。

「ようやく吹っ切れたようだな」

魚人達と一緒にやってきたエースは不敵な笑みを浮かべており、何人かの魚人と一緒に酔っ払っていた。

「ああ、迷惑をかけたのお。お前さんら結局船はどうするんじゃ?」

 

そう問いかけるジンベエに対して、アラディンが苦笑しながら答えた。

「実は連中の船はあるんだ。こいつらがJOKERに殺されかけた島の沿岸に放置されてたらしい」

「そうか、それならわしらはこの後魚人島に戻ろうと思ってるおるから、ここでお別れじゃのう」

そういうジンベエの目の前にエースは酒瓶を置いた。

「釣れねぇこと言うなよジンベエ。俺はこの後JOKERと戦いに行くつもりだ。お前はどうする?」

挑発的に笑うエースの視線はジンベエをまっすぐに射貫いており、ジンベエはそこにこれまであってきた偉大な海賊達の姿を重ねずにはいられなかった。

 

「わしは七武海の上に、魚人島からあまり離れられん。わしらと同盟を組んでもあまり利点はないぞ」

「利点だの、何だのとつまらねぇこと言うなよジンベエ。俺はお前がどうしたいのかを聞いてんだ。俺はお前が気に入った。だからお前と一緒にやりたい、お前はどうする?」

沈黙を続けるジンベエにエースがたたみかける。

「あんだけやられて簡単に引き下がれんのかよ?」

その言葉にジンベエが置かれた酒瓶をとって一気にあおった。

 

「JOKERと戦うことに関してだけじゃ」

そう言って酒瓶を空にしたジンベエを見て満面の笑みを浮かべたエースは両手を掲げて叫んだ。

「宴だぁ!!」

その言葉にスペード海賊団だけでなく、タイヨウの海賊団のメンバーも大きな歓声を上げた。ここにまた一つの海賊同盟が組まれた。

 

 

JOKERのアジトの一つ夜島。通称”ゴッサムシティ”。ここは異様な雰囲気を持つ島、島内には法律なんていうものはない。毎日のように犯罪が起こっているが、異常に活気があって、住人の表情には笑いが見て取れた。この島は夜島と呼ばれるが、気候として太陽の光が届かない島というわけではない、しかしこの島は常に暗闇に包まれている。空は常に黒煙に覆われている。

 

この島は一言でいうと異常な島だ。埋め立てに次ぐ埋め立てで、いびつに膨れ上がっていった結果、ログポースも少々ずれ、島全体に十棟ある巨大な工場から吐き出され続ける黒煙が空を常に飲み込んでいる。

そんな島の中心にある通称一番プラントの一室。電伝虫に向かう一人の男がいた。

 

「HAHAHA、結局見つけられなかったのか?ニコ・ロビンを生かしきれない、お前には彼女は過ぎたおもちゃだったな」

「ふん、たどり着けない程度の情報しか与えていないんだろう。だがこっちはこっちで分かってるんだよ。その島は渡してもらおうか」

 

電伝虫の向こう側落ち着いた声で話すクロコダイルの言葉に満足げに嗤った。

 

「そこまで理解できるとはな。だが想像力が足りてないんじゃないか?ほかの古代兵器はともかくとして、戦艦はそこまで放置されては持たないんだよ」

「クハハハハ、ごまかすなよ、現物があれば設計図なんていらない。お前のことだもう造船を始めてるだろう?」

クロコダイルはしっかりとJOKERを理解していた。JOKERはJOKERでこの掛け合いを楽しんでいた。

 

「少し昔話をしよう。プルトンは世界を破壊しうる戦艦だったが、作るのには細心の注意を払われた。世界最高の船大工たちをわざわざ別の島に連れてきて建造させた。お前の想像通りこの島はプルトンのために作られた島だ。木を隠すなら森の中、結局誰も見つけることができなかった」

「あんたが知識を持ってた理由は、現物を持ってたからだ」

「その通り、よく理解してるじゃないか。だから俺はこの島を隠さないといけなかった。失われた知識の再現もしなければいけなかった。わざわざ俺のプラン通りに動いてくれて感謝するよ」

 

にんまりと笑うJOKERは電伝虫の向こう側のクロコダイルの姿を想像できた。

「だからこそプルトンは俺がいただく。首を洗って待ってろ」

 

深い笑みを浮かべたクロコダイルは電伝虫をたたき割って通話を終えた。反応がなくなった電伝虫を持ったままJOKERは大きく嗤っていた。

 

金獅子のシキはかつて古代兵器を求めていた。だが、今は無理に手に入れる必要はないと考えていた。この20年間で作り上げた技術力はまさに古代兵器に匹敵していた。

確かにプルトンほど完全なものでも、ポセイドンほど思いのままに動かせるものではないが、怪物を自在に襲わせる今の力があれば古代兵器は必要がない。しかしあるに越したことはないし、情勢を読めない馬鹿と情勢を読まない、いかれ野郎に渡す必要はない。

自分の元部下は後者、海軍なんかは前者。ちょうどいい程度に頭が回り、寝首をかこうとしてくるぐらいがちょうどいい。

 

ドフラミンゴが率いる船に、一人の客人が訪れていた。

「旅行するならどこへ行きたい?」

「フッフッフ、悲しいねぇ。必死に使えてきたつもりの主にこんな仕打ちを受けるとは」

「若‼ 今すぐ離れてくだされ」

突然現れた暴君くまに臨戦態勢に入る多くのクルーだが、当の本人たちはどこ吹く風。ドフラミンゴは右腕を少し上げるだけでその騒ぎを沈めた。

「悪いが旅行に行ってる余裕はない。だが、しいて言えば…JOKERが根城にしてる超巨大人口プラントに連れて行ってもらおうか」

「俺はお前をそこに連れていく許可は受けていない。だが、伝言は預かっている。結局お前は過去にとらわれた哀れな道化だ。家族ごっこを強いる部下、嫌悪する父親とは正反対のボス、そして失った天竜人の地位。それらすべてがお前を縛る。組織で遊ぶことはできても、使うことはできない。いかれたふりをしてもお前は結局そこどまりだ」

くまの言葉に徐々にドフラミンゴの眉間にしわが刻まれていく。

「以上だ。あの男はお前に失望したんだドフラミンゴ。我々はお前を敵視していない、好きにすればいい。…ではさらばだ」

ドフラミンゴは何も言わなかった。何も言わずに立ち去っていくくまを見送った

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