ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢   作:鈴見悠晴

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崩れた均衡

新世界の入り口に拠点を構えているもモリアは、最近頭を悩ませていることがあった。

反抗的なルーキーどもが、自分たちの縄張りで計画的だと思わせるような動きで暴れているのだ。こんなことは自分が支配し始めてからこれまでなかったことだ。こういったことが突然起こるようになったということは、何らかの第三者的な介入が考えられる。

 

現在敵対関係にある連中は多いが、こういったからめ手を使ってくる人間は限られる。例えばカイドウはこういったからめ手は使わない。

そのうえ前半の海からやってくる連中に、大きな影響を与えているところからも大きく絞り込める。

 

前半の海に大きな影響力を持っている組織を作り上げた男をモリアは知っていた。

それと同時に、その男はもうすでにその組織を放棄しており、現在その組織を運営しているのはかつての伝説、金獅子のシキその人であることを……

 

 

 

ゴッサムシティに一つの爆音が鳴り響いた。

海沿いに設置されていた6番プラントで火災が発生し、普段の黒煙とは違う煙が上がっていた。

スペード海賊団と魚人海賊団は一気に攻勢を仕掛けてきた。本拠地に直接乗り込んだ彼らは、JOKERの拠点だったプラントを一つ破壊した。

「よし、宣戦布告はこんなもんでいいか」

「少々やりすぎたかもしれんのう」

両船長はこの騒ぎの先頭に立ちながら、戦闘の余波が残る場所を後にしていた。

 

彼らはここで二手に分かれて別行動をとった。彼らの狙いはJOKERの首だが、馬鹿正直にこのまま突き進んでいっても、簡単にたどり着けるものではない。そのあまりの戦力差をひっくり返すために、彼らが選択した作戦はいわゆるゲリラ作戦といわれるものだった。

この作戦の最大の利点は、人数が減り数の暴力で押しつぶされる可能性が増すという点以上に、両者が全力で戦えるという点にあった。火拳のエースの異名の通り体を炎に変えて戦うメラメラの実の能力者。彼の最大の弱点は水であり、水源の近くでの戦闘ははっきり言って得意ではない。

 

逆にジンベエに代表される魚人たちは水源、水中での戦いを得意としており、エースとはある種真逆の存在なのだ。互いの弱点を補える存在だというと聞こえはいいが、ともに行動すると相手を苦手分野に引きずり込みことにつながりかねない。

 

そこでエースは陸路で、ジンベエは川などを使って水路で一番プラントを目指すことにした。人工的に作られたこの島は水路なども完全に計画されてk作られており、中央の一番プラントから広がるように島全体にいきわたっていた。

 

彼らの侵攻はほとんど抵抗に遭うことなく進んでいった。彼らの実力や作戦の影響もあったが、裏側ではこんなことも起こっていた。

 

「クハハハ、てっきり本人が来ると思っていたが……俺が甘く見られているのか。それともお前達が信頼されているのか?お前らが捨て駒にされたという考えもできるな」

「アハハハ、プリンちゃんとのデートを邪魔したうえにその口ぶり、楽に死ねると思うなよ」

「ハーレクイン、お願いですからおとなしくしていてください」

 

小さな島に多くの海賊達が集結していたが、多くの有象無象は動くことはもとより呼吸にすら気を張っていた。

自分たちの強さに自信を持っていた彼らだが、そんなモノは何の裏打ちもされていない薄っぺらいモノだと理解させられていた。

 

圧倒的な覇王の風格、ただそこに存在するだけで周囲の全てを飲み込むような存在感。

口角を上げて笑う男のその姿に魅入られた彼の部下だったが、新世界という場所の異常さと、世界の広さを感じていた。彼らと相対する海賊団の前に立つ二人の海賊はクロコダイルと比べても見劣りしない存在感を持っていた。

 

金属バットを振り回す女もすさまじいモノがあったが、それ以上に恐ろしかったのが冷たい声でハーレクインを抑えたツーフェイスだった。

 

彼の外見の与える圧迫感ももちろんあっただろう。しかし、それ以上に彼がまとっていたどこまでも底冷えするような殺気は、見るモノ全てに根源的な恐怖を感じさせていた。

 

「君を相手に手加減をする気は無い。クロコダイル、彼と敵対したんだどうなるかわかるよな」

「初めてお目にかかる、太陽の戦士ハーヴィー・デント。JOKERへの土産としてはお前の首はちょうど良さそうだ」

 

クロコダイルが能力を使って足下が砂漠になっていき、周囲の雑兵達が逃げだそうとする雰囲気の中ハーレクインがデントに声をかけた。

「ツーフェイス、私はここで見てるからさっさとかたづけてね」

その声音は緊張のようなモノは一切感じさせなかった。

 

「ええ、できればあなたにも逃げておいてほしいのですが」

「別に良いでしょ。それともJOKERに見せたくない切り札でもあった?」

「なるほど、仕方ないですね。ではしっかりと報告しておいてください」

 

軽い掛け合いの後ツーフェイスは手袋を深くつけて、両手を強くこすりつけた。

すると手袋の表面が炎をまとっていた。炎の光に照らされて火傷でボロボロになって居る半身を照らす。

 

「あんたが悪魔の実の能力者だとは知らなかったな」

「俺は悪魔の実の能力者なんかじゃない。ただ炎に魅せられたモノだよ」

「そうかい、『砂嵐』」

 

会話を無理矢理に打ち切って放たれた砂嵐が戦場に現れる。

そこにツーフェイスが両手の炎を放った。炎が風に煽られてその火力を増していく。砂嵐だったモノが火炎嵐へと変わり、巻き上げられていた砂がガラスへと変質し、地上へと降り注ぐ。

逃げ切れていなかった海賊達の頭上から降り注ぐ赤熱し、ガラス化した砂に悲鳴が上がる。

 

砂嵐で一気に姿を隠したクロコダイルが一気に上空から距離を詰める。

『バルハン』

触れるモノの水を刈り取る三日月のカマがツーフェイスに迫る。見聞色で位置を把握していたデントはその振り下ろされる勢いのままクロコダイルの体を地面に叩き付けた。

その際に一切腕はもちろん掌にも触れることなく襟や体に添えられただけの腕で投げ飛ばされたため、デントの体から水分が失われることは無かった。

 

体を砂に変えて一瞬で体勢を立て直したクロコダイルの目の前にデントがほぼゼロ距離で立っていた。

『焔 柳』

右腕と襟の部分を燃えている腕で捕まれたクロコダイルは自らを焼こうとする炎から逃げようとしたが、砂に変わることはできなかった。武装色で包まれた腕に捕まれた彼の体は変化できず、間違いなくその熱に焼かれていた。

 

捕まれていなかった左腕で攻撃を行なおうとしたが、彼の腕がツーフェイスの体に触れることはなく、体は宙を舞った。能力と暴力で戦ってきたクロコダイルにとって自らから最も離れた戦い方に自分のリズムを失ってしまっていた。地面に寝転ばされたクロコダイルの上に馬乗りのような形で乗ったツーフェイスは両腕をクロコダイルの腕のあたりに添えた。

『六王銃 焔』

徐々に手袋からスーツの襟まで広がってきていた炎が衝撃波とともに霧散した。

 

衝撃波とともに熱波が人体を叩く。体内の水分が飛んでいくような感覚とともにクロコダイルは全身の臓器が非常事態を告げているのを実感していた。何年も前に白ひげにやられたときもこう言った震動にやられた。

初めての手痛い敗北を思い起こさせた事がクロコダイルの逆鱗に触れた。

 

クロコダイルの体が触れていた地面がすさまじい勢いで砂漠化した。

その勢いで下から振り上げられたクロコダイルの腕を掴もうとしたツーフェイスだが、その判断が間違っていたことをすぐに理解させられる。その腕はもう既に腕ではなく砂の刃へと変わっており、掴もうとしていた腕ごと袈裟斬りに切り裂かれた。

『金剛の宝刀』

クロコダイルの持つ技の中でもかなりの切れ味を誇る一撃だったが、その一撃を受けてもツーフェイスに大きなダメージを与えている様子はなかった。

 

「そのスーツ、一体何でできてやがる」

舌打ちをつきながら悪態を吐くクロコダイルは眉間にしわを寄せながら口元の血を拭った。

「たいした切れ味だ。しっかりと切り裂かれている」

「痛みを感じてい無いのか?この化け物め」

自分の手応えに反した態度についたクロコダイルの悪態にツーフェイスが心外だと言わんばかりの返答をした。

「私ほど痛みを感じている人間はいないよ。こちらの火傷で皮膚を失った私は風が吹くだけで激痛を感じている。この戦闘でもそうだ、能力者でもない人間が炎を待とうと痛みや熱どころの騒ぎじゃない。だがそれは私を止める要員にはなりはしない。それだけのことだよ」

そう語るツーフェイスの顔に写っているのはまさに狂気の嗤み。もはや彼は自分の生きる理由を果たしている。

今の彼は死に場所を探している戦士なのだ。“もうどうあったとしても彼の望みは達成される”故に今の彼は死ぬことに恐怖を感じていない。肉体的なダメージも精神的なダメージも今の彼を止めることはできない。

彼を止めるためには彼を殺すしかないのだ。

 

「厄介な怪物だ」

そんな怪物を前にしてもクロコダイルの余裕は消えていなかった。

本当の強者同士の戦いで痛みを感じないなんて事はあり得ない。それはロギアといえども例外ではない。

まさしく乗り越えてきた視線の数が違う。砂漠の鰐は不適な笑みを浮かべて魅せた。

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