ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢   作:鈴見悠晴

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激戦

ツーフェイスのまとう炎はエースのメラメラの実のように能力で生まれているものではない。彼の炎はそんなものよりも恐ろしいものだ。

彼の着ているスーツやはめている手袋は特殊な素材でできている。切れにくく、破れにくい。前線で戦う海兵に向けて作られた特殊な繊維を使われたこれらの衣服は、ツーフェイスの武装色にまとわれ続けたことで若干特徴が変質してきていた。

 

彼の手袋は何人もの人間を殺してきている。合気道を使う彼の戦闘は素手で行われる。重機や刃物をほとんど使わずに肉体のみで戦う彼は、何度も人間の心臓をその手でつぶしてきていた。

人間の血を吸いこんできたその手袋の色は最初の白さを感じさせないほどに真っ黒に染まっていた。

 

人間の油がしみ込んだその手袋はまるで殺された人間の怨念を燃やすかのような炎を上げていた。

 

 

クロコダイルとツーフェイスの戦闘はまさにこの世の地獄の様相を呈していた。舞い上がる砂嵐が次々にガラス状に変化していき、炎が地面を覆いつくしていく。

ゼロ距離での戦闘が続くが、軌道をそらされた砂の斬撃が地面を切り裂いていく。炎をまとった拳が体内に振動を響かせ、表面を焼いていく。

 

「何度も何度も、バカの一つ覚えか!!」

クロコダイルは苛立ちをそのまま吐き出すと、ここまでの戦闘で砂漠化していた大地から砂を触れることなく持ち上げた。

「正面からねじ伏せてやろうと思っていたが、気が変わった。人間にはどうしようもないことがあると言うことを教えてやる」

その言葉とともに浮き上がっていた砂が更に多く、地形を変えながら、クロコダイルの足場までも盛り上がっていった。クロコダイルを追い抜いて砂だけが高く、高く浮き上がっていくと重力に導かれるままに地面へと降り注いだ。

「砂雨。体についた砂、一粒一粒がお前の動きを制限していく。どれだけ技を磨いても、命を燃やしても降り注ぐ雨全てを躱すことはできない」

 

「紙絵」

体の構造を限界まで理解し、相手の行動を読み切ることで初めて使えるようになる六式の一つ紙絵だが、この技も降り注ぐ雨全てを避けることはできない。

一つまた一つと砂の雨がツーフェイスの体を縛っていく。一秒ごとに体の動きが鈍くなり、その動きが制限されていく彼にクロコダイルの砂の刃が振るわれる。

 

「貴様の炎は自らの体から離れることはできないんだろう。風で燃え広がることはできても、砂を燃やすことはできない」

能力者特有の世界の理屈にも縛られない戦い方に、ツーフェイスが押されていく。しかしクロコダイルの攻撃も致命傷にはなっていなかった。凶悪な一撃は間違いなくその体を捉えているが、武装色に鉄塊を合わせた防御は簡単には破れない。

 

積み上げられた強さには厚みがある。場数と研鑽により完成したツーフェイスの強さは動きを制限されたとしても失われるものではなかった。

 

確実に追い込んでいる状況ではあるはずだが、なかなか最後の一撃につながらない。

仕留めきれない現状にクロコダイルは苛立ちを見せる。雨あられと打ち寄せてくる技の数々を避けて、喰らって、一歩づつ進んでくるツーフェイスにいくつかの砂の球体を投げつける。

 

回転しながら進む砂の球体はツーフェイスの近くで爆発した。

飛び散る砂にと広がる衝撃波でツーフェイスの歩が止まったが、それ以上に一つ目を引くことがあった。

この戦闘を静かに見守っていたハーレクインがついに動いたのだ。

 

「いい加減に時間切れだよツーフェイス。アハハハ」

ツーフェイスとの戦いに集中していたクロコダイルの背後から振り下ろされたハーレクインの釘バットは見事に空を切った。

 

「あらら?」

「バレバレの気配、ダダ漏れの殺気、全てが落第点だ」

攻撃が迫る部分だけを砂に変えて攻撃を回避したクロコダイルはハーレクインを仕留めんと、三日月の砂の鎌が振り下ろされた。

 

「いくら何でも不用意すぎ。何の対策もしてないはずないじゃない」

クロコダイルの振り下ろした鎌は間違いなくその水を刈り取ったはずだった。しかしハーレクインの体はミイラ化することなく残っていた。

 

「あなた一度に吸い取れる水分量には限りがあるんでしょ。この服わざわざ水をしみこませてきたんだから」

クロコダイルの腕は水分を吸い取り、乾きを与えるが限界はある。

その限界量を超える水分にクロコダイルの動きが一瞬重くなる。その隙を逃がさずにツーフェイスが詰め寄る。

 

叩きこまれる打撃にクロコダイルの体が宙を舞う。

着地の前に全身が砂になり、全身を再構築して見せた。確実にダメージを抱えているはずだが、それを感じさせずに葉巻をふかした。

「重水か。なかなか考えられている」

「正解。これで仕留めるつもりだったんだけどな」

「今の一連の流れで仕留められなかった代償は大きいぞ」

 

彼らの戦闘は数年後にも語りづがれるほどの大きな戦闘になった。この島からは完全に草木が失われ、土地のほ飛んだが砂漠と化した。

一部では土地がガラス化しており、非常に美しい光景が広がっていたが、そこにたどり着くためには強力な毒ガスなどがたまっている地帯を抜ける必要があるために見ることができたものは少なかった。

 

 

ゴッサムで暴れながら進んでいくジンベエは今回の作戦で自らがおとりにさせられていることを理解していた。

水路を上っていく形で進行している以上、陸地で進んで行っているエース達よりも捉えやすい。そのことをあいても理解してきたのか、間違いなく追っ手が増えてきている。

「そろそろまずいだろうな」

「遅いぐらいじゃ、ここまでこんかった以上なんか会ったと考えるべきじゃろうな」

アラディンの言葉に目を閉じたまま答えたジンベエは、何かを感じ取ってゆっくりと立ち上がった。

 

船からゆっくりと下りてきたジンベエの前に一人の男が立っていた。

「失礼、少々騒ぎ立てそうな連中が多かったため、先に動かせてもらった」

聖書を抱えたその男をジンベエはよく知っていた。何度も顔を合わせてきたその男だが、これまでには見たこともないような表情を浮かべていた。

「こりゃまたずいぶんと楽しそうに笑うのう、くま。それともそっちがお前の本性か?」

「そうか、俺は今笑っているのか。だが、お前の言葉は的を得ている。ジンベエ、お前もずいぶんとすっきりした様子だ。憑き物でも落ちたか?」

 

世界政府が認めた実力者同士の衝突は

 

「それで、先を通してはもらえんかのう」

「お前らしくない言葉だ、ジンベエ。答えは決まっている、さあ殺し合おうか」

 

至極当然に始まった。

 

戦闘の狼煙を上げたのはくまの口から放たれたビームだった。

そのあまりの破壊力で爆炎が上がる。想定外の攻撃にジンベエも驚いた様子を見せたが、くまのビームの狙いが完全には定まっていないことに気づいた。

(威力と速度はたいしたもんじゃが、狙いは甘めじゃのう。使い慣れとらん感じか?決めつけは危険じゃが、これなら当たらんわい)

 

川の水が一気に蒸発して水蒸気が発生する。視界を奪われたくまにジンベエが水蒸気に紛れて近づいた。しかし、くまの首がグインと周り、視界から外れていたはずのジンベエの報を向いた。

「残念だったな見えているぞ、ジンベエ」

機械的に光る真っ赤な目がジンベエの体を貫いた。

 

普段のジンベエであれば喰らわなかったであろう一撃がジンベエの体を貫いた。

その赤い瞳にやられたのか、不可解な動きに意識を持って行かれたか、それともビームを恐れたのか、おそらくそれら全てだろう。意識がくまの顔付近に意識が集中してしまったそのときに、掌から放たれた空気がジンベエの体を叩いた。

 

強者との戦いを何度も経験してきた連中は皆痛みというモノを知っている。

だから彼らは痛みを堪えることができる。しかしそれはわかっているからだ。わかっているからこらえられる。わかっているから耐えられる。

 

ではわかっていない攻撃は?耐えられないのか、否。攻撃の威力などの不確定要素に左右されるが、それでも耐えるモノはいる。いつだってそうだ。いつの時代も、最も恐ろしいのは覚悟を決めた連中で、時代を変えるようなことをするのはいつだってこういう連中だ。

 

「唐草瓦正拳」

無防備な顔面にたたき込まれた一撃がくまの頭蓋を揺らす。

機械化された眼球は中に仕込まれていた多くの機材が仕込まれていた。衝撃がそれらの機材に不具合を起こす。

 

くまの視界に不具合が生じる。視界の右側が大きく失われ、不具合を修正すべく直されていく。その間数秒、ジンベエにとっては十分すぎる時間だが、それは彼が満足の状態だったらの話。

今の彼は不意のダメージで動くことができていない。

 

先に動きを再開させたのはくまだった。失った視界を再建し、すぐさま反撃に転じた彼は持っている攻撃能力の中で最も殺傷力の強いモノを選択した。

 

くまの口元が光り輝く。半分失われた視界で放つ以上多少の誤差を予測したくまは先ほどのモノよりも威力の高い一撃を放った。そのため一瞬できた大きすぎるタメの時間。ジンベエが動く。

「七千枚瓦回し蹴り」

狙いはくまの側頭部、正拳突きと同じ場所に正確に放たれた一撃にくまも防御する。

 

側頭部と蹴りの間に差し込まれた掌についている肉球が衝撃をはじく。

ジンベエの体が方向を変えられた衝撃の影響で浮き上がる。しかし、くまの肉球も水分の震動や衝撃をはじくことができなかった。

 

伝播してきた衝撃にくまの照準がずれる。二度目の爆炎はくま、ジンベエ両名の直近くに直撃しその爆発が彼らの体を吹き飛ばした。

 

 

 

「船長~!!、やばいですよ。あの海賊旗は」

「うるせえな、聞こえてるし、見えてるよ」

海賊船スリラーバークにはこの日、太陽の光が降らなかった。

「しかし、あの程度の挑発に乗ってくるとはねぇ。お前ら準備できてんだろうな」

「当たり前じゃないすか船長。でもあんな化け物が大量に降ってきたら、いくらあいつでもまずいですよ」

「良いから準備を進めろ。国引き伝説の幕開けだ。手始めが海の皇帝ってのも悪くないだろう。キーシッシッシ」

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