ONEPIECE FILM NIGHTMARE OF JOKER ピエロの見せた悪夢   作:鈴見悠晴

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世界の終わりの形

シキとモリアの戦いは熾烈を極めていた。

全体で見れば間違いなくモリアの軍勢は押されてきていた。巨大な怪物に数で勝る軍勢に押し込まれているモリアの軍勢だったが、局所的に見える圧倒的優勢に士気だけ見ればほとんど互角だった。

 

それはまさに災害だった。

頭に古代巨人属特有の角を持つ、人智を越えた大男が長髪をなびかせて巨大な人斬り包丁を振り回していた。切れ味が悪く、肉厚な刃は襲い来る巨大な猛獣たちを切り裂けていない。皮を裂き、筋繊維に絡まり、骨で刃が止まる。それを無理矢理力で叩き切る。

無理矢理たたき切られたその姿は、両腕で引きちぎられたそれと遜色ないほどのグロテスクさがそこにはあった。

 

逆にグロテスクさの欠片もないような場所もあった。

そこには多くの人間が倒れていたが、彼らの多くは致命傷を受けているようには見えていなかった。

彼らの体は1カ所どこかが貫かれたように穴が開いており、体の向きや姿勢と影の形が一致していないという共通点があった。

 

倒れている部下達を前にしてシキはモリアを見ておらず、モリアも同様に同じ方向を見つめていた。彼らの視線のずっと先

 

「才能か?執念か?それとも血筋がそうさせるのか? 伸び盛りの糞餓鬼が!!、HAHAHA そのままこの俺を越えて見せろ。俺を殺して見せろ火拳のエース!!」

ゴッサムシティの中心、一番プラント。そう言われていた建物はもう既にそこにはなかった。

炎上しきって前すらまともに見えないほどにそこは煌々と輝いていた。片端から炎に変わっていく世界の中で、JOKERだけは張本人すらわかっていない原因を知っていた。

能力の覚醒、エース本人が自覚すら持っていない状況でも、彼はもう既にこの土地が人の住めない土地になることを悟っていた。そして呼吸することすら困難になってしまう高温の環境下でJOKERは大きく息を吸い込んだ。熱が肺を焼くかのような痛みが走る。

ナイフはまともに持てないほど熱く、銃は既に使い物にならない。ガスのような薬品はこのような環境下での使用を想定していない。

はっきり言って予想以上にJOKERは詰んでいた。

 

最大の誤算は目の前の男があの男の血を引いていると気づくのが遅れたことだ。運命のいたずらというのは本当にいかんともしがたい。そんな状況だからこそ、にやりと笑う、口角を引き上げる。瞳孔を開く。少しの幸福も逃がさぬように。情報を漏らさぬように。

 

JOKERとエースの戦いはとても美しいモノだった。まさに炎舞と表されるような美しいモノで、普段から攻撃を躱すようなことをしないロギア能力者のエースと自らの命を守ろうとしないJOKERの戦いらしくないモノだった。

 

環境ダメージとも言えるモノに蝕まれているJOKERとエースの戦いは、暑さをクニしないエースの方が有利になる、はずだった。

もはや意識すらもうろうとしているはずの男の動きは切れを増して、徐々にJOKERNのほうに天秤が傾きだしていて、それは第三者の手によってぶち壊された。

 

超弩級の振動、世間一般で地震と言われる現象が彼らを襲った。

「グララララ、ずいぶんと楽しそうなことやってるじゃねぇか若造どもが。だが今回はやり過ぎじゃねぇのか。ええJOKER」

建築物も、炎も、戦闘員も全てを関係なく破壊していく最強の男の登場にもう動けなくなっていたエースが声を上げようとするが、そんな彼の腹部にJOKERの拳が突き刺さった。

「戦闘中に的から目を離すなぁ、未熟者はそこで寝てろ」

全身から力が抜けてしまって崩れていくエースを放り投げたJOKERはつけていたネクタイをほどいて、白ひげと向かい合った。

 

「お前がここにいるって事はあれはもう壊されてるんだろう、白ひげぇ」

「いつもみたいに逃げ回る気はねぇんだな」

「面倒なのはなしだ。俺は間に合わなかった。それだけのことだろう。HAHAHA、お似合いの最後じゃねぇか。派手に全てにけりをつけようぜ」

 

世界中を破壊するかのような戦闘だった。最もそこまでの力を持っていたのは白髭だけだったが。

全てが終わったとき、立っていたのはもちろん白髭だけで、いくつかの傷をこさえた白髭は自分の息子達に目を向けた。

「こいつら手当てしてやれ」

そう言った白髭が顎で指したスペード海賊団はモービィディックに連れて行かれた。

残っていた幹部達も、今はもう動かないJOKERの死体を前に座り込んだ白髭を見て立ち去っていった。

「……グラララ。…馬鹿野郎が、逃げりゃ良かったんだよ」

そういう白ひげの目には薄く涙の膜が張っていた。

 

 

彼らの戦闘が終わった事を察したシキは全軍に撤退の合図を出した。もう彼にわざわざ戦う理由は残されていなかった。

「キーシッシッシなんだ。結局尻尾巻いて逃げるのか?」

「何とでもいえ、JOKERのいなくなったお前なんぞ相手にもならん」

そう言ったシキは本当にそのまま撤退していった。そのまま彼らは時代の表舞台からそっと姿を消した。

 

モリアも戦闘の影響は大きく、徐々に縄張りを減らしていった。

クロコダイルは完全に姿を消した。

ドフラミンゴはシキと縁を切って、世界政府と組むことを選択した。JOKERは大きな影響力を持っており、二度目の死亡報道は信じない人間も多かった。

 

今日もどこかで誰かがピエロの仮面をつけて言う

「JOKERはまた蘇る」

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