ハーレム天国だと思ったらヤンデレ地獄だった 生徒会長生存ルート   作:キラトマト

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昨日行った距離をとるというユウヤの選択。それは本当に正解だったのか。それでは第三話どうぞー


異変

「あれ? まだこんな時間か」

 

 僕が朝起きて初めて口にしたのはそんな言葉であった。

 

 普段起きる時間よりも随分早い。生徒会長さんもいつも早く来てるって言ってたしもう学校へ行くか。

 

 いつもより早く家を出たせいか人の気配が全くと言っていいほどない。

 

 ……。……いや、何かおかしいぞ? 生徒はおろか大人すら歩いていないというのはおかしい。しかも、また後ろに人の気配がする。

 

 などと考えていると、後ろから声がかけられる。

 

「あら、早いのね」

 

 その声がかけられたことによって今まで考えていたことが全て、頭の中から抜け落ちてしまった。

 

「あ、お、おはようございますっ、会長も早いんですねっ」

 

 そう言葉を返すと生徒会長は

 

「まぁ、今日は少しやることがあってね」

 

「余った時間は生徒会室で勉強もできるし、割といいものよ」

 

 本当に熱心な人だと、僕は心の中でそう思った。

 

「勉強ですか。凄いですね」

 

「ええ。朝の学校は静かで、とってもはかどるわよ」

 

「そういえば、1日経ってみてどう?」

 

 生徒会長が話を切り替えた。郷土研のことであろう。

 

「なんか落ち着きません。でも不思議と悪い気分では無いですね」

 

「あら、意外ね。でも悪い気分じゃないって事は一回距離をとって正解だったみたいね」

 

「生徒会長さんのおかげですよ」

 

 問題は、警察に疑われているということだ。知っているとはいえ何回も聞かれると流石にストレスが溜まる。

 

 ただ、事が事だけに気軽に相談できる内容ではない。

 

 まぁ生徒会長は秘密とか約束は守りそうだし相談してみてもいいかもな……。

 

「ちょっと、大丈夫?」

 

「あ……はい」

 

「いきなり黙り込んじゃうから、何事かと思ったわ」

 

「特に何も」

 

「……いや、また相談に乗って欲しいことがあるんですけど……いいですか?」

 

 僕の問いに生徒会長はニコりと笑みを浮かべる。

 

「もう、特に何も、とか言いながら心配事があるんじゃない」

 

「あなたからの相談だし、いつでも相談に乗るわ。郷土研のことでも、それ以外でも」

 

「ありがとうございます」

 

 少し、気が軽くなる。生徒会長に負担ばかりかけている。この前、愚痴とか聞いてあげるとか言ってあげたばかりなのに.

 

「あら?」

 

「どうしたんですか?」

 

「いえ、向こうに」

 

 咄嗟に振り向く。そこには何か言いたげな表情をしてこちらを向いている佐優理さんがいた。

 

「確かに、距離は取ろうとしているってわけね」

 

「佐優理さん……」

 

 こちらに向けられるうつろな視線。

 

 なぜこんな早くに登校している? 

 

 やはり生徒会長の命が危ないか……、と、考えるのはいささか過保護が過ぎるか。

 

「行きましょう、生徒会長」

 

「いいの?」

 

「お互い、我慢が必要だと思いますから」

 

「そうね……」

 

 佐優理さんの視線に背を向け、歩き始める。────結果から言うと彼女は、学校までずっとつけてきた。

 

 昇降口で生徒会長と別れ、教室へやってきた。

 

 佐優理さんも自分の教室へ行ったのだろう、視線も感じなくなっていた。

 

「誰も来ていないか」

 

 こんな時間だし仕方ない、

 

 ここは、会長にならって勉強でもするか。

 

 勉強をしていると続々とクラスメイトがやってきた

 

「ユウヤが勉強なんて珍しいな笑」

 

「今日は地震でも起こるんじゃね? 笑」

 

 皆が口々にに言う。

 

「お前らなー」

 

「あ、そういえばさ、喧嘩でもしたのか? お前ら」

 

 ……。……多分、あの三人のことだろう。

 

「喧嘩? …………ああ、まぁそんなとこ」

 

「マジか。お前らほどのやつでも、そんなことってあるんだな」

 

「まぁ、な」

 

 話している間に、別の視線を感じた。

 

 視線の方向を見ると一瞬だけ部長の姿が見えた。

 

 わざわざ二年の教室のところまで来て僕を見ていたらしい。

 

 なのに、二人とも近寄ってこない。僕の頼みを聞いてくれてるってことだな。

 

「喧嘩したのは仕方ないけどさ、なるべく早く仲直りした方がいいぜ」

 

「まぁ、そうだな……」

 

 そうこうしているうちに、一時間目の予鈴がなる。

 

「おいユウヤ、早く準備しようぜ。遅れちまう」

 

「ああ、そうだな」

 

 ────生徒会長の安否やこれからどうするか考えているうちにあっという間に午前の授業がが終わってしまった。

 

「ユウヤさん」

 

「ん?」

 

 気がつくと佐優理さんが目の前にいた。取り乱した様子もなく、いつもの穏やかな様子そのものだ。まぁ、今の状況ではそれがおかしいんだけど。

 

 現に陽佳は見渡す限りにはいない。

 

「よろしければ、お昼をご一緒しませんか?」

 

「ダメです。約束しましたよね?」

 

「大丈夫です。私は全部わかってますから」

 

 わかっている? まさかとは思うが、僕の正体のことか……? 

 

「悩み事があるんじゃないですか? それなら、なんでも話してください」

 

 なんなんだよ、この人は。相談相手ならもういるので必要ありませんよ。と口から出そうになるが何とか抑える。

 

「悩みなんてありませんけど……」

 

「私はユウヤさんの味方です。何があっても、どんな状況でも、絶対にユウヤさんの側にいます。例え、ユウヤさん自身が距離を置こうなんて心にもないことを言っても」

 

 こりゃダメだ。ちっとも僕の話を聞いていない。 

 

「ごめん、ちょっと用事があるから」

 

 そう言って、僕は早々に話を切り上げ、教室を出る。

 

 教室を出る直前、僕が見たのは、朝と同じような虚ろな目をした佐優理さんの姿だった。

 

 午後の授業。集中などできるはずもなかった。なんと言ってもあの佐優理さんの目がすごく怖かったのだ。ホラー映画に出てくる怪物のような、なんとも形容し難い表情がが、佐優理さんの顔に張り付いたかのように。

 

 そして、一人で帰っている時も、どこからか視線を感じる。

 

「き、気のせいだよな。」

 

 歩みが遅くなり、やがて歩みを止める

 

 このまま帰ってもなんか気が晴れ無さそうだし、商店街にでも行ってみるか! 

 

 目的地を変え、僕は再び歩き出す。

 

 だが、商店街の活気はそれなりでしかなかった。いざえもんの姿もないし。もっともあんな怖いぬいぐるみ、二度と見たくないけど

 

「あれは……」

 

 ふと和菓子屋を見ると生徒会長がいた。せっかくなので僕もそれにお邪魔させてもらおうと近づいた。

 

「あれ? 買い食いですか?」

 

「あら、あなたも来ていたのね。良かったら、この今川焼き食べる?」

 

 生徒会長に慌てている様子はなく、逆にその菓子を差し出してくるほどだ。

 

「ど、どうも。ありがとうございます」

 

 お礼を言って受け取る。するとホッとするような温かさを感じる。

 

「疲れている時は甘いものに限るわ」

 

 そう言って今川焼きを頬張る会長は、いつもの凛々しさとは違って、可愛く見えた。

 

「それにしても帰るの早いですね?」

 

「早めに来て、仕事をしたかいがあったわ」

 

 僕が朝、勉強している間に仕事を片していたのだろう。さすがだな。生徒会長は

 

「体だけじゃなく、気持ちが疲れている時も、こうやって適当に発散した方がいいわ」

 

 生徒会長もこうやってちゃんと発散しているんだな。だったらあんなこと言わなくてよかったかも。

 

「あなたは、その辺が苦手そうだものね」

 

 おそらく間違っていないのだろう。前までの僕ならば、だが。今の僕は違う、こうして生徒会長と話しているだけで気持ちが楽になるのだから。

 

「いや、生徒会長と話しているだけでだいぶ楽になりますよ」

 

「そ、そう? まぁ感謝の気持ちとして受け取っておくわ」

 

 そして話を切り替えるように生徒会長が言う

 

「それより!」

 

「はいっ」

 

「食べたわね?」

 

「食べましたけど……」

 

「これで共犯なんだから、誰にもいいつけたりしないこと」

 

 会長はこちらに笑顔を作っみせた。

 

「す、するわけないじゃないですか! みんなやってますって このくらい」

 

「それでも、生徒会長という立場だから気にしなきゃいけないのよ」

 

(生徒会長って、そんな大変な仕事なんだな)

 

「へぇ、大変なんですね」

 

「そうよ、大変なの」

 

 そんな彼女の返答を聞いて、僕は思わず吹き出してしまった

 

「ん……よかった。少しは元気になったわね」

 

「お陰様で」

 

 生徒会長と話していると、気持ちが落ち着いてきた。

 

「さてと、あまり寄り道も良くないし、私は帰るわ」

 

「僕もそうします」

 

「じゃあ、また学校で」

 

「はい」

 

 生徒会長と別れ、歩き出した。が、その時僕は気付いてしまった。

 

 かなり離れた柱の向こう、淀んだ目でこちらを見ている佐優理さんを。やっぱりあの視線は佐優理さんだったのか。気づかれたのを悟ったのか、佐優理さんはすぐ見えなくなった。

 

 こういった時、どうすればいいのか分からない僕はその場で立ち尽くすのだった。




読んでくれてありがとうございます
改善点や感想などがあればどんどん書いてください!

新しいヤンデレ地獄、これの続きとして書くか(これとの繋がりはない)、新規に書き始めるか。

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