文章量も少し多くなっています、すみません。
恐怖を与えて怯え切ったウイスキーピークの住民達を監視しつつ、みんなをさらに待つ事、約1時間。ナミとゾロが何故か2人組の片方の女を連れて戻って来た。
3人がメリー号の周りを見ると驚いた顔をした。メリー号の周りに島の奴らが集まっているのでメリー号を襲ったと分かったが、全員倒れてこんで血を流している。
「ど、どうなってるの?全員やられてる…」
「な、何これ⁈ゾロ、これもアンタがやったの?」
「んな訳無えだろ!しっかし、凄まじいな…あそこ何て見てみろよ。地面に顔めり込まれて腕千切れてんじゃねえか。容赦ねぇ」
「じゃあ、まさか…全部ヴァルがやったの?」
「ワフ」
ヴァルが返事をすると、2人は驚きながらヴァルの元に近付き体をワシャワシャと撫でた。特にナミが褒めてくれた。
「まさかこんなに強いなんて……もう!ヴァル、貴女何でそんなに良い子なのよ!メリー号に傷1つ無いし、貴女と私のお宝も取られて無いし、もう最高!!」
「よーしよし、良い子だなぁヴァル」
「クゥーン、ヘッヘッヘ♪」
ヴァルはきちんとお留守番を果たしてメリー号を傷1つ無く守り切った事を褒められて笑顔になりながら尻尾をブンブン振って喜んだ。ナミは撫でるのを超えて、抱き着いて顔を毛に埋めながら体全体でヴァルを撫で回す。ヴァルはアウアウと嬉しい声を漏らしながら撫でられるのを堪能した。
まだ3人戻って来て居ないが、ルフィがサンジとウソップを探しに行ってるらしい。ナミは来る途中町の家から拝借して来た縄をゾロに渡して周りに居る者達を縛らせた。一応腕が無くなった男の腕に包帯を厳重に巻いて、これ以上出血しないようにしてあげた。ヴァルが人殺しになるのをナミが嫌がったからだ。
ナミはヴァルの口元に残ってる血の後を濡らした布で拭く。奪った腕を直ぐに口から離したお陰で着いた血の量は少なく布1枚で足りた。それでもヴァルから血の匂いがするので、ナミは今日のお風呂は体をメインに洗う事を決めた。
「それにしても、銃持ってる奴らをどうやって倒したの?怪我して無いし…」
「おいお前、まさかヴァルを撃ったのか?」
ゾロが縛り上げた1人に質問した。聞かれた男は怯えながら頷く。
「は、はい。でも、意味が無かったと言うか…」
「あ゛あ゛?」
「ヒィ!銃弾が弾かれて全然効きませんでした!!」
「弾かれたぁ?どう言う事だ?」
ゾロは言ってる事が理解出来ず問い詰める。男は銃が効かなかったとしか説明出来無いのでそれしか言わなかった。
2人が連れてきた女は船に乗らずにヴァルを見て怯えている。
「ちょっとビビ、何してんのよ。早く乗って」
「だ、大丈夫かしら?その狼、噛み付いて来たりしない?」
「攻撃し無ければ大丈夫よ!多分」
「(多分⁈)」
ヴァルは話してる2人を見て考えた。ナミはこの女に最初に会った時は警戒していたのに、今では気を許している。いや、信用しているように見える。気軽に名前を読んでメリー号に乗るよう言ってるので多分そうだとヴァルは思った。しかしまだ信用出来ないので、ナミから説明して貰ってから判断する事にする。それまでは一応姿を戻さずにしていようとヴァルは決めた。
それよりも…さっきからメリー号に乗っているこの変な鳥は何だろう。今まで見た事の無い黄色の体毛をしていて結構大きい。危険は感じ無いのでヴァルは取り敢えず謎の鳥を放置する事にした。
「おーい!サンジとウソップ見つけたぞー!」
ルフィがサンジとウソップを引きずって戻って来た。サンジは足を掴まれ、ウソップは鼻を掴まれている。土で汚れているのに全く起きる気配がしなかった。
ナミがメリー号を降りてビビの元に行く。まだ乗らないので迎えに行ったようだが、様子が変だった。
「おい!どうした!」
ゾロがナミに聞くと、ビビが渋って乗ろうとしないと言った。何でも連れているカルガモと言う生き物が呼んでも来ないと言う。ビビは先程から口から音を鳴らして呼んでも来ないと言って困っていた。ヴァルはもしやと思ってゾロの服を引っ張り鳥の存在を教える。ゾロは鳥を見ると2人に伝えた。
「コイツか?何か居たぞ?」
「クァ」
「「そこかーい!!」」
ヴァルはこの鳥がカルガモと言う生き物だと理解する。ヴァルの頭の中にカルガモは黄色くてクァっと鳴く大きい鳥としてインプットされた。
ビビは漸くメリー号に乗り込むと島の脱出の仕方として、川を登って行くと支流があり、少しは早く航路に乗って行けると教えてくれた。
みんなは急いで船の帆を降ろして出航の準備をする。船の準備が出来ると直ぐルフィが叫んだ。
「よっしゃあ!行くぞーー!!」
ルフィの声を合図に船を出す。川に沿って進めて行くと、サンジとウソップが起きた。2人共が何故か慌てた様子でみんなに戻ろうと言い出す。ヴァルはもうこの島に居たく無いので無視する事にした。ゾロが2人を静かにしようも言い切る前にナミが2人を殴って沈めた。
霧が出始めてビビがそろそろ島から出られると言った。朝が来たのか辺りが少し明るくなる。みんなの1番後ろに居たヴァルは、やっと島を出られると思ったが、背後から知らない気配がした。後ろに振り向くと、看板の2階の手摺りの上に誰かが座っている。
「もうすぐ朝ね」
「あぁ、追っ手から逃げられて良かった」
「本当よねぇ」
「船を岩場にぶつけないよう、気を付けないと」
「任せときなさい!」
ナミが余所者と顔を見ずに会話をする。不思議な光景だった。ナミは段々違和感を覚えてルフィに尋ねる。
「…で、今の声アンタ?」
「んにゃ違うぞ?」
ナミは恐る恐る振り返って確認すると、余所者の姿を見つけた。気配を探ったが危害を加えてくる気がしない為、見てただけだったが言った方が良かったのかとヴァルは思った。
「良い船ね?」
余所者は気軽そうに船を褒める。ナミは声にならない悲鳴を上げた。
「だ、誰だ!」
「あ、アンタは…!」
ビビが驚愕しながら余所者を見る。知っている様子だった。
余所者はビビに顔を向けて笑う。
「今、そこでMr.8に会ったわよ。ミス・ウェンズデー」
「アンタが、イガラムを…!」
「どうでも良いけど!なぁんでお前はこの船に乗ったんだ!敵かお前?」
「何でアンタがこんなとこに居るのよ!ミス・オールサンデー!!」
いきなりの早い展開にヴァルは着いて行けそうに無かった。知らない者の名前が出たり、ビビが怒ったり、ルフィは敵か確認したり、ヴァルの頭では状況整理が追いつかない。
ナミはビビの言葉を聞いてハッとした。
「ミス・オールサンデー?今度は何番のパートナーなの⁉︎」
「Mr.0…ボスのパートナーよ」
「クロ、クロコダイルの⁈」
「ボスの正体を知ってるのは、この女だけ。私達はコイツの後を尾行することでボスの正体を知った」
ミス・オールサンデーはビビの言葉を補足した。
「正確には、尾行させてあげたの」
「何だ、良い奴じゃん」
「そんなこと知ってるわよ!正体を知ったことをボスに告げたのも、アンタでしょ⁉」
「正解♡」
「やっぱ悪い奴だ」
「オメーは少し黙ってろ」
ヴァルはみんなの様子からミス・オールサンデーは敵なのだと認識した。しかし一向に敵意を向けて来ないことに疑問を抱く。
「アンタの目的は一体何なの⁈」
「……さあね?」
ミス・オールサンデーはみんなを一人ずつ見渡してからビビを見つめる。
「余りにも真剣だったから、つい協力しちゃったの。本気でバロック・ワークスを敵に回して国を救おうとしてる王女様が、余りにも…馬鹿馬鹿しくて」
「…ッ!!!」
ビビが怒りを堪え切れない様子で睨みつけた。ミス・オールサンデーがビビに注目している間ヴァルは密かに行動を開始する。
「舐めんじゃないわよ―――――!!!」
みんながビビの声を合図に武器を構えた。さっきまで寝ていた筈のウソップとサンジもミス・オールサンデーを挟んで武器を向ける。この状態でも、何処か余裕そうだった。
「そう言う物騒な物、私に向けないでくれる?」
機嫌悪そうに言った後、サンジとウソップが手摺りを超えてみんなの方へ飛ばされた。ナミとゾロの武器も、まるで手元を叩かれたように看板に落とす。ヴァルは1人陰から見ていて、みんなの体に突如手のようなものが花のように咲いた所を目撃した。でもやはり、攻撃には武器を落とさせはしたが、敵意が含まれていない。
「悪魔の実か…!」
「イッテテ…うおっ!よく見れば綺麗なお姉さんじゃん!!」
サンジがミス・オールサンデーの顔を見て叫んだ。相変わらず時と場合を選ばない女好きの鏡だった。
「まあそう焦らないで、私は別に何の指令も受けてないの戦う理由は無いわ」
「ウオッ⁈」
ルフィが被っていた麦わら帽子がミス・オールサンデーの方に飛んで行った。帽子を取って手で遊びながらルフィを見つめる。
「貴方が麦わらの船長ね?モンキー・D・ルフィ」
「お前!!帽子を返せ!!喧嘩を売ってんじゃねえかこのヤロ―ー!!!」
ルフィは帽子を取られて激怒した。前に一度、いつも被ってる帽子はある人から預かった大事な宝物と言っていたことをヴァルは思い出した。ヴァルは段々とミス・オールサンデーに足音を立てずに接近する。ミス・オールサンデーは近づいてきているヴァルに気付く様子も無く帽子を頭に乗せた。
「不運ね。バロック・ワークスに命を狙われる王女を救った貴方達に、こんな少数海賊に護衛される王女も。でも何よりの不運は、貴方達の
ナミは急いで腕に着けている
「貴方達は私達が手を下さなくても、アラバスタに辿り着けず、全滅するわ」
「知るか!!!帽子返せ!!!」
ルフィは今にも飛び掛かろうとしていたが、その必要が無くなった。
カプッ
「…あら?」
ミス・オールサンデーが後ろを見ると、ヴァルがいつの間にか背後に移動して麦わら帽子を取った。ミス・オールサンデーは少し驚いた顔をしている。
「(この子、いつ背後に移動したの?用心はしてたのに…)」
「わぶ(ワフ)?」
ミス・オールサンデーは麦わら帽子を咥えたヴァルを見つめて動きが止まった。ヴァルも目を見て見つめ合う。みんなが見つめ合ってる2人の様子を固唾を呑んで見守った。
「………」
「………」
「「「「「「「ゴクリッ…」」」」」」」
暫く見つめ合うと、ミス・オールサンデーが動き出した。
「……お手♡」
「わぶ(ワフ)」
「「「「「「いや、何しとんじゃお前ら!!!」」」」」」
ミス・オールサンデーはお手をしてもらえて少し嬉しそうな顔をする。ヴァルは手を出されて思わずルフィと初めて会った時を思い出して前足を乗せてしまった。
ゾロとナミは勝機と見てヴァルに叫ぶ。
「ヴァル!ソイツは敵だ!噛みつけ!!」
「おいクソマリモ!!何ヴァルちゃんにお姉さんを攻撃させようとしてんだ!!」
「ヴァル!貴女の力、思い知らせてやって!!」
ヴァルは2人の声を聴きながら、ミス・オールサンデーを見ていた。ミス・オールサンデーも2人の声を聴いてヴァルに警戒する。
スンスンッ…
ヴァルは匂いを嗅いで少し考えると、手摺りを踏みルフィの元に戻る。ルフィに帽子を差し出した。
「お?おお!帽子!」
ルフィは帽子が戻って来ると直ぐに頭に被った。
ナミとゾロは驚愕した顔をしてヴァルを見つめる。メリー号を守った時の印象とだいぶ違っていてた。
ミス・オールサンデーはヴァルを気に入ったのか不敵な笑みを納め美人らしい綺麗な笑みをしている。
「その子、可愛いわね」
「だろ?ヴァルはスゲー良い奴なんだ!お前嫌いだけど、良く分かってんじゃねえか!」
「「何ヴァルが褒められて嬉しそうにしとんじゃお前は!!!」」
ナミとゾロがルフィの態度にムカつき怒鳴った。
ミス・オールサンデーは懐から何かを取り出してルフィに投げ渡す。
「何だこれ?」
「アラバスタの1つ前の島を記録した
みんなはミス・オールサンデーを見て驚いた。先程から一体何を考えているのかが検討が付かない。ビビは
「いるかこんなの!!」
バリンッ!
「何してんのよこのおバカ!!」
「痛って―――――⁉」
ナミがルフィを殴り飛ばした。
「アホかお前!折角楽に行ける航路を教えてくれたんじゃない!ほんとは良い奴だったらどうすんのよ⁈」
ルフィはナミの言葉を耳に入れずミス・オールサンデーの方を見た。ミス・オールサンデーもルフィを不思議そうに見ている。
「この船の進路を、お前が決めんなよ!」
「……そう、残念ね」
残念と言いながらも笑って楽しそうにしている。手摺りから降りて船の端に歩き始めた。
「でも、私は威勢の良い奴は嫌いじゃないわ。生きてたら、また会いましょう?」
「イヤ!」
ルフィの言葉に笑うと、船の外に飛び降りた。外には何かが待機している。みんなは揃って船の外を見た。
「な、何だありゃ?」
「まさか、海王類…?って、ああ!」
「「「「「オォォォォ⁈亀だぁぁ!!」」」」」
ミス・オールサンデーは船ぐらいの大きさの亀に乗って去って行った。ビビはミス・オールサンデーが去って漸く落ち着いたのか看板に膝を着く。
「あの女…!一体何を考えてるのかサッパリ解らない…」
「だったら、考えただけ無駄ね」
「そういう奴はここにも居るぞ」
ゾロとナミがルフィを指差しビビを慰めた。ウソップとサンジは状況に追いついていない。
「「いい加減、状況を教えてくれ――――!!!」」
ルフィとヴァルはミス・オールサンデーの去った方向を眺めていた。ルフィはヴァルに質問する。
「なぁヴァル、何でアイツにお手したんだ?敵だぞ?アイツ」
「………」
ルフィに聞かれたヴァルは自分でも良く分からなかった。ただ、どこかでヴァルはミス・オールサンデーを自分と重ねている部分があり、それが原因だと思った。
「まあ別に良いけどよ」
ルフィは質問を止めた。ヴァルが少し悩んだことを察したようだった。
みんなの方に行こうとしたルフィだったが、1つ重要なことを思い出した。
「あ、ああ?ああああああああ!!!」
「いきなり叫んでどうしたルフィ⁉」
ゾロがルフィに聞いた。ルフィは顔に冷や汗を流しながら目元をピクピクさせる。
「ヴァルの分の肉、忘れてたぁぁ!」
「「「「……ああああああああああ!!!」」」」
みんなも思い出したのか叫ぶ。確かウイスキーピークの港に着いた時にメリー号でお留守番するヴァルに肉を持ってくることを全員忘れていた。ナミは大至急サンジに命令を下す。
「サンジ君!今すぐ何か作って!」
「合点ナミさん!」
「ゾロ!アンタは足りなくなった時の為に近くに居る魚でも潜って捕まえて!ロープで体は巻き付けて置くから!」
「しょうがねえなぁ!」
「ウソップとルフィは釣り!!」
「「おう!」」
ビビは急な展開に追い付け無いまま狼狽える。ナミはビビを見て言った。
「ビビは何もしなくて良いわ」
「え?でも…」
「これは私達がヴァルにした約束を破っちゃったからしてるだけ!だからお願い!何もしないで!」
「あ、…はい」
各自ヴァルとの約束を守れなかった償いを始める。ビビはヴァルとの間に1つスペースを空けて隣に移動した。みんなが船で走り回ってる中、看板の中央に居る事に居心地が悪かったからだ。
ヴァルとビビは焦りを隠せない様子のみんなの表情を見ながら暫く眺めていた。