幼女、麦わら海賊団と共に行く   作:犬吾郎

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本章
狼幼女


寝ていて固まった体を伸ばすとと首にあるシャラシャラが揺れた。外から入ってくる日光から良い天気だとわかる。昨日は何も食べてないから今日が絶好の狩り日で思わず嬉しくなる。巣から飛び出ると崖を駆け降りて川に着いた。草陰に隠れて水を飲みに来る獲物を待つ。太陽が真上に来る頃になって川に若いオスの猪が現れた。気づかれないようにゆっくりと、ジリジリ猪の背後に回り込む。

タイミングを見計らって勢い良く草陰から飛び出した。猪は驚いて逃げ出す。でも行き先には大きな岩が立ち塞がっている。猪は岩に気付いて止まろうとするが勢い良く走っているので中々止まらない。慌てている猪の隙に追いついて首に噛み付いて体重をかけて押し倒した。猪は暴れたが噛み付いている方が大きいため抜け出せない。噛み付いたまま力を込めて猪を仕留めた。

 

おおー!島だ―――!!

 

何かが聞こえた。聞いたことの無い鳴き声だ。仕留めた猪を咥えて急いで巣に戻る。猪を巣に置いてると、段々鳴き声が近づいてくるのがわかった。

 

 

 

「ヤロー共!錨を降ろせー!上陸するぞっー♪」

 

麦わら帽子を被った少年モンキー・D・ルフィが船首に立って両腕を広げている。島を見つけて喜んでいた。その姿を見て誰かが声をかける。

 

「アンタも手伝いなさいよ!1人だと時間が掛かるでしょうが!」

 

ルフィが何もしていないのを見てオレンジ色の髪をした女性ナミが怒った。

 

「ルフィ!ナミさんの手を煩わせんな!」

「ありがとうサンジ君。錨早くしてね」

「っはーい!ナミぃすわぁぁん♡」

 

目を♡マークにした金髪に特徴的なグルグルの眉毛をした男性サンジが嬉しそうに体をくねらせていた。

 

「こんな変な所に島があるとはなぁ…」

 

長い鼻をしてパチンコを持った少年ウソップが不思議なものを見るように島を眺めた。

 

「どっちにしろ、食糧が尽き掛けてたんだ。運が良かったな」

「全く、お前達が飯いっぱい食うからだぞ」

「「「「お前が言うな!!」」」」

 

ゴン!

 

「痛って―――――!!!」

 

緑色の短髪に腰に三本の刀を持った男性ロロノア・ゾロがルフィの頭を殴った。殴られたルフィは頭に大きなタンコブを作っている。

 

この集団の正体は、最近結成したばかりのルーキー麦わら海賊団。船長のルフィを始め、航海士のナミ、海上コックのサンジ、狙撃手のウソップ、戦闘員のゾロと5名で成り立っている。

ルフィが船に備蓄していた食糧を食い漁り底をついてしまった為、島で食糧を補給しようと考えていた。

 

船の碇を下ろして海岸付近に停泊させてから上陸する。島は思っていたよりも自然に囲まれていて人の住んでいるような気配は無かった。どうやら無人島らしい。

 

「何かスゲー生い茂ってるな。人が見当たらねぇ」

「冒険するぞー!」

「いや待てルフィ!まずは食糧だろ」

 

上陸してからナミが各自の役割を決め始めた。

 

「サンジ君とゾロはそれぞれ食糧を探して来て。私とウソップは船の近くに残って辺りの捜索。ルフィは…危険な生き物がいたら私達を守る担当ね」

「何でコイツと…」

「文句を言うな!ナミさんからの直々のお願いだろうがこのクソマリモ!」

「何か言ったかグルグル眉毛?」

「「あ゛あ゛⁉︎」」

 

バゴンッ!

 

「喧嘩するな!」

 

喧嘩をし始めた2人を見てナミが拳骨で殴り鎮める。一味は何時も通り、喧しく冒険を始めた。

 

 

 

 

草むらに隠れて様子を見てると、不思議なものに乗ってやって来た生き物達がいた。体も小さくて群れを作っていた。オスが4匹とメスが1匹。やっぱり聞いたことの無い鳴き声で群れの仲間達と意思疎通をしている。知能が高い生き物なのかな?今のところ危険は感じないが、もう少しだけ様子を見よう。ケンカしてた2匹と3匹は別れて森の中に入っていく。…3匹の後を追ってみるか

 

 

「あ!ミヤマだ!ミヤマクワガタがいるぞ!」

「何ぃ⁈どこだルフィ!」

「うるっさいわよアンタ達!変なのが来ちゃうでしょ!」

 

一体この生き物達は何なんだ?あの姿(・・・)に似ているけど鳴き声は違う。虫が好物かと思ったらメスが吠えてるから違う。見てると余計に分からない。…まずい、嗅ぎたくなってきた。

 

「それにしても…この森なんだか気味が悪いわね。いつか怪物とかオバケとか出て来そう…」

 

スンスン…

 

「おおお、おいナミ!お、お化けなんているわけねーだろ!ももも、もしいたら俺は!逃げる!」

 

スンスン…

 

「面白れーの来ねーかな?」

「「楽しみにすんな!」」

 

スンスン…

 

「…なあ、さっきからこの、スンスン…てのは何だ?」

 

スンスン…

 

「怖いこと言わないでよ⁉」

 

スンスン…

 

「犬がナミを嗅いでるからだろ。ほら後ろ」

「「え?」」

 

スンスン…

 

やっぱり初めて嗅ぐ匂いだ。でも、不思議と嫌な感じはしない。あ、バレた。なんか目が飛び出して見える。

 

「な、な、ななななな…!でで、出た―――!!」

「ぎゃ―――――――!!!」

「デッケー犬だなぁ〜」

「ち、ちょっとルフィ!気付いてたなら早く言いなさいよ!」

「お、おおお、おい!早く何とかしてくれ!食べられるぞ!」

 

【叫んだ2匹がオスの後ろに隠れた。壁にされたオスは怖がらず立っている。見た限り群れのリーダーだな】

 

「何で人がいねぇのに犬が居るんだ?普通犬がいるなら人いるだろ」

「お前はバカかぁ!どっから見ても狼だろうがー!」

「しかも、何でこんなに大きい訳⁈狼って犬よりちょっとだけ大きいだけでしょ!」

 

【嗅いでよかった。この生き物達は色んな音を合わせて使って鳴き声として出している。知能が高い予想は当たっていた。この島にいるサル達よりもかなり知能が上だと思う】

 

「まぁ任せろ。何とかする」

「よし行けルフィ!後は任せた!」

 

【リーダーのオスが近付いてきた。敵意は…感じない】

 

「おい犬、お手!」

「「何しとんじゃお前は―――!!」」

 

【なんで前足を出した?…まぁ匂いでも嗅いどくか】

 

スンスン…

 

「…いや、匂いを嗅げって意味じゃねえぞ?」

「ルフィ!いいから手を引っ込めろー!」

「食べられるって言ってるでしょ!」

 

【顔が不満そうになった。出した前足にもう一方の前足を重ねて何か言ってる。何がしたいんだ?まさか、前足を乗せろって言いたいのか⁈大丈夫なの?本当に?潰れないならいいんだけど】

 

ポンッ

 

「「「お、おぉぉぉ………お手した」」」

 

【潰れてないな。良かった。ん?怯えてた2匹がちょっとずつ近づいて来る】

 

「な?何とかなったろ?」

「いや、普通は無理だ」

「と言うより何でお手したのよこの狼…。あれ?この子首に何かかけてる」

 

【メスがシャラシャラに気づいた。これが欲しいのかと思ったがそうではなく、シャラシャラを眺めている。欲しくてもあげないぞ】

 

「これドッグタグよ、しかも何か書いてある」

「ドッグ?やっぱ犬なのかコイツ?」

「ドッグタグってのは、ネックレスの一種。元は軍人の認識票でよく自分の名前とか書いてあって…、書いてある!」

「えっと…ヴァルって書いてあるな。これ名前か?」

「多分この子の名前だと思う」

「へー、バルって言うのか」

「「バ」じゃなくて「ヴァ」よ」

 

【3匹がシャラシャラと顔を見比べている】

 

「お前ヴァルか?」

 

【リーダーのオスに鳴き声をかけられた。ヴァル、生まれて初めて聴いたその鳴き声にどこか懐かしい響きを感じる】

 

「ワフ」

「「おぉ!返事した」」

 

【返事をするとリーダーのオスは嬉しそうにした。先程まで怯えてた2匹も警戒心が無くなっている。この姿を見た生き物は一目散に逃げだすのだが、警戒心を感じないのは新鮮な感覚だ。やはり危険が無い生き物なのだろう。ふぅ、よかったよかった】

 

シュウゥゥゥゥ…

 

「「「え?」」」

 

【元の姿に戻ると、3匹は驚いた顔をした。特に先程叫んでいたメスが慌てた顔をしている】

 

「能力者だったの⁈しかも女の子で全裸!」

「お、おいルフィ!今すぐ後ろ向け!」

「何でだ?」

「良いから俺とあっち行くぞ!虫探しだ!」

「おお!良いぞ!」

「(ウソップ!ナイス!)」

 

【オス2匹が後ろを向いて走っていった。残ったメスは困ったような顔をする。そんな顔をされてもこっちが困るのだが】

 

「(どうしよう、服は船に積んであるし…後、汚れてるからお風呂に入れないとなぁ…)あぁ、こんな時にサンジ君が居てくれたら…!」

 

 

ピクピクッ!

 

「ナミさんが俺を呼んでいる!おいクソマリモ!ナミさん達に合流だぁ!」

「いきなり何だよ」

「良いから、来い!!すぐ迷子になるお前を探すのはクソめんどくさいんだよ!」

「喧嘩売ってんのかお前は!!」


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