幼女、麦わら海賊団と共に行く   作:犬吾郎

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幼女、母親を知る

「出来た!」

 

ラブーンが鳴き止むとルフィはペンキを持ち出してラブーンの頭に海賊旗と同じマークを描いた。絵はとても上手とは言えないある意味味のある物になっている。ルフィはペンキ塗れになりながらラブーンに言った。

 

「これが、お前と俺の戦いの約束だ!俺達がまたここに帰って来る時まで頭ぶつけてそのマークを消したりすんじゃねえぞ?」

 

ラブーンは一声鳴いて応えた。

 

「よーーーし!!」

 

ヴァルがルフィが描いた絵を見ていると、クロッカスが近付いて来た。ヴァルはクロッカスに気付いて顔を向ける。

 

「さっきは信じられず済まなかったな。まさか本当の事だったとは」

「フルフルッ」

 

ヴァルは首を横に振って謝らなくて良いと伝えた。クロッカスは微笑んだ後、ヴァルの首にあるドッグタグを見つけて驚愕した。

 

「ま、まさか、そのドッグタグは…!」

「おい爺さん、まさかヴァルの事知ってんのか?」

「まさか…、すまんがそのドッグタグを良く見せてくれんか?」

「コクッ」

 

ヴァルはドッグタグを首から外してクロッカスに手渡した。クロッカスはドッグタグの表裏を確認して懐かしい表情をしながら目を潤ませた。

 

「あぁ、…あの子の持っていたドッグタグにそっくりだ。それにこの特徴的な文字の書き方、間違いない」

「クロッカスさん教えて!まさかヴァルの両親を知ってるの⁉︎」

 

一味全員がクロッカスに注目した。クロッカスは眼鏡を外し目元を拭ってから答える。

 

「正確には母親は確実に分かった。私が海賊をしていた頃の仲間の1人だ」

「爺さん海賊だったのか?」

「そうだ。私は昔、数年程オーロジャクソン号の船で船医をやっていた。その時にはこの子の母親も乗っていた」

「それって…海賊王の船だぞ!!爺さん、アンタ海賊王のクルーだったのか⁈それにヴァルちゃんのお母様も同じクルーだと⁈」

 

クロッカスは頷いた。眼鏡をかけてからヴァルを見て懐かしそうに見る。

 

「良く見ると、髪や顔立ちもあの子にそっくりじゃないか。母親似で美人だな」

「おい、勿体ぶらずに教えてくれよ!ヴァルの母ちゃんはどんな奴なんだ!」

 

ルフィがヴァルの母親が海賊王のクルーだと聞いて興奮気味に言った。みんなも気になってしょうがないらしい。ヴァルも気になるのかクロッカスの言葉に集中した。

 

「母親の名前はヴァン=リーベ。苗字は無いそうで名の意味はヴァンの愛と言っていた。ヴァンと言うのは彼女の一族が昔から名前に含んで来た一種の伝統らしい。彼女は船の中でも結構な古株の1人で、良く仲間達がバカをすると拳骨をしていたなぁ…あれは痛かった。まだ20歳になる前、18の時には既にクルーから姉さんと呼ばれていた」

「「「「「ヴァルの母ちゃん(お母様)(お母さん)スゲー…」」」」」

 

一味の頭の中にはヴァルの容姿に男を殴っているお姉さんの光景を浮かべた。クロッカスも思い出して顔を青くしていた。

 

「美人だから怒ると凄く怖くて、しかもクルーの中でもメチャクチャ強い部類だったんだ。私も良く半殺しにされていたよ…」

「「「「「(何したら半殺しにされるんだよ…)」」」」」

 

半殺しと聞いて、ヴァルの頭には巨大な猪がクロッカスに乗っかっている光景が浮かんだ。ちょっとズレている。

 

「ま、まぁ兎に角。この子の母親はとても強かったと言う事だ。解散してからは全く連絡を取っていないから行方は分からず仕舞いだがな」

「そっかー…ヴァルの母ちゃん、海賊王のクルーだったのかぁ。ヴァル、お前の母ちゃん、スゲ〜奴なんだな!」

「……コクッ」

 

ヴァルは頷いてからクロッカスにドッグタグを返して貰った。受け取ると、大事そうに首に掛け直す。

 

「でもなら何でヴァルはあの無人島に居たんだ?母親が捨てたとか?」

「何?彼女は情に熱い事でも有名だったのだぞ!父親がしたのなら想像出来るが、そんな事をする、筈、がぁ……」

「「「「「「?」」」」」」

 

クロッカスは否定する発言をしていると、ヴァルを見て段々表情を暗くさせた。何か察した様子。

 

「因みになんだが…この子何処に居たんだ?無人島と聞こえたが…」

「ローグタウンから少し離れた無人島だよ。ローグタウンから先はリーヴァス・マウンテンだけって聞いてたから驚いたぜ。まあそれで俺達は助かったんだけどな?」

「!!!」

 

クロッカスが驚愕して眼鏡を突き破って目が飛び出た。どんな仕組みなのか凄く気になる。クロッカスは目を元に戻して深く考える。眼鏡は壊れていなかった。

 

ま、まさか父親はアイツじゃあ…いやいやそんな訳ある筈が無い!無い、筈なんだが…。しかし雰囲気や目はアイツに似て…いやいや!…だがそんな事をするのはアイツしか

「「「「「「?」」」」」」

 

クロッカスはどんよりした顔をしながら一味に言った。

 

「ゴホンッ!と、兎に角、良く生きてあそこから出られたな。正直言って、あそこから生きて出られた奴を私は知らん。因みに父親は良く分からん、知ってても言うつもりは無いからな?自分達で調べろ。この話はこれで終わりだ(早口気味)」

「「「「「ちょっと待ったーー!!!今お前、話の前半何て言った⁈」」」」」

「今「良く生きてあそこから出られたな」って聞こえたぞ爺さん!!」

 

クロッカスは詰め寄って来るみんなを手で宥めた。

 

「あ、あそこは凪の帯(カームベルト)の中にあるんだぞ!!数百年に一度の確率しか風も全く吹かん絶望しかない無人島!海王類にも遭遇せず、逆にそこから出られたお前達がおかしいんじゃ!!」

 

ナミが凪の帯(カームベルト)と聞いて青ざめた。

 

「い、今、凪の帯(カームベルト)って言った?あそこ、もう凪の帯(カームベルト)の中だったの?」

「何?知らんかったのか?なら、相当な幸運の持ち主だったのだな、お前達は」

 

凪の帯(カームベルト)とは、無風状態の特殊な海域で海王類の巣としても知られている。偉大なる航路(グランドライン)を挟み込むようにあって、偉大なる航路(グランドライン)に入る1番の障害である。海王類とは、その名の通り海に君臨する王者のように巨大な体を持ち誰も勝てない存在として恐れられている。遭遇したら、まず命は無い程だと言う。

ヴァルが居たあの島は、東の海(イーストブルー)の中にある事がおかしすぎる程恐ろしく強い猛獣が生息する珍しい島に加えて、凪の帯(カームベルト)の中にある為、ローグタウンなど地元島民からは「処刑島」と呼ばれているらしい。

 

「「「「「(ヴァル(ちゃん)、お前(貴女)凄い奴(子)だったのか…)」」」」」

 

みんなはヴァルを見てしみじみ思ったがヴァルはドッグタグを見つめていて気付かなかった。

 

「ん?あ、あーーーーーー!!!」

 

ナミが突然叫んだ。見ると方位磁石を見て泣きそうになっている。

 

「コンパスが壊れてる!」

「それはそうだろ。ここは偉大なる航路(グランドライン)、普通のコンパスは使い物にならんぞ」

 

クロッカスが当たり前の事であるかのような口振りで言った。ナミが悲しみで崩れ落ちる。ヴァルがナミを見て何かを取り出した。

 

ツンツンッ

 

「ヴァル?見てわからない?私今凄く落ち込んでるの…」

 

コトッ

 

「ん?」

 

音がして見ると、ナミの目の前に方位磁石に似た何かがあった。

 

「おお、ウイスキーピークの方角が入った永久指針(エターナルポース)じゃないか。何処から見つけて来た?」

永久指針(エターナルポース)?」

 

永久指針(エターナルポース)とは、この偉大なる航路(グランドライン)で使われる2つのコンパスの内の1つで、記録している島限定だが何処に居ても記録した島に針が指し示す物だ。

もう1つは記録指針(ログポース)と言って、偉大なる航路(グランドライン)に点在する様々の島に含まれる特殊な鉱物が島と島を引き合う磁気を記録していく物だ。

 

ヴァルが何故永久指針(エターナルポース)を持っているかと言うと、小舟に噛みついた時、乗っていた2人が持つ永久指針(エターナルポース)をも口の中に入ってしまいそのままみんなに引っ張られた為、ヴァルが所持していた。

ヴァルは小舟の残骸が浮かんでいる所を指差して持っている理由を伝えた。ナミは目を潤ませてヴァルの体を抱きしめて頭を撫でて褒める。

 

「ヴァルゥ、貴女は本当に良い子ねぇ…後でサンジ君にお菓子作って貰いましょ」

「成程アイツらの持っていた物か。なら私からはこの記録指針(ログポース)をやろう。上手く使いなさい」

 

クロッカスが記録指針(ログポース)を取り出してナミに渡した。至れり尽くせりの状況でナミの機嫌が直った。

 

クロッカスは忠告としてログの重要性を教えてくれた。偉大なる航路(グランドライン)記録指針(ログポース)が記録するログによって航海をして行かなければならない。記録指針(ログポース)は自分達から1番近くにある島を指し示すが、島に上陸して島のログを溜めなければ記録指針(ログポース)は次の島を指さない。ログが貯まる期間は島ごとに違っていて、最速で数時間の時もあれば、数年もかかる島もある。数年もログが貯まるのを待ちたく無い時は、ヴァルが持っているような永久指針(エターナルポース)を使って他の島に行く脱出方法が存在する。永久指針(エターナルポース)は人が集まる大きな島であれば店で売買されている。

 

「最初の航路は7つの内の1つを選ぶ事から始まる。選ぶ航路はお前達の自由だ。因みにどの航路を選んでも最終的には繋がっている。この世界で海賊王しか辿り着けていない最後の島、「ラフテル」だ」

「「ラフテル」…」

「お前達のような海賊なら、そこへ辿り着くと私は思っている。ラブーンにまた戻ってくると言ったんだ、そのくらいは出来てもらわなければな」

 

ルフィはその言葉を聞いてニッコリと笑った。やる気が底上げされたようだ。

 

「当たり前だ!!俺は海賊王になる男だぞ!「ラフテル」だって、必ず見つけてみせる!」

「爺さん!「ラフテル」とか何とか言わず教えてくれ!海賊王のクルーなら、『ONE PIECE』が実在してるか知ってんだろ?」

ウソップ!!!

 

ルフィがウソップに怒鳴った。ウソップは思わず口を閉ざす。

 

「言うな!行けば分かる!」

「あぁその通りだ、行って確かめれば良い。その為に冒険があるのだから」

 

クロッカスはルフィを見て誰かの面影を見ていた。

 

一味はそろそろ出発の準備を始めた。ルフィがクロッカスにお礼を言う。

 

「爺さん、色々世話になったな。ありがとう」

「礼は良い。お前達の冒険を祈っておく」

 

船が出航して双子島から離れて行く。ルフィがラブーンに向かって叫んだ。

 

「じゃぁなーーー!!行ってくるぞ、クジラーーーー!!!」

 

ラブーンは麦わら海賊団に向かって吠えて、クロッカスは手を振って見送った。

 

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