天照院奈落の首領だった男、『虚』は査問会に掛けられることとなった。
彼の一番弟子が、彼の行った法度行為を告発したのだ。
告発内容は、複数の暗殺任務の放棄及び標的の逃亡幇助、そして奈落からの脱退画策。
常日頃から首領の法度行為を疑い、煙たく思っていた奈落の幹部たちは一も二もなくその告発を受け入れた。
一番弟子の彼女の集めた証拠によってとんとん拍子に、最早異例とも言える速度で審議は進み、告発内容は全て真であると判断され、虚は斬首刑に処されることになる。
虚の小姓、朧は奈落に入るだけの暗殺技能がないこと、法度行為に一切関わっていなかった事実を考慮され、奈落からの追放処分のみ課された。
虚の処刑は本人の希望もあって、次代天照院奈落首領であり、自らの師匠であった虚の違反行為の告発という形で
刀を一閃。
それで事足りた。
虚の首は落ち、遺体は刑場のすぐ側に生えた松の木の下へ捨て置かれる。
追放処分を受けた朧も、師の遺体とともにそこへ残された。
<処刑時の録画>
【録画開始】
【処刑人が罪人へと話しかける】
「貴方の遺体は、地球のどこかへ捨て置くこととなってます。」
「故郷の土の感触を存分に味わってください。」
「ああ、そうだ貴方の悪巧みとはなんの関係もない朧の、命まで取るのは忍びなかったので、奈落からの追放という形で容赦してもらいました。」
「暗殺術のひとつも覚えていない小姓など、居てもいなくても変わりませんし。」
「だからーーーーーー、だから安心して死んでください。『虚』」
【白刃が振り上げられる】
「『死神』は今日死にます。その罪禍は私が貰い受けましょう。」
【刀が振り下ろされる】
【斬られる寸前、罪人の顔が焦りへ変わり処刑人の方を顧みた】
「‼︎待ちなさい幽、貴方ッーーーーー!」
「さよなら師匠。どうかお元気で。」
【微笑み】
【鮮血が舞う】
【録画停止】
姉弟子の独白
虚の名が奈落で生きている限り、二人は幸せに暮らすことができない。
奈落は脱退者を許さない。地の果てまで追いかけてその命を奪うだろう。
ならば、虚を殺せばいい。
師匠が不死であることを知らない愚図共の目の前で師匠を殺し、虚の名を殺す。
死んだことになった師匠と朧を秘密裏に逃がせば、奈落はもう彼らを追わない。死んだ人間には興味がないから。
虚の罪は、鴉の仮面と『死神』の名と共に私が次代虚として立つことで全て引き受けよう。
そうすれば師匠はただの『吉田松陽』として、朧はただの『松下村塾の一番弟子』として新たな人生を歩める。
原作で朧がやっていたような、奈落の目を二人から逸らす役目も、私が担うことができるだろう。
私の望みであった、一番弟子の称号返上も叶った。
願わくば、師匠と朧の夢が叶いますように。
そして、どうか二人が私のことを忘れて幸せになってくれますように。