虚に救われた少女が、彼を殺すまでの話。   作:あおさ粉

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オリ主が消えた後の彼らの話。
朧くん視点も書きたいな(予定は未定)


閑話

青々と茂る一本の松の木、その下で少年が泣いている。

傍には血溜まりと頭と胴が泣き別れになった遺体があり、少年はそれに縋り付くようにしていた。血に沈むその遺体は、少年の師であったものだ。

 

「先生…先生ぇ………」

 

ぐずぐずと鼻を啜りながら少年が発したその言葉に返すものは誰もいない。 風の吹き抜ける音と、少年の泣き声だけがこだましていた。

 

泣き続ける少年、その視界にふと何かが過った。

驚きに目を見開くとその姿はより鮮明に視界に浮かび上がる。

 

紫煙だ。少年の師の遺体、その傷口から夥しいまでの量の煙が溢れ出て、遺体の全てを覆いつくした。じゅうじゅうと鈍い音と肉の焼け焦げるような不快なにおいがあたりに満ちる。

しばらくして煙が晴れると、その場には “傷一つない師の体”が横たわっていた。

 

「朧、」

 

聞き覚えのある低い声が少年の鼓膜を揺らす。

それは紛れもなく先程首を切られて死んだはずの師の声であり、先ほどまで死体だったはずの体から音が発されていた。

 

「先生⁉︎どうして…、それにこれは一体…?」

「その疑問に答える前に、まずはすぐにこの場を離れなければいけません。ここは、奈落の目に付く。」

 

「あの子が、これから先の人生を全て賭してまで作ってくれた機会を、無駄にするわけにはいきませんから。」

 

唖然とした表情で問いかける少年に、硬い顔をしたまま答える師。その表情にはいつものように笑顔が浮かんでいるものの、隠しきれない微かな後悔が滲む。

 

「……学舎の名前を考えたんです。」

 

状況がさっぱり飲み込めない少年を他所に師は立ち上がり、傍に生える松の木に手を置いた。

 

「"松下村塾"という名前はどうでしょう。」

「どういう、意味なんですか?」

 

静かに滔々と話すその口調から、師の心は読み取れない。悲しんでいるのか、嘆いているのか、それとも自分自身に憤っているのか。

推し量る術がない少年には、師の言葉に返答するのが精一杯だった。

 

「たった今、この松の下で始まった。」

「今は君と私の二人だけだけど、いずれこの松の下にたくさんの仲間が集まってくれるように。」

 

そう言って、少年の師は目を細めて松の木を撫でた。優しく、どこか慈しむように。

 

「…いつか、あの子も。」

 

師の口から零れ落ちたその言葉は、少年と松の木だけが聞いていた。

見上げた空は雲一つない鬱陶しいほどの晴天で、遥か遠くに船影だけが浮かんで見える。

奈落の宇宙船(ふね)は彼女"だけ"を乗せて地球を去っていった。

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