ポケットモンスター レインボー   作:浮浪人トール

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この小説は基本的に時間軸がバラバラになっています。悪しからず。


英雄と魔法使い、冥府にて

 あなたはようやくジムバッチを4つ手に入れた。この地方最難関のチャンピオンリーグに挑むために必要なバッチの数は8つ以上。折り返しではあるがここからはジムリーダーの強さも加速度的に上がっていくらしく、例年通りならジムチャレンジャーがガクッと少なくなるらしい。

 というのも、もともとはジムリーダーたちの強さはそこまで高くなかったのは、(と言えば語弊があるかもしれないが)少年少女の心が折れないように、将来的にこの地方の未来を担う若き芽たちを摘まないように、というイチカラ中央委員会の思惑からくるものだった。だが、時間が経つにつれてトレーナーのレベルが全体的に上がっていき5年もすれば8つ目のジムまで到達するものは1000人を超えるようになった。

 そうなってくると次に困るのはジムリーダーたちである。いくら自分が望んだ仕事とはいえ彼らも一人の人間。一切のプライベートの時間が取れなくなるころには彼らの不満は既に限界まで達しようとしていた。そこで委員会がとった方針は【ジムバッチを4つ持ったトレーナーには自身の全力の半分までを出してよい】という、当時の委員会でも賛否の分かれる案だった。

 これによって再びチャレンジャーが大きく減少するのではと思われた対策案は、しかし委員会の心配を良い意味で裏切った。幼いころから懐に温めていた憧れは多くの敗北を喫しても諦めきれない大きな夢だったのだ。これによりこの地方のトレーナーたちはまた大きく力をつけ、いつしかガラル地方と比べても引けを取らない、バトルが盛んな地方としてその名を世に知らしめることになったのだ。

 

~閑話休題~

 

 そんな歴史などかけらも興味のないあなたは、第一の関門と呼ばれるここ【カイドウシティ】で行われるだろうジムリーダーとのバトルに思いを馳せるが、自分の心を落ち着かせて務めて冷静に情報収集を始める。

 

 ジムリーダーに就任したての新星ならともかく、1年以上勤めあげたジムリーダーの情報ならばその町の常識ともいえるぐらいには広まっているのだ。中にはいわゆる初見殺しと呼ばれる戦法を取るジムリーダーもいるということをあなたは前回の【ホワイトシティ】での戦いで思い知ったのだ。同じ轍は踏まないことを誓ったあなたはこの都市のジムリーダーについて調べた、のだが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 困った。あなたは凄く真剣に語っている褐色の青年と向かい合いながらも、内心この話はいつになったら終わるのだろうかなどと失礼な気持ちを抱いていた。

 

 

 

 「今あのおじいちゃんが打ってる台あるじゃん?あれって前日のデータ的にも据え置き濃厚なのよ。しかもかなり高設定っぽいグラフしてるから期待値高いし。だから狙うならその台の周りが安定だと思うわ。この店って全台高設定というよりも島ごとに高設定入れてるみたいだから狙い目はそのへんかな」

 

 

 恐らく彼は善意で教えてくれているのだろう。だが専門用語らしき単語が頻出するせいで話の8割ほどが理解できない。こんなことなら彼に質問などしなければよかった、と思うのは我が儘だろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻はおよそ3時間ほど前まで遡る。

 

 

 あなたは自らが集めた情報についての真偽を確かめられずにいた。なんせその情報のなかには信憑性の高そうな情報以外にもあからさまに眉唾物と思しき情報も存在したからだ。

 

 曰く、この都市のジムリーダーは炎タイプのエキスパートであり、エースのキュウコンは不思議な青い炎を操る。

 曰く、彼は都市の見回りと称して喫茶店のモーニングセットを制覇しており、運がよければ直に会って話もできるとか。

 曰く、この町の目玉である地方でも随一の規模を誇る大型カジノのオーナーを兼任しているらしい。

 

 とまあ玉石混交の情報だが、その中でもあなたがひと際気になるものが、

 【カジノチップの景品のなかにはジムリーダーの手持ちポケモンのデータが存在する】

 という俄かには信じがたいものであった。

 

 まさか自分の情報を金で売るような行いをジムリーダーがするわけないだろう。そんな自身の常識を否定しきれないのは、これまでにここを突破したジムチャレンジャーの多くがこの都市での時間の大半をカジノで過ごした逸話を聞いてしまったからだろう。

 

 

 しばらく悩んだあなたが出した結論は―—―—―—―—

 

 

 

 

 

 「いらっしゃいませ、お客様。本日は当カジノへのご来店誠にありがとうございます。本日はどういったご用件でしょうか?」

 

 

 

 乗り込むことにした。田舎で育ったあなたにとってこんなにも煌びやかな施設はとても珍しいものだったのだ。興味が引かれてもしかたないというものだろう、とどこかの誰かに言い訳をしたあなたは、本来の目的を受け付けの人のよさそうなスタッフに尋ねた。

 

 

 「ジムリーダーの情報・・・ですか。ええ、確かに当カジノではジムリーダー兼オーナーをされている『伏見』様の情報を一つの景品として取り扱っております」

 

 

 

 やはり、あの情報は真実だったのか・・・

 

 

 「ですが、その交換に必要なチップ枚数はそう簡単には手に入りません。場合によっては、当カジノでのお時間よりも早くジム突破が叶うやもしれません。それでもよろしいのでしょうか?」

 

 

 まあ、なにも本気で全てのポケモンの情報をカジノで集める気はない。あくまで初見での突破が難しそうなエースポケモンのデータさえ手に入れられたのなら僥倖、儲けものである。

 

 

 「かしこまりました。でしたらこちらからは何も言いません。私たちはジムチャレンジャー様の勝利を心より願っております」

 

 

 ですが一言だけ、とスタッフは言い含めて

 

 

 「ギャンブルで身持ちを崩すお客様もおられます。どうか手段と目的が入れ替わることがありませんように・・・」

 

 

 そう忠告したスタッフからは、言いようのない説得力があった。

 

 

 

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