新しい、殺人鬼…?   作:さや

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まさか勢いだけで書いた悪ふざけに、感想をくださる方がいるとは思わず…ありがたいかぎりで、にやにやしたり思わず声にだして笑ったりしながら読ませていただきました。
申し訳ありませんが、返信は控えさせて頂きます。物すっごい脳味噌を蕩けさせた悪ふざけに、気の利いたコメントを着けてもらい書いている人も楽しんで居るのですが、面白い感想に面白い事が返せないのです…すいません。

それでも読ませて頂き、うっかりまたふざけてしまう位には大喜びしています!


第2話

 強力な撥水加工がされているのか、黒く重そうな外套をぬらりと赤い血が滑り落ちていく。同じ黒の帽子も、汚染物から保護する口元のマスクも。僅かに覗いた目元さえも、赤黒い血糊に塗れ、ぽたりぽたりと地面に金臭く粘度を持った雫を落とす。

 

 黒づくめ、血まみれ男の唯一覗いた人間らしい部分である相貌に光はなくどんよりと淀んでいる。その癖に、今にも目前の獲物に食らいつきそうな獰猛さがある。

 

「俺が殺人鬼? 馬鹿を言うな。俺以上に真っ当で正常な人間は、ヤーナムのどこを探したって居ないぞ」

 

 そう心底不服そうにして、右手に握りしめていた引き千切った臓物を放り投げる。

 不健康そうに変色し、黄色い脂肪と血を絡みつかせた臓器がべしゃっと湿った音を立てた。

 空いた腕を組んで、まっくろな"不審者"はふんす鼻を鳴らす。

 

「鏡みてからもういっぺん言ってみろ」

 

 古参キラーであるトラッパーはとても正しい事を言った。お前のような生存者がいるか。どう見てもこっち側だ。だがお前のような後輩など要らん。

 

 キラーの待機場所にまで降って沸いてしまった件の"不審者"、スピリットの言う所の『ナマハゲ』の掛け声と共に、ぱかりと亜空間に開いたハッチから『やぁ』とばかりに降って来た。

 

 性被害に遭ったスピリットは、ひっと小さく悲鳴を上げてツインズの姉とハグをひしっと抱きしめ後退し、ナースはそんな健気な彼女を庇う様に前に出た。

 

 そしてひょっこりやって来たクラウンを見るなり、徘徊中一度も使う所を見た事無かった馬鹿みたいな口径の銃をクラウンにぶっぱなし、有ろうことか、素手をそのままでぷりんとした彼の腹に突っ込み臓器を掴みだし、引きちぎった。

 この"不審者"のメメントモリだろうか。キラー相手に使うな。

 

 

 当の"不審者"はデブと鐘女は見つけ次第殺さねばならぬ、といっそう目を淀ませ唱える様に繰り返してる。

 

 エンティティに目を着けられたキラー全てが今の状況を望んだ訳ではない。追い詰められた末に辿り着いた人物も居る。それでもまあ、大概お察しな感じの人物だ(どんな経緯でお察しな人格になったとしても、現実がそこにある)。

 せっせとご飯を集めては、後輩の世話を焼くが、お察しな連中ばかり集まればそりゃあ揉め事も起きる。

 

 直近ではデモゴルゴンが誰彼構わず噛みついた。ハントレスに『めっ!』とお口チャック(お口を使用不能な感じに叩き潰す)をされて少し大人しくはなった。

 成る程。こいつもその類かも知れない。綺麗にヒトガタをしている上に、喋る分質が悪いが……。誰かハントレスを呼んできてくれ。

 

 

 

 

 結論から言おう。"不審者"改め自称"狩人"は消失した。

 狩る側と名乗るのなら、やはり新しいキラーなのではと思うが、断固血まみれ臓物濡れの人物は認めない。

 

 女性キラーが遠巻きにし、ピッグなどは完全にゴミを見る目をしている(被り物の豚越しにさえ冷たい視線が漏れている)。

 真っ当に会話できる連中で(ゴーストフェイスは逃げやがった。恐らくサイコパスは他のサイコパスが苦手とかの、ソレだ)何故ここに来た? と尋ねてみてもさっぱり要領を得ない。

 

 悪夢の辺境で苗床糞野郎に神秘汁とナメクジをぶっ掛けられたり、モツを抜いたり抜かれたりして居たら、いつの間にかこの霧の世界に居たのだそうだ。だがそう言う事はままあるし、記憶も結構無くなるし、『ジョウイシャ』の気配がするのなら狩らねば成らぬ。

 穢れた獣も、気色悪いナメクジも、頭のイカれた医療者共も殺し尽くすもんだ。そうだろう? と力説する。

 

 一つ分かった事は、この狩人はエンティティに一切の接触をしていない。

 キラーもサバイバーも漏れなくあの邪悪な存在に囚われているのに。

 

 尚更深まった異物感に、顔を見合わせた所、雄たけびと共に走り込んで来た鬼が棍棒のフルスウィングで問題の狩人の頭部を吹っ飛ばした。

 彼の怒りももっともだ。それなりに遠縁だとは言え、かつて彼の誇るべき物だった血統の子孫の娘が辱められたら、そりゃキレる。仕方ない。狩人は有罪だ。変態行為に走る者を世界は許しはしない。

 

 人間の首がゴキリとイイ音をさせ折れ、半分潰れ歪に成った頭部が放物線を描き飛んでいく。重い頭がごととと転がるのに、一拍遅れてから取り残した体がどさりと倒れた。

 

 なんとも見事な一瞬だった。何故か背景に白い花園と大きな満月を幻視する程に、美しい光景だった。

 

 変態は誅された! キラー達に平穏が訪れた! 完! とは成らない。

 ごろりと転がった狩人の体は月光に溶けるようにふわりと霧消した。エンティティに回収される事もなく。

 

 そして件のクソ上司からの通達が舞い込んだ。

 

エンティティだよ!

あの外来種ばぶちゃん新参者は嫌いだよ!

でも使えるから早急に懐柔するかどうにかして、儀式に参加させてね!

殺せるなら殺してもいいよ! 頑張って!

でもエンティティあの傲慢ちき嫌いだからノータッチを貫くよ!

皆でどうにかしてね!

エンティティでした!

 

 やはりクソ上司だった。

 臓物と多大な脂肪をぶちまけて転がって居たクラウンも、狩人が消えてからやっと修復して貰ったが、折角集めたBPが全て無くなっていた。解せない。

 

 

 

 

 

 

 それから数度儀式が繰り返されたが、幸いな事にあの後誰も狩人の姿を見ては居ない。

 そして見失っていた(元々いまいち居るのか居ないのか分かり辛い)ナイトメアがひっそりと戻っていた。なんだか、格子状の傘立て……? のようなものを被ってゴキゲンに笑いながら駆け抜けるオッサンに追い回される悪夢を見ていたそうだ。

 

 夢の世界を支配する殺人鬼が? 悪夢?

 

 皆不思議に首を傾げたが、人間のキラーにはそんな摩訶不思議な空間の事など分かりはしない。

 それでもオッサンがオッサンを笑顔で追い回すなんて光景は確かに悪夢だろう。

 

 

 

 

 

 

 すっかり不審者ショックも収まった頃、また妙なものを見つけた。

 焚火の傍らに、うっそりと佇む今夜の贄の中に見慣れない姿の者が居た。

 

 丈の短い、背を覆う程度のマントに黒フード。茶色のくたびれたベストに、捲り上げたシャツの袖。腕にはどう見ても衛生的ではない包帯で、未だ点滴の管の一端を止めている。

 俯いて居て、残り三人のように顔の判別は出来ない。

 

 まあ、あの黒い変態不審者狩人のように気にすることはない。他のサバイバー同様、凶器らしい凶器もなく、両腕を脇にだらりと下げている。

 きっと新しいサバイバーか何かだ。

 

 さあ今晩も狩りの儀式が始まる。

 

 

 

 




獣(広義)狩の夜が始まった。
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