新しい、殺人鬼…?   作:さや

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第5話

 狩人は激怒した。必ず、かの邪知暴虐の上位者を除かなければならぬと決意した。狩人には奴らの道理がわからぬ。狩人は、どこまで行っても獣狩りである。仕掛け武器を振るい、臓物ぶちまけて来た。けれども高次からの傲慢に対しては、人一倍に敏感であった。

 

 つまるところ、この霧の世界においても己の都合を人間に押し付ける上位者は大嫌いだし、なんか本能的にぶん殴りたくなるのだ。

 ここの上位者は一体何の為に"悪夢"に人を集めるのかは知ったこっちゃないが、居るのならぶっ殺す。というのが狩人の性だから仕方ない。

 まあ、もし、彼の女王の様に甘く芳しい血を持つ女神なら、赤子をこさえてみるのも吝かではない。基本的に上位者も獣も虫もキチガイ共も全て等しく腸ぶちまける、真の男女平等主義な狩人様も、上位者の端くれでもあるのだから仕方がない。

 

 そんな訳で今日の儀式の場にも、狩人は上位者の気配を探してうろうろしている。

 

 その姿を横目でちらりと見た殺人鬼は、アレを思い出す。ほら、アレ。猫が何もない空間をじぃっと見詰めているアレだ。

 特に地下が気になるのか、頻繁に遭遇する。迷惑極まりない。地下でフックの周りをぐるぐる回り、壁や床をガンガン殴り、珍妙なポーズをする狩人は控え目に言っても、大変心臓に悪い。地下の肉フックを実質潰されれば、それは迷惑だ。

 

 そして最近の狩人には新たなる奇行が追加された。

 

 こいつ、呪いのトーテムを見つけると、即刻握りつぶすのだ。

 一瞬で。ちょっと小首を傾げた後に、明りの灯った頭蓋骨を見つけると、すっと片手で持ち上げ僅かに掲げたまま、一息にぐしゃりと握りつぶしやがる。

 そしてそんな事をしても、何か不服そうに再び小首を傾げて去っていく。

 

「ア゛ーーーーッッッ!?」

 

 その現場を見た殺人鬼共は、随分ときったねぇ悲鳴を上げった。そりゃそうだ。

 

 だがそれでも、最近は狩人も随分丸くなった。いや、丸く……? デススリンガーや、ヒルビリー辺りの手先の器用な連中と武器をがっちょんがっちょんやってる間に、問答無用で殴り掛かって来る事は無くなっていた。

 それでも、基本的に狂人で、隙あらば臓物を引っこ抜いて、BP奪って来ようとするので、そっと端に置いて触れない様にして居る。

 

 この儀式を新たな狩場として歓び、楽しんでいる奴も居るが、その辺の奴らは空気を読んで口を噤み、詰まるところ、殺人鬼も生存者も何者かにこの場に閉じ込められているに過ぎない。そう狩人が理解したのも大きいのかもしれい。

 だがそれはそれとして、事情を知って居てもぶっ殺そうとして来るので狂人には違いないのだ。殺人鬼共に人間性を疑われる今日この頃。

 つまり狩人は爆発物的な扱いだ。

 

 戦略兵器を突っついて、辺り一帯無に帰す位なら、ちょっと(盛大に)儀式を邪魔される位、爆弾の保管費だと思って諦めた。

 

 多少の"おいた"なら、ハントレスに告げ口すれば、例のデモゴルゴンにやる『めっ!』で止められる事が発覚した。

 一体二人に何が有ったのかは定かではないが、"狩人"どうしで通じ合うものでもあったのだろうか?

 取り敢えず、ハントレスが謎の鉄塊を握り、狩人を撲殺した際に「はっ、が、ガラシャ先ぱ……!?」そう言って死んだという事実が有る程度だ。

 

 

 

 

 

 

 

 プレイグはそれを見つけて、一瞬びくりと肩をすくめて、進行方向を変えるべくそっと後退した。

 基本的にスピリットの被害例から、男性キラーとは別ベクトルに女性キラーは狩人を毛嫌いしていた。ピッグやリージョン(ジュリー)などは、性犯罪者は煮殺せ! とでも言いそうな目で見ている。

 

 それと同時に、彼自身もあまりプレイグの事が好きではないらしい。

 ブライドの様に、真っ向から殺そうと背後を狙ったり、上位者(彼女はなんとなくエンティティの事だと思って居る)憎しと狂気に染まる目でもない。

 ただ何となく、苦手そうに距離を取られている。

 

 そしてこれ幸いと、彼女も狩人から距離を取っている。

 

 しかしそんな狩人だが、プレイグ限定で起こす迷惑な行動があった。それが現在目の前で行われている。紛れもない奇行だ。

 

 献身の淀みに向かって、ぼそぼそと独り言を繰り返している。

 いや、何か会話をして居るかの様に妙に間が空く。使いたいのですけど、退いてくれますか? 正直おっかないので、そんな事も言えずにおずおずと後退するしかない。完全にではないが、能力を潰されている。

 

 今日の狩人は生存者として紛れ込んでいる訳ではなく、幽鬼の様に存在しているパターンなので、生贄は四人だ。その状態で能力の強化を邪魔されてしまうのは、少し堪えるが仕方がない。

 そう思い直したと事で、彼女ははたと違和感に気づく。

 

 四人?

 そう。確かに今日は、生存者が四人居た。

 こう何度も儀式を繰り返す事を強制されれば、殺人鬼側だって、生存者達の顔を覚える。だが今日この狩の儀式に参加させられた彼らの顔を、順に思い返してみると、人影は三つしか思い出せない。

 何度記憶を巡っても、追想される人影が三つで止まる。

 

 おかしい。

 

 顔が思い出せない処でなく、確かに『今日は四人か』と確認した意識をおも否定する様に、最後の誰かは人の形としてさえ思考に上らない。

 

 最近のこういうおかしな現象は、大抵狩人のせいだ。

 でもその当の狩人は、相変わらず淀んだ水の湛えられたオブジェに向かい何事か話して居る。

 

 ぴしゃり、ぴちゃり。

 湿った水音が背後からする。今まで狩人ばかり注視していて気づかなかった、訳ではない。そいつが音も無く佇んで居ただけだ。

 

 蒼白く、ほんのりと発光している悪夢の苗床カリフラワーが。

 

 人間の腕の代わりに、だらりと触手を下げ襤褸切れを(正直プレイグやスピリットよりは布面積が多いが)纏った、人か疑わしい物体。

 

「やぁ! 私、神秘苗床まん! 神秘はいいぞ……!!!」

 

 そんな実にフレンドリーな声と共に、一体どこから噴き出しているのか分からない、謎の白銀に煌めく神秘汁と、小さなナメクジを、奇怪に身を捩りながらぶっ掛けて来た。

 

 酷く膿み腐り爛れてしまっては居るが、円くはっきりとした凹凸を持つ美しい女体に、正体不明の謎の液体と、軟体動物は張り付きその形をなぞる様に蠢いて居る。

 

 現代よりも色濃く神秘が残る時代を生きていた筈のプレイグも、神秘汁と神秘ナメクジに「ひっ」と潰れた悲鳴を上げて、意識を手放した。

 

 本来その場には無い筈の、白々とした満月が見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 最近儀式の場には、常に満月が浮いて居る。

 白々と、丸く、何処に居ても全てを見下ろす様に、空が見える場所なら常にそこに鎮座している。

 だが殺人鬼も、生存者も、まるで最初からそうで在ったかのように気にも留めない。

 

 何夜儀式が繰り返されようと、そこは月が居る。




(もし続きが有れば)
次回!恐怖の苗床カリフラワー 99の神秘を添えて


ヘザーがUFOエンドでハリーも生きてる時空に帰り、静岡を宇宙の科学ぱぅわぁで焦土にして、霧の世界に来る事が無く成ったので代わりのサバイバー入れて起きました。
狩人が迷い込む前に殺しあってた苗床と恐らく同一人物。
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