今度はお前か
ちくしょう
配点(怒り)
俺達しっと団は三方ヶ原の敗戦によって意気消沈し、しばらく活動を自粛していた。
しかしいつまでも沈んでいる俺達ではない。
ノヴゴロド戦を終えて有明に帰還してから数日後。今日も今日とてしっと団は活動に勤しんでいた。
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「……では定例会を始める。今回の議題は言うまでもないと思う。通神帯(ネット)の方もパンクしそうな勢いだ」
言って、彼は室内を見渡す。
普段から負のオーラに満ちた集まりだが、今日はいつにも増して混沌としていた。
ある者は柱に頭を打ちつけ、ある者は黒いフードを被ってぶつぶつと呟き、ある者は虚ろな目で一点を眺めている。
これも全て一人の男が原因だ。
彼自身、これまでに筆を十本ほど駄目にしてしまった。
「「成実……」「キヨナリ……」いちゃいちゃしやがって……あああああああああ!!」
「姉好きの同志からまさか裏切り者が出るとは、誠に遺憾……!」
「プレミア付きのエロゲ貸してやった恩を忘れやがって!」
「成実×政宗本は百合界隈では人気ジャンルの一つだったのにねぇ」
「最近来た奴等にはロボに間違われてたくせに……」
皆は堰を切ったように怨嗟の叫びを上げ、それは収まるどころか激しさを増大させる。
「英国であのショタっ子が倒していればこんな事には……」
「俺の記憶では半竜って崖から吊るされたりする情けないイキモノなんだけどな」
「つーか何なのあの攻略速度。スキップ機能でも付いてんの? セーブデータロード? ふざんけんなぁ!」
「ぶっちゃけ祝福している自分もいる。ああ、忍者は駄目だ」
「「――するで御座る?」「――するで御座る?」「――するで御座る?」「――するで御座る?」……」
「達磨、良いよね……」
「いや、それはドン引きだ」
「おいおい、この壁もろすぎやしませんかね?」
それでも一通り恨み辛みを吐き出した後は現実的な対応に話題の方向性がシフトする。
「伊達・成実でも内藤・清成でもいいから審問に使えそうな逸話はないのか!?」
「家康を怒らせて危うくハラキリ! とかはあったらしいけど、未遂に終わっている」
「竜殺しの武器探そうぜ! ドラゴンスレイヤークエスト、略してドラスレ」
「祝いの品として一部マニアの間で大人気のガリレオ×ウルキアガ本を……」
「……名前呼び機能付きのホモゲー半竜名義でプレイして通神帯にアップする」
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暗い情念が渦巻く中でふと、彼は気付いた。
メンバーが一人足りない。常に全員が揃っている訳ではないのだが、問題の人物は欠席なら連絡を寄越す男だ。
「鈴木はどうした? 機関部の仕事?」
「――彼なら九州に旅立ったよ」
「はあ?」
「伝聞でしか知らないけど、地摺朱雀の整備を手伝いつつ戦闘ログを見ていたら、急に様子が変わってそのまま武蔵を降りたとか」
……理由はよく分からないが、何か、譲れないものがあったのだろう。
彼はそう納得し、対半竜会議に加わる。
「IZUMO製の藁人形あるから今度試してみよう」
「やってみるか」
「うむ。今回の件で我々が学んだのは、どんな苦難を前にしても諦めず、必ず再起する事だからな」
「――Jud.」
そうして彼等はいつも通り平常運行だった。
くそ、ウッキーめ! MOGERO!
……まあでも、アレックスと竜美姉さん思い出して「幸せになりな」と思った自分もいる。