「えー、我がRX団も着々と戦力を拡大しております。これもひとえに団員皆さんの努力の賜物です。という訳で本日は慰労という意味も込めまして日々の戦いを忘れて存分にお花見を楽しみましょう。では乾杯!」
「「「「「「「「
格式ばったボスの挨拶も終わりそれぞれが手に持ったコップを掲げて乾杯を取る。今日は珍しく全員が集まっての花見だったのだが……。
「まあ、花なんかねーけどな!」
ボスの言葉通りここはRX団のアジトの会議室。アジとの共有スペースの中では最も広いこの空間を用いて花見をしていたのだ。しかし、花はクリップボードに書かれた桜の木だけだった。
無論これには訳があった。
「こういう時悪の秘密結社って辛いよね。流石に今話題の新人ヒーローを倒しちゃった組織が市民に交じってお花見するわけにいかないしね……」
「ボスとかトリオとかはマスク外せばいいかもしれないがジェネラルちゃんとかGGちゃんとか黒獅子くんとかは、ねぇ」
ボスの残念そうな声に“男”が言う。新聞にも掲載される程注目が高まっていた新人ヒーロー、仮面ソルジャーは初出撃の黒獅子くんに一撃でやられ病院送りになったのだ。その結果RX団の危険度は上がりそれと対峙しているブレイブマンの評価も上がる事となった。とは言え時期は花見前だったこともありこうして気軽に花見に行くことが出来なくなったのだ。
「あの、なんか……。ホントすみません……」
「あー、いいのいいの。黒獅子くんはむしろお手柄だったよ」
「そうだぞ。どっかの誰かさんは毎回ヒーローのケツ追っかけてぶっ飛ばされているからな」
「あれ?それって私の事?」
「お前以外に誰がいんだよ」
納得いかないと不満そうなブラックジェネラルに“男”は突っ込む。いつもいつも出撃してはブレイブマンによって倒されるのがお約束となりつつある。最近では“男”の会社でも「自分のファンに攻撃するヒーローがいるらしい」と事実とは言い難いが否定できない噂が流れ始めるほどだ。“男”は否定内容がない為訂正する気は無いが。
「黒獅子のおかげでRX団の知名度はうなぎ上りだよ」
「秘密結社が知名度を上げていいんですかね?」
「秘密結社はロマンです」
その様な会話がされつつ花見が進むがここで“男”は気づく。自分の隣の隣の隣、一番左端に座るGGちゃんが暗かった。隣に座る2号とその隣の1号まで暗くなるほどだ。
その様子に気付いたボスがGGちゃんに尋ねる。
「ど、どうしたのGGちゃん。悩み事?」
「……いえ。そう言う訳ではないです」
「一体どうしたんだ?季節外れの寒波ってくらい寒くなってきているんだけど……」
「……黒獅子殿はカッコいいですよね」
「……うん?う、うん……」
「ライオンの怪人という時点で完成されていますし、それに“黒い”っていうのもポイント高いですよね……」
淡々と話すGGちゃんに何となく察する“男”。それと同時に何故自分の話題が?と分からない様子で困惑する黒獅子くん。
「こう、いかにも強い怪人っぽいビジュアルといいますか……」
「……そ、そうかもね」
「拙者のイメージカラーも、そういや“黒”なんですよね……。被っちゃいましたね、アハハ……ハハ……」
そこまで言うとGGちゃんは一旦言葉を途切る。そして次に出てきた言葉に雰囲気は更に暗くなった。
「まぁ、そちらはライオンでこちらはゴキブリなんですけどね」
「(Oh……)」
「しかも初陣で結果を残してて……。凄いっスわ黒獅子殿。話題のヒーローをワンパンKOとかぱないすわ」
「い、いえ、あれはまぐれでしたし……」
黒獅子くんがそう言うがこの場に置いては最悪の手だった。とは言え彼はGGちゃんの初陣を知らないため仕方がなかったのかもしれない。
「それに引き換え、拙者の初戦ときたら……。駆けずり回るしか能がないうえに自ら尻を晒して泣きながら逃亡という醜態っぷり」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
「ふふ……、まさしくゴキブリの如き有様でござるなぁ。虫けらで御座候なぁ……」
「(思ったより深い闇を抱えてたよこの娘……)」
「(一瞬で部屋中の温度が下がったぞ……)」
「(誰かなんとかしてくれ……)」
まるでお通夜の如き静けさと雰囲気の暗さを感じながら誰も何も言えなかった。それだけ彼女の初出撃は酷かったのだ。それと同時にこれ以上機嫌を下げるのは避けたかった。
「だ、大丈夫!安心しなさいGGちゃん」
そこへ救世主が現れた。彼女の反対側に座っていたブラックジェネラルが声をかけたのだ。しかし、声をかけたのは
「なんてったってアナタは!安産型なんだからみぱすっ!!」
フォローにすらなっていない、“男”並みのセクハラ発言をしたブラックジェネラルのお腹に秘書サンの拳と爆破がめり込む。見なくても分かる程激怒した秘書サンが蹲るブラックジェネラルを見下ろしている。
「それは止めなさい。それはやめなさい」
「ジェネラルちゃん。私だって時と場合、相手を考えているんだよ?」
「ごめんなさい……。ごめんなさい……」
秘書サンと“男”にブラックジェネラルが必死に謝る。“男”だってそちら方面に体勢なさ過ぎて手を出せばガチ泣きされそうなGGちゃんには手を出していない。秘書サンに関しても彼女にも利があり、且つ限界を超えないラインを見計らって行っている。ブラックジェネラル?彼女に遠慮なんて必要ねぇべ。
そんな彼女たちをしり目に黒獅子くんが意を決したように話し始める。
「GGさん。落ち込まないでください」
「黒獅子殿……」
「自分が今、怪人として活動できているのも全ては最初に“人体改造”を成功させたという実績を作ってくださったGGさんのおかげですから!」
「確かにそうだな。私が黒獅子くんを誘った時もその話をして安全面をきちんと説明できたおかげだしな。GGちゃんの功績はすさまじいぞ」
黒獅子のフォローに“男”が補足して言う。多分科学者サンなら順番が逆だったとしても普通に成功させていただろうと“男”は思っていたが今言えば確実にGGちゃんへの止めとなるため言わない。セクハラ大好きド変態だとしても空気を読むくらいはできるのだ。
「それに昆虫とかの運動能力ってすさまじいんですよ!それを使いこなすGGさんはすごい怪人なんです!だから自身を持ってください!」
「そ、そうでござるかな……」
昆虫だから嫌というよりはゴキブリだから嫌なんだと思うが本人は立ち直りつつあるため誰も突っ込まない。せっかくその気になっているGGちゃんの気分を落とす必要はないからだ。
しかし、その時部屋全体にパーンという音が響く。黒獅子くんの後ろでペケくんが地面をたたいたのだ。大きな音がしたため自然と全員がそちらを向く。そしてペケくんの手の下から出てきたのはぺちゃんこになったゴキブリだった。その場の誰もが「やばいっ!」と感じたが時すでにお寿司だった。
「ハッ!クソ虫が!のろいわザコが!」
「……」
一瞬でGGちゃんの顔から表情が抜け落ちる。そしてそのままテーブルに突っ伏して先ほど以上に落ち込む。ジェットコースターの如き下落に黒獅子くんやボスが「ああああ!」と悲鳴を上げている。そんな雰囲気を作り出した元凶、ペケくんはやってやったと言った雰囲気を出したが瞬間彼の頭を“男”が掴んだ。
「く そ ね こ。お前、一体何をやってんだ?」
「……」
頭をアイアンクローで締め上げられながら聞こえてくる声にペケくんは死を悟った。そして恐怖のあまり下の方から何かが流れる音がする。ペケくんがとる行動は決まっていた。
「……すいませんでした。もう二度としません。許してください」
「はぁ?」
ペケくんの願いむなしく“男”によってボコボコにされていく一匹の自業自得な猫。彼を庇ってくれる者はおらず全員が2号の励ましの言葉で顔を赤くするGGちゃんを見て安堵の息をつくのだった。
話進まないし“男”が本格的に変態行動を最近取れてない……。次回は暴走させたい
男にヒロインを付けるなら誰がいい?※あくまで参考でアンケート通りになるとは限りません
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秘書サン
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ブラックジェネラル
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科学者サン
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GGちゃん
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薔薇姫
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鉄子ちゃん
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インパクト
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え?ヒロインなんていらないでしょ