シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!? 作:ボーイS
セレナちゃんが定期審査中にアガートラームを纏えるようになって一週間が経ちました。
あれから研究員が最初にシンフォギアを纏えたセレナちゃんの身体を隅々まで調べる為に様々な検査をしてまるでモルモットのように……
「ドクター!」
「ぶぅるるるるるぁ!」
なりませんでした!
僕は腹に力を入れて部屋の扉から急に現れ笑顔で飛び込んでくるセレナちゃんを受け止めるために踏ん張り、そしてセレナちゃんが怪我をしないように優しく受け止める。なんとか衝撃も抑えられて首と腰は死守できました。
あの後実際にその場にいた研究員は全員喜びましたよ。ですが直後最初の被害者である男の子の事を思い出していつセレナちゃんに何かあっても救えるように待機しました。
ですが結果は何も起きる事なく、晴れてセレナちゃんはアガートラームの完全適合者として登録されて研究所内はお祭り騒ぎ、は大袈裟ですがセレナちゃんの無事と研究が上手くいった事で明るい雰囲気になったのは確かです。
後日、その事を知った局長は報告書をまとめて上に提出し、セレナちゃんの今後がどうなるのか僕もハラハラして報告を待ったのですが、意外な事にセレナちゃんはこのままF.I.S.に残る事になった。
というのも、セレナちゃんはアガートラームをなんの反動もなく纏えるのだがまだ安定して使えないからだ。まぁいきなり使えるようになった力を自由自在に使えるようになるほどシンフォギアは甘くない、という事だ。
局長はその事を報告書に残し、他のシンフォギアの比較対象だとかリンカーの件とか色々適当に理由をつけてセレナちゃんが残るように取り計らったようです。いくら子供が好きだからと言って局長も危ない橋を渡るものですねぇ。
「ふ、ふふ……そう何度も僕の不意をつけると「「ドクター!」」両脇腹にハリケーンミキサー!!??」
な、なんだと……?セレナちゃんが僕の動きを封じ、隙の出来た僕の脇腹に向かってセレナちゃんの背中の影に隠れていた切歌ちゃんと調ちゃんが追撃……!?な、何というコンビネーション!完全に僕を殺しに来てる!?
「そ、それは読めませんでし……た……」
「「「ドクター!?」」」
「貴女たちいったい何を騒いで、ってドクター!?」
しゃ、洒落にならない痛みに僕は思わず近くの机に両手をつく。うん、ヤバい。折れてると言われても納得できる痛みだ。というより少しでも動いたらギリギリ折れてない骨が折れてしまうような気がする痛みだ。
僕は後から来たマリアちゃんに脇腹辺りを慰められながらピクリとも出来ずに脂汗を流すしか出来なかったんですよ……
「ほら!貴女たちちゃんと謝りなさい!」
「「「ごめんなさいドクター……」
セレナちゃん、切歌ちゃん、調ちゃんが同時に頭を下げて僕に謝ってくる。すごく申し訳なさそうに、特に切歌ちゃんと調ちゃんなんて今すぐにでも泣き出しそうで逆に僕の方が申し訳なくなりますよ。風鳴弦十郎なら余裕で受け止められるのに……僕も少しは鍛えるべきですかね?
「グフッ……だ、大丈夫ですよ……み、皆さん、今日はどうし、オウフ」
痛みに耐えて四人を安心させようと笑みを向けようとしますが首を動かしたらまた脇腹に痛みが……後で医務室で診てもらおうかな。
「はぁ、今日は久しぶりにセレナに時間が出来たから切歌と調がはしゃいじゃってね。マムや他の子も呼んで小さなパーティーでも、という話になったのよ」
「そうなんですか」
あの日からシンフォギアを纏えたセレナちゃんはこの一週間、いつもの実験の内容を変更して身体を調べられたり色々忙しかったですからねぇ。その間僕の首と腰は……切歌ちゃんと調ちゃんという別の敵がいたので安全ではありませんでしたね。
それにしても、F.I.S.が予想以上にホワイトな場所になりましたね。普通なら被験者たちが自分たちで楽しくパーティーを開くなんてあり得ませんよ?下手したら殺処分とかあり得ますからね。それが今や勉強や運動ができる、学校のような場所になっているとは誰が想像出来ますかねぇ?
ちなみに、検査と託つけてセレナちゃんに不埒な事をしようとした輩がいましたが、その人も翌日にはこの研究所内からいなくなっていたのですよ。不思議な事もありますねぇ……フフフ。
「そうデス!だからドクターにも来て欲しくて呼びに来ました!デス!」
「そうですか。それはありが……うん?」
んん?なんか切歌ちゃんに違和感を感じたぞぉ?
最近ナスターシャの教育もあって切歌ちゃんも調ちゃんも話し方がキチンとしたものになって来ていますが、それ以上に違和感があったぞぉ???
「えっと……切歌ちゃん?」
「なんですかデス!」
「んん、その喋り方はいったい……」
な、何故だ。何故いつの間にか切歌ちゃんがデス語を話すようになっている!?前まで少し舌足らずな喋り方だったけど、それが無くなったと思ったら何故今度はデス語なんですか!?
「えへへぇ、ドクターの真似デス!」
「僕の?」
「はいデス!」
僕の頭の上に?が浮かびましたが、自信満々に後光が見えるくらい眩しい満面の笑みを浮かべる切歌ちゃんに浄化しかけてしまいます。いや、ほんと天使やでこの子。
「……僕ってそんなに「です」って付けていますか?」
「え?うーん……そうね。他の人より比較的に多いかもしれないわね」
「そんなつもりはないんですがねぇ……あ」
そんなつもりは無いと言った直後に舌の根も乾く隙もなく言っちゃいましたよ僕。
(えぇ……つまり僕のせいで切歌ちゃんがデス語に目覚めたという事ですか?……あ)
また言っちゃったよ。これは僕も意外と重症かもしれませんね。
今考えたらウェル博士になってから〇〇です、とか〇〇ですねぇとか結構言ってましたね。無意識って怖い。
「そんな事よりも早くドクターも行くデスよ!」
「マムも他の子も待ってるよ?」
「分かりました。マリア、セレナ。行きましょうか」
「ええ。こら!切歌、調!廊下を走ったらダメでしょ!」
子供らしく切歌ちゃんと調ちゃんが廊下を走っていく。元気ですねぇ。二人を注意するマリアも二人を追いかけるために走っているので本当は注意するべきなのでしょうが、周りに人もいないので大丈夫でしょう。多分。
廊下を走っていく三人を追いかけようと僕も歩き出そうとしましたが、その前に袖が何かに引っかかったように引っ張られたのを感じ後ろを振り向く。するとセレナちゃんが俯いた状態で僕の白衣の袖を摘んでいるではありませんか。
「どうしたんですか、セレナ?」
「……」
話しかけてみますがセレナちゃんは黙ったまま動こうとしません。たまに遠慮しながら顔を上げて僕の顔を見てきますが何かに迷っているのかすぐ目を逸らされます。ちょっと可愛いと思ってしまったのは不謹慎ですかね。
「ど、ドクターは……その……」
やっと喋ったと思ったらまだ迷っているのかちゃんと言葉になっていません。というよりいつの間にか涙目になっているので僕の方が焦って……いや、本当に今にでも泣き出しそうなんですが!?
「……ドクターは、シンフォギアの装者を探す為にここにいるんですよね?」
「ん?まぁ厳密に言えばそうではないんですが、その解釈でいいですかね」
「なら、シンフォギアを纏えた私の前からいなくなったりしませんか……?」
涙目で僕を見上げる瞳には不安という感情がハッキリと映し出されていた。
おそらく、セレナちゃんは僕がシンフォギアの装者を探すためだけにレセプターチルドレンの子たちに接触していて、装者が見つかれば次の子を探すためにセレナちゃんを放っておいて離れていってしまうとでも思ってあるのでしょうかねぇ。まったく心外ですね。
「わ、私はドクターと離れたく……痛ッ!?」
なにかそれ以上言ったら事案になりそうな雰囲気があったのでそれを中断する意味も含め、それなりの力を込めてセレナちゃんの綺麗なおでこにデコピンを当てる。ちょっと強くしすぎましたかね?
「もしそうなら最初から貴女たちに優しくなんてしませんよ。心配しないで下さい。貴女が僕の事を嫌いにならない限り、僕は貴女の味方ですよ」
僕は少し屈んでセレナちゃんの頭を優しく撫でる。うん。前より少し身長が伸びたかな。それはそれとして涙目のまま自分のおでこを抑えるセレナちゃん……可愛いですねぇ!
「な、ドクターを嫌いになるなんてありえません!」
「ははは。ありがとうございます」
いつもの調子が戻ってきたようなので少し雑にセレナちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でる。別に恥ずかしいのを誤魔化した訳ではないですよ?断じてそんな事があろうはずがございません。
「ドクター!セレナー!早く来ないと始まっちゃうデスよー!」
「ほら切歌ちゃんもああ言っているので僕たちも行きましょうか」
「むぅ……分かりました」
納得いかないのか頬を可愛く膨らませて怒っていますアピールのセレナちゃん……控えめに言ってカワイイ!(MODブ◯リー感)
そしてその日の夜はマリアちゃんたち以外のレセプターチルドレンの子供たちも集まり、夜遅くまで楽しく過ごさせてもらいました。
後日談となるのですが、例のパーティーには僕の他にもレセプターチルドレンの子と仲良くなった研究員が多々おり、それなりのお酒も出て翌日の常務に支障が出てしまいました。そしてその責任は知らぬ間に主催者になっていた僕が取るはめになりました……理不尽だ!!!
F.I.Sが少しずつリディアンみたいになって行ってる気がするのは……多分気のせいですよね!