シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!? 作:ボーイS
セレナちゃんがアガートラームを纏えるようになってからというもの、シンフォギアの研究はかなり進みました。
元々日本の天羽々斬しかデータが無かったので一つでも比較になるデータがあるだけでも捗る捗る。
今ではフィーネが開発したリンカーよりもより安全なリンカーの開発も成功しています。まぁ、勿論原作のウェルが開発したレシピのリンカーよりかはまだまだ劣りますがね。むしろわざとしていますからね。物語終盤に使うアイテムを物語序盤で手に入れるなんて不正行為になってしまいますし、何より上に目をつけられてレセプターチルドレンの子たちの負担が増える事になったら目も当てられませんからね。
とまぁ、順調に研究は進みセレナちゃんも安定してアガートラームを纏えるようになりました。激しい戦闘は厳しくともアスリート並みの動きは出来る様になって凄いですよ。
マリアちゃんも新型のリンカーを使えば身体への負担をなるべく減らしてガングニールを纏えるようにもなりました。ただまだ安定はしていませんがね。戦闘なんてもっての外です。まだ銃火器を持った生身の人間の方が戦えるレベルですね。
切歌ちゃんと調ちゃんも順調にイガリマとシュルシャガナの適性が上がっています。年齢的にリンカーは危険なので投与はしませんが、規定値ライン付近なのでリンカーを使えばシンフォギアを纏える可能性は十分あります。成長しましたねぇ。
色々ありましたが、特に目立った事故や出来事も無く平和に時間が過ぎていき、そしてセレナちゃんが先日めでたい事に十三歳の誕生日を迎えました!!!
いやぁ、あの時は凄かったですよ。マリアちゃんはケーキ作りに気合を入れてましたし、切歌ちゃんと調ちゃんも自分たちで用意出来るプレゼントを探していましてからね。こんな隔離されたような場所でなく、デパートにでも連れて行ってあげたかったのですが、残念ながらそれは叶いませんでした。もっと僕の地位を上げればもしかしたら……。
ナスターシャも何故か気合を入れてセレナちゃんに簡単なお化粧を教えていましたよ。「貴女も乙女なのだから自分を大切にしなさい」とナスターシャの口から出た時は目を疑いましたね。そして僕のその考えを察知したのか、ナスターシャのGOサインで僕の両脇腹に切歌ちゃんと調ちゃんが突撃してきたのも良い思い出です(遠い目)。
楽しかった。ええ楽しかったですよ。それは間違いありません。娘のように思って来たセレナちゃんがまた一つ大きくなるのですから。お化粧をしたセレナちゃんもまた一段と美人になっていて思わず泣いてしまうほどでした。悪い虫が寄って来ないか心配ですよ。
……でも、一つ問題があるのです。それも今後を左右するような大きな問題が。
(……ネフィリムはまだ見つかっていない、か)
そう、セレナちゃんが十三歳になってもうすぐ一ヶ月が経とうとしているのにまだネフィリムに関しての情報が一つも僕の耳に入って来ないんですよ。
(十三歳の時、という情報しか無いので十四歳の誕生日前の可能性も十分あるのですが……それにしても遅すぎる)
この研究所であの暴走事件が起きるのは確定している。そしてセレナちゃんはもう十三歳。既に見つかっているもののまだここに送られて来ていないのならともかく、本国のデータベースを調べてもネフィリムの記録は無い。という事はまだ見つかっていないという事に他ならない。
……まぁ、上が隠している可能性も十分あるんですがね。
原作のセレナちゃんは過酷な環境でアガートラームという力を手に入れた自分だけがネフィリムを止められる唯一の存在として、家族を守るためという願いのためにネフィリムと戦い、そして絶唱を使って死んでしまう。これが本来のあるべき未来です。
ですがここはそんな劣悪な環境でも無いし、アガートラームを手に入れても自分がまだまともに戦えないと理解しています。ネフィリムとの戦いもきっと無理をせずに逃げる事を選ぶでしょう。
それ以外にも前日にあらかじめデータを改竄したり、実験に必要な器具をいじってネフィリムが起動しないようにするなど時間があれば色々出来る。
(なのに、まだネフィリムは見つかっていない)
不安だけが積もっていく。ですがセレナちゃんとネフィリムとの戦闘を回避すればセレナちゃんは生き残れる。まだその希望の可能性はあります。
今はまだいつでも行動出来るようにするだけ。
「──おっと、局長に呼ばれているのでしたね」
時間を見て少し急いで用意をして自室から出る。まだ時間はありますが早めに行って損はありませんからねぇ。
局長のいる部屋に行く前に軽く他のレセプターチルドレンの様子も見に行く。みんなこの時間は勉学に勤しんだり、運動をして体力作りをしたりとまるで学校のような事をやっています。まぁこの辺りは僕の政策なんですがね。
将来、シンフォギアの実験が終了してF.I.S.が解体する事になり、子供たちが外の世界で自由に生きていけるようになった時のための準備です。
年齢に合わせているとはいえ、まだ小学生くらいの年齢もいるのでキチンとした施設か養子として受け入れられる場所も探しておくべきとは思いますが、それはさすがに気が早いですね。
みんな僕に気付くと手を振ってくれます。小学生の時にたまに廊下を歩く校長の気分ですなぁ。微笑ましいですよ。あ、よそ見して先生(実際はナスターシャのような教育係の女性研究員ですが)に怒られていますね。申し訳ない事をしてしまった。
なんだかんだで時間を潰していると局長のいる部屋までたどり着く。うん。回り道し過ぎて結構ギリギリでした。危ない危ない。
「ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスです」
『入りたまえ』
中から聞きなれた声が聞こえて入室する。結構な回数呼ばれているため局長ともそれなりに顔見知りなっているので気が楽です。……勿論、怒られてばかりではありませんからね?
「局長。今日はどう言ったご用件で?」
「うむ。早速本題だが、実は最近本国で新たな聖遺物が発見されたのだ」
……なんだが凄い嫌な予感がするのですが。
「それの起動実験をこの研究所でやると決まった。実験日は一週間後。君には現場で指揮を「お話の途中ですみませんが」……なにかね?」
いや、そんなはずはない。もしそうなら急すぎるし何の準備も出来てない。事前に準備しなければ回避出来ない未来が準備する暇無く来るなんて理不尽があるはずがない。
「その聖遺物の名称は?」
お願いだから違っていてくれ。
「そんな事かね?まぁいい。上がどういうつもりで考えたのか私は知らんが、その聖遺物の名前は『ネフィリム』と名付けられたようだ」
その名前を聞いて僕は意識を失いかけるが、そのギリギリのところで踏みとどまって気絶しなかった。
出来るなら、今日が夢であって欲しい。
「僕は反対ですね。何の情報もない聖遺物をいきなり起動させるのはあまりにも危険かと」
「何も情報がないからこそ起動させるのだよ」
「更に言えば最悪の場合大規模な爆発やそれに類する災害が起こり得るかもしれません。そのような危険性がありますが」
「発見されたネフィリム単体では発せられるエネルギーは微弱だったらしく、あれは聖遺物の一部として上は判断したのだ。欠片ならそのような大規模な事態も起こるまい」
「ですが……」
「ウェル博士」
こんな時に限って上手く機能しない頭脳をフル回転させてなんとかネフィリムの実験を回避出来ないか模索しますが、それを無理矢理押さえ込ませるように局長の圧のかかった声がそれ以上の言葉を言わせなかった。
「君が何を懸念しているのか私には分からない。だがこれは……上からの命令なのだよ」
言葉だけ聞いていれば局長が無理矢理僕を従わせようとしているように聞こえるかもしれません。ですが机の上に置く握り拳から僅かに血が流れているのを僕は見逃しませんでした。
局長も危険なのは分かっているのでしょう。しかし上からの命令は絶対。もしそれを無視して局長を解任するような事になれば最悪レセプターチルドレンたちにもあまり良くない事になる可能性もある。
ああ、ほんと、中間管理職みたいな立場は辛いですねぇ。
「……分かりました。我が儘を言って誠に申し訳ありません」
「いや、構わんよ。とにかく一週間後は頼むよ」
「承知しました」
それだけ言って僕は部屋から退出しようとしましたが、後ろから局長が小さな声で「すまない」と言われて逆にこちらが申し訳なくなってしまいましたよ。
(あー……クソッタレ)
部屋から出た僕は真っ先に自室に向かって早歩きで歩く。早く何かにこの気持ちをぶつけないとおかしくなってしまいそうだ。
(分かってる。今の人たちがネフィリムの危険性を知らない事なんて。あの日までネフィリムのコアがあんな巨大な怪物になるなんて知るはずがない。それは分かっているさ)
実際ネフィリムのコアは奇妙な形こそしているもののその状態では特に危険性はない。だが一度コアが活性化して起動してしまえば自律型完全聖遺物ネフィリムとして破壊の限りを尽くしてしまう。それが原作の流れです。
(今から出来る事はなんだ?設備をいじるのは僕一人だと怪し過ぎる。データの改竄はまず何の実験も始めていないから無意味……いっその事当日盗みだすか?)
いや、無理でしょうね。発見されたばかりの新たな聖遺物を何の見張りもなく放置するはずがありません。それを掻い潜って盗み出せる技能は僕には無い。こんな時に限ってウェルの頭は全然助けてくれない……使えませんねぇ!
一週間後にネフィリムの起動実験を行うという、明らかに上の連中は馬鹿じゃないの?と思うような突然な命令に、僕は僕のあまりよろしく無い頭をフル回転させてなんとか出来ないか考えるのでした。
自室に帰った僕はこの怒りやら焦りやら色んな感情がごちゃ混ぜになってまともに考えられない頭をスッキリさせるのと頭の回転を速くするために取り敢えず隠してあった菓子類を全部食べ切る勢いで食したのですが、その中に切歌ちゃんのオヤツも混ざっていたらしく、そのお菓子を食べに来た切歌ちゃんが僕が食べてしまった事に気づいて大泣きしてしまってマリアちゃんとセレナちゃんからお菓子の食べ過ぎも含めて怒られてしまいました……大泣きする切歌ちゃんをあやす調ちゃん可愛いなぁ(色々と現実逃避)。
誰かの策略、なんてものは何も無くただただ運の悪い主人公です……