シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!?   作:ボーイS

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ギャグさんの霊圧が……消えた……?


十四話 頭でダメなら身体を使え!

 初めて出会った時、セレナちゃんは当たり前だが僕を凄く怖がっていた。いきなり知らない場所に連れてこられて、知らない人間が笑顔で近づいて来たのだから仕方ない事なんですがね。

 

 ウェル博士となった僕の改革が進み、レセプターチルドレンの子たちが住みやすくなるに連れて少しずつマリアちゃんとともに僕への警戒を解いて笑顔を見せるようになっていった。少し人を信じすぎて心配でしたが、あれが本当の幼いセレナちゃんの姿なんだと思うと内心、涙で溺れかけましたよ。

 

 それから僕はマリアちゃんとセレナちゃんを中心にレセプターチルドレンの子たちと共にいる事であの子たちにとって兄であり父親のような存在になっていったんだと思います。何度かお父さんと呼ばれた時がありましたからね。セレナちゃんなんて顔を真っ赤にしてた割にとても嬉しそうでしたよ。嬉しい反面独身で父親はすごい違和感がありましたがね。

 

 その頃になるとセレナちゃんは菓子類ばかり食べ、一週間の平均睡眠時間がゼロという馬鹿の権化みたいな記録を出した僕の周りの世話をマリアちゃんと共にやってくれるようになりました。

 まだまだ幼かったためやる事やる事一つずつの行動にハラハラして研究に専念出来なかった時もありましたが、もうシンフォギアの事以外が朧げになって来た前世での寂しい生活を考えたらそれも刺激的でした。

 セレナちゃんが成長して簡単な料理が出来るようになり、その料理を僕が美味しく食べる度にセレナちゃんが笑顔になるのを見て余計に料理が美味しく感じましたよ。もうセレナちゃんの笑顔だけでご飯三杯はいけたね。間違いない。

 

 新しく入ってくるレセプターチルドレンの子たちに優しくする姿は僕に見せていた元気な姿とは打って変わって、聖母は言い過ぎですが聖女くらいなら容易にイメージが出来るほどとても神々しいものがありました。天の光がセレナちゃんを照らす幻影まで見えましたからね。

 

 切歌ちゃんと調ちゃんが来てからもその姿は変わらず、むしろ年長組として姉のように振る舞いながらも元気で優しくて、本当に美人に育ってくれたと思います。父親代わりのような僕も涙が止まりませんよ。

 

 きっとセレナちゃんはいつか良い異性を見つけて幸せな家庭を築くでしょう。あの優しいセレナちゃんの子供となればきっとまた可愛らしくて優しい子に違いない。そんな僕にとっての孫みたいな子を抱いてみたいというのも密かな夢だったりします。相手の男がどんな奴か見極める為にも簡単に死なないと心に誓いましたよ。

 

 セレナちゃんはここで死ぬべきではない。あんな良い子が幸せになれないなんておかしい。もっと平和な世界で幸せになって死ぬべきなんだ。だから。

 

「ッドクター!?」

 

 マリアちゃんの声が聞こえましたけど僕は振り返らずに目の前の火の海に向かってほぼ無意識に駆け出していました。

 

 ウェルの頭では僕が何をしようともセレナちゃんを助ける手段が思いつかない。火が危険だとか天井の崩落が危険だとか、安全なルートがまったくないという答えを天才的頭脳が出す。その答えはきっと間違いがなく、このままでは僕もタダでは済まないでしょう。

 

(それがどうした!)

 

 出来る出来ないじゃない、僕がやると決めたんだ。そこにどんな障害物があろうとも可能不可能は関係ない。頭で考えて答えが出ないなら、身体を使って無理矢理答えに突き進むしかない。

 

 目の前で燃え上がる炎の壁に向かって僕は腕で顔を守りながら飛び込む。守りきれない部分や素肌の部分が熱でチリチリとして痛い。

 

(防火性の白衣を着ていて正解でしたねッ!!!)

 

 防火性、といっても少し燃えにくい程度でこの炎の中ではあまり長く持ちませんが、それでもセレナちゃんの所に行くのには十分です!

 

 瓦礫で足場の悪い床を躓きながらも一直線にセレナちゃんの元に走る。たまに眼前に炎が燃え上がって僕を燃やそうと襲って来ますが、まだ防火性の白衣は生きているので無理矢理突破します。 

 

「がッ!?」

 

 いきなり肩に激痛が走り倒れそうになりましたがギリギリで耐えます。おそらく崩落してきた天井の破片が肩に当たったのでしょう。しかも負傷した肩に。なんでそんなピンポイントに当たるんですかねぇ?

 痛すぎて目の前がチカチカ点滅しますが歯を食いしばって走る。さっきよりもフラフラで速度も落ちていますが、走りを止めるわけにはいかない。

 

(あと少し、あと少しだ。それまで……っ!?)

 

 嫌な事というのは立て続けに起こるものですねぇ。

 呆然と虚な目で立ったままのセレナちゃんの頭上の天井が大きく傾き、今にでも砕けて落下しそうになる。どう考えても今のセレナちゃんではあの大きさの瓦礫を回避する事は不可能だ。いや、不意であれば元気な状態でも回避は難しい。それくらいの大きさです。

 僕はもう火傷や降ってくる瓦礫で身体中痛めようが構わずセレナちゃんに向かって走る。眼鏡の片方のレンズが取れて視界が悪くなりますが、もう片方あれば十分です。それにまだ足も無事です。死んでもいません。ならそれだけで僕の走る理由に異を唱える必要はまったくない。

 

 そして等々セレナちゃんの頭上の天井が大きく砕け、セレナちゃんを圧殺しようと落ちてくる。予想よりも大きい瓦礫ですが、まだ間に合う!

 

「ッセレナアアアァァァ!!!」

 

 僕はギリギリで思い切りセレナちゃんに飛び付いてセレナちゃんを守るように抱き締め、僕の身体を盾にして転んだ先にある瓦礫でセレナちゃんが怪我をしないように守る。僕?瓦礫の鋭利な部分に二の腕や脇腹が刺さりますがアドレナリンが分泌されているのか痛くないんですよね。

 直後、さっきまでセレナちゃんが立っていた場所に大きな瓦礫が落ちてくる。その風圧で火が燃え上がりましたがそれも僕が身を盾にしてセレナちゃんを守りました。うん。あっつい。

 

(ですがセレナちゃんは守れた!後は動けるうちにここから……ッ!)

 

 どうやら僕はビッキー以上に、あの有名なツンツン頭の不幸体質な少年に並ぶくらい運が悪いんですかね?

 僕の足が瓦礫とさっき落ちて飛んできた瓦礫の破片によって脹ら脛辺りから挟まってしまっていました。ウェルの筋力と今の体勢的、そして挟んでいる瓦礫的に一人で退かせる事は不可能だ。

 

「ど……くたぁ……?」

 

 さすがに気づいたのかセレナちゃんが虚な目で僕を見る。僅かに光はありますがとても儚いものに感じます。

 

「ッ……喋らなくていいよ。僕が君を助けるから、ね?」

 

 なるべくセレナちゃんに心配かけないように笑みを浮かべる。この間にも周りには天井からの瓦礫が落ち、火も広がっていく。この状態で助けるなんて寝言は寝て言えと言われても仕方がない。

 

(うぐっ!?)

 

 背中に激痛が走るどうやら瓦礫が僕の背中に命中したようだ。小さい欠片だから助かったけど、もう少し大きかったら危なかった。

 

(はは、セレナちゃんや切歌ちゃん、調ちゃんのせいで首と腰をよく痛めていましたが、そのおかげで強くなったのですかね?)

 

 たびたび小さな欠片が僕の背中を襲って来ますが、首や腰は全然平気で逆に笑えますね。まさかあれが特訓になっているなんて誰も思いませんよあははは!

 白衣の防火性もとっくに突破されて袖とかほとんど無くなっています。もうなんか前衛的なファッションみたいな格好ですよあははははははは!!

 それに瓦礫の中の鉄針が火で炙られ、その鉄針が背中に押しつけられてもう熱いったらありゃしない。これはまたカッコいいタトゥーみたいな背中になっているかもですねあははははははははは!!!

 

(笑え、笑え!こんな痛み、セレナちゃんを守る為ならどうって事ないってくらいに全力で笑え!!!)

 

 多分背中の火傷は見るに耐えないものになっているでしょう。骨も折れるのでは無く砕けている箇所もあるでしょう。足の感覚もありません。もしかして気づかない内に出血してしまっているのかもしれません。

 それでもセレナちゃんを安心させる為に後ろの炎が見えないように身体で隠し、笑みを絶やさないようにする。

 

「ね、ふぃりむ……は?」

「大丈夫です。貴女のおかげでネフィリムは無事停止。みんな守られました。よく頑張りましたね」

「よかっ……た……」

 

 なんとか動かせる右手でセレナちゃんの頭を撫でる。安心したのか少しずつセレナちゃんの瞼が閉まっていき、力が抜けて行っているのが分かります。左腕?それがどれだけ力を入れても動かないんですよね。

 

「……どく、たーって、あたたかい、んですね…………」

 

 それだけ言い残してセレナちゃんは完全に力を抜いてぐったりとしてしまう。かなり心配しましたが、少し不規則ですが寝息を立てているのが分かって少し安心しました。

 

 セレナちゃんは本当によく頑張りました。本来なら装者六人で辛くも倒したネフィリム、といってもあれはネフィリムの進化形態なので今回の形態だとあの頃の装者たちなら簡単に倒せるでしょうが、それでも僕たちを守るために慣れないシンフォギアを纏い、得意じゃない戦闘をし、傷だらけになっても戦ってネフィリムを打ち倒したんです。頑張り過ぎなくらい頑張りましたよ。

 

「だから、あとは僕が頑張る番だ……!」

 

 それから僕にとっての長い長い、その地獄のような時間を耐えました。

 止まらない背中への衝撃と焼きごてを無理矢理押しつけられているような激痛に意識を何度も失いかけますが、その度に唇や舌を噛んで耐えます。下手をすればそのまま舌を噛みちぎってしまいそうで怖いですねぇ!

 

 そして何時間、あるいは何日も経ったかのような感覚に襲われていた僕は朦朧とする意識の中で急に誰かに触れられ、助け出されるような感覚を感じ、視界に見知った人たちの顔が映ったのを見てから意識が遠くなっていきました──

 

 




誰だこのただのイケメンは?え、ウェル博士だって?そんな馬鹿な……
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