シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!? 作:ボーイS
神獣鏡の装者探し面倒くさいです。
おっとすみません。思い切り心の声が出ましたね。失敬失敬。
いやぁ、だって原作で神獣鏡の装者が見つかるのはG編の後半で未来さんだけですよ?雑に計算してもあと五、六年先です。答えを知っている僕からしたら正直に言って無駄なんですよね。最初から分かっている問題をやる意味が無い。
ですが僕は組織の人間。上からの命令には逆らえないんですよね。だから結構惰性でやっています。あ、勿論実験の際には細心の注意を払っていますがね。
「……脳波に異常なし。意識レベル正常。脈拍、心音共に正常」
「……聖遺物の活性化の兆候は軽微」
「……被検体に異常無し」
「……神獣鏡に目立った反応はありません」
「分かりました。テストを終了してください」
強化ガラスの先ではアガートラームやガングニールの適合者を探す際に使われた機械から伸ばされたケーブルと椅子に座ったレセプターチルドレンの少女とが繋がっていましたが、僕の合図でケーブルを外されて少女は自由の身になります。そして研究室から出ていく際に僕に向かって笑顔で手を振って来ましたので僕も手を振り返してあげます。ますますニコニコになって僕も自然と笑みが浮かびますよ。
「さて、今日は終わりですかね?」
「はい。お疲れ様でした」
僕と同じ機械を操作する部屋にいた研究員の方々が取り敢えずは今日のノルマを達成して気が抜けたのか背伸びや机に突っ伏したりしています。ちょっと気が緩みすぎではありませんか?
局長から神獣鏡のシンフォギアを受け取ってから今日で二ヶ月が経とうとしています。その間僕は研究メンバーを集めて再び装者探しを決行していたのですが、まぁ分かっていましたが装者が見つかりません。
ほとんどのレセプターチルドレンの子が神獣鏡の適性が全く無いです。辛うじて若干適性がある子はいましたが、計算上みんな致死量超えて確死量というレベルのリンカーを注入しても全然足りませんね。そう考えたら未来さんの適性値ってかなり異常なのかもしれません。まぁ、あれは本来のウェル博士が何やら小細工をしていたようですが。
「全然見つかりませんね。神獣鏡のシンフォギアの適合者」
「まったく、やっとあの子たちを解放出来ると思ってたのに……」
「こっちも神経を研ぎ澄ましすぎて神経が擦り切れてしまいそうですよ」
「ですね。それにあの子たちにも負担が大きいですし……」
メンバーのみんなもあまり気乗りしていないようですなぁ。僕もですが。
この時点で神獣鏡の適合者はいないと分かっている僕ですが、やはりこの実験を受けるレセプターチルドレンの子たちの負担は大きいです。ある程度成長している子ならともかく、まだ幼い子までとなると僕たちもかなり辛いものがあります。まぁ、そのおかげで多少の目眩を起こす子はいますが何かしらの大きな症状が出る子はいないのが救いですね。
「皆さん、今日はお疲れ様でした。次の定期検査の時は事前にお知らせしますのでその時はよろしくお願いします」
それだけ言い残して後の処理は皆に任せて僕は部屋から出ます。この後とてつもなく嫌な事があるのでね。
今日はなんと櫻井了子、いやフィーネがここに来ているんですよ。
詳しくは僕も伺っていないですが、多分神獣鏡の装者探しの進捗を聞きに来たんじゃないですかね?それかマリアちゃんたち装者を資料じゃなくて自分の目で確かめに来たとか。すっごく嘘くさい。
とても憂鬱ですよ。だってフィーネがこれから起こす事は全部無駄だと分かっているのに止める手立てが無いんですから。
これから起こるであろう大惨事も僕が先回りして対処しようにも残念ながらそんな力はありません。誰かに協力を乞うにしても頼りになる人はここの研究員たちだけ。フィーネの古代文明の力を使われたら塵芥ですよ。僕たち。
風鳴弦十郎にコンタクトを取る方法も考えましたが、何を言えば納得して貰えますかね?面識が無い僕がいきなり「貴方のところの櫻井了子は実は悪者です」と言ったところで、いくら人外な力を持ってるのにビッキーに並ぶくらい甘々な風鳴弦十郎でも信じて貰えると思います?
考慮くらいはしてくれると思いますが、今のフィーネは別段悪さをしている様子は無いため、無印編が始まるまで僕の言葉を信じないでしょうね。
(……ああ。本当に無力ですねぇ)
実はネフィリム暴走の前にクリスちゃんをなんとかして助けられないかというのも考えてました。今も考えています。ですがこれも上手い理由が見つかりません。
僕がバルベルデに行く理由が無いですし、行ったところでテロリスト対策に武装した警護を連れていくのはあまりにも不自然です。装者がいる気配がする!なんて話は通じないでしょうし、レセプターチルドレンを捕獲しに行くという理由も今のF.I.S.で僕が行うとこれも不自然極まりない。よくて風鳴弦十郎にクリスちゃんの居場所を教える事ぐらいですが、残念ながらテロリストたちの居場所……知らないんですよね。
(やっぱり僕はビッキーみたいに世界を救えるような人間では無いようですね。手の届く範囲を救うのすら手が足りないくらいなのに)
決して「手の届く範囲を救う」なんて言わない。人から見ればセレナちゃんたちを助けられている時点でそうだろう、と思うかもしれませんが、いくら待遇が良くなって研究員たちが優しく接しようともレセプターチルドレンが檻の中でモルモットのように扱われている事には変わらない。ただ丁寧に扱われているか否かの違いです。
対してビッキーは手の届く範囲しか、と言っていますが結局世界を救っています。命を天秤にかけるつもりはありませんが、守れなかった命以上の沢山の命を救った事には変わりませんからね。
僕はあまりにも弱い。それは他でも無い僕が一番分かっています。
本来のウェル博士は完全に迷惑で自分勝手な夢のため大事件を起こしましたが、逆に言えば夢のためにどんな手でも使っていました。この世界の人からしたらはた迷惑でしょうが、この世界の未来を知っている僕からしたらその手も悪手とは思いません。特に僕のように何の力も無い人間はね。
「まぁ、そんな手は使う気はありませんがね」
すでに考えている手は一つありますが、それは出来れば使う事が無いように願っています。その手を取る事態にならないように出来る事は色々やりますがね。
「──目的地に到着っと」
考えごとをしていると目的地である会議室に到着です。正直このままスルーするか回れ右して帰りたい……
意を決して部屋の中に入ります。時間にはまだ余裕があるはずなのに中には僕以外の招待された方々がすでに自分の席に着いていました。皆さん早すぎませんかね?
「申し訳ありません。遅れました」
「いや。時間にはまだ余裕がある。気にするな」
局長顔怖いのに優しいなぁ。やはり人は見かけによりませんね。なんせ局長の横には無印編ラスボスが人畜無害みたいにニコニコしているんですもの。
「それでは今回の会議は事前に知らせた通り久方ぶりに来訪してくださった櫻井了子女史を交えて行う」
局長のそれを合図に今回の会議が始まります。
とは言っても、会議とは名前だけで定期的に行われるこの会議では各部署の研究の進捗具合の報告会のようなものなので特に何か大事が無い限り一時間もかからずに終わる会議です。いつもなら。
「──────では、今日の会議はこれにて終了とさせていただこう」
その言葉で今回の会議は終わりを告げます。
まぁ、今回も特に題材にするような大きな事故や報告はありませんでしたね。みんな各部署の研究の進捗を話すくらいでした。いや、会議になるような大事が起きない事に越したことはないのだけどね。
それと勿論の事神獣鏡の装者は現時点では見つかっていないのと、マリアちゃんとセレナちゃんは最近やっとシンフォギアを纏ってそれなりに動けるようになって来たという事にして、切歌ちゃんと調ちゃんの件はもうじきリンカー有りで装着可能というのは敢えて伏せて候補の一人という事にしましたがね。フィーネ以外のその場にいた全員僕の意思を組んでくれて黙ってくれたのはありがたい。
「──ちょっといいかしら」
やっぱり来たかフィーネ。
そう口に出しそうになったところをギリギリで飲み込んで黙ります。他の皆も同じように黙ってフィーネの方に身体を向けていますが、何人か変に警戒している人がいるんですよね。僕の隣の男性とかさ。
「何かありましたかね?」
「んー何か、というより単純な疑問なんだけどね……ウェル博士、だったっけ」
おっとぉ?いきなり名指しですか。何かやらかしたかな?それとも僕が嘘の報告をしたのがバレました?いや、あのフィーネなら古代文明のなんらかの力で僕が本物のウェル博士じゃないとか、魂が違うとかなんか言われても信じられそうで怖い。
「そんなに警戒しなくてだぁい丈夫よぅ」
「すみません。いきなりの名指しでビックリしてしまいまして」
貴女の正体知ってたら誰でも心臓が爆発しそうなくらい驚くでしょうがね!
「貴方って確かシンフォギアに関する研究メンバーの一人よね?」
「……ええ。一応チームの責任者の一人ですよ」
「うんうん。貴方の事は聞いてるわ。まだ日本では二人しか見つかっていないというのに、私が渡した四種のシンフォギアの装者と候補を見つけるなんて凄いじゃない!」
「お褒めにあずかりありがとうございます」
ニコニコしながら褒めてくるフィーネに僕は事務的なお礼を言います。ですが警戒しないといけない相手でもやはり褒められるとくすぐったい部分はありますね。正直に嬉しいと言えないのが歯痒いところですが。
「でぇも」
フィーネは芝居がかったあざといポーズを取ると今さっきまでニコニコだった笑みが、いや、笑みはずっと浮かべたままですね。何も変わってはいません。もし変わっているとしたら、例えるのならさっきまでの目が櫻井了子だとして、今は完全にフィーネの目になっています。他の研究員の方は気づいていませんが、僕には分かりますよ。
「なんでこんな回りくどい事やっているのかしら?」
空気が一瞬にして変わる。
「……それはどういう事でしょうか」
「だってそうじゃない?確かに完全適合者、準適合者がいれば
………………何を言っているのだろうか、コイツは。
「ッ貴様!いくらゲストとはいえそんな……ッ!」
今のフィーネの言葉を聞いて顔が歪むくらい怒りを持って立ち上がろうとした隣の男性研究員を手で制して止める。だって、今男性研究員を見るフィーネの目はまさしくゴミを見る目、いやゴミをどう処理しようか考えている目だ。
まぁ、正直言えば僕も同じ気持ちですがね。この場で僕がフィーネに殴り掛からなかった事を誰か褒めて欲しい。いやぁ、この辺りの地域は銃社会であるのに持って無くて良かったですよ。持ってたら身体が勝手に動いて脳天にぶちかましてましたよハハハハ。
きっと本来のウェル博士なら今の言葉に賛成するかもしれません。研究者として見たら替えの道具が沢山あるのに一つ一つを丁寧に使うというのは僕からしても馬鹿げていると思いますから。一から育てるのも時間がかかって仕方ないですしね。
ですが、そんな人の命を簡単に消費させようとするのは非人道的を超えて悪魔の所業では無いのだろうか。それを行う人間は果たして本当に人間なのだろうか?
(今の僕は冷静さを欠きそうだ。だからあとは任せましたよ、
短く息を吸って身体に入っていた力を抜く。すると頭の中でスイッチが切り替わるような気がしました。
皆がフィーネを睨む中、僕は今のフィーネが浮かべている笑みと同じくらい嘘くさい笑みを張り付けてニッコリと笑った。
「──ええ、確かに貴女の言うようにあんなガキ共を一々育てるのは面倒ですよ。時間がもったい無くて仕方ありません」
「なら何故?」
「そりゃそうでしょ。いくらガキ共を送ってこようと、いくら時間制限があるとは言えノイズは無限に湧いてくるんですよ?ノイズとの戦いに終止符を打たない限り消費し続けていたらその内弾切れになってゲームオーバー。
それに貴女がこれから他のシンフォギアを開発しないとは言い切れないでしょう?消費したガキの中に新たなシンフォギアの適合者がいたら目も当てられませんよ?消費するガキの量が増えるよりかは減った方が後々楽になるのではと思い、僕はこんなクッッッッッソ面倒な子育てを行なっているんですよぉ」
フィーネを除くこの場にいる全員が僕を信じられないような目で見て来ます。ふふ、僕の演技上手すぎでは?まぁ、取り敢えずはさっさと会議を終わらせたいですねぇ。
「……そう。ありがとうね。確かに、ノイズがもう出てこないという確証も新たなシンフォギアを作らないという確証も無いわね」
「はい。なので未来を見据えたら今は面倒でもやらなくてはいけないのですよ」
フィーネは腑に落ちないという顔をしながらも僕の言っている事に言い返せなくて肯定するしか無い。だって今自分で言ったように何の確証も無いんですから。最悪な事を考えて弾数は多い方が良いに決まっています。
「貴方の考えは理解したわ。私も少し軽率だったわ。ごめんなさいね」
「いえいえ。かの天才櫻井了子から一本取れただけでも僕は嬉しいですよ」
「もう、そんな天才だなんて……もっと言って良いのよ!」
僕とフィーネは互いに張り付けた笑みのまま楽しそうに談笑する。周りから見てもとても異質な光景かもしれませんが、今の僕は最適な行動を取っているまでですよ。
それから無理矢理作った和やかな空気のまま会議は終了。終わり次第、フィーネは櫻井了子モードになってみんなに礼を言って退出しました。
残された研究員たちは僕に何か話しかけようとして来ましたが、それらを全て無視して僕も会議室から退出します。今の僕の心は荒れに荒れまくっていますからね。僕自身でも何をするか分かりませんよ。
(ああ。マリアちゃんたちに会いたい)
そう思いながら、僕は自分の部屋に競歩並みの速さで向かうのでした。
原作ブレイクが原作より最良の結果になるのか、それとも詰みとなるのか……実際そんな状況に立った時、私たちはどんな行動を取るんですかねぇ?
それとフィーネが予想以上にクソヤロウになっているのは気のせいですかね……?
そして……作者はギャグを書きたいんだよ(血涙)!!!