シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!?   作:ボーイS

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前半ウェル(オリ)目線。後半奏さん目線でお送りします。


二十五話 運命は変わらな……えぇ……

「ノイズだあああぁぁぁ!!!」

 

 誰かの叫びを合図に爆煙の中から沢山のカラフルでポップな見た目の悪魔が次々と現れます。

 見た目はふざけているんですよ。ギャグアニメとかに出て来そうなギャグ要員のような見た目でパッと見ただけでは恐怖を覚えるようには全く見えません。人によっては可愛く見えるのも納得ですよ。ゲームでのイベントで面白おかしくピックアップされるのも頷けますね。

 

 ですがそんな見た目に反してその能力は恐ろしいの一言なのも事実。

 自分も灰になる代わりに組みついた相手も灰にするというなんとはた迷惑な能力でしょうか。しかも現代兵器ではノイズという種が固有で持つ特殊な能力によって太刀打ち出来ずほぼ効果なし。作中最強格の弦十郎さんですら人間なため直接触れたらOUTなのでお手上げな、シンフォギア無しでは太刀打ちできないチートな雑魚敵。それがノイズです。チートな雑魚敵ってなんなんでしょうね?

 

「って!そんな冷静に分析する暇ありませんでした!」

 

 事前に知っていた事のはずなんですが、ネフィリムの事件を経験してもやはり何処かでこの世界を現実と見ていなかったんでしょうね。何故か分かりませんが楽観視していた僕がいるのは認めます。

 ですが眼下で次々とノイズに組みつかれて灰になっていく人たちを見てやっと今が現実なんだと、僕はシンフォギアの世界に来たんだと理解させられます。

 しかし、今は僕の事なんて些細な事。今はやるべき事をしなくては!

 

 我先にと出入り口の方に避難する人混みに飲み込まれそうになりながらも必死で抗って奏さんたちがいたステージの場所に向かいます。ですがいかんせん遠すぎます。その間にも次々と観客がノイズに組みつかれて灰に変わっていく姿が視界の端に写り続けています。

 二階席はまだ被害は少ないですが、一階席はほとんど全滅です。飛行型のノイズにいたっては既に二階席の観客に狙いを定め始めていますよ。

 

 そうこうしていると一階席の中心に急に空から無数の槍の雨が降り注いでノイズを屠ってしまいました。その直後、今度は大きな横向きの竜巻が発生して小型のノイズを飲み込み、巨大な四足歩行のノイズの一体を空に持ち上げながら貫いて灰へと還しました。

 

「奏さんがシンフォギアを纏いましたかッ。という事はもう時間が!」

 

 アニメが端折っていたのか、それともあの放送時間のままの戦闘時間なのかは判断できませんが奏さんの戦闘が始まった以上タイムリミットはあと僅かです。

 人の波が途切れてやっと走れるようになりましたが、その頃には二階席にも小型のノイズが侵攻し始めて今僕がいる辺りも安全では無くなっています。油断すれば僕もそこら辺に落ちているかつて人間だった灰たちの仲間入りですよ。

 まだ奏さんと翼さんは奮闘していますが、翼さんはともかく奏さんはまもなくリンカーが切れてしまい、まともに戦えなくなってしまいます。そうなったらアニメ通りの流れになって本当に最後です。いえ、僕が気づいてないだけで既にリンカーは切れているかもしれません。

 

「ッあれは!」

 

 二階席の一部が戦闘に耐えきれずに一階まで崩れ落ちていきます。そしてその落ちていく瓦礫の中に混じってこの世界に来てからは初めてですが前世ではよく知っている、シンフォギアの世界の我らがヒーローであり、しかし現段階ではただの一人の無力な少女、立花響の姿がありました。

 このシーンはよく覚えています。そしてこの後起こる出来事も。

 

 予想通りビッキーの元に獲物を見つけた獣のようにノイズが集まっていきますが、その間に奏さんが割り込んで襲いかかるノイズを薙ぎ払ってなんとか防ぎました。

 

(まずい、まだここからじゃ遠い!)

 

 やはり気付かないうちにリンカーは切れていたのでしょう。動きも反応も悪くなって防戦一方になっている奏さんがガングニールのアームドギアである大槍を振り回してノイズの特攻と大型ノイズの謎の液体のような攻撃を防いでいます。タイミング的におそらく奏さんが絶唱を使うまであと数十秒といったところですか。

 一瞬経った後、遠くからでも分かるくらいの鮮血が宙に舞うのが見えました。回避出来るならしたかったのですが、やはり運命は変えられないのかビッキーの胸に砕けた奏さんのガングニールの破片が埋め込まれてしまったようです。

 

 そして、とうとうあの瞬間が来てしまいました。

 

 やっとハッキリと奏さんの姿が見えるくらいの距離に近づけましたが、そこには血溜まりの中瓦礫にもたれ掛かるビッキーの姿が見えます。アニメ通りならあの状態からまだ生きているはずなのでまだそこまで心配はないですが、問題は奏さんです。

 奏さんの纏うギアはボロボロで装甲のあちこちが砕けていて、装甲やギアインナーの色もかなり色褪せて本来の力を出せていないのが一眼でわかります。

 

「それを歌ってはダメです!」

 

 僕はノイズに見つかると分かっていてもビッキーを置いてノイズの方向に身体を向け、アームドギアを天に向かって掲げる奏さんに大声で絶唱を歌わないように叫びますがさすがに距離があって届きません。僕に野球選手並みの投球能力があればリンカーを投げ渡せるかもしれませんが、残念ながらそんな能力はありません。

 

 結局この惨劇を止める事は出来ず、歌い始めたらきっと止めることの出来ない絶唱を奏さんが歌うだろうと思った僕は無力な自分に殺意に近いくらいの怒りを向けますが、それでも奏さんの勇姿をこの目に刻もうとその後ろ姿を見つめた。その時でした。

 

「──え?」

 

 ────────────────────

 

 あたしがシンフォギアの装者になるのを決めたのは、家族がノイズに殺されたからだった。

 母さんも父さんも、あたしを守るために身体を張って助けてくれたけど、ノイズはそんなのお構い無しにあたしの家族を何も残さない灰に変えやがった。

 

 憎かった。

 怒りなんて言葉ですら安っぽく感じるくらい、あたしはアイツらを憎んだ。

 この身体がバラバラに砕け散ってでも、アイツらを倒せる力が手に入るのならどんな辛い事でも乗り越えてやると誓ったさ。それくらい、あの頃のあたしは荒れていた。

 

 そんなあたしを救ってくれたのが、弦十郎のダンナや翼、ニ課の人たちだ。

 命令無視はするは、自分の身体の調子よりもシンフォギアの訓練を優先して何度も身体を壊した事もあった。その度に翼が見舞いに来てくれた事は今では良い思い出だ。

 でも、きっとあたしを一番救ってくれていたのは、あたしの歌を聴いてお礼を言ってくれるファンたちの存在だ。

 ノイズ共をぶっ飛ばせられる道具にしか思ってなかったあたしの歌を聴いて生きるのを諦めなかった人たちがあたしの思う以上に沢山いて、そしてそんな人たちに支えられているんだと気づいた時あたしの見ていた世界が変わった。

 

 勿論今でもノイズに対する怒りや殺意みたいな感情はあるさ。でもそれと同じくらいあたしの、あたしと翼の歌を世界中に広めたいっていう夢も出来た。あたしたちの歌で沢山の命を救ってやるってそう思ったんだ。

 今回のライブはノイズに対抗出来るかもしれない聖遺物の起動を兼ね備えたライブだったけどさ、正直あたしはそんな事よりも翼と一緒に歌いたいって思った。あたしたちの歌をみんなに聞かせてやりたかったんだ。

 

 でも結局は奴らに邪魔されてライブは地獄絵図だ。

 あたしたちを見に来てくれたファンが無惨に灰になっていく。そんな姿をただ見ているだけなんて出来るはずがない。だから血反吐を吐いて手に入れたこのガングニールで守るために槍を振るったさ。

 でも聖遺物の起動の為に出来るだけ不確定要素は取り除くっていう了子さんの提案で事前にリンカーを使ってなかったのが仇になっちまったかな。早々にリンカーが切れてどんどんギアの出力が落ちていっているのが自分でよく分かる。

 それでもなんとか観客の避難の為に戦ったけど、会場の崩落に巻き込まれた女の子を助ける為にノイズを相手に踏ん張った結果、耐え切れなかったギアの破片が女の子の身体に刺さっちまう事態になってしまった。

 

「おい死ぬな!目を開けてくれ!生きるのを諦めるな!!!」

「……あ、う……」

 

 まだ血は流れている女の子は空ろな目だけどあたしを見る。かなりの重症のはずなのに、あたしは女の子が生きてくれていた事に感謝した。

 本当は急いで病院か悪くても簡単でいいから治療はしてやりたい。怪我の具合から見ても命に関わるレベルの怪我だ。でもそれを許してくれるほど奴らは甘くも無い。

 結構な数を減らしたと思っていたのに、まだノイズは残っている。あたしと違って時間制限がない翼でもこの数を一人で相手にするのは不可能だ。それくらい分かる。

 

「……いつか、心と身体、全部空っぽにして、思いっきり歌いたかったんだよな」

 

 だから、あたしは残されたたった一つの方法を使う。

 

「今日はこんなに沢山の連中が聞いてくれるんだ。だからあたしも出し惜しみ無しで行く。とっておきの……絶唱を」

 

 絶唱。歌で上がったギアのエネルギー全部を一気に放出してノイズを薙ぎ払う技。

 了子さんの推測だと、放出する時のエネルギーは莫大でノイズを一掃出来るらしい。でもその際にかかる身体の負担は測り知れないみたいで、天羽々斬のシンフォギアの適合者の翼でも命に関わるレベルらしい。ならリンカーで無理矢理装者になったあたしへの負担はそれ以上。加えてリンカーがほぼ切れた今の状態で歌えば……。

 

(翼、旦那、了子さん、ニ課のみんな。今までありがとう。後は、任せた)

 

 いつも隣にいてくれた翼に、厳しくても決して見捨てなかった弦十郎の旦那に、無茶振りは多かったけど面白かった了子さんに、こんなあたしを支えてくれたみんなに、あたしのせいで怪我した女の子に明日を託してこの命を燃やす。

 やり残した事ややりたい事はまだまだ沢山ある。でもきっと両翼揃ってツヴァイウィングである、あたしの最強の好敵手(ライバル)で最高の相棒(パートナー)の翼ならそんな願いも叶えてくれると信じて未来を託せる。

 

 あたしは決死の覚悟で目の前に迫り来るノイズに向かって最後の歌を歌おうとした。その時だった。

 

「──なっ!?」

 

 絶唱を歌おうと口を開いた瞬間、目の前のノイズの大群に向かっていきなり白いナイフが雨のように飛来して次々とノイズ共を貫いたんだ。

 デッカい奴も倒せてるところからあたしや翼も似たような技はあるけど、ここまでの広範囲と威力は無い。

 

「何が起こって……っ!?」

 

 いきなりの事で油断したあたしに向かって空から生き残っていた飛んでるノイズが急降下しながら襲いかかってくるのが見えたけど、リンカーの切れた今の身体では迎撃するほどの力が残っていない。

 正直もう槍を持っているのすら結構キツいのを我慢して槍を盾代わりにしてガードしようと構えた瞬間、今度はあたしの背後から人影がいきなり飛び出した。

 

「やぁ!!!」

 

 可愛い掛け声と共に鋭い一閃が急降下してきたノイズを一刀両断。そのまま綺麗に地面に着地。ただそれだけなのにかなりの練度だとあたしでも分かる。

 着地したその人影は、背中にデッカい花みたいなのをつけた白銀の装甲を纏った女だ。だけどあたしには分かる。あの白銀の装甲はガングニールと同じシンフォギアだ。確証は無いけど、何故か分かる。加えておそらくあたしや翼よりも……強い。

 

「とう!」

「ん」

「はぁ!」

 

 いきなりの展開に呆然としていたあたしは翼のいる場所とは別の場所で声が聞こえてそっちを向けば、多分目の前の女の仲間なのか緑ででっけぇ鎌を持った奴とピンクでツインテールみたいな装甲から鋸みたいなのを飛ばしてる奴がノイズと戦っていた。そして。

 

(あれは……ガングニール!?)

 

 あたしのより黒の面積は広いけどあの槍状アームドギアはあたしのガングニールのアームドギアとそっくりだ。そいつも次々とノイズを薙ぎ払ってる。しかもあたしより扱いが上手い。

 

「お、お前たちは何者だ!?」

 

 ノイズと戦ってるから味方なんだとは思うけど、ダンナや了子さんからはこのガングニールと天羽々斬以外のシンフォギアがあるなんて聞いてない。だから最大限に警戒しての質問だった。

 

 白銀のシンフォギアを纏った女がゆっくりと立ち上がって振り返る。どんな顔なのか覚えようと睨むように見つめていたあたしの目に映ったのは──。

 

 

「の、ノイズは絶対許さない!し、シンフォギアシルバー!」

「同じく!シンフォギアグリーンデス!」

「きりちゃ……グリーンと同じくシンフォギアピンク」

「シンフォギアオレンジよ!……オレンジって微妙じゃないかしら?」

 

 何故か四人とも今回のライブで特別に子供用に作られた、お祭りの出店で売り出されてるようなデフォルメされたあたしの顔の仮面を被っていた

 

 ……あたしはなんて言えばいいんだ?




白銀の短剣を使う女戦士シンフォギアシルバーの正体とは!

大きな鎌を振り回し、語尾に謎の「デス」をつけるシンフォギアグリーンの目的とは!

ツインテールのようなアームドギアを駆使するシンフォギアピンクの強さは!

奏さんと同じような大槍を使う、他の三人よりも大人びているシンフォギアオレンジは敵か味方か!

そして奏さんの運命は!

次回を乞うご期待!

ちなみに現在ウェル(オリ)博士はすっっっごいジト目で四人を見つめております。
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