シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!?   作:ボーイS

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みなさん。データ上の仕事やレポートは小まめな保存を心がけましょうぞ。(1から保存せずに完成したのを保存せずに閉じたため全て消えてモチベが消失してしまった……なんで機能してないんだ自動保存君……)

本当は普通に続きを載せるつもりでしたがモチベ回復のために間話を一つ、と言った感じです。続きはキチンと描きますのでしばしお待ちを_(:3 」∠)_


外話 ライブ開始前

 ──ライブ開始一時間前

 

「わぁ!人がいっぱいデスよ!調!」

「うん。でも落ち着いてね切ちゃん」

「はいデス!」

 

 切歌ちゃんが沢山の人の注目になるのも構わずに大きな声で嬉しそうにおしゃべりするのを調ちゃんが止めますが、それでも切歌ちゃんは大きな声で返事をします。周りの目が集まって少し恥ずかしいです……。

 

 今私たちはF.I.S.の中でも有名になってる、ツヴァイウィングと呼ばれている日本のボーカルユニットの方たちのライブに来ています。理由はなんの実験かは分かりませんが、このライブ会場の何処かにいるドクターに会うためです。

 一週間前に私とマリア姉さん、切歌ちゃんと調ちゃんは日本にお仕事をしに行くドクターを泣く泣く見送りましたが、ドクターが出発してから四日後にマムが私たちも日本に行ける許可を貰って来てくれたんです!

 いつもお世話になってる局長さんがとても疲れた様子だったのでかなり無理をしてくれたのは分かりましたが、折角ドクターの元に行けるのだからありがたく貰っておこうと姉さんと相談して日本に行く決意をしました。

 日本へは私たち装者四人と付き添いでマムが来てくれました。しかも移動用に開発部でしたか、の人たちが試作型の自動で動いてくれる車椅子も用意してくれていたのでマムもそれほどストレス無く移動出来て私たちも嬉しかったです。

 

 そして私たちはその日中に急いで用意し、昨日の夕方頃に日本へ到着して局長さんが用意してくれたホテルで一泊してから、ドクターがいるというライブ会場に来た、というのが現状です。

 

「ほら、二人とも。ライブが終わるまで大人しくしてなさい!」

「はーい!でも、ドクターって何処にいるんデスかね?」

「早く会いたいね切ちゃん」

「そうねぇ……多分関係者として呼ばれているからここにはいないんじゃないかしら?」

「私たちは一般人としてここにいますからライブが終わるまでは難しいと思いますよ」

「「えー」」

 

 ふふ。切歌ちゃんと調ちゃんが二人揃って残念そうに肩を落としています。ドクターじゃありませんけど頭を撫でてあげたくなりますね。姉さんもあのネコミミみたいな髪の部分が心なしか垂れ下がっているように見えます……どうやって動いているんでしょうか?妹の私にも分かりません。

 

「ほら。四人ともそこに固まっていては迷惑ですよ」

「「「「はーい」」」」

 

 少し遅れてマムが周囲の目線が集まるのを気にせずに自動で動いてくれる車椅子に乗って近づいてきます。

 自動で動く車椅子自体は存在しますがマムの乗る物はF.I.S.の人たちが作った最新式のものだから音も小さいし、何より本当は浮いているんじゃないかって思うくらい揺れずに移動出来るみたいだから珍しいんだと思います。

 

「でもまだ少し時間があるね」

「あ!ならさっきのお店に行ってみるデス!」

「さっきの……確かツヴァイウィングだったかしら。そのグッズを売っていた所かしら」

「はいデス!初めて見るものもあったから見に行きたいデス!」

 

 もし尻尾があれば千切れるくらい振っていそうなくらい目をキラキラさせて上目遣いでマリア姉さんをジッと見つめています。姉さんも切歌ちゃんの目を見て後退りしてしまっていますよ。ドクターだったら迷う事無く連れて行っているのが目に見えてしまいます。あの人は切歌ちゃんに、いえ、私たちに弱いですから。

 

「連れて行ってあげなさい。調とセレナも一緒に」

「え。でもマムを一人にするわけには……」

「私の事は構わなくても良いです。その代わりキチンと見ててあげるのですよ」

「……分かったわ。みんな、行きましょうか」

「やったデス!」

「あ、待って切ちゃん!」

 

 切歌ちゃんったら、マムに言われたばかりなのにはしゃいで一人で走って行ってしまいました。調ちゃんも切歌ちゃんの後を追って行ってしまいます。人混みが大きいので姿がすぐ見えなくなってしまい困ってしまいました。

 

「……どうしましょうか姉さん。取り敢えずさっきのお店に……」

 

 どうしようかなって迷って隣にいた姉さんの顔を見て、私は言葉を失ってしまいました。

 姉さんとマムは笑顔で切歌ちゃんたちが消えて行った方角を見たまま固まっているのですが、目が笑っていません。マムに至っては何故か笑顔のまま首を回してコキコキと鳴らしていて怖いです……。

 

「……マリア。頼みましたよ」

「分かったわ。マム」

「えっと、お手柔らかにしてあげてくださいね?」

 

 二人が心配になって姉さんにそう言いましたが、姉さんは黙って静かに笑みを浮かべるだけで何も言いません。それが余計に怖く見えて私も何も言えませんでした……。

 

 それから、私と姉さんはマムを取り敢えず人混みから少し離れた場所へ連れて行ってから切歌ちゃんと調ちゃんを探しに行きます。とは言っても、人が多いですが切歌ちゃんが言っていたお店の場所は分かっているのでそう時間は掛かりません。その場所を移動していなければですが。

 

「まったく、切歌ったら本当に……」

「落ち着いて姉さん。調ちゃんも一緒だから大丈夫だよ」

「でもあの子はあの子で切歌には甘いのよね……」

「あぁ……」

 

 そういえば調ちゃんはいつも私や姉さんのお手伝いとか率先して手伝ってくれる真面目な子なんですが、切歌ちゃんの事になるとドクターみたいになんでも許してしまうんですよね。たまに暴走した切歌ちゃんを止めるどころか感化されて一緒に暴走してしまう事もあるので困ります。

 

「ねぇいいじゃないか。俺たちと一緒に行こうぜ?」

「あの、友達を待っているので……」

「そんなつれない事言わなくてさぁ」

 

 ライブが始まる前に二人を見つけるのは難しいかもしれないなーって考えていると少し離れた、通路とは影になっている壁際で三人の軽薄そうな男の人が一人の女の子を逃さないように取り囲んでいました。

 普通は知らない人ですし関わらないのが正解なんでしょうが私は、私と姉さんはそんな知らない人相手にも手を伸ばして立派になるまで育ててくれた優しい人を知っています。命がけで私たちを守ってくれた事も。

 だからでしょう。そんな光景をただ見ているだけなんて出来るはずがありません。

 

「あら、こんな所にいたのね」

「探しましたよ」

「ふぇ?」

 

 姉さんと私は笑みを浮かべて親しい仲のように振る舞って女の子に近づきます。男の人たちは驚いていますが無視です。むしろ姉さんは男の人たちを邪魔そうに押しのけています。さすが姉さんですね。私には真似できません。

 それに近くによれば分かりましたが、男の人たちは体格は良くても顔も雰囲気もドクターの方が断然良いです。私たちよりも裕福な生活をしていそうなのに何故このように成長してしまったのでしょうか?

 

「おいおいおい!いきなりなんだよアンタたちはよぉ!?」

「あら、聞こえなかったのかしら?ならごめんなさいね。この子は私たちの連れなの。だから早く何処かに行ってくれないかしら?」

「んだとぉ!?」

「待てよ。……お姉さんたちも美人だねぇ。俺たちと一緒に遊ぼうよ。この子も一緒にさ」

 

 一人は分かりやすく怒っていますがもう一人はすかさず止めて少しは良い人なのかもしれないと思いましたが、あまり大差はありませんでしたね。これが日本のことわざの……類は友を呼ぶ、でしたっけ?

 怒っていた人も男の人の言葉で動きを止めて私と姉さんの身体を見てニヤニヤしはじめました。F.I.S.でたまに新人として入ってくる研究員の人たちもたまにそういう目で私たちを見てきましたが、ここまで不快になった事はありません。

 シンフォギアの実験のために私たちは色々トレーニングをしているのでこれくらいの相手なら負ける事はありませんが、それでも不快感が勝って手を出してしまいそうになります。これがドクターなら良かったのに……。

 

 男の人の一人がニヤニヤしたまま私の肩に手を伸ばしてきます。なので私は触れる前に相手の手を取って────

 

キュインキュインキュインキュイン

 

 捻りあげようとした瞬間、少し離れたところでけたたましい音が耳に入って、その音のする方に振り返れば切歌ちゃんと調ちゃんが二人並んで手に何か機械のような物を持って、ピンのような物を引き抜いている姿がそこにありました。

 

「マムが変な人に会ったら迷わず使えって」

「言ってたデス!」

 

 マムがいつの間にか二人に防犯ブザーを渡していたようですね。少し扱い方を間違えている気がしますが、今は助かりました。

 周りの人も防犯ブザーの音を聞いてどんどん集まってきます。それに気がついた男の人たちもさっきまでの威勢はどこへ行ったのか慌てて走って逃げて行きました。逃げる時は速いですね。

 

「ふぅ。ナイスよ、切歌、調(キュインキュイン)」

「日本は治安が良いと聞いていたので必要ないと思っていましたが、何が起こるか分からないものですね(キュインキュイン)」

「うん。マリアとセレナが変な人に絡まれていたから(キュインキュイン)」

「早速使うとは思ってもみなかったデスよ!(キュインキュイン)」

 

 防犯ブザーを鳴らさなくてもどうにか出来ましたが、一応は相手は男の人です。ドクターよりも局長さんとまでは行きませんが鍛えられていそうな身体だったので二人のおかげで怪我や余計に目立つ事もなく平和的に……。

 

「……ねぇ二人とも。そろそろそれ、止めてくれるかしら?」

「「止め方分からない(デス!)」」

「「えぇ……」」

 

 そ、そういえば私も防犯ブザーというものがあるというのは知っていましたが実物は初めて見ました。見たまま音で周囲に自分の位置を知らせる物なのだとは分かりましたが、知識が無いから止め方が分かりません!

 横目でマリア姉さんを見れば、姉さんも私と同じで止め方が分からないのか目が泳いでしまっています。

 

「えっと……そのピンを元の所に刺せば止まりますよ?」

「「「「えっ?」」」」

 

 私と姉さんが助けた茶髪の女の子が切歌ちゃんと調ちゃんの持つ防犯ブザーを指差しながら恐る恐るといった風に発した言葉に私たちは一瞬固まってしまいました。

 切歌ちゃんと調ちゃんがお互い目を合わせてからそっと持っていた防犯ブザーのピンを元の場所に刺すと耳が痛くなるくらい大きかった音が消えてしまいました。

 

「えっと……ありがとう?」

「あ、いえいえ!私こそ助けてくださってありがとうございました!」

「ふふ。大変な事にならなくて良かったですね」

 

 ちょっと気まずい雰囲気になってしまいましたが、女の子に怪我がなくて良かったです。それに偶然とはいえ切歌ちゃんと調ちゃんも見つかりましたしね。早くマムの所に戻らないと怒られてしまいます。

 

「それじゃ、私たちは行くわ。貴女も可愛い顔しているのだからああいう男には注意しなさい」

「あう、分かりました……」

 

 姉さんが軽く女の子に注意して、女の子が少ししゅんとしてしまいました。

 庇ってあげたいですが、日本にもあんな軽薄な人がいると分かってしまった今、目の前の女の子も自分が可愛いことを理解してもらわないと今後もあんな風に話しかけられてしまいます。いつでも誰かが助けに来てくれるとは限りませんから注意するに越したことはありません。

 

(でも、ドクターなら私たちが危険な目に遭ったら助けてくれるでしょうね)

 

 安易な想像だと分かっていますが、どうしてもドクターが私たちを見捨てる姿が想像できません。むしろ私たちの方がドクターに迷惑をかけてしまう事の方が想像出来てしまいます。

 彼女にもそういった信頼出来る人がいればと私は心の中で密かに願います。現実では難しくても、そう思える人がいれば私たちは強くなれますから。

 

 それから私たちはマムの所へ戻るため女の子と別れました。最後まで頭を下げてお礼を言ってくるのできっと優しい子なんだなぁと容易な想像が出来ます。これからもその優しさを忘れないでくださいね。

 

 ────────────────────

 

「……すっっごく美人だったなぁ」

 

 マリアたち四人が人混みに消えたのを見て少女はため息を吐いた。

 

(背も高いし髪も綺麗だし胸も大きいし……何処かのモデルさんだったのかな?)

 

 ファッションにあまり詳しくない少女だったが、マリアたちの美貌からモデルか芸能人なんだと勝手に決めつけてしまうが逆に何が当てはまるのか分からず、少女自身もそれが正解だと思い込んでいた。

 

 今日は大の仲良しである友人と共に興味はなく、有名なのは知っていても詳しくは知らないアーティストのライブに誘われて仕方なく来ていたのだが、知らない男からナンパされて身の危険を感じていたところに颯爽と現れたマリアとセレナに助けられたのは幸運だったと少女はニヤニヤを隠さないでいた。それだけ少女の目に映る二人の姿は同じ女性からしても魅力的だったのだろう。

 

「あっと、それどころじゃなくて」

 

 少女は思い出したかのように携帯端末を急いで取り出して友人の電話番号にかける。もう約束の時間は当に過ぎているのにまだ誘ってきた友人の姿を見つけられずにいるため心配の方が勝ってきたのだ。

 

「未来〜?今何処?私もう会場だよ?……ええぇぇ!!!」

 

 ────────────────────

 

「──まったく、貴女たちは……もう少し自分の立場を理解しなさい」

「「ごめんなさい……」」

「まぁ二人も無事に戻って来たのだから許してあげましょうマム」

 

 切歌ちゃんと調ちゃんがマムに怒られてしゅんとしてしまいました。でも可哀想だけど勝手に行動した切歌ちゃんが悪いですので仕方ありません。

 

 切歌ちゃんと調ちゃんと合流した私たちはライブが始まるまで少し会場にあるお店を見て回りました。

 詳しくは知りませんでしたが一部とはいえF.I.S.までこのツヴァイウィングと呼ばれる二人の名前は広がっていましたからね。実際私も姉さんと一緒に二人の曲を聴いたら聞き惚れてしまいました。私たちもシンフォギアを使用するので歌に関しては少し自信がありましたが二人はお仕事というのもあるのでしょうけど、キチンと歌を楽しんでいました。きっとそこに私たちも惹かれたのでしょうね。私たちは何処か歌を道具として見ていたのかもしれません。

 

 そんなツヴァイウィングの二人はやはり日本では凄く有名でいろんなグッズが沢山ありました。ですがマムは切歌ちゃんの持っていた物を見てため息を吐いてしまいます。

 

「……貴女が何を買おうが貴女のお金なのだから何も言いません。ですが一つだけ……何故同じ物をそんなに買ったのですか?」

 

 マムが言った事は分からなくもありません。だって切歌ちゃんはあの赤い髪の天羽奏という人の顔を可愛くしたお面を五つ持っていたのですから。あの青い髪の風鳴翼という人も人気のはずなんですが……。

 

「えっとデスね。本当はみんなの分を買おうとしたんデスが」

「丁度青い髪の人のお面が売り切れてて赤い髪の人しか残ってなかったの」

「それでも同じ面を五つはどうなのよ……」

「ははは……」

 

 姉さんが頭を痛そうに押さえます。マムも顔に手を置いて空を見ていました。かくいう私も笑うしか出来ませんでした。

 切歌ちゃんの気持ちは嬉しいのですが私も姉さんも大人ですのでこのようなお面は恥ずかしさの方が優ってしまいます。あ、切歌ちゃんが悲しそうに俯いてしまいました。……ドクターが切歌ちゃんを構いたくなるのも分からなくはないですね。

 

 それから被りはしませんでしたが切歌ちゃんからお面を貰った私たちはみんなで局長さんが用意してくれた特別な部屋にたどり着きました。

 そこは本当に特別な人しか入れないような場所で、かなり遠いですがステージ全体を見渡せる位置にあるので眺めは凄いです。まだライブは始まっていないのに何がなんだか分からないくらい人が沢山いて、ここまで沢山人がいる場所に来る私には圧迫感も大きいです。

 

「うわぁ!人がいっぱいデスよ!」

「そうだね切ちゃん。人がまるでゴミのよう……」

「調!?」

 

 ちょっと暗い笑みを浮かべた調ちゃんに切歌ちゃんが迫真の驚き顔をしてマムも姉さんも笑みを浮かべます。私も釣られて笑ってしまいました。

 これだけ沢山人がいる中で歌を歌うのはかなりの度胸が必要です。私や姉さんも親しい人たちなら囲まれても問題ないですが、ここはそれ以上の規模な上に知らない人ばかりです。とてもではありませんが真似出来る気がしません。恥ずかしすぎて歌える自分の姿が全く想像つきません……。

 

「ドクターと一緒に観たかったですが……」

「仕方ないわ。ドクターも大事なお仕事なんだから。ライブが終わった後なら多分会えるからそれまで我慢しましょ?」

「……はい」

 

 姉さんはそう慰めてくれますが素直に受け入れる事が出来ません。

 うぅ、ドクターを追いかけて日本まで来たのに、このライブ会場の何処かにいるのに会いに行けないのはとても残念です。一週間も会っていませんので早く会いたいなぁ。

 

「四人とも、もうすぐ始まりますよ」

 

 マムの一言と同時に会場の照明が全部消えて一瞬だけ視界が真っ暗になります。ですがその直後ステージのセットが光り出してライブのスタートの合図かのようにBGMが流れ始めました。

 会場に舞う白い羽根と一緒に二人の女の人がステージの中央に舞い降ります。舞台の演出の一つだと分かっていても本当に空を飛んでいた天使が舞い降りる姿のようでした。

 そして、私たちは生まれて初めて訪れたライブ会場で、初めての見るツヴァイウィングの歌を聴きます。その歌声に、私たちは震えてしまいました。

 

「す、凄いデス!」

「うん。聴いてるだけで熱くなってくるっ!」

 

 切歌ちゃんと調ちゃんは早速二人の歌に釘付けになっています。あまり大きな反応をしない調ちゃんもツヴァイウィングの歌を聴いて心なしか身体でリズムを取るくらい真剣になっています。

 かくいう私と姉さんも歌を聴いていて何も思わないわけがありません。

 

「これが、心の底から歌を愛する人の歌……」

「私たちに足りない、とは思わないけどここまで歌で熱くはなれないわね……」

 

 シンフォギアは私たちの歌に反応して力を貸してくれます。そのためなのでしょうか、いつの間にか私たちは歌を何処か道具のように扱っていたのかもしれません。今の私たちではここまで人の心を動かす歌は歌えない。そう確信してしまうほど、目の前で舞い歌うツヴァイウィングの姿は情熱的で目が離せないくらい全力です。二人の熱さがここまで伝わって来ますね。世界的に有名になるのは当たり前です。

 ツヴァイウィングの歌に魅了された私たちは歌い終わるまで完全に意識が歌に寄っていて時間が経つのが怖くなるくらい早かったです。また聴きたい、のではなくてもっと聴きたいという気持ちがどんどん膨れ上がっていきます。

 

(歌は、ここまで人を惹きつけるものなんですね!)

 

 全然イメージは出来ませんが、私もいつか人を魅了出来るくらいの歌を歌えたら。なんて夢を見てしまいます。そんな歌を歌えるようになればきっとドクターに伝えたい事を伝えられる勇気を持てると思いますから。

 ツヴァイウィングの聴き手も熱くさせるような一曲目が終わってしまいます。少々残念ではありましたがライブはまだ始まったばかり。これからきっともっともっと熱くさせてくれるような歌を聴かせてくれると私たちは楽しみにしていました。

 

 ですが、心地の良い時間は突然終わりを告げてしまいます。

 遠くから見ていても分かるくらい大きな爆発が突如観客席の一画で起きたのです!

 

「ななな、なんデスかいったい!?」

「これも演出?」

「そんなはずないでしょ!明らかに演出にしては爆発が大きすぎる!」

 

 突然起きた事態に切歌ちゃんも調ちゃんもあたふたしてますし、姉さんも何が起きたのか分からないから挙動不審になっています。かくいう私も目の前で起きた惨劇にさっきまでの高揚感が嘘のように冷えて無くなっています。

 でも、まだ事態は終わっていませんでした。

 

「ッあれは!」

 

 最初気が付いたのはマムでした。

 マムが窓の外の空を驚愕を隠し切れていない顔で睨んでいるのを見た私たちはマムの視線の先を追って空を見上げます。すると視界にかなり遠いですが、見たこともない変な形と色をした鳥のような何かがライブ会場の空を所狭しと飛んでいました。

 本物は見た事はありませんでしたが、私たちはそれが何かをドクターやF.I.S.の人たちに何度も何度も教わり、そしてその恐ろしさを口酸っぱく聞かされてきたので空を飛んでいる鳥のような何かの正体はすぐに分かりました。

 

「あれが……ノイズ」

 

 一瞬何が起こったか分かりませんでした。現実味を感じていない、というのが正しいかもしれませんね。だってそもそも防ぐ手立てがないから被害が大きくなりますが、ノイズ自体世界的に脅威な存在とはいえ現れる確率はとても低く、場所によっては出現を確認してから向かうまでに制限時間が来て自壊する事も多いらしいですから。

 なので資料でしか見た事のないそれがノイズだと分かっていても理解するまでに何秒か掛かってしまいました。

 

 それからはまさに地獄のような光景でした。

 

 見た目は可愛らしい姿をしているのに、一般人は一度組みつかれたら生きる術はありません。あとはただ灰になるのみ。というのを話でしか聞いていませんでしたが、目の当たりにすれば話が変わってきます。

 爆煙から次々とノイズが現れて近くにいた老若男女関係無しに組みついて自身ごと組みついた人を灰にしていきます。人の命がこうもあっさりと何も残さずに消えていく光景は現実とは思えません。中には研究所に残してきた切歌ちゃんたちよりも小さい子供もいますが、それも関係無しです。

 

「ッマリア、セレナ!こんな時こそ私たちの出番デスよ!」

 

 切歌ちゃんの言葉に目の前の非現実的な光景をただ呆然と眺めていた私と姉さんはハッとして意識を切り替えます。

 確かにそうです。最初こそ無理矢理でしたが、今はドクターやマムの期待に応えるべく私たちはノイズと戦うために辛い訓練をしてシンフォギアを扱えるようになったんです。それにもうネフィリムの時のような力が足りなかった頃の私ではありません。ですが。

 

「でも切ちゃん。肝心なギアが無いよ?」

「あ。忘れてたデス!!!」

 

 そう、今回はお忍びで日本に来ている状態です。そんな状態で研究所からギアを持ち運べるはずが……。

 

「……マリア。少し後ろに回ってくれませんか?」

「えっ?」

 

 マムが近くにいた姉さんに話しかけて自分の後ろに回るように指示します。姉さんは困惑しながらもマムの背後、車椅子の背もたれの背面に回り込みました。

 姉さんが移動した事を確認したマムは何やら車椅子を操作します。すると背もたれの背面が急に小さな簡易テーブルのように開きます。そしてその中には私たちが見慣れた、四つの赤いクリスタルのペンダントが並んでいました。

 

「これ……もしかしてギアなの!?」

「ええ。既にアガートラーム、イガリマ、シュルシャガナ、ガングニールの必要なデータはF.I.S.で保管済みです。よってギア自体を研究所で保管する必要性は皆無。もし何かあった時のため、念のために持って来ていて正解でした」

 

 まるで最初から分かっていたらのようなタイミングで、まだ聞きたい事はありましたが今はそんな事を言っている暇はありません。こうしている間にもノイズは次々と無関係な人たちを襲っているのですから。

 

「ありがとうございますマム!」

「後は私たちに任せて早く安全な場所に避難を!」

「ノイズは壁をすり抜ける能力もあります。下手に逃げ回るより貴女たちが殲滅するのを隠れて待っていた方が安全でしょう」

「あう、責任重大デス……」

「でもやるしかないよ」

 

 私たちは自分のギアのペンダントを掴んでマムに部屋の隅に隠れるように言ってから急いで部屋から出て会場に繋がる道を走ります。VIPルーム、と言うのでしょうか?とにかくライブの関係者しか入れない場所だったのと先の爆発のせいで通路に大きなヒビが入っていたりして全然人がいません。一般の人たちは他の通路へ退避しているとは思いますが、今は好都合です。

 

「でも、私たちの顔を見られても大丈夫なの?」

「「あっ」」

 

 通路を走っている途中で発した調ちゃんの疑問に姉さんと私は肝心な事を忘れていました。

 私たちのシンフォギアは日本政府には秘密で作られた物だとドクターは言っていました。ならここで下手にシンフォギアを纏えば今後どうなるのか私たちには分かりません。緊急事態だから、という言い訳は装者である私たちの言い訳であってドクターたちの言い訳にはなりません。それこそ、日本へ向かう前にドクターが言っていたように今後のF.I.S.と日本政府の関係に大きな亀裂を作ってしまうかもしれません。

 

「ならこれを使うデス!」

 

 そう言って切歌ちゃんが見せて来たのはさっき会場の外で買った天羽奏さんのお面でした。

 ……とても嫌な予感がします。

 

「これを被っていればバレないデスよ!」

 

 嫌な予感が当たってしまいました……。調ちゃんも呆れているのでしょうか、目を細めて切歌ちゃんをじ──っと見つめています。この場合何か言ってあげた方が私も気が楽なんですが……。

 

「……素顔さえバレなければそれでいいかもしれないわね」

「姉さん!?」「マリア!?」

 

 一番反対しそうな姉さんの意外な言葉に私と調ちゃんは思わず声を出していました。

 ですがよくよく考えたら私たちは素顔を見せられない状態で、ですが今は私たちしかこの状況を打破する事が出来ません。私たちのシンフォギアの存在は日本政府にバレるかもしれませんが素顔さえ隠せられたらきっとドクターが上手く言い訳をしてくれるかもしれません。

 その考えに行き着いた私と調ちゃんは少し迷いながらも切歌ちゃんから受け取っていたお面を取り出します。顔を隠すのなら布か何かでもよかったのでは?と思いますが、今は仕方がありませんね。

 

「いい?戦闘中は名前を言ってはダメよ。名前から私たちの存在がバレるかも知れないんだから」

「でも、それじゃ連携が取れないですよ?」

「ノイズの数もかなりいるからそれじゃ……」

「ならいい考えがあるデス!」

 

 ……また嫌な予感がします。

 

 ────────────────────

 

「の、ノイズは絶対許さない!し、シンフォギアシルバー!」

「同じく!シンフォギアグリーンデス!」

「きりちゃ……グリーンと同じくシンフォギアピンク」

「シンフォギアオレンジよ!……オレンジって微妙じゃないかしら?」

 

 事前に切歌ちゃんが提案して話し合った名乗りで私たちの存在を誤魔化すためのお芝居をします。これがなんのカモフラージュになるのか分かりませんが一つだけ言えます。

 

(……ドクターの苦労が少し分かった気がします)

 

 取り敢えず、この状況を打破したら切歌ちゃんとは少しOHANASIが必要のようですね。




F.I.S.組は原作以上に家族のような絆があるためセレナちゃんのみんなの呼び方が非常に親しいものになっております。
……ロリセレナちゃんかIFセレナさん以上に呼び方に迷って地味に扱いにくいな!ちゃん付けが一番自然なんや……あ、切ちゃんみたいにウェル博士の丁寧口調真似てる感じにすれば自然ですねぇ!

ちなみに途中で出てきたDQNどもはノイズと仲良く抱き合っていましたよ(ニッコリ)
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