シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!?   作:ボーイS

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人によってはちょっと胸糞かもしれない。


二十九話 予想以上の悪い結果で笑えない

 日本からF.I.S.に帰還して二週間が経ちました。

 

 重傷を負った研究員たちも無事、とは言えませんが本国に帰って来れましたよ。その後の生活資金も国で負担してくれる予定でしたが、なんとみんなそれを断って本気でF.I.S.に残留する事を決めていた事に驚きましたよ。さすがに冗談と思っていたのにみんな本気で説得しようとしていた局長やナスターシャが折れる姿は圧巻でしたね。

 今後は彼らの義手義足、ナスターシャと同タイプの車椅子等の生活補助具が支給されるようです。上手くいけば手足を失う前と寸分狂わないほどの性能にもなるらしいですね。この世界の技術怖っ。

 

 まぁそれはそれとして、帰って来てからというもの残されたネフシュタンの鎧のデータを解析しようにもほとんど破損していたため有益な情報はほぼありません。なので今回の実験は完全に失敗に終わりました。

 日本の損害とこちらのメンバーの負傷による賠償とか色々騒いでいたようですがその辺りは僕の管轄ではありませんからね。なるようになれです。その代わり、局長がここ最近寝不足で少し痩せてしまっているような気がしますがね……。

 

 そんなこんなで色々ありましたが徐々に元の生活に戻って……いたら良かったんですがねぇ。

 

(これは予想外でした)

 

 僕はコーヒーという名の黒砂糖水を飲みながらモニターに映る日本語で書かれたニュースを目で追います。そして読めば読むほど僕の感情が死んでいくような錯覚を感じていますよ。

 

「どうなさったのですか、ドクター?」

 

 話しかけて来たのはあのトレーニングにハマって鍛えている筋肉女性職員が飲み物を持って……ちょっと待って知らないうちに弦十郎さん並みのガッシリとした体格になっているんですが。よく見たら持ってる飲み物もプロテインって書いてありますし。この娘どこまで行く気ですか……もう胸が比喩表現的なのではなく本当の大胸筋ですよ。見た目で石より硬そうなんですが。

 

「んん。いえ、ちょっとあまり良くないニュースを見てしまいましたねぇ」

「……これは先日のライブ事件の?」

「おや、読めるので?」

「はい!私日本の伝承にあるような聖遺物が好きなので日本の文献を調べるために勉強しました!」

 

 おお。少し意外ですね。これだけ筋肉ついてるのに脳みそは筋肉じゃないようです。というか転生する前から僕は日本神話とかあまり詳しくないので下手したら僕より知ってそうですね。また日本人として不覚っ!

 

 なんて僕が心の中でガッカリしている中、僕の肩越しにモニターのニュースを見ていた彼女は最初こそウキウキした様子でニュースを読んでいましたが、その顔も徐々に曇っていきます。まぁ、このニュースを見れば誰でもそうなりますよね。

 

「……これは本当なのですか?」

「じゃなかったら良いなと思っていますよ」

 

 ニュースには先日のライブ事件の事が書かれた記事がデカデカと張り出されていました。それだけならまだ良かったんですよ。それだけなら。

 

『死者およそ七千人。その七割以上が逃走中の将棋倒しによる圧死や避難路の確保を争った末の暴行による傷害致死である』

 

 死者の数だけ見たらアニメと比べて多分三、四千人は助かった計算ですかね。マリアちゃんたちの活躍でそれだけの人数が生き残ったんですから大活躍とも言えなくもありません。

 ですがアニメではたしか三分の一が人の手による死でしたが、その数値が反転しています。もうこの時点で嫌な予感しかしませんよね。もう少し記事を読み進めたらその数値すら可愛く見えて来ますよ。

 

『現在、生存者一〇万人のうちおよそ一万人がライブ後消息不明』

 

 ……最初見た時は僕でも意味が分かりませんでしたよ。

 正直に言いましょう。ある意味最悪のくじを引いてしまったようです。

 

 記事にはまだ詳しく書かれていませんが、既に生存者のバッシングが始まっているようです。しかもアニメ以上の惨劇になってね。

 ちょっと無理をして日本のデータベースにアクセスしてみればこの一万人の行方不明者の一部はバッシングによる酷いイジメによって既に自殺又は行き過ぎたイジメによって殺されていました。

 その他の行方不明者は誘拐とか逃亡と言ったものでしょうが、その中の幾人が生きているのか。

 多分まだ明らかになっていないだけでもっと死者は出ているでしょうね。下手をしたら一万人というのも嘘でもっと上かもしれません。

 政府や警察もこれといった大きな動きもありません。まるでこの事態を傍観しているように見えます。いや、実際そうなんでしょうねこれは。

 アニメよりも沢山の人を救えたというのにアニメ以上に死者が出ています。もっと調べてみればバッシングによる波風は僕の予想以上に大きく、日本では大きな社会現象にまでなっています。

 ニュース番組を観ればその事を取り上げているチャンネルがほとんどですね。しかもキャスター全員生存者を非難する者ばかり。

 

「すぐそこまで死が近づいているのに後ろの人に『はい、どうぞ』と道を譲る人はこの中にどれだけいるんですかねぇ」

「それは……」

 

 ノイズというほぼ確実な死が迫っているんですよ?よほど人生を諦めている人くらいしかそんな事しません。そうでなければあの状態になればみんな同じ行動を取るでしょう。まぁ、それを言っても「自分はそんな事しない!」とかぬかす輩はいるでしょうがね。他人を救って満足できるのはそれこそアニメのビッキーのようなお人好しくらいですよ。

 

(何故こうなった……)

 

 マリアちゃんたちが頑張ったのに何故こんなあまりにも無情な結果になったのだろうか?

 ……いや、その理由は既に検討がついています。

 

 考えたくありませんが、可能性としてはおそらくはマリアちゃんたちの持つシンフォギアが原因でしょう。

 あれは国の機密の塊のような存在ですからね。シンフォギア自体は数年前から存在していたはず。なので一般市民がシンフォギアの存在を知らないという事はそれだけ国のお偉いさん方の情報操作は巧妙なんでしょう。

 ですが今回はマリアちゃんたちが、彼らにとっては登録されていない謎のシンフォギア装者が四人も現れたんです。そりゃ日本にしかないはずのシンフォギアが急に現れたらお偉いさんは大パニックでしょうよ。うちのお偉いさんがマリアちゃんたちの事を話していなければ。

 

(いまだにマリアちゃんたちの招集や詰問がないので他国には秘密にでもしているんでしょうね)

 

 伏せられている手札は多いほど良い。それがマリアちゃんたちの事なんでしょう。

 知らぬ存ぜぬを通すとなれば必然的に各国が互いに腹の探り合いが始まります。そしてその探り合いに巻き込まれた日本は自国の問題に手をつける暇なんてないでしょう。

 結果、極秘であるシンフォギアの情報が動画サイトなどで世間に露呈してしまう。一度漏れた情報を全て封鎖する事はほぼ不可能。同レベルの問題でもなければ、ね。

 

「……『ライブ事件で謎の美少女ヒーロー登場!?』、ね」

 

 モニターの一つに映し出された動画のタイトルを読みますが、その動画は既に消されています。探してみればおそらくシンフォギアを纏ったマリアちゃんたちを指すであろう動画は沢山見つかりましたが、僕が見た限りその全てが削除されて視聴できませんでした。

 他の情報サイトや掲示板でも探しますがそう言ったサイトもすべて削除済みです。

 全てのシンフォギアに関する情報が削除されている。そんな事、いったい誰が出来るんでしょうかねぇ。

 

 ええそうですよ。日本政府かあのGEDOUの野郎はライブ事件の生存者を生贄にしてシンフォギアの情報を消していたんですよ。少し調べればそんな痕跡なんていくらでも出てきて笑えてきますね。消すのに必死で自分の足跡が消えてませんでしたよ。

 

 倒す手段がないとされるノイズに対抗出来るシンフォギアという存在は世間にとって大きな存在でしょう。ですがシンフォギアは国の最重要機密。簡単に公にできません。

 なので政府のとった手段が生存者へのバッシングなんでしょう。その証拠にアニメ以上に生存者への当たりが強い記事ばかりです。これも政府が裏で手を回しているんでしょうね。

 結果はご覧の通り。シンフォギアに関する情報は生存者への非難の海に呑まれて全員が興味を失っています。これなら記事を削除するのも容易いでしょうね。

 

(弦十郎さんは何をやっているのか)

 

 行き場のない怒りが沸々と湧いてきますよ。一言とはいえ注意したのに何故弦十郎さんは動いていないのか。

 ……勿論分かってはいますよ。弦十郎さんはニ課という組織の司令とはいえどもニ課は政府の組織の一つ。しかもあまり風当たりがよろしくもないようなのでいくら怪物とか「日本が核を持たない理由」と言われる弦十郎さんでも発言権はあまりない。なのでバッシングの抑制も出来ないのでしょう。あのビッキー並みにお人好しな弦十郎さんが現状を見捨てるはずがない。

 

 全て前世の記憶と今のニュースを見比べて推測しているので本当は全く別の問題が日本政府で発生しているかもしれませんので確証はありませんよ。まぁ、既にセレナちゃんと奏さんが生存する世界なのでアニメのような歴史の流れにはなりませんでしょうがね。

 

「この事をあの娘たちには……」

「言うと思いますか?」

 

 言えるはずがない。マリアちゃん、切歌ちゃん、調ちゃんの三人もですが特に人一倍優しくて争い事が嫌いなセレナちゃんなんて自分たちのせいで救った数よりも多くの人間が死んでいると知ったらどうなるか。最悪気を病んで自殺する可能性も大いにありますよ。自殺しなくても装者として精神に致命的なダメージを負う可能性の方が高いかもしれませんね。

 

(……ビッキーも大丈夫でしょうかねぇ……)

 

 マリアちゃんたちもそうですが、このバッシングの渦中の中にいるビッキーも気がかりです。

 アニメよりも規模が大きいのなら必然的に生存者への当たりも大きくなっているのでビッキーに何があるか分かりません。未来ちゃんと一緒にいたとしてもアニメ通りのビッキーになるとも限りませんし、最悪本編が始まる前にお亡くなりになる可能性も存在しています。

 

(個人的にはグレビッキーはゴメンこうむりたいですねぇ)

 

 グレビッキー自体は好きですが目の前であの性格のビッキー相手にするのは骨が複雑骨折しますよ。元気なビッキーを知っている分、あの冷たい感じを実際僕に向けられたら泣きますよ。こう見えてクソ雑魚豆腐メンタルなんですから……。

 

 可能性を上げればキリがないですねぇ。既に歴史が変わっているのでグレビッキーになる可能性もビッキーが亡くなる可能性も、もしかしたら歪みに歪みまくって人類の敵になる可能性だってあります。

 なるようにしかならないとはいえ、あまり良くないルートに入った気がして頭が痛い……。僕のせいでシェム・ハやアダムに負けてバッドエンドとか嫌ですよ。

 

「……少し歩いてきます」

「分かりました。こちらで出来る事はやっておくのでごゆるりと」

「ありがとうございます」

 

 色々な事があって頭がパンクしそうなので断りを入れてちょっと部屋の外に出ます。変に空気が悪くなってもいたので居心地も悪かっですしね。頭を冷やすのにも丁度良いでしょう。

 

 まだまだシンフォギアという物語は始まったばかり、いや始まってすらおりません。それなのにまだこんな所でつまづいていてはG編が始まる前にまいってしまいますよ。ここは落ち着いて深呼吸を──

 

「「ドクター!!!」」

「メガンテッ!?」メキャ

 

 ぬおおおお!?久しぶりなのと完全に油断していたので衝撃をもろに食らったあああぁぁぁ!?身体が逆海老反りになっていると言っても過言ではありませんよ!?(過言)

 

「グフッ、き、切歌ちゃん、調ちゃん……そろそろ自分たちが成長しているという事を考えて下さい……ガクッ」

「「ドクター!?」」

 

 ゆ、揺らさないで……腰が……首があああぁぁぁ……。

 僕が逝きかけていると少し離れた所からマリアちゃんとセレナちゃんが慌てて走って来る姿が見えます。うん、走るたびに揺れる二人の大きな果実に目が行きそうになりますが今はそれどころじゃありません。

 

「大丈夫ですかドクター!?」

「あれだけドクターに飛び付くのは禁止って言っているでしょう!」

「「ごめんなさい(デス)……」」

 

 マリアちゃんとセレナちゃんに叱られて切歌ちゃんと調ちゃんはしゅんとしてしまいます。ここは僕が怒らないといけないのに許してしまいそうだ。まぁ、もう慣れた事なので既に許していますけどね。痛みには慣れませんが。

 

「ドクター!今時間はあるデスか!?」

 

 ひとしきり叱られた切歌ちゃんは説教が終わった途端満面の笑みで言いました。ちょっと情緒不安定と思うくらい感情の切り替え早いなあ。そこがまた切歌ちゃんらしいんですがね。それと調ちゃん?そんな僕の白衣の裾を引っ張って僕をどこへ連れていく気ですか?

 

「どうしたんですか?」

「みんなで育ててた花が咲いたみたいなのよ」

「切歌ちゃんと調ちゃんったら、ドクターに早く見てもらいたくて走っていってしまったので私たちも焦りました」

「そう言う事ですか」

 

 レセプターチルドレン専用の区画にある庭で花を育てていると聞いていましたが、どうやら無事咲いたみたいですね。それを僕に見せたくて急いで来たんですか。可愛いなぁ。

 

「んー。でもまだやる事が残って「こっちはお気になさらずにー!」……無いみたいですね」

 

 何処から聞いてたんだあの筋肉娘……耳まで筋肉によって強化されているんですかね?筋肉怖っ。

 

「なら早く行くデス!」

「早く早く」

「こら!ドクターも迷惑してるでしょ!」

「二人とも焦って転んではダメですよ?」

「「はーい!」」

 

 ……平和だなぁ。

 ここはこんなにも平和なのに、日本では醜い魔女狩りが起きているなんて考えれられませんね。

 やはり今はまだこの娘たちに日本で起こっている生存者バッシングの事を言わない方が良いでしょうね。いつか知る日が来るにしてもそれは今じゃなくて良いはず。もっと精神的にも肉体的にも成長して真実を受け止められるようになるまで黙っていましょう。

 ……その頃まで僕が生きていれば。

 

「ドクター!はーやーく!」

「はいはい」

 

 僕は切歌ちゃんに急かされながらも今の平和な時間を噛み締めて歩みます。

 

 ──そう遠く無い未来で訪れる別れの日まで。

 




何度でも、何度でも私は言いますよ。声が枯れるくらい!

私は!ギャグを!書きたいんだよぉ!

それと下手に期待されると私の胃が消えてしまうのでネタバレですが、一応ビッキーはアニメ通りのビッキーの予定ですはい。
これ以上ギャグ要員を減らされては終始暗い話になってしまいますのでねぇ!(ほぼ手遅れ)
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