シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!? 作:ボーイS
この前の何が原因で起こったのか分からない、マリアちゃんたちの殺意増し増しな殺し合いとも言える戦闘訓練からはや一ヶ月。
あの後四人はいつものような仲良しに戻ってホッとしていたのですが、あれから定期的に行なっている三対一の戦闘訓練の際には再びあの殺伐とした空気になってしまい、そのうち死人が出そうで不安ですよ……冗談抜きでその時のマリアちゃんたちの画風が変わっているように見えて怖いんですよ!あの戦闘力ならサンジェルマンさんたちとも良い勝負しそうですね。このまま成長したら未来さんの事考えずに殺す気満々ならシェム・ハにも通用しそうなまでありますよ……。
まぁ、それは置いておいて。
「おかしいですねぇ」
廊下を歩きながら手元のタブレットを操作して世の情勢を色々と調べているのですが、僕が求める情報が一切ないんですよ。
(時期的にもとっくに情報があっても良いのですがねぇ)
僕が欲しているのはそう、「風鳴翼の初回特典付きCD」の事です。
初回特典の事は別に良いとして、確かビッキーはライブ事件から二年後に自身を助けてくれた翼さんに会うためにリディアンに入学。お礼を言えない日々が続いていたある日に翼さんのCDを買うために商店街に行った時にノイズに遭遇してピンチになった時にシンフォギアを手に入れた、確かそんな感じの流れだったはず。
肝心のビッキーがリディアンに入学したのは日本のデータベースで分かっています。個人情報にまでたどり着くのに結構危ない橋を渡りましたが、この世界の未来がかかっているんですから目を瞑ってください。
細かな詳しい情報までは分かりませんが、どうやらビッキーはなんとかあの生存者バッシングを生き残り、未来ちゃんと仲良くリディアンに入学して普通の学生生活を送っているようですね。取り敢えず、グレビッキーや闇落ちビッキーじゃなくて良かった……いや、まだアニメにはない爆弾抱えてしまった可能性はありますか。
そんなストーキング紛いな日々を過ごしていたのですが、どうもおかしいんですよ。
「なんでいまだに翼さんのCDの情報がないんですかね?」
もうリディアンの入学式から一ヶ月が経っています。
詳しい日付は分かりませんがビッキーがリディアンに入学からシンフォギアを纏うまでそんなに日は経っていなかったと思うので、最低でもCDの発売の予告くらいは出回っていても良いはずなのにそれが全くありません。
(奏さんが生き残った事によってズレたんですかね?)
その場合、ちょっと洒落にならない問題が出てきますよ。
仮にアニメのCD発売日より一ヶ月ズレたとしましょう。一ヶ月ズレた程度では何も変わらず、全体的な物語の時間が一ヶ月くらいズレるだけなら多少季節の違いはあろうともなんの問題もありませんよ。
ですが逆に言えば一ヶ月ズレた事によって何かが変わってしまってビッキーがシンフォギアを纏わなかったり、纏う前に死んでしまったりしたら最悪中の最悪ですよ。ゲームの世界みたいに並行世界に入ったらアニメの知識がほとんど使い物にならなくなってしまいます。それはマリアちゃんたちの生死にも関わってきますよ。
「そんなに唸って、何かありましたか?」
「んー?いえいえ。大した事では無いですよ」
「そうですか。あ、この前の実験によるシンフォギアに関するデータどうしますか?」
「んーそうですねぇ。取り敢えず後で僕のPCにデータを送ってください。こちらでも確認しますので」
「分かりました」
これからの事をあれこれ色んな想像をしているとあの筋肉女性研究員が僕に話しかけて……あれ、少し筋肉が少なくなっているような気が……はて?
彼女の言うシンフォギアのデータとは今やってる神獣鏡を主としたものですね。でも進歩がほとんど無いので書くことなんてほぼ変わらないんですがね。良くてもレセプターチルドレンの中にいる神獣鏡の適合率がある子たちの事を書いているくらいです。まぁ、まだまだリンカーを使っても規定値まで届かないんですよねぇ。未来ちゃんの特別性が良く分かりますよ。
「そう言えば、貴女最近あまり運動をしている姿を見ていないのですが」
「あー。それがですね、最近ちょっと体調が優れないのか気怠いのが続いているんですよ。それに変に眠気もあったりしてあまり出来ていないんです。でも食欲は不思議とあるんですよね。酸味の効いた物が美味しくて美味しくて」
「おやおや。ですが無理はいけませんよ?確か貴女には婚約者、と言って良いのか分かりませんがいるんですから」
「分かってはいるんですけどね……」
彼女がまだ少年だったレセプターチルドレンの子との婚約してもう五年ですか。早いものですねぇ。それに清い関係を続けていたようなのでここで彼女に何かあれば少年も可哀想です。
(……はて、彼女の症状何処かで聞いたような……)
まぁ気のせいでしょう。ただでさえ同性でも体調の変化を気づきにくいというのに女性の体調の変化なんて特に分かりませんよ。医師免許持っているか目に見えて何かあれば良いのですがね。多分気のせいでしょう。
「あ、ドクターは知っていますか?」
「何をです?」
「今日ツヴァイウィングの特典付きのCDが日本で発売されるんですよ。私も予約はしているのですが届くまで日がかかるんですよ」
「そうなんですか」
ふむ。やはりツヴァイウィングの人気は凄いですねぇ。
実はF.I.S.の研究員のおよそ七割くらい彼女たちのファンなんですよね。世界的に有名ですからしたかないと言えば仕方ありませんが、それでも凄いですよ。国内ならともかく、外国までここまでの人気があるのはなかなかありませんね。それだけ彼女たちは歌が好きなのとこれまでの頑張りが評価された事というわけです。ほぼアニメとゲームの知識しかありませんが、このまま二人でもっと世界を目指してほしいです。
「そうですか。今日がツヴァイウィングのCDの発売……日……」
……んん?なんか、なんかとても嫌な引っ掛かりを感じましたよ。とてつもない見落としをしていた時の嫌な予感が。
「えっと、すみません。少し意識が飛んでいたので少し聞きます。今なんて言いました?」
「はい?ですから今日はツヴァイウィングの特典付きCDが日本で発売される日と言ったんですが……?」
あーなるほど。そういう事ね。理解理解。いやーさすがウェル博士の頭脳。下手に頭に引っかかるのではなく最速で僕の引っ掛かりが何かを見つけ出してくれるとは。ありがたいったらありゃしませんね。本当に助かりました。
何が分かったって?それはですね、僕は今まで翼さんのCD発売日=ビッキーがシンフォギアを纏う日と思っていたんですが、よくよく考えればアニメでは奏さんがお亡くなりになっているから翼さんはソロのCDを出していました。
ですがこの世界では奏さんは生きています。そりゃ翼さんのソロのCDも存在はしているでしょうが、基本的にはツヴァイウィングとして翼さんと奏さんの二人の曲が多いです。片翼だけでは飛べないとはよく言ったものですよね。
そこから考えれば本来翼さんのソロCDが発売する日がツヴァイウィングのCDが発売する日に変わってもなんの不思議はありません。
簡潔に何が言いたいのだと言いますと。
「今日じゃねえかああああああぁぁぁぁぁ!!!」
「ふぇ!?どうしたんですかいきなり!?」
はぁい賢者タイム終了ですよ!!!すみませんが貴女に構っている暇はありません!
完っっっ全に失念していましたねぇ!奏さんが生きているのですからその可能性も十分ありましたよね!少し考えれば翼さんのCD発売日がツヴァイウィングのCD発売日に変わっていてもなんの不思議もありませんよ!なのになんで今の今までその考えに至らなかったのか不思議で仕方ありませんねえ!
(ああもう!直接にはマリアちゃんたちに関係ないし、アニメ通りなら僕がいなくてもビッキーたちならフィーネをなんとか出来るから失念していたんでしょうねぇ!)
いや、もう二年前に奏さんを助ける為に僕とマリアちゃんたちは介入してしまってはいますがね!序盤とはいえ結構物語変わってしまっているのにちょっと楽観的過ぎましたよ。これくらいのズレは可愛い方かも知れませんねぇ!
「ッちょっと用事が出来たのでこれで失礼!あ、データの方はもしかしたら提出が少し遅れるかもしれせんが期日までには提出するのでお構いなく!それじゃ!」
それだけ言い残して僕は急ぎその場から離れて自室に向かって全速力で走ります。子供たちがいなくて良かったですね。廊下を走る姿を真似されたらたまったもんじゃないですよ。局長とナスターシャの説教タイムはもう嫌ですからねハハハ。
自室にたどり着いた僕は慣れないダッシュで口の中が若干鉄の味がするのを我慢して急ぎPCを起動させて、先日ビッキーの事を調べる為に危ない橋だと分かっていても使ったプログラムを再び使って日本のサーバーに侵入し、室外に設置されている監視カメラの映像を映し出します。時間的には一般の学校はまだ終わっていないのでリディアンの方もまだ授業中なんでしょうね。商店街はいつものように賑わっていて何の変わりもない平和な日常が広がっています。今から悲劇が始まるなんて誰が思うんでしょうかね。
そこでふと気付きました。
(僕に何ができるのだろうか)
アニメ通りではないかもしれませんが、これからほぼ確実にここで悲劇が始まります。描写が無いだけで百人を超える人々がノイズによって灰になってしまうでしょう。ですがそれを伝える手立ては僕にはありません。
二年前と同じですね。ノイズが現れる事を誰に伝えれば良いんだって話ですよ。しかもあの時と違いマリアちゃんたちはF.I.S.にいます。今から何が起こるか分かっているのに僕に出来る事は何一つありません。出来るのは監視カメラの映像からノイズに襲われて灰に変わっていく人々の姿を見ている事だけ。
僕の精神的な安全を考えればここでそっとPCの電源を切った方が良いでしょう。何も出来ないのなら最初から見なければいい。僕がそれを選択したところで僕以外これから起こる事を知る人はいません。誰かに責められる心配もない。
「……って諦められる性格ならセレナちゃんや奏さんを救っていないんですよねぇ」
んー前世でもこんな性格だったかなぁ、僕。流れに身を任せてもっと色々諦めやすい性格だった気がするんですがねぇ。それともウェル博士ってやり方があれだっただけで意外と正義感のある人だった……わけないですね。うん。
何と言うんでしょうかね。僕しか知らないのに何も出来ないからせめて灰に変わっていく人たちをこの目に焼き付けておこう、と思っている自分がいますよ。頭ではやめておいた方が良いと分かっているのに何故かその考えを辞められないんですよね。ウェル博士と混ざって変な化学反応でも起きたんですかね?
なんて関係ない事を考えながら次々と監視カメラの映像を切り替えていきます。時間はそれなりに経ってはいますがまだ何も変わったところはな──
「ッ!」
ちょっと油断していたところで違和感のある映像が出てきます。
一見何の変哲もない映像ですが、夕方の商店街なのに人が映っていません。それに自転車やバックといったものが不自然に道路に倒れていたりします。
そして何より……映像のあちこちで灰の山が無造作に落ちているのですから。
急いで別の監視カメラに切り替えますが、多分タイミングが悪かったんでしょうね。さっきまで賑わっていたはずのカメラから次々と人の姿が消えて代わりに灰の山が沢山落ちていました。
「始まりましたか!」
とうとう切り替えた監視カメラの映像にノイズが写り出されます。相変わらず、あんな物騒極まりない能力を持っている割に何処のご当地キャラだと思うポップさの見た目のせいで恐ろしさがいまいち伝わりませんが、その見た目に反して頭がおかしくなった犯罪者に爆弾のスイッチを持たせているが如くの恐怖の対象ですよ。
次々と一般市民がノイズに襲われて灰に変わっていきますよ。そりゃもう拍子抜けするくらいにアッサリと呆気なくね。死体が残らないというのはこんなにも恐ろしいものなんですね。
(…この時のノイズはフィーネが呼び出したものなのでしょうか……いや、この時点ではビッキーがシンフォギアを纏えるとは分かっていないはず。わざわざ危険を犯してソロモンの杖を使う必要はありません。ならこれは自然発生した……?)
そう考えたらほんとご都合主義な展開ですねぇ。ノイズが現れる可能性は通り魔事件に巻き込まれる可能性より低いと言われる程度。偶然とはいえそんな確率を引き当てた上にシンフォギアを纏う事になるビッキーも中々運が悪いですよ。自分で呪われていると言っていますがあながち間違いではないでしょうね。
そうこうしていると時間は経ち、徐々に画面に映る景色が茜色に染まっていき、一部空も暗くなっていきます。時間的にはそろそろですね。
気分が悪いなんてレベルじゃありませんよ。何も出来ないから見る必要はないと分かっていても次々とノイズに襲われて無情にも灰に変わっていく人たちの姿を見るのはかなり心臓に悪いです。時々灰に変わっていく人とカメラ越しに目が合ったような気がするのも気のせいだと思いたい。
そしてとうとうあの瞬間が来ました。
何処かの工場の監視カメラに高い建物の上で何かが空に向かって眩く光り輝いているのが画面に映ります。残念ながらその光が何かまでは分かるほど近くにカメラはありませんが、僕はそれが何を意味するのかよぉく知っています。
数秒してから光が徐々に弱まっていき、カメラからあの光が見られなくなった瞬間、さっきまで光っていた場所から何かが別のビルに向かってかなりの速さで跳んでいくのが見えました。急いで追ってみれば案の定小さな女の子を抱えたビッキーがシンフォギアを纏っていました。
そこからの展開は早いものですよ。
突然変身ヒーローのような謎の鎧を纏って混乱していながらもビッキーは女の子を守りながら戦い、ピンチになった瞬間に颯爽と現れる翼さん。残念ながら奏さんの姿は見えませんねぇ。まぁ、本編でも翼さん一人でどうにかしていたので問題は無かったですがね。
そして戦闘が終わり、二課の後処理班が色々動いている合間に黒いベンツに乗せられたビッキーはそのまま何処かへ連れて行かれました。その後の事はさすがに監視カメラで追っていては弦十郎さんたちにバレてしまうのでここでおしまいですね。この後の事は知っているので取り敢えずは安心です。
「……ここまではアニメと同じ流れですね」
監視カメラ越しだったのでこの世界のビッキーがどんなビッキーか判断出来ませんでしたが、小さな女の子を救っていた事を考えれば多分アニメのお人好しビッキーでしょう。グレビッキーや闇落ちビッキーの線が消えたのでひとまず安心ですよ。まぁ、完全ではありませんがね。
(無印では僕たちの出番はない。G編突入まではそこまで気構えなくても良い……んでしょうかねぇ?)
奏さんが生きている事がアニメと比べてどのような差異が起こっているのか分からないためまだ油断出来る状況ではありませんが、恐らく無印編は上手く行くでしょう。ビッキーがアニメ通りの「主人公」なら多少の差異はあれどもそこまでアニメと大きな変化はない……と思いたい。
というか大きな変化があったらしわ寄せでマリアちゃんたちに何かあるほうが怖いですよ。僕の心は間違いなく、シンフォギアの主人公であるビッキーたち二課の装者たちよりも長年一緒にいたマリアちゃんたちの方に傾いています。ぶっちゃけビッキーたちに何かがあってもマリアちゃんたちが無事なら良いとも思っていますからね。まぁ、ビッキーたちに何かあったらマリアちゃんたちに……堂々巡りですねぇ。ですが人間なんてそういうものですよね。
「……さて。ここから僕はどう動くべきか」
無印編で僕のやる事は無くとも、G編に入るまでにネフィリムを手に入れるためのルートの模索にリンカーの改良案、逃避行時の物資や資金の管理等やれる事はありますよ。まだフロンティアに関する情報も何も見つけられていませんしね。アニメではいったい何処からフロンティアの情報を手に入れたんだ……。
他にもやれる事はあるので出来るのなら無印編が終わるまでにある程度は片付けておきたいですねぇ。マリアちゃん、セレナちゃん、切歌ちゃん、調ちゃんがG編終了後もスムーズに表の世界に立てるための準備もしなくては。
(弦十郎さんの連絡先も確保していますし。あとは上手く動くだけですか)
先ほど述べたように奏さんが生きているのでアニメとは別の流れになる可能性もあるのでまだ監視は続けますが、基本的なこれからの行動方針を決めた僕は今できる事をする為に行動を開始しました。
筋肉女性研究員はモブですから!なんか登場が多いと思われてもモブですから!!物語に介入してこないモブですから!!!