シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!? 作:ボーイS
ビッキーがガングニールのシンフォギアを纏って早一ヶ月。
やっぱり、というか既定事項ではありますがビッキーが二課に入ってからノイズの発生率が上がって来ていますね。一ヶ月でもう四件もノイズ事件が起きています。月に四回も通り魔事件に巻き込まれてたまるか!というかフィーネの仕事早いな。その仕事の速さをもっと別の事に使っていれば……。
「んーそれにしても見るに堪えない戦い方ですねぇ」
監視カメラの映像でちまちまとビッキーの戦闘を見るんですが……マリアちゃんたちと年期が違うとはいえまぁ酷い。
当たり前ながら素人丸出しで取り敢えずノイズを殴ったり蹴ったりしてるだけですよ。あのカッコいいビッキーとは雲泥の差ですね。一般人からしたらノイズを倒せる時点で英雄でしょうが、マリアちゃんたちの戦闘訓練を見て来た僕からしたら見ていられませんね。完全にシンフォギアのカ頼りの戦い方ですよ。喧嘩殺法のようなものですね。特に蹴りなんて何度かバランスを崩して倒れそうな場面もありました。まぁ、そこはまだギアの扱いに慣れていないで済ませられなくも無いですが。
仕方がないというのは分かっているんですがね。この前までただの女子高生だったのにいきなり世界の脅威に立ち向かえる力を手に入れるとか、まるでアニメの主人公のようですねぇ!……アニメの主人公でした。
(今の姿だけ見ていると誰がここから世界を救う英雄になる姿を想像できるのでしょうか)
まともな有効打はありませんが、マリアちゃんとセレナちゃんなら生身でも今のビッキーと良い勝負出来そうなレベルですよ。ノイズ相手ならともかく、対人戦なら武闘に長けた人なら多分誰でも勝てるのではないでしょうか?勿論、ビッキーから直撃をもらわない限りですよ。戦闘訓練していないとはいえシンフォギアの蹴りや殴りはそれだけで脅威ですから。
「あ。また翼さんに無視されてますねえ」
何か翼さんに話しかけようとしていますが一瞥するだけで見事に無視。ビッキーが可哀想に見えてきますよ。監視カメラ越しでもビッキーが落ち込んでいるのがよくわかります。
奏さんが戦闘現場に現れた事は今のところ一度もありませんが、ライブとか日本のテレビでは普通に出て来ているので生きてはいますね。画面越しではありますが無理している様子もありませんでしたし。
恐らく、二年前のライブ事件かその後のノイズとの戦いで身体への負担が限界を超えたのではないですかね?元からガングニールの適性があまり高くない上にあの事件でかなり無理をしていましたからね。奏さんの意思とは関係なく、ガングニールの適性値がリンカーで補強しても足りないレベルまで落ちてしまったのかもしれない。その場合、翼さんがピンチになった時に死を覚悟してリンカー大量注入とか自殺行為とほぼ同義の事をやらないか心配です。
まぁ、奏さんの事は今後の動向を注意しつつ今は観察に回るとして。
(そろそろクリスちゃんが出て来る頃ですかねぇ)
確証はありませんが、記憶の中のシンフォギアでは無印編の期間はあまり長くないかと思われます。
普通に考えて学校の入学式は三月か四月くらい、そこからビッキーがシンフォギアを纏って一ヶ月経っています。そしてGX編で海に行く描写があったはずなので八月か早くても七月後半。短くても三ヶ月は期間がありますがその間にマリアちゃんたちが動き出すG編があります。その辺りを考えたらそろそろ無印編も大きく動き出さないと色々おかしくなってしまいますよ。てかよくよく考えたら半年もしないうちに三回も世界の危機が訪れるとかこの世界怖いですねぇ……。
(まぁ、セレナちゃんと奏さんが生きている事で僕の知る正史とどう変わっているのかが問題ですがね)
まだこれと言って目立つ変化はありません。いや、ビッキーがシンフォギアを纏った期間にセレナちゃんと奏さんが生きている時点で大変目立つ変化ではありますがね!ですがそれを考えても特に大きなアニメとの変化は見られません。安心出来る段階ではないので気が気じゃありませんよ……何か変わっているのなら早くそれが判明して欲しいですねぇ。
「はてさて、どうなる事やら……ん?」
この後二課の方々がビッキーを回収に来るので今日のところはもう観察する事は無いと思ってPCの電源を落とした直後、部屋の扉を叩く音が聞こえました。はて、こんな時間に誰かな?
「すみません、ドクター」
「少し時間はありますか?」
扉の前にいたのは確かマリアちゃんとセレナちゃんと同時期にF.I.S.に来たレセプターチルドレンの男性と女性ですね。確かセレナちゃんと同い年くらいだったはず。残念ながらシンフォギアへの適正は下から数えた方が早いレベルですが、二人とも今は研究員として働いていてとても優秀ですよ。分野によっては僕よりも上です。
「別に構いませんよ。何か困り事でも?」
「えっとですね……」
んん?何か話があって来たというのにやけに言いにくそうな、いや、どちらかと言うと恥ずかしさで言いにくそうな感じですね。二人とも何度も互いの目と僕の方と交互に見ているだけで中々喋りませんねぇ。
落ち着かせる為に中でコーヒー(お客様なのでちゃんとした苦いコーヒーですよ。自分の好みを押し付ける嫌な人では無い……はず)を入れようかと思い部屋に一度戻ろうとしましたが、その前に男性の方が意を決したのか顔を真っ赤にしながら背をピンと伸ばして見るだけで緊張していると分かるくらいカチカチになりながらも真っ直ぐ僕の方を見て来ました。
「こ、この度!彼女と!け、けけ結婚を前提にお付き合いする事になりました!!!」
「……あ、はい」
いや、ここ廊下なんですが。普通に他の研究員が歩いているんですよ。なのにこの子は大声で何を言っているんだ?
「えっと、おめでとうございます……?」
「「ッありがとうございます!」」
何故か二人とも満面の笑みを浮かべて僕に向けて頭を下げてきます。はて、なんでそんな嬉しそうにしているんですかね?すっごく幸せそうですね?なんですか、年齢<彼女いない歴(前世合わせ)の僕に対する当て付けですか?よろしい、ならば戦争だ。
「んん。二人とも僕が注意するほどの年齢では無いのでとやかくは言いませんが……何故そこで僕が出てくるのですかねぇ?」
「ドクターは私たちが小さい時にここに来てからずっと優しくしてくれました。捨てられた私たちにとって本当の父親以上の人です」
「ドクターがいなければ彼女にも、他のみんなにも会えませんでしたし、そもそも生きてここに立っているのかも分かりませんでした。こうやって僕も彼女も幸せになれるのはドクターがいてこそなんです」
「これから他のみんなにも報告して来ますがやっぱりドクターには……お父さんには最初に報告したくて」
「……そうですか」
おうふ。純粋な目が眩しい……。
二人の言葉は僕にとってもとても嬉しい言葉ではありますよ。初期のレセプターチルドレンたちはまだ僕の政策がF.I.S.内で全く広がっていなかった頃の子たちですからね。ほぼ生体実験とも言える実験やかなり劣悪な環境で死者もいた中生き残り、こうやってすくすくと育って自分たちの幸せを手に入れたんですから。嬉しくないわけがありませんよ。まぁ、最初はマリアちゃん、セレナちゃん、切歌ちゃん、調ちゃんの装者になる子たちだけ守って他の子は切り捨てようと考えていた僕がこの子たちから父親と呼ばれる権利があるのかと聞かれたら悩むところではありますがね。
「まったく……君は研究熱心でいつも僕や他の研究員の手助けをしてくれましたね。他人の為に動けるのは立派な事ですが夢中になると周りが見えなくなる時があります。それが悪い事とは言いませんが、これからは奥さんになる人を一番よく見てあげなさいね。
貴女は少々人見知りで中々自分の意見を言う事が出来ませんでしたが、みんなにも分け隔てなく優しく、年長組の良いお姉さんとして小さな子たちの面倒を見てあげていましたね。その優しさを忘れないでいなさい。ですがもし彼が暴走したら貴女が止めるのですよ。大丈夫、困ったら僕に相談に来なさい。いつでも話は聴きますよ」
二人の頭を小さかった頃のように優しく撫でる。ふむ。確かに身長も高くなって大人びてはいますが変わっていませんね。二人とも恥ずかしそうに、でも嬉しそうな笑みを浮かべていますよ。大きくなっても小さかった頃の面影はありますね。
「まぁ夫婦になるにしても節度は守るんですよ?他の子たちもいるんですから。僕が二人だけの部屋を手配出来ないか局長に相談しますのでそれまで我慢しなさい。色々と」
「な、ななななっ!?が、我慢するも何も僕たちはいいい今が幸せだからっあの!」
「ッ……」
はっはっはぁ。二人とも顔がリンゴのように真っ赤ですよ。初々しいですねぇ。いつになるのか分かりませんが二人の子供がどんな子かたのしみですよ。取り敢えず末長く二人で仲良くして孫、ひ孫たちに囲まれて幸せの絶頂の中二人同時に安らかな最期を送る呪いでもかけますか……。
(……僕がこの子たちの子供を見る事が出来なくても、二人には幸せになってほしいものですね)
その後少しだけ話をした後二人は他の仲の良かった人たちに話をしに行くと顔を赤くしたまま離れて行きます。あらあらまぁまぁ。恋人繋ぎなんてしちゃって。甘すぎて口の中が砂糖ぶちこんだみたいに甘ったるいですよ。末永く爆発しやがれコンチクショウ(血涙)!
「にしても知っているんですかね?結構な大声で部屋の前で話をしていたので通行人に二人の関係が筒抜けな事」
まぁ、これから話をしに行くのですから広まるのは時間の問題なので別に良いですね。
「あら、ドクター」
「何をしているのですか?」
「ああ。マリアとセレナですか」
二人の姿が見えなくなった辺りで示し合わせたかのようにマリアちゃんとセレナちゃんが現れます。今日はシンフォギアの戦闘訓練は無いはずなのに若干シャンプーの匂いがするので恐らく自主トレーニングでもしていた後なんでしょうね。
「いえなんでも無いですよ。ああそれともし後でここに来る予定があるのならコーヒーを淹れてくれませんかね?」
「別にいいけど……確かお砂糖切れていたわね」
「後で一緒に持ってきますね」
「あー。今日は砂糖はいいですよ。たまには苦いコーヒーが飲みたいので」
さっきの甘々な二人を見てまだ口の中が甘いんですよ。甘いのは好きなんですがこの甘さは種類が違うのでさっきから胸焼けしそうなんですよね。だから苦いコーヒーを飲めば丁度良くなるのでは、と言う狙いだったんですが。
「えっ!!!???」
「だ、誰か!早くドクターを医務室へ!!!」
砂糖はいらないと言っただけなのに何故かセレナの短い悲鳴とマリアの切羽詰まった声を聞きつけて近くにいた研究員と医療班の方がすっごい焦った顔で走って来たと思ったらそのまま担架に乗せられて医務室まで運ばれて行きました。
……なんで?
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──同時刻 日本。
所変わって日本の特異災害対策機動部二課のメインルームでは司令である風鳴弦十郎とツヴァイウィングのマネージャー兼奏と翼の護衛である緒川慎次、その後ろにはニ課専属の研究者である櫻井了子、その他のオペレーター複数人である作業をしていた。
「──それで、何か有力な情報はあったのか?」
「いえ。中々尻尾を掴ませないどころか影も形も分かりません……」
「そうか」
弦十郎はオペレーターの一人である藤尭朔也の返答にがっかりしながらも「やはりか」と言う言葉が出かける。
シンフォギアの装者は現在日本で奏と翼の二人しか確認されておらず、他の装者どころかシンフォギアが開発された情報もない。第二号聖遺物であるシンフォギアも存在はしているが現在は行方不明となっている為、それを合わせても三つしか存在していない……はずであった。
二年前のツヴァイウィングのライブで起きたノイズ事件、あの時に奏と翼を助けた謎の四人のシンフォギア装者を今でも弦十郎たちは探し続けていたのだが二年経った今、奏のガングニールが破損時に飛散した欠片を身に宿した立花響という一人の少女が一ヶ月前に突如覚醒した。
ライブ事件の際にもガングニールらしきギアを身に纏った者がいた為三槍目のガングニールなのかと騒がれたが、実際は身体の中にあるガングニールの欠片の反応によってシンフォギアを纏うというイレギュラーだった。
ここまでなら二年前のライブ事件の被害者で、偶然ガングニールの破片が身体に埋め込まれた立花響が生命の危機を目の前に偶然装者に覚醒した、と言う話で済ませられるのだが。
「一ヶ月でこの付近にノイズが四度も現れただけで異常事態だと言うのに、その全てを何者かが監視しているのならば」
「ああ。それも響君がシンフォギアを纏ったタイミングからだ。まるで最初から全て分かっていたかのようだ」
「このところのノイズ被害もその「何者か」が犯人なのかしらねぇ」
了子は少々気が抜けてはいるものの、弦十郎や慎次は逆に気を抜かずにジッとモニターを見ていた。
一ヶ月前の響がシンフォギアを纏ったタイミングで周辺の監視カメラが何者かにハッキングされた形跡が発見された。しかもその後四度のノイズ被害全てに戦闘区域に配置された監視カメラがハッキングされていた。相手はよほど狡猾なのかハッキング経路が世界中に散らばっており、その上毎回経路が変わっているため中々ハッキング元にたどり着けないでいた。
ノイズ被害の急激な増加と響がシンフォギアを纏ったタイミング的にその者が直接な関係は無いにしても何かしらの関係はあると弦十郎は睨んでいる。
しかし、弦十郎や慎次とは違う考えを持っている人間が一人いた。
(これは米国の差金か?だが私がノイズを放つ事も立花響がシンフォギアを纏う事も誰にも分かるはずがない。元からそうなると知らない限り、な)
偶然にしては出来すぎている、と了子ことフィーネは思っていた。そして同時に二年前の自身が起こしたライブ事件で聞いた話を思い出す。
あの時、まるで見計ったかのようなタイミングでF.I.S.にいる四人のシンフォギア装者が現れ被害をかなり抑える結果となった。その結果だけを見れば何も知らない人間からしたら奇跡でしか無いだろう。
だがフィーネはまるで何者かが自身の計画を知っていてそれを利用されたかのように見えて仕方が無かった。しかも響の件についてもまるで最初から分かっているかのように監視カメラをハッキングしていたのも気になっているところでもある。
「(仮に私の計画がバレているにしても米国でも機密であるF.I.S.に謎のメールを送れるほどの腕を持ち、さらには上手くあの場に装者四人を集めさせるとは。それに加えて二課の情報収集能力を用いても未だに姿形すら見えぬか。侮れんな)……それじゃ、私はそろそろ響ちゃんのデータを整理しに研究室に戻るわね」
「ああ。君も無理しすぎるなよ」
「わぁかってるわよぉ!弦十郎くんったら心配しすぎ!」
計画自体の変更は出来ないがある程度修正は必要であると判断したフィーネは適当な理由を述べてその場から立ち去る。姿が見えない第三の敵の妨害に怒りが込み上げてくるが今は大人しくしなければならないと自分を律していた。
メインルームから出て行くフィーネを弦十郎は横目でジッと見つめていたのだが、計画の修正を考えているフィーネがその事に気がつく事はなかった。
ウェル(オリ)が夫婦誕生に口から砂糖を吐いている頃、ニ課の方々は勘繰りしすぎてシリアスになり一周回って正解に近いというね。そしてウェル(オリ)博士はみんなのお父さん……独身なのに子沢山ですな。
ウェル(オリ)「100人以上いるレセプターチルドレンのみんなが毎回僕に報告とか疲れますよ……」
作者「そうですね(レセプターチルドレン同士だけとは限らんがなぁ!)」
ウェル(オリ)「(今嫌な予感を感じた)」
作者「(せやで)」
ウェル(オリ)「(こいつ直後脳内に…!)」