シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!?   作:ボーイS

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ソシャゲとかでよくあるじゃないですか。復刻と新イベントが重なって、更に色々キャンペーンとか乗っかってイベントが同時にやってくる事。そんな感じっす( 'ω')

あとちょっと今回はちょい長め。切り所見失った_(:3」z)_


三十六話 イベントの同時発生とかやめてよね!

 僕が切歌ちゃんの奇襲タックルで腰がクリティカルダメージで死んだその翌日。

 あれは……今までで一番痛かった。なんせ一回タックルをくらって致命傷を受け、その後医務室でちょっと処置してもらって安静にする様に言われてものの数分後に再び奇襲タックルですよ?しかも切歌ちゃんも大きくなって勢いが増した挙句、装者として鍛えているため日々成長しているんですよ?小さい時のただ抱きついてくるレベルじゃないんですよ。もう何処かでアメフトの練習でもしてたの?と聞きたくなるくらい見事なタックルなんですよ。腰がだるま落としのように飛んで行っても不思議じゃない。おふざけじゃなくて本気で腰だけサイボーグ手術でもしてもらおうかな……。

 

 とまぁ、僕の腰だけピンポイント大ダメージを受けて気絶してしまいましたが生きています。まだ少し痛いですが日常生活にはまだ支障はきたしていませんね。きたしていたら大変なんですけどね!

 今日も今日とて未来ちゃんしか適合しないであろうほぼ無意味な神獣鏡の装者探しを行っているのですが……レセプターチルドレンの中に何人か結構神獣鏡の適合率高い子がいて焦ってます。

 まだリンカーを使っても規定値届かない計算なので行いませんが、年齢による適合率の上昇率的に後二、三年くらいしたらリンカー有りで届くんじゃね?ってレベルなんですよ。

 ついでに調べたらガングニール、アガートラーム、シュルシャガナ、イガリマへの適合率が中々高い子も何人かいますし……下手したらマリアちゃんたちの立ち位置が危うくなりますが、まぁG編が始まればシンフォギアを纏えるか試す機会が多分無くなるのでこれは問題無いですかね。レセプターチルドレンが沢山生き残っている事は喜ばしいですが、まさか物語に影響があるかもしれないレベルにまで成長するとは思いもよりませんよ。

 

(んー今のF.I.S.だと「予備の装者」、みたいな考えをする人はいないのでどのみちマリアちゃんたちに影響はないでしょうが……ちょっと注意しなくてはなりませんね)

 

 これがアプリの世界線だと(ある意味既にその状態なんですけどね)レセプターチルドレンの誰かがマリアちゃんたちF.I.S.組のシンフォギアを盗んで、ビッキーと翼さんとクリスちゃんが戦ったり。明確な敵意を持ったメックヴァラヌスみたいな物語がありそうですよね。それで最後はマリアちゃんたちが自分のギアを取り出して黒幕と戦うとか。……ちょっと面白そうだ。そんな事はさせませんけどね!

 

「どうぞウェル博士」

「ん、ありがとうございます」

 

 考え事していたら僕の番が来たようですね。

 今は丁度昼時で食堂で昼食を取ろうと並んでいたところなんですよ。いつもはここに来ずにお菓子で済ませるかもう少し遅いんですが今日はちょっと楽しみでしたね。早く来てしまい中々混んでいたんですよね。

 施設自体がとても良くなっているので調理場も最新式の物になっているようです。詳しくは知りませんがそんじょそこらのレストランどころか三ツ星レストランでも滅多に手に入らないような食材もあるようですね。シェフたちもかなり気合が入っているようです。僕はほとんど利用しませんが。

 

「今日はまた自信作を作らせてもらいました」

「ふふふ。貴方にはいつもお世話になっていますよ」

 

 かなり前から仲良くさせてもらっている一人のパティシエがそう言ってトレーに受け取ったのは一見薄切りのベーコンと胡椒、そして見ただけで濃厚だと分かるソースがたっぷりかかった少し多めのいたって普通の美味しそうなカルボナーラ。ちょっと味が濃そうな見た目ですね。

 しかし、その実態は……。

 

「ドクター!」

「ん?」

 

 丁度空いている席を見つけて席に着いた直後、聞き覚えのある声が聞こえました。

 後ろを振り返ればトレーを持っている切歌ちゃんとその後ろにマリアちゃんとセレナちゃんと調ちゃんが同じくトレーを持って立っていました。でも切歌ちゃん?僕は逃げないのでそんなに急いで走って来ないで下さい。貴女何度かそうやって走ってきて僕の顔面に食べ物ぶちまけた事あるんですからね?

 

「一緒に食べるデスよ!」

「ええ良いですよ。マリアたちもどうですか?席は空いていますよ」

「はい。ではお言葉に甘えて」

「うん。ありがとう」

 

 相変わらず元気な切歌ちゃんを先頭だったのですぐさま何故か僕の横に座りセレナちゃんと調ちゃんもこっちに近寄って……なんでしょうか。セレナちゃんの最初の一歩が見えないくらいの速度だったのに対して調ちゃんはまるでスケートをしているかのように滑らかな動きで近づいて来るんですが!?二人とも笑顔なのに何か圧が凄い!

 ほんの二、三メートル程の距離なのに物凄いデットヒートを繰り広げた結果、調ちゃんが僕を挟むように切歌ちゃんの反対側に座り、セレナちゃんは調ちゃんの向かい側に座りました。

 悔しそうにする頬を膨らませるセレナちゃんに調ちゃんが無言で勝ち誇ったような余裕の笑みを浮かべています。可笑しいなぁ、調ちゃんはもっと落ち着いた性格だったような……。

 

「貴女たち、人の目もあるんだからもっと静かにしなさい!」

「まぁまぁ落ち着いてくださいマリア」

「ドクターは甘過ぎなのよ!もっと厳しくしないと切歌みたいに調子に乗る子が出て来るわよ?」

「なんでそこで私の名前が出るんデスか!?」

 

 んーマリアちゃんの言ってる事は正論なんですが……今更厳しくするのは難しいですねぇ。今のセレナちゃんと調ちゃんの競走も娘たちのちょっとした小競り合いみたいな感じで微笑ましいんですよ。周りに迷惑がかかるなーって思うくらいで叱ろうとは全く思わないんです。切歌ちゃんは僕の腰の為にももう少し落ち着いて欲しいとは思いますが。

 

「今日は珍しく普通の食事なんデスね!」

「珍しいとは失敬な。僕でもたまには普通の食事を取りますよ」

「そのたまにが珍しいんですよドクター……」

 

 むむむ。セレナちゃんもそう思っているんですか。心外ですねぇ。これでもこの前の健康診断では全くの異常の無い、診断した医師ですら引くくらい健康優良児だったんですよ。前日に朝昼晩はお菓子&砂糖たっぷりコーヒー&八徹目だったんですがね!やったね記録更新しましたよ!最高に「ハイッ!」ってやつさ!

 ……さすがにどうなんだろう、この身体?ネフィリムと融合してないのに弦十郎さんとは別ベクトルでちょっと人外じみてません?まだ人間辞めてないはず……

 

 まぁそれは置いといて、どうやら僕の狙い通りこの料理がなんなのか気付いてないようですね。そりゃそうでしょうね。見た目はなんの変哲もない美味しそうなカルボナーラなんですから!なんの不自然もありません!これで心置きなく食べられ──

 

「(じ────)」

「ど、どうしたんですか調ちゃん?」

 

 何か視線を感じると思って隣を見れば座っていた調ちゃんが僕の顔と僕の前にある料理を交互に真顔で見ていました。

 

「(じ────)」

「あっ!」

 

 しまった!油断していました!調ちゃんが僕の皿に乗っていたカルボナーラを目にも止まらぬ物凄い速度で一口をすくいあげるとそのまま口に含んでしまいました!というかあのスピードでソースが周りに飛んでないとかどんな技使った!?

 何度か咀嚼して呑み込んだ後、調ちゃんはゆっくりと僕の方に向くと再び僕の顔を今度は<◎><◎>って感じでジッと見つめてきます。うう、視線が痛い!

 

「どうかしたんですか調ちゃん?」

「何かあったのかしら?」

「ん。マリアもセレナも食べてみて」

「ちょ、待っ!」

 

 調ちゃんを止めようと僕は手を伸ばしましたが嘲笑うかのように華麗に避けて僕のカルボナーラを奪い取ると綺麗に二人に差し出しました。だから何故そのスピードでソースが全く飛ばないんですか!?

 セレナちゃんとマリアちゃんは不思議がりながらもフォークで麺を絡めとり、口に含んでしまいました。ふ、終わったな。

 

「……ドクター?」

「はいっ!」

「これは……なんなのかしら?」

「な、なんだと聞かれてもここの食堂のパティシエが作った普通のカルボナーラですよ!?」

「「ふーん」」

 

 ニッコリと笑うセレナちゃんが怖い!可笑しいな、貴女可愛らしい娘だったはずでしょ!アプリの大人版のセレナちゃんも幼い時の笑みが見える可愛らしい顔だったはず!なのに今は目が笑ってない!正直怖い!

 マリアちゃんはなんだろうか。「取り敢えず言い訳は聞いてあげるわ。許しはしないけど」と思っているのが分かる笑顔を浮かべています。

 ダレカタスケテ!

 

「ところでドクター」

「な、なんでしょう?」

「パティシエって普通お菓子を作る人の事を言うんですよ?これが普通の料理ならなんで今パティシエって言ったんですか?」

「ハッ(゚Д゚)!」

 

 セレナちゃんの的確な指摘に僕は思わず反応してしまう。仮に鎌掛けだったとしても完全に僕のリアクションで見事に鎌にかかってしまいましたよ。

 

(くっ、焦り過ぎて反応してしまった!何とかしてこの麺は長いグミ、ベーコンは見た目を工夫したキャラメル、胡椒はバニラビーンズ、ソースはホワイトチョコを溶かした物を使った見た目カルボナーラに見える完全なお菓子である事を隠さねば!」

 

 このままでは二人にOSIOKIされてしまう!なんだか最近の二人の説教、たまに身の危険を感じるんですよ。たまにニッコリと笑って「次は身体に教えますからね?」と言った時のセレナちゃんの顔はあれだ、完全に獲物を狙う時の猛獣の目だった。いったい僕はどんな罰を受けてしまうんだろうか。一週間お菓子禁止とか研究禁止を言い渡されたら生きていける気がしませんよ。僕たらしめる事を禁止するとか……そんな鬼畜な事はやめてほしい!

 

「ドクタードクター」

 

 僕がウェルの頭脳をフル回転させ、ほんの一瞬が何分も何十分にも感じられるほどに集中していると不意に隣にいた切歌ちゃんに白衣の裾を引っ張られて現実に戻って来ます。でも現実に戻っても目の前にニッコリしたままのセレナちゃんとマリアちゃんがいて気が気ではありませんがねぇ!ついでに調ちゃんもジッと見つめて来る視線を感じるのでそっちを向く事が出来ません。

 

「んん。なんですかね切歌ちゃん?」

「これってお菓子だったんデスか?」

「……何故それを」

「?今ドクターが言ったデスよ?」

「…………ハッ(゚Д゚)!」

 

 なん、だと?

 そんな馬鹿な。いくら焦って汗が滝のように流れている僕とはいえそんなギャグ漫画のようなミスを……ミスを……。

 恐る恐る二人方にゆっくり目を向けると更に笑みが強くなっています。それに伴って二人の後ろに般若の面を被った何かがデッカい包丁……いや、あれは銀の短剣とオレンジっぽい色の槍かな?を持っているように見えてしかたがない。

 

「あ、ここにいたんですねDr.ウェル」

「救世主っ!」

 

 半ば自分の死を受け入れていた僕でしたが、思わぬ助けが現れてくれました。

 振り返れば何度か聖遺物の研究で同じチームになった事のあるそれなりに仲の良い男性職員が急足で近づいて来る姿が見えます。九死、いや九十九死に一生を得た気分でちょっと泣きそう。

 

「?あ、Dr.ウェル。局長がお呼びでしたよ。急ぎでは無いが時間があるのなら早めに部屋に来てくれと──」

「そうですか!急ぎなんですね!?これは食事をしている場合じゃない!というわけで皆さんこれで失礼させてもらいますね!それでは!」

「あ、ちょっとドクター!」

「待ちなさい!まだ話が──」

 

 二人に呼び止められましたが局長がお呼びですからね!申し訳ありませんが仕方のない事なんですよ!上司に逆らえないって辛いなぁ!可愛い二人の娘の話を聞いてあげられないなんて!なんて僕は無力なんだー(棒)

 

 二人に物理的に止められる前に局長がいる部屋に向かうために立ち上がって僕は急いでその場を去ります。しかしあのカルボナーラ(風お菓子)、勿体無いなぁ。

 近頃厨房にいる一人の料理人に迷惑と思いながらもマリアちゃんたちの目を欺く為に見た目が普通の料理に見える甘味を作れないか相談して色々試行錯誤した結果出来たのが今回のこのカルボナーラ風のお菓子だ。調理場の無駄に設備が整った調理器具だからこそ出来たらしい。才能があったのか料理してくれた人も本気でパティシエを目指そうか相談してくるほど楽しかったようですねぇ。

 しかも既に料理の得意なレセプターチルドレンの何人かが彼の技術に魅入られて弟子入りしたようです。勿論、シェフじゃなくてパティシエとして。

 

 

 

 

食堂から逃げるように局長室についた僕は少し荒くなった息を整えるために何度か深呼吸します。うん。運動不足が祟ったかな?口の中が鉄の味です……。

 

「(さてさて。今回は何故呼ばれたんでしょうねぇ?)…… ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスです」

『入りたまえ』

 

 なんとなく想像はついていますが取り敢えず息を整えてからノックをして中に入ります。んーなんだろう。空気は澄んでるけど重いような……

 中に入れば局長が高そうな机と椅子の上に沢山乗った書類に囲まれている状態で座っていました。この人、また髪の毛の後退が広がってる気が……良いカツラと育毛剤でも今度渡しますかね。別の職員の名前で。

 

「今日はなんの説教ですか?」

「ほう。よく分かってるじゃないか」

「え。本当にそれで呼ばれたんですか?」

「違うぞ」

(違うんかい!)

 

 心の中で芸人のようなツッコミを入れますが現実ではしません。一応同じ子供好き(深い意味はない)なので多少の無礼は許されますが今はそんな時ではなさそうですね。

 

「さて。突然ですまないが君に仕事の話が二つと、それとは別に良いニュースと悪いニュースがあるのだが」

「また唐突な」

「別に同時にやらなくてはいけない仕事でもない。それにこういうのは早めに動く方が良いだろう?それで、どれから聞きたいかね?」

 

 同時にやらなくても良いけどやる事は確定なんですね。というか仕事をやるかやらないかの選択肢すらありませんし……職権濫用だ!というか全てでは無いですが、局長が持ってくる仕事ってなんだかんだでシンフォギアの物語に介入するような仕事の確率高いんですよね。ネフィリムの件や日本でのネフシュタンの鎧の件、そういえばシンフォギアの装者の捜索も局長からでしたね。うん。もう嫌な予感しかしない。

 

「……では仕事の話で」

「うむ。それでは一つ目だが」

 

 そう言って局長は机の引き出しから何やら書類を出します。結構な厚さがありますね。人殴ったら殺せそうな分厚さですよ。

 

「これは引退して行った元上司たちがフィーネの残した聖遺物資料から秘密裏に所持していたある聖遺物、いや、遺跡の資料だ」

「遺跡、ですか」

「ああ。君にはこの研究を進めて欲しい。少々専門外かもしれないが、今は手荒い真似をしてでも様々なアプローチが必要な段階なのでな。それに君は頭も良い。専門家たちでは考えつかない別角度から何か発見できるかもしれない」

「……拝見しても?」

 

 僕の質問に局長は無言で頷いた。

 了承を得たので僕は早速出された資料を読もうと開きますが、最初の一ページ目から変な声が出そうになりましたよ。予想していたとはいえ耐えられるとは言ってないんですよ。

 なんせ、開いた途端にデカデカと「フロンティア計画」って書かれていたんですから。ついでに隅の方に「櫻井了子」とも書かれています。

 

「『フロンティア計画』ですか」

「ああ。既に存在自体は確認されているようだが何か結界のようなものが張られていてな。フロンティアはその内側に封印されており、 通常の探査方法では突破どころか特殊な道具を使わねば知覚することすら不可能だ」

 

 うっわヤバいですね。G編に関してはアニメで映っていた辺りの知識しか僕は持っていませんよ?何処にあるとかは幸い資料に添付されていましたが、この資料にある事以上の事はほとんど分かりません。あ、そういえば未来さんが纏う前のギアペンダントのままの神獣鏡を機械的に使ってたんでしたっけ。結局失敗しますが。その辺りを提案すれば良いかな。

 

「この件は急ぎだが、その理由は後で話そう。そして次の仕事なのだが……こっちはまだ予定の段階でね」

 

 もう一つ別の書類が僕の前に置かれます。ふむ。フロンティア計画の名前が出た上にその時期のウェルの仕事といえば……やっぱり。フィーネが使っていた完全聖遺物のソロモンの杖の事のようでした。

 

「日本とアメリカの『ソロモンの杖の共同研究』ですか」

「うむ。だがこれはまだ企画段階でね。向こうがソロモンの杖を全て解析出来たのならこの計画は無くなる。それにもし出来ずに計画通り日本との共同研究を行うことになっても色々と準備があるため早くとも二ヶ月先だ」

「二ヶ月……」

 

 結構時間があるな。その頃にはもう秋に……まぁ、アニメと比べても時期的にはそこまでズレは無いか。

 あれ待てよ?ならあの彗星の如く現れてソロで活躍して翼さんに並ぶくらい人気急上昇したマリアちゃんはどうなるんだ?共同研究が始めるのが最短で二ヶ月ならそろそろ何か言ってきても良いはずですがねぇ。さすがに何の準備もなく人気が急上昇したわけでは無いでしょう。きっと何かしらの動きがあったはず。事前にアイドル活動的なちょっと地味だけど足掛かりになるような努力が。まぁ、マリアちゃんの実力という線は十分ありますがね。

 

「これに関しての詳しい内容は共同研究が決まったら君に報告するよ。ただあるかもしれないとは思っていてくれたまえ」

「分かりました」

「うむ。では仕事の話は取り敢えず終わりだ。それで、どちらのニュースを先に聞きたいかね?」

「……悪いニュースの内容によっては良いニュースを聞いてもやる気が回復しないと思うので先に良いニュースを聞いておきますかねぇ」

 

 後から良いニュースを聞いてやる気が回復する程度なら全然問題無いんですがね。でも……うん。多分悪いニュースってあの事だろうね。G編の本編始まっちゃうあれだろうからね。それはつまりウェルの終わりが始まるって意味もあるんですよ。そう考えたら今から憂鬱になりそうですが、それを抜きにしてもこの時点での「良いニュース」とは何なのでしょうか?

 ソロモンの杖かフロンティアの事かと思ってたんですがね。ウェル博士、というか僕って結構聖遺物の研究好きなんですよ。そのせいで食べる事や寝る事を忘れてしまう事もたまにあるんですよね。それは局長も知っているのでそれを含めて良いニュースと思ってたのに、まさか仕事の話として処理されてしまいました。なので単純に良いニュースの内容が気になるんですよ。

 

「少し意外だがまぁ構わん。君は二年前、無理矢理とはいえレセプターチルドレンであるイヴ君たちが外に出たのは知っているな?」

「ええまぁ。あの時初めて頭が割れるくらいの頭痛を感じましたからねえ」

 

 実際あの時は助かりましたけどね。あのままだと奏さんの命が無かっただろうし、アニメよりもその時の観客たちの命を救えましたからねぇ。その後の結果は後味が悪いどころか吐き気を催すレベルで悪化してしまいましたが。でも顔が隠れていれば派手にやっても良いでしょ!みたいな登場は……う、また頭が……。

 

「あの後に研究員の随伴でなら外へ出る事が出来るようになっただろう?その時予想以上に随伴したレセプターチルドレンたちが色々頑張っていたようでな」

「その話は子供たちから聞きました。みんな嬉しそうに話してくれてましたよ」

 

 小さい時からここにいたので外の世界を知らない子供たちばかりですからね。車や高層ビルのような誰でも知っているような一般的な物の事を目をキラキラしながら話してきました。とても微笑ましいと同時にそんな事も知らないのか、と思うレベルのもので悲しくなりました。フィーネが元凶だとはいえ子供たちを閉じ込めている事には変わりありませんからねぇ。

 

「実はその話が上層部にも広がってね。それで上層部、勿論信頼出来る真面目な方々だ。その方々たちと話し合ってあの子たちを「卒業」させる事になった」

「ッ本当ですか!?」

 

 僕は思わず局長に詰め寄ってしまいました。あと数秒身体にブレーキするのが遅れたらブチュっていくところでした。僕のファーストキス(前世合わせて)がいい歳したおじさんとかもう一回転生してやり直したいレベルですよ。

 

「ああ。勿論、卒業するにはこの場所の事を誰にも言わないことは当然として他に色々と試験を受けてもらわねばならないがな」

 

 確かに、あの子たちをの知識はF.I.S.内で教わってきた事しか知りませんからね。一応一般的な知識は教えているつもりですがそれでも知識の偏りは大きいです。これでは外に出たら生活に支障を来してしまいます。それも含めた試験なんでしょうね。

 

「年齢や生活態度などの観点で合格を受けた者から卒業試験を受ける権利を得る。その試験で合格すれば卒業。晴れてここから出れて外の世界に行ける手筈だ。だが今はまだこちらも試験段階でな。政府の方も戸籍や住む場所の用意、場合によっては就職のサポートもするとなると中々難しいらしい。そのせいで試験も相当難しいものになっている。勿論、調整はしていくがな」

 

 聞けば聞くほど今のお偉いさん方は良い人ですね。お人好しのレベルですよ。

 言葉を選ばず言ってしまえば、レセプターチルドレンは彼らの前任となる方たちのせいで生まれた汚点に近いものですよ。なんせフィーネという悪に加担して各地から拉致して来た子供なんですからね。しかも一人二人じゃなくて百人を超えているんですよ?ちょっとした事件なんてレベルじゃありません。政府が絡んでいたとなれば暴動が起きますよ。

 全て前任の役員がやった事だと言っても人はそんな簡単にやらかした人と同じ組織の人間を信じられません。これが目の前で罰せられたら多少は反応が変わるでしょうが、知らない内に処理されていたとなれば懐疑的になっても仕方ありません。

 そんな彼らにとっての爆弾のような子供たちを少しずつでも普通の生活に戻そうとしているんです。これが悪い人、あのGEDOUの野郎なら秘密裏に始末するか自分の駒にしようとするでしょう。実際何人か優れた能力を持つ子もいますから上手く洗脳か言う事を聞かせられたら役立つでしょうしね。

 

「それでも嬉しい事ですよ。しかし、なぜ僕に?」

「ふっ。君はあの子たちに良くしている。親のいないあの子たちからしたら父親のような存在だ。そんな君には知る権利があると思ってな」

「僕はまだ独身なんですがねぇ」

「奇遇だな。私もだ」

 

 局長は冗談めかしで言っていますが、局長があの子たちの事を思ってくれているのはよく分かりました。

 それにこれは僕にとってもとても喜ばしい事ですよ。こんな閉鎖的な場所ではあの子たちの才能が無駄になりますし、そうじゃなくとも僕たちのせいで不自由な思いをさせてしまっている事は僕以外の職員でも悩みの種でした。一時はレセプターチルドレンたちを脱獄、ではありませんね。なんというんでしょうか?とにかく秘密裏にF.I.S.から逃がそうと考える人もいましたからね。結局はこの後政府に追われる可能性や外へ出た後の暮らしの事を言って説得しましたけど。

 そんな色々厄介だった問題がやっと解決するんですよ?しかも僕たちも子供たちも不利益にならずに。むしろ何のしがらみもなく、とは言えませんが今よりももっと自由な生活を送れるようになるんです。嬉しく無いわけがない。

 

「──さて、良いニュースはこれで終わりだ。次に悪いニュースだが」

 

 おっと。今の衝撃で忘れていました。そういえば悪いニュースが残っていましたね。

 

「……君はフィーネが日本で最後に行った事を知っているか?」

「最後……確かカ・ディンギルでしたっけ?それを月に向かって発射し、そのせいで月の破片が地球に向かって落ちてくる事件になった『ルナアタック』の事ですか?」

「ああ。実はその時は月本体には影響は無いと言われていたんだが最近になって月の軌道が変わったと計測結果が出たらしい」

「それは……」

 

 分かっていた事なのでわざと驚いた風に演技をします。ですが前世だとアニメの中の出来事として思えていましたが、僕にとっては今が現実です。そんな中で月が落ちてくると聞けば結果的にこの後無事に終わると分かっていても焦りが出て来ますよ。

 しかもですよ?月の落下を止めるためにはフロンティアの浮上が絶対条件ですが、その為にはウェル博士である僕が動かないといけません。失敗するとそのまま月を止められずジ・エンド。ゲームオーバーです。

 実際月が落ちるとなるとキャロルちゃんやサンジェルマンさんたちが何とかしてくれそうですが……確証が無い以上過度な期待はダメですね。

 

「これを回避するための方法がフィーネの残した聖遺物資料にあったフロンティアにあるらしいのだが、詳しくは私にも分からん。何故フロンティアにそんな事が出来るのかもまだ解読出来ていない。しかし、今はそのような事に構っている暇はない。一刻も早くフロンティアを浮上させて月をなんとかせねば恐竜が絶滅した原因である遥か太古に落ちた隕石による氷河期よりも更に酷い災害によって人類は絶滅してしまう危険性もあるのだ」

「だからこの件は急ぎだと」

「うむ。本当はすぐにでも行ってもらいたいのだが、各国でこの事を知っている者は極僅か。情報漏洩による世間への余計な混乱を避ける為に今は秘密裏に各国に協力を依頼しているところだ」

 

 おおう。中々難しい事になってきましたねぇ。

 僕からしたら大々的、とは言い過ぎですが早く月の現状を各国に提示して協力を仰いだ方が良いのでは無いかと思うのですが、どうやら話はそう簡単では無いようですね。

 聞けばすでにいくつかの国に助力を秘密裏に頼んでいるようですが、どこの国もこの事を「情報の誤り」だとか「他国へ侵略するための何かしらの罠」だとか「前政権の失態がある以上信じられない」とか言って中々協力を取り付けられない状態のようです。世界の危機を前に人類一致団結、とはいかないようです。

 

「──そして最後に」

 

 話を聞いて人類の馬鹿さ加減に頭が痛くなっていたタイミングで局長がまた新たな書類を机の引き出しから出して来ます。今度はなんだ?

 

「先ほどの月の落下に関する事でもあるのだが、実は政府は最悪を考えて優秀な人間を地下シェルターに退避させる計画も同時に進んでいる。その中に私や君が選ばれた」

「シェルター、ですか」

 

 マントル近くくらいか月の落下する場所の真反対くらいじゃないと月が落ちたら地下シェルターなんてあってないようなものでは?と思いますがねぇ。だって欠けているとはいえ月が丸ごとですよ?仮にダイヤモンドで地下シェルターを作っても耐えられないでしょう。

 まぁ、気休め程度にはなるでしょうね。もしかしたら助かるかもしれませんし。ですがそれよりも気になる事が一つ。

 

「僕が選ばれた事は嬉しい事ですねぇ。優秀な人間の一人と認めてもらえたんですから。でも一つ聞かせてください」

「何かね?」

「あの子たち、レセプターチルドレンはどうなるんですか?」

「……全員は難しいな。なんせどれだけの規模の災害になるか分からんからな。レセプターチルドレン全員となると大きく定員を取ってしまう。良くて……二割と言ったところか」

「そうですか」

 

 おっとしまった。ちょっと語気を強めてしまった。なんなら出せるか分からない殺気なんかも出してしまったかもしれませんねハッハッハ。

 こんなにキレたのはフィーネが子供たちを道具扱いした時以来ですよ。僕が理性的で非力じゃなかったら怒りに任せて局長の顔面に一発お見舞いしていたでしょうね。

 

「案ずるな。直前になるまで分からんが、私や上層部の人間の殆どはシェルターに入るつもりはない」

「ん?」

 

 怒りで燃え上がった炎に水をぶっかけられたような言葉を浴びせられました。今、局長は何て言いましたかねぇ?

 

「私より優れた人間なぞ山ほどいる。それにこういうのは若い者や家族のいる者に渡すのが歳上という者だよ。上層部も私と同じ考えの者は多い。「国が滅ぶのならせめて人を救おう」、これが現政権の考えだ。全員ではないのが残念なところだがね」

 

 うっわなんだそのお人好し集団は?

 ええ……つまり今の上層部って自分が犠牲になって一人でも多く人を救おうとしてるというわけですか?なんだその聖人の集まりは。この考えだと国民全員の命を救えない事に血涙を流してそうですよこれは。僕が知らないだけでプライド捨てて各国に頭下げている可能性もありますよ。

 元お偉いさん方だと自分の命を最優先で他は蹴落としそうですね。多分局長の「全員ではない」、というのはそういう事でしょう。確か何人か解雇されずに今も残ってる人がいるみたいですし。

 

「別に我々の考えに賛同しろとは言わん。君の命は君だけの物だ。それにレセプターチルドレンの皆の枠が無いというのも他の職員の枠を取っているからだ。彼らに子供たちの枠が無いと言えば恐らく殆どの職員が子供たちに譲るだろう」

「あー、想像出来ますね」

 

 なんせネフィリムが暴走した時、自分が大怪我や今後の生活に支障をきたすレベルで身体を壊してしまった人たちばかりですよ?奇跡的に生き残ったというだけで下手をすれば死んでいた方なんてどれくらいいるかわかりません。

 結構な人数が補充要員として加わりましたが、彼らも子供たちと楽しそうに接しているところから同じような事件が起きても自分の身を盾にして子供たちを守るでしょうね。それくらい簡単に想像出来るくらい皆優しい方たちですよ。

 

「はぁ、皆さんお人好し過ぎますねぇ」

「そのお人好し筆頭の君が言うのか」

「失敬な。僕のどこがお人好しなんですか?」

「君がお人好しで無いのであればレセプターチルドレンは今の半分、いやもっと少なかっただろうさ」

 

 局長が久方ぶりに笑みを見せます。最近険しい顔で眉間に皺がより過ぎて固定されていましたからね。怖い顔が更に怖くなっていましたよ。この間なんかまだ幼いレセプターチルドレンの子と廊下でばったり会って目が合った瞬間大泣きしてましたからね。なんなら今さっき人一人殺して来たと言われても納得できるくらい怖かったですから。

 月の落下や他の件で肩の力をずっと入れっぱなしだったんでしょう。まだ陰りはありますが若干表情が柔らかくなっています。それでもまだ顔は怖いですが。

 

 その後はフロンティア計画について現段階で分かっている事や今後の研究についてを話し合った後解散になりました。月の落下の件と地下シェルターの件はまだ上層部しか知らない情報なため無闇に広げる事は厳重に注意されました。まぁ、事が事なので誰かに言う気はしませんが。

 

 部屋から出て廊下を歩いていた僕は前世のwikiでもっと詳しく調べていればと後悔しましたね。フロンティアについて知らない事だらけで不安ですよ。ここからどうやって調べたんだウェル博士ぇ……。

 ソロモンの杖に関しては今は保留状態ですね。多分アニメと同じ流れなら共同研究を実行する事になるとは思いますが、取り敢えず今は待機です。準備はしておきますが。

 

(……さて、マリアちゃんたちをどうするか)

 

 正直お偉いさん方が軒並み変わったせいで米国がめっちゃお人好し集団になってしまいましたのでアニメと同じ流れになる可能性がかなり低くなっている気がします。マリアちゃんたちは会った事ないですが、自惚れでないなら僕が信頼出来る人の言葉ならマリアちゃんたちも信用してくれると思います。そうなったらマリアちゃんたちが強行手段を取る必要はありません。

 まぁ、何故か他の国が全然協力してくれない状況らしいですからねぇ……中々厳しいとは思います。

 

(お偉いさん方のほとんどいなくなったから裏で繋がっていた他国との繋がりも切れた。裏の繋がりが切れたという事は国の内情を知る術を無くした又は減ったという事。自分の身が可愛い人からしたら相手が何を考えているのか分からないから手を出すのを躊躇われる、と言ったところでしょうか)

 

 これが戦時中なら一時の平和とか他国への牽制とかになるんでしょうが今はそんな事を言ってる場合ではありません。各国が協力して月の落下の阻止を考えなくてはいけないのに……。

 

 取り敢えずここまで政府の考えが変わってしまった以上、自然にアニメ通りの流れになる事はほぼ無いでしょう。言ってしまえば国のあり方を大きく変えてしまったようなもんですしねぇ。

 今後の展開は気になりますが、僕がフィーネに最後の連絡をした時には使った別端末を使って弦十郎さんに月の落下の事を伝えれば僕と勘づかれずにあの人なら独自に調べて対策してくれるでしょう。ついでに神獣鏡の事も言って繋がりを持たせてから偶然を装って未来ちゃんを装者にし、フロンティアを復活させるのも手ですね。

 頼りたくはありませんが日本が消えるかもしれないとなればあのGEDOUも何かしら手を貸してくれるでしょうし、そうなれば無理にマリアちゃんたちを世界に向かって宣戦布告させなくても済みます。もしかしたら余計なしがらみ無しで翼さんと奏さんと一緒にマリアちゃんがアイドルになるかもしれませんね。あっ、宣戦布告しないのならアイドルになる必要性がないのか。んー……残念ですがこっそり仲間内だけのアイドルにでも担ぎ上げましょうか。マリアちゃんの曲、かなり好きでしたし。

 フィーネがどうなるのか分かりませんが、そこはビッキーが上手く改心させて敵としてしゃしゃり出ない事を祈るばかりです。なんならXVでエンキの真意を聞かせてあげる事も出来ますね。マリアちゃんたちを道具扱いした事は許しませんが(鋼の意思)。

 

「……大幅なプランの変更どころか破棄して新しく作った方が良いレベルですねぇ。ふふふ、吹っ切れたらなんで今まで悩んでいたのか馬鹿らしくなりましたね」

 

 もうアニメ通りなんて辞めです。ええそうですよ。今セレナちゃんが生きている時点でアニメ通りなんて夢のまた夢なんですよ。しかもF.I.S.どころか米国が正義の味方のような存在になっているので僕が何もしなくとも勝手に装者たちの戦闘に介入して世界のために命張りそうなんですよねぇ。んーなんでレセプターチルドレンたちを守っただけで一国のあり方変えてしまう事態になったんだ……。

 

 取り敢えず最低ラインはせめてアニメと同じエンディング。最終目標はマリアちゃんたちが全員が無事に生き残って平和になる事。勿論その中にはナスターシャや翼さんのお父さん、実際は腹違いのお兄さんになるのかな?(GEDOUへの殺意が上がる上がる)である風鳴八紘さんも含みますよ。可能であればキャロルちゃんやサンジェルマンさんたちも生き残れば良いですがそれは贅沢すぎますかね。

 

「育ての親として、娘たちの幸せのために頑張りますか…… こぉれは睡眠時間を減らしてでも頑張らないといけませんねぇ(メキバキゴキメチョブチ!)……最後何か千切れるような音がしたような……」

 

 ウェル博士として死なねばならない運命から抜け出せる道が見えて俄然やる気が出てきた僕は、軽く身体を動かしたら明らかに聞こえたらダメな類の音が身体から聞こえた気がしましたが多分気のせいですよね。

 

 

 ──────────────

 

「──よし。マムー?ここで大丈夫?」

「ええ。ありがとう。マリア」

 

 現在、マリアは一人ナスターシャの部屋の引っ越しの手伝いをしていた。

 改良型の車椅子に乗るようになったナスターシャではあったが、やはり足が使えないというのは何かと不便なため局長の計らいにより車椅子でも生活しやすい部屋を用意し、その部屋に移動している途中だった。

 

「ですが良かったのですか?セレナたちは今頃ドクターと共にいるはず」

「良いのよ。マムにもこれまで沢山迷惑かけて、いえ、沢山お世話になっているのよ?こんな時くらい力になるわ。それにドクターなら後でキッチリとOHANASIするしね」

 

 ウェルが局長に呼ばれる前、見た目カルボナーラに似せたお菓子で自分たちの目を誤魔化そうとした件についてキッチリマリアとセレナ、調はお話をしようとしていた。だが昼食が終わった直後にナスターシャから部屋の引っ越しを手伝うようお願いされたのだ。

 実際マリア本人もドクターの元へ行きたかったのだが、お世話になっているナスターシャの頼み事を断る事は出来なかった。その際セレナと調も手伝いを申し出たのだが引っ越しの為に最低限の物と重量物は既に運んでいるらしく、後は小物を少し移動させるだけだったので自分一人で十分だと思ったマリアはお姉さんぶりたくて少し強気で二人を先に行かせたのだ。その時既に切歌はウェルの元へ走って行って姿は無かったが。

 

「頼もしいですね。セレナたち、特に切歌に少しでもその心得があれば……」

「あははは……それにしても結構重要な書類とかあるけど……私が見て良かったの?」

 

 チラリと見えた運んできた荷物の中には聖遺物の研究資料や報告書、中には上級職員でもあまり見られないであろう貴重な資料が整理されて入っていた。それは本来、装者とはいえF.I.S.の研究員ではないマリアでは一生お目にかからないレベルの代物だ。下手に広めようとしたら二度と陽の光を浴びる事が出来なくなってしまうかもしれない。そんなレベルだ

 

「本来はいけませんが貴女なら下手に情報を漏洩しないと信じています。それにもしそんな事になればもうドクターに会えないでしょう」

「絶対に言わないわ」

 

 ナスターシャの言葉に即座にキリッとした顔で返事をするマリア。この瞬間、今の記憶を無くさなければならないというのであれば喜んで全力で頭をぶつけて記憶を消そうとする気迫さえ今のマリアにはあった。

 

(これほど分かりやすいというのに……ドクターもハッキリすれば良いものを。いえ、マリアやセレナがもっと積極的になれば……)

 

 そこまで考えるが二人とも肝心な時にヘタレになってしまうとナスターシャは知っているので孫娘を見るのはまだまだ先になりそうだとため息を吐く。ウェルに関しても二人を自分の娘のように思っている為なのか少々のアプローチでは全く反応していないためマリアたち以上に期待は薄い。むしろ積極性の高い切歌やマリアとセレナよりウェルと接触する機会の多い調の方が可能性が高いくらいだ。いっその事四人とも娶れば全て解決するのでは?と最近思っているほどだった。

 

「──ん?マム。何かPCにメールが届いたわよ」

「誰からですか?」

「えっと……政府の人ね。しかもかなり偉い人の。そんな人と関わりがあるの?」

「女には何かしら秘密があるものですよ」

「そ、そうなのね」

 

 顔は知らないが名前は何度か見た事のあるものだったためマリアはナスターシャに軽い気持ちで聞くが、ナスターシャが返したのは長年ナスターシャと共にいたマリアでさえも見た事のない底冷えするようなニッコリとした笑みを浮かべていた。その秘密の内容を聞けば自分は消されるかもしれないとマリアは思い、その先を聞くことが出来なかった。

 

「それで、どうする?」

「そうですね……読み上げてくれますか?」

「え、別に良いけど……」

 

 政府のお偉いさんのメールを自分が見ても良いのだろうか?と思いながらもマリアはPCを動かす。よほどの内容でも自分がその内容を忘れるなり周りに言いふらさなければ良いだけの話で、マリアからしたらウェルやセレナたちと離れ離れになる方が何倍も回避したいものだった。

 

「……二通あるわね。えっと、『月軌道の変化とそれに伴う被害』『シェルターへの避難希望書』?」

 




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