シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!? 作:ボーイS
えー、局長から月が落下して来ている事を聞いて早一週間が経ちました。
この一週間の間に局長はF.I.S.内の職員たちに例の地下シェルターへの案内をレセプターチルドレンたちに気づかれないように秘密裏に説明したんですが、まぁ予想通りの結果でした。
職員も結構な人数がいますからね。時間をかけて少人数を何十回にも分けて話をしたみたいです。そのおかげで子供たちには気づかれていませんね。今のところは。
いやー、昨日局長に用事があったんで部屋にお邪魔したら少しやつれていましたし一週間前まであった局長の机が何故か新品になっていたのでちょっと聞いてみたらなんて返ってきたと思います?壊れたんですって。
詳しい話は聞きませんでしたが、どうやら僕のように子供たち全員はシェルターに入れないと聞くや否やその何十ものグループの全てが局長の机をガンッ!と台パンしたらしいんですよね。しかも怒りでなのかかなりの力が入っていたらしく、とうとう机が真っ二つに壊れてしまったんですって。しかも今使っているのが四台目だとか。物を大事にしなさいな……。
怒りをあらわにしていた皆だったらしいですが、局長や政府のお偉いさんが自分たちはシェルターに入らない事を聞くと怒りを抑えて落ち着いたらしいです。大事にならなくて良かった。
色々もめてもめてもめまくり、最終的にはF.I.S.全体の七割は自主的にシェルターは行くのを断る結果となりました。
ちなみに残りの三割の内二割は家族がいるため泣く泣くシェルターに入る事を決心した人たちですね。自分だけが安全な所に逃げる事を目の前で土下座されながら本当に涙を流して謝られたのは初めてでしたね。あんな時、どんな顔をすればいいのかわかりませんよ……。
それで残りの一割はというと──
「僕たちも残りますドクターウェル!皆がここに残るのに僕らだけが助かるなんてあまりにも!」
「そうです!私たちにもあの子たちと最期を共にするくらい……」
……家族がいる又は家族が増えるというのにそれでも残ろうとした大馬鹿ですね。
お腹の中に新しい命を抱えた女性職員まで言ってくるとか頭が狂ったのかと思いましたね。しかも彼女たちだけじゃなくて結構いるんですよ。ここに残るって言っている夫婦が。説得するのにどれだけ時間がかかったか……最後はみんな納得、はしていませんがシェルターに入る事にしたようですがね。もう自分だけの身体では無いんですから大人しくしてほしいんですがねぇ。
「いやいや。まだ月を止められる可能性もありますし、それに貴女の身体は既に貴女だけのものでは無いんですよ?」
「ですが!」
「ダメです。貴方は自分の家族を一番に考えなさい。独り身ならともかく、これからは貴方が彼女を支えなくてはいけないんですからね」
「……分かりました。ですがギリギリまでお手伝いしますよ」
すっっっごく納得いかないという顔をして二人はその場から去って行きます。
この一週間でこんな事がほぼ毎日あったため局長ほどではありませんがすっごく疲れましたよ。なんで誰一人私利私欲でシェルターに入ろうとする人がいないんですか!自己犠牲の塊みたいな人が集まりすぎてませんかね!?そもそも僕って一般職員よりかは偉いですが別に副局長みたいな凄く偉い立場じゃありませんからね!?なのになんで僕の所に話が来るんですか!
おかげでまだ不安は残りますが子供たち全員がシェルターに入れる目処は立ちましたがねぇ。なんならシェルターに入る組が出来るだけ多くの子供を養子にして連れて行こうとする始末でしたよ。数十組ほど百人くらい養子にしようと考えていた馬鹿がいましたので全員に鉄拳制裁を食らわせましたよ。ナスターシャが。
何はともあれアニメ通りに行けば必要はありませんが、守り切れるかは考えないものとしてもレセプターチルドレンたちを地下シェルターに退避させる目処が立ちました。そのおかげか施設内の空気が少し柔らかくなりましたね。みんな子供たちだけでもどうにかして逃がそうとそれはもう鬼気迫る顔でしたからね。顔に出やすい人なんて今さっき誰か殺して来ました?と思うくらい怖い顔してましたし。
あ、そういえば月の落下に関しては神獣鏡のシンフォギア(正式にはペンダント状態ですが)を用いた機器を使ってのフロンティアの封印解除作戦は近日実行が認定されましたよ。なんの根拠もない思いつきという体で提案したらアッサリ通って拍子抜けでした。しかも開発班の行動が早すぎです。もう試験段階まで完成しているようで、既に日時とかも話し合っているようです。多分失敗はするでしょうが色々仕事が早すぎてワラエナイ。
なんでも、当初は核を打ち込んでの月の破壊や日本政府経由で月の欠片を破壊したビッキーたちに協力を仰いで月の破壊など、とにかく月の破壊を前提にした話し合いがあったらしいんですが、そんな事をすれば月が無くなった影響で地球は重力崩壊を起こして酷い天変地異に見舞われますよ。下手をすればシェム・ハ復活と同等です。むしろ倒せば終わりのシェム・ハと違って天変地異はどうにも出来ないので厄介度は遥かに上ですし。
そんなこんなで信憑性は劣りますが、結局フィーネの残した聖遺物資料を頼りにフロンティア計画を進める方が確実性はあるという考えになったようです。
今のところアメリカ政府の団結力えげつないですよ。上層部の一部はフロンティア計画の為に自分の資産をF.I.S.だけじゃなく、他の研究機関や地下シェルター建設に投資しすぎて破産した人もいるようです。余裕が出来るまでシェルターに入らないという人も増えているようですね。ついでに研究員含めてまた過労で倒れた人もちらほらと……まだ死人は出ていませんが過労死の人がそろそろ出て来そうですよ。
それなのにですよ?アメリカがこんなに頑張っているのに他国が全然協力的じゃない、というか自国の国民放っておいてアニメ通り他国のお偉いさん方は既に地下シェルターに逃げる準備を始めているようです。ニュースや新聞に月の落下の事とかあがっていないところから完全に情報シャットアウトらしいですね。それらしい情報は無い事もないですが、全部面白半分のネタ扱いでまともに取り扱っていません。
各国の現状を教えてくれた局長は終始笑っていたんですが話が終わって離れていくまでずっと笑っていたのがほんと怖かった。しかもずっと同じトーンで。何故か壁に反響して妙な不気味さがありましたよ……。
まだまだ色々不安材料は山のようにありますが、取り敢えずはマリアちゃんがフィーネの器になってしまったという演技をする必要は無さそうですね。なんてったってマリアちゃんの周りには頼れる大人は沢山いるんですから。
仮に僕がいなくなってもナスターシャや局長に頼れば万事解決でしょうし、あのGEDOUは知ったこっちゃありませんが日本政府とアメリカが手を組めばAXZ編やXV編もなんとかなるでしょう。今のF.I.S.なら聖遺物に関しての情報共有や共同研究くらい快く受けそうですし。しかも悪意なしで。
まぁ、そんなこんなでアニメとは逸脱し始めましたが、他国との協力が得られない事を除いて順調に事態は進んでいますね。一番除いたらいけない事なんですけど!
(さてさて。他国への協力要請が得られない場合、アメリカのみでフロンティアを浮上させなければいけませんか。キーになる神獣鏡の装者候補である子は順調に成長していますが、リンカー使用時の安全圏内に入るまで計算上早くて三年、仮に僕の頭の中にあるリンカーのレシピを作成しても調整と安全性の面を考慮しても二年と言ったところ。その頃にはもう月が落下してるかもしれませんねえ)
今のままではもしその子が自分の死を覚悟して神獣鏡を纏ったとしてもフロンティアを守る結界を解除するほどの出力は出せないでしょう。そりゃリンカーを複数投与したら出力は上がるかもしれませんが、その前にその子の身体が耐えられないですね。まずやらせるつもりはありませんが。そんな事をするくらいなら僕がリンカーを十本くらい投与して無理矢理神獣鏡を纏いますよ。……同じ考えをする人が多そうだ。
最悪僕が悪者になるつもりで未来さんを拉致するという手もありますね。フロンティア起動と月の落下を食い止める、そしてマリアちゃんたちが悪者にならないのなら全て終わった後死刑になっても悔いはないです。あ、その前に脱獄してGX編でチフォージュ・シャトーを止めないといけませんね。それならアニメ通り僕の最期は落石に押し潰されて死亡になるのでなんとか帳尻が合いますね。
「……いや、少し急ぎすぎですか。もう少し人類を信じるべきですね」
って何様のつもりですか僕は。僕もその人類の一人なのになぁに神様みたいな上から目線で語っているんだか。あー恥ずかしい恥ずかしい。
(結局は他国の反応次第ですか。G編用の準備が無駄になったから深く考え過ぎてまた無駄な準備をする羽目になるのは嫌ですよ……)
今は手一杯ですが月の落下を阻止した後くらいには徐々にG編に入った時用の準備を解体していかないといけません。局長やナスターシャなら言い訳次第で納得してくれそうですが、問題はマリアちゃんたちなんですよね。あの子たち、根は優しいので僕がやろうとした無茶の事を知ったら凄く怒られる気がします。
「はぁ、取り敢えずはフロンティアの起動が最優先で後は……ん?何か走ってくる音が……ハッ!」
今後の事を考えていると不意に何かが走ってくる音が聞こえてきました。一瞬何か分からなかった僕はそれが何かを即座に理解して振り返りながら足と腰に力を入れました。
「ドクター!」
「ふんもっふ!!!」
ぐおぉぉ……切歌ちゃん、ほんと遠慮というものを知ってくれませんかねぇ!なんで倒れないように、そして腰を砕く(物理的に)事が無いように力を入れたというのに数メートル引きずられるんですかね!?手加減どころか日に日にタックルの威力が増して来てるんですが!?貴女そんなパワー系女子でしたっけ!?あ、ヤバい。靴の底減りすぎて無くなったかも。足の裏の感覚がさっきまでと違って床に直に当たっているのかちょっと冷たいや……。
「切ちゃん落ち着いて」
「はっ!身体が勝手に!」
「もう……ダメですよ切歌ちゃん。急にドクターに飛びついたらいけないっていつも言っているでしょ?」
「うう……ごめんなさいデスぅ……」
後からセレナちゃんと調ちゃんが追いかけて来ます。今日は普段着……今更ながら完全にF.I.S.が普通の一般家庭みたいなこの娘たちの実家になっている気がするんですが。一応名目上セレナちゃんたちって研究のための被検体というか、悪い言い方をすればシンフォギアのためのモルモットのような存在のはず。
あらー、また切歌ちゃんがセレナちゃんに怒られています。まぁ何度もダメだと言っているのにやめない切歌ちゃんが悪いんですけどね。ですがセレナちゃんも甘いですね。もう何年も切歌ちゃんのタックルを受けて来ているんですよ?頭以外凡人の僕では奇襲タックルに反応は出来ませんが、僕がなんの成長もしていないと思ったのか!
「ま、まぁまぁ落ち着いて。僕は大丈夫ですから」
「……本当ですか?」
「ははは。ええ大丈夫ですよ。ちょっと致命傷寸前のダメージで済んだ程度ですよ」
「絶対にそれ大丈夫じゃないですよね!?」
結構成長したと思っていたのにセレナちゃんに怒られました。んーおかしいなぁ。去年までの僕なら今のタックルを受けて腰が砕けてる(物理)のに。耐えられただけ成長してるはず……。そうか防御力が上がるのに比例して受けるダメージが増えたら意味ないという事ですか(遠い目)。
と、少々過激ですがいつも通り切歌ちゃんたちと戯れて笑い合います。ちょっとアットホーム過ぎやしませんかね?切歌ちゃんは特に僕がいる時はほぼ終始\( >▽<)/って感じでテンションがやたら高いですし、アニメだと感情表現が少々乏しい調ちゃんもずっと笑みを浮かべていますよ。セレナちゃん?もはや何処のお嬢様ですか?と聞きたくなるくらいの上品さと子供たちや切歌ちゃんたちと一緒にいる時に見せる年相応の顔、時折見せる小さかった頃のような楽しそうに無邪気に笑う姿なんて僕ですら目が離せない事がありますからね。ギャップ萌え最高っ!
でもF.I.S.がただの善人の集まりとなってセレナちゃんのストレスや成長の阻害になりそうなものが無くなってから身体付きは年相応なんてものじゃないんですね。しかもまだ成長しているという。そのせいで下着も結構な頻度で変えているようですが……何故その話を毎回僕にするんですかねぇ?身体能力的にもセレナちゃんには勝てませんがこれでも男なんですよ。それも成人男性。なのに下着の相談なんて、相手を間違っていませんかねぇ……ナスターシャに相談しますか。
「……おや、マリアはどうしたんですか?」
引っ付き虫並みに張り付き始めた切歌ちゃんを宥めながら話をしているといつもなら大体四人で一緒に行動するはずのマリアちゃんがいません。まぁ、マリアちゃんも大人の仲間入り(純粋に年齢の事ですよ?イヤらしい想像をした人はネフィリムにムシャってもらいますからね?)しているのでお手伝いを頼まれる事もたまにあるので別段珍しい事ではないんですがね。でもここ一週間ほど訓練の時以外話どころか顔をまともに見てないんですよね。
「マリアなら用事があるから、って」
「最近付き合いが悪いんデス……」
「ふーむ?」
んーそんなに忙しいんですか。僕が見た限り誰かに何か依頼されている様子は無かったんですがねぇ……マリアちゃんを無理して酷使するような輩は今のF.I.S.にはいないので自主的にやっているとは思いますが、疲れているのに何か頼まれて断れないんでしょうか?そんな前世の世界のNOと言えない日本人のような精神でしたっけ。
「……実はマリア姉さん、最近様子がおかしいんです」
「ん?何がおかしいのですか?」
「それが聞いても教えてくれないんです。ただ何か私たちに隠しているのは確かです」
「あ。そういえばこの前マリアとマムが険しい顔で話してたよ」
「マムも最近怖い顔でいる事が多いデス!」
「んん?」
はて、ナスターシャはこの前職員全員のPCに月の落下の件に関しての資料を送ったので、その事で深く考えているとは思うのですが何故マリアちゃんまで様子がおかしくなるんですかねぇ?女の子特有の月のものですか?もしそうだったら僕に出来ることなんて何もないんですが。でもそれなら妹であるセレナちゃんに言うはず……遅めの反抗期で誰かに言うのが出来ないとか?
んー考えたら沢山可能性はありますが、マリアちゃんが誰にも相談しないと言う事はマリアちゃん自身が解決しないといけない事ですかねぇ?ならそれが解決するか誰かに相談してくるまで待った方が良さそうか。
「取り敢えずマリアが何も言ってこないのなら僕たちも待ちましょう。大丈夫。本当に困ったら頼ってくれますよ。なんせみんな家族のようなものなんですから」
「そう、ですよね。分かりました。マリア姉さんを信じて待ちます」
「そうしてあげてください。でも、無理してそうなら無理矢理理由を聞いてあげなさい。ああ見えて頑固なところもありますからね。言いたくても言えないのかもしれません。何処かで爆発する前に話を聞くだけでも良いガス抜きになるでしょう」
「うん。わかった」
「がってんしょうちのすけデス!」
「何処で習ったんですかその言葉……」
ちょっと切歌ちゃんに不安を感じましたが僕たちはそこで別れました。
まだセレナちゃんはマリアちゃんの事を心配していましたが、今は待つ事しか出来ないのが歯痒いですねぇ。
再び歩き出し僕はたまに通る同僚と話をしながら自室に向かいます。ほとんどの同僚が月の落下に対してどうやって止めるのか、というより子供たちをどうやって守るのかというばかりで困っていますよ。
みんなも分かっているんでしょうね。地下シェルターであっても月が落下したら耐えられる可能性は低い事に。だからと言って諦めているわけではないようですが。
「(んーなんとか日本にだけでも協力出来たら未来ちゃんを神獣鏡のシンフォギア装者にするチャンスはあるんですがねぇ。上手くいけばG編まるっと省略してしまいますがマリアちゃんたちがビッキーたちと戦う展開は回避できる。その後のアニメとの戦闘力の差は僕のリンカーでなんとか補えれるはず。でもビッキーたちのレベルアップイベントを丸々消し飛ばしますからXV編が不安ですがねぇ……)って、うおっ!?」
少々考え事をし過ぎて上の空になっていた僕は通路の曲がり角で誰かにぶつかってしまいました。
「とっとと。すみません。ちょっと考え事を……ってマリア?」
「っドク、ター……」
ぶつかったのは今さっきまで話題になっていた本人であるマリアちゃんでした。
ですがなんでしょうか、いつものマリアちゃんと違って余裕が無いというか、僕の顔を見た途端心配になるくらい目が泳ぎまくって動揺しているのが丸わかりです。むしろ怖っ。
「丁度良かった。マリア、貴女最近──」
「その、ま、マムに呼ばれてるから!話はまた今度!」
「あ、ちょっと……」
呼び止めようとしますがマリアちゃんは走って行ってしまいます。はて、何かマリアちゃんにしましたっけ?あんなあからさまに動揺させて避けるような何かをした覚えは無いんですが……知らない間に何かセクハラでもしてしまいましたかねぇ?
「おや、ウェル博士ではありませんか」
「こんなところでどうしました?それにイヴさんは何処に?」
ちょっとマリアちゃんに避けられて致命的なダメージを受けているとマリアちゃんが現れた曲がり角から今度は同僚の男女の職員が現れました。
「ああ。マリアなら向こうに走っていきましたよ。何か用事があったのですか?」
「いえいえ。実はほんと今さっきとても真剣な顔でイヴさんに謎の質問をされたんですよ」
「その意味を聞こうとしたら走り出してしまったんですよ。彼女、私たちにその質問の意図も何も話さなかったので不思議だったので」
「なるほど。それで、その謎の質問というのは?」
「それがですね。『もしレセプターチルドレンと自分の命、どちらかしか助けられないならどうするか』という内容でしてね」
「ふむ?」
確かに謎の質問ですね。アニメや漫画でよく聞く質問ではありますが。しかし、マリアちゃんがその質問をする意味が分かりませんねぇ。
「……それで、お二人はなんと?」
「それは勿論僕たち二人ともレセプターチルドレンの命を優先する方を選びましたよ」
「簡単に死ぬつもりはありませんが、あの子たちをこんな狭い所に閉じ込めている悪い大人である私たちよりも未来がある子供たちの方が助かってほしいですからね」
うわ、この二人もお人好しですね。まあ、僕もその選択肢なら子供たちの命を助けますがね。
その後少し話した後二人と別れます。お二人とも何気に忙しいようですしね。僕も暇ではありませんし。
聞けば僕が知らないだけでどうやらマリアちゃんは他の職員にも同様の質問をしているようです。二人が知っている中で自分の命を選択した人はいないようですね。本当にお人好しの軍団だなF.I.S.は。
(……よくよく考えればおかしな質問ですねぇ)
自室にたどり着いた僕は椅子に座ってマリアちゃんについて考える。
改めて考えればマリアちゃんの質問はまるで今起きている月の落下による地下シェルターの人員問題の事を聞いているようにも感じられます。
今はなんとか不安は残っていますがギリギリここの職員全員とレセプターチルドレン全員が地下シェルターに退避出来る段階にはなっていますが、それはあくまで月の落下の速度や時間の計算上の結果であり、もし何か問題があれば間に合わない可能性が高い。その場合、職員たちはまず間違いなく自分たちは残って子供たちを地下シェルターに退避させるでしょう。マリアちゃんの質問はその確認にも感じ取れます。
(……ですがその質問に何の意味が?本来のF.I.S.、というより政府の人間は全員国民を置いて自分たちだけ地下シェルターに逃げようとしていたため、アニメのマリアちゃんは世界を救う為に自分たちだけでフロンティアを動かそうと行動しました。しかし、他国はともかく今のアメリカはその真逆で自分たちの命をかけて月の落下をなんとかしようと動いています。他の職員への質問の回答からも大人たちに絶望する要因は無い。むしろ何もする様子がない他国に敵意を向けても仕方のないレベルだ)
そもそも、マリアちゃんが月の落下を知っているはずがない。ええ、知るはずがない。
例の月の落下と地下シェルターについてのデータは職員たちのPCか携帯端末に送られてましたが、重大なデータもあるのでいくら信頼できる可愛い子供たちでもそう簡単にPCや携帯端末を見せないと思うのでマリアちゃんが月の落下について知った可能性は低いはずです。むしろ内容が内容なので職員たちもそう簡単に見せないでしょう。知っていれば切歌ちゃん辺りから聞かれそうですし。
ますますマリアちゃんの質問の意図が分からなくなって頭が痛くなる。無理矢理聞き出すつもりは毛頭ありませんが、それでも解決できるかは別にしても何か悩みがあるのなら相談してほしいですねぇ。セレナちゃんたちにも言っていないとすれば余計に心配です。
日本の協力を得られずにアメリカだけでフロンティア計画を進めるとなれば神獣鏡以外にもきっとマリアちゃんたちのシンフォギアが必要になるでしょう。確実な手段として未来ちゃんが神獣鏡を纏うというだけで、可能かどうかはさておいてペンダント状態の神獣鏡に四人のギアのエネルギーを集めて照射したりだとか。他にもやり方があるかもしれません。
(アニメ通りの流れにならない以上、なるべく多くの選択肢を残す為にもマリアちゃんには安定してガングニールを纏ってもらわねば……ん?誰か来たようですねぇ)
マリアちゃんの事と今後どうするか頭を捻っていると扉をノックする音が聞こえます。別に誰かが来てもおかしくない時間ではありますが……誰でしょうか?
「はいはい今開けますよ……おやおや」
「……」
扉を開けると目の前には絶賛悩みの種になっているマリアちゃんが立っていました。
マリアちゃんは扉が開いた瞬間ビクッと身体を震わせているのを見逃しませんでしたよ。いつもは気兼ねなく入ってくるのに今日は変に緊張している様子。もしかしたらマリアちゃんは僕に何か相談しに来てくれたんですかね?そうだったら僕としては嬉しいですねぇ。親代わりでも娘同然の女の子から頼りにされるのは個人的にも嬉しいです。でも出来るのなら僕が聞いても良い内容でお願いしますね?
「……今、時間はあるかしら?」
「そうですねぇ。暇では無いですが特段急ぎの用件はありませんね。話を聞く時間くらいは余裕がありますよ」
「そう……なら、入ってもいい?」
「どうぞどうぞ」
なるべくいつも通りを装ってマリアちゃんを部屋に招き入れます。ポットのコーヒーもまだあるので入れてあげますかねぇ。勿論普通の人が飲めるものですよ。インスタントも中々馬鹿に出来ないんですよ。ついでに僕のも入れときますかね。僕のは砂糖は入れますが。
今考えたら年頃の女の子が成人男性の部屋に入ってくるって色々危ないですよね?娘同然のマリアちゃんにそんな不埒な事をする気は毛頭ありませんが、それでも危機感を持って欲しいですよ。セレナちゃん共々ナスターシャに相談しなくては……。
「ありがとう」
「いえいえ。それで、何か僕に用があるんですか?」
「それは……」
ふむ。来たのはいいけど実はまだ決心がついていなかったのかな?何度も僕の顔を見ては目を逸らし、口を開いたかと思えばすぐ閉じての繰り返しです。さっきからずっと「あっ……」とか「その……」とかばかりで時間だけが進んでいきます。そんなに言いにくい事なんですかねぇ?もう少ししたら別の日に話しても良いと言いますか。
「ッドクター。話が、あるの」
おや。意外と早く決断したようですね。
ですがなんと言いますか、頭を上げたマリアちゃんの顔には決断したという割に後悔というか、これを言ったら後戻り出来ない、それでも言わなければならないという追い詰められているような若干の焦燥感が混ざっていて本人は決意したと思っていても僕からしたら血迷って勢いで何かを言おうとしているように見えます。
ちょっと精神的によろしくなさそうなのと嫌な予感がしたためマリアちゃんを止めようと声をかけようとしましたが少し遅かった。
「私の中に……フィーネがいるの」
……oh、神よ。僕はアナタの存在を心から信じております。なので僕の前にどうかその神々しいお姿を現しくださいませ。さすれば僕の全身全霊を込めて──
その心臓にガングニールをブッ刺してやる。
マリアちゃんは何を思って行うのか……ウェル(オリ)にはまだ分からない|ω')
ウェル(オリ)「許さねぇぞ……よくもマリアちゃんをここまで追い込んでくれたな。殺してやる……殺してやるぞ。アダム・ヴァイスハウプト」←関係無い。
アダム「」(例の顔&コーヒー逆流)