シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!? 作:ボーイS
「ふぁ〜〜」メキメキメキメキメキメキャ!
長い欠伸をしながら身体を伸ばすと身体のあちこちから音が聞こえ……最後明らかに身体から聞こえたらダメなヤバい音聞こえたな?
いやぁビックリしたね。確か最後に寝たの水曜日だったなぁと思って電波時計にあった曜日確認したら水曜日だったから一日も経っていないと思ったらまさか一週間も経ってたなんてね。全然気づかなかった。
後でマリアちゃんに聞いたらベッドに入ってものの数秒で寝息を立て始めたんだって。意識自体は全然大丈夫でも身体は限界みたい。そりゃもう心配になるくらい死ぬようにグッスリだったみたい。実際セレナちゃんは僕が死んだと思って泣いたみたいだし。悪い事しちゃったなぁ。
「おはようございます。ドクター」
「ん?ああ。おはようございますナスターシャ」
まだ疲れていたのかな。後ろから近づいてくる老技術者であり、そしてシンフォギアのG編にてマリアたちを導いたナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤに気づかず挨拶が遅れてしまった。僕の方が偉いとはいえ彼女の方がここに所属して長いのだから先輩には違いないのに……失敗したかな?
「はぁ、セレナが泣いていましたよ」
「ははは……すみません」
「謝るのであればこれからはもっと睡眠時間を取りなさい。それから菓子だけでなく身体に栄養があるものを食べるべきです」
「それならナスターシャも肉料理ばかりでなく野菜を摂るべきでは?マリアが言っていましたよ。マムがお肉ばかりで野菜を食べないから他の子たちも真似して困ってる……ってね」
「むっ」
互いに軽口を叩きながら長い廊下を歩く。
彼女との出会いはまぁ、当然と言えば当然だった。
前世でナスターシャはマリアちゃんたちと共に世界に向けて宣戦布告するのだから、思いもよらなかったとはいえマリアちゃんとセレナちゃんと深く関わりあっている僕と何処かで出会うとは予想出来ていた。それが予想以上に速く、そして好感度が高めだったのは意外だったけど。
あれはフィーネが第二、いや第三だったかな。のレセプターチルドレンを送って来た時だ。
その頃にはかなりレセプターチルドレンたちの扱いは丁寧になり、子供たちも過ごしやすい環境になっていたとはいえ、この場所に連れてこられる以上やはり最初はあまり僕たちに良い印象はない。
最初は僕だけが連れてこられた子供たちになるべく優しく接して警戒を解いてあげていた。マリアちゃんやセレナちゃんがそうだ。
それから僕の改革が始まるに連れて僕と同じ子供たちを想いやる人たちが増えたおかげで送られてくるレセプターチルドレンと最初に接触する人たちも増えてくれた。そしてナスターシャはその一人だ。
最初ナスターシャはマリアちゃんたち最初のレセプターチルドレンたちの教育係をやっていたらしいが、一緒にいる事で子供たちに情が移り、今では教育係というよりも保母さん的な位置に付いている。まぁ厳しい時は厳しいみたいだけど。
「……それで、ドクターはどう思いで?」
「何がですか?」
「とぼけるのはおよしなさい」
ピシャリと言い切られてしまう。んーやっぱりあの事かな?
「レセプターチルドレンの皆が身寄りの無い子というのは本当なの?それに、あれだけの子を世間にバレずに櫻井了子はどうやって手に入れているのでしょうか」
「……さぁ。僕には分かりませんねぇ」
やっぱりナスターシャ教授は鋭いなぁ。って言っても、身なりはともかく明らかに身体の健康さ不健康さの差が目立つから気付くのは当たり前か。
「櫻井了子は『シンフォギアを扱える可能性のある子供』としてレセプターチルドレンを連れて来た。ですが実際は数人を除いてここの実験のモルモットにするための賄賂代わり。しかし、その数人ははたして本当にシンフォギアを扱える可能性があるとして連れてこられただけなのでしょうか?私には櫻井了子が別の──」
「ストップですよナスターシャ」
思わずナスターシャの言葉を食い気味に遮る。うん、これはまずいね。
「ナスターシャ、貴女の疑問はもっともだ。櫻井了子が連れてくるレセプターチルドレン。身寄りの無い子供から連れて来たにしても不自然な部分は多い」
「分かっています。でしたら」
ナスターシャが言いたい事は分かる。即刻局長に問い合わせて櫻井了子を問い詰めようと考えてるのだろう。でも僕は首を横に振って否と答える。それをするには今立っている場所があまりにも悪すぎた。
「仮に今僕がその事を話したとしましょう。おそらく、いや絶対と言っていいでしょう。
「貴方のような人でも子供の命より自分の命だと?」
「そうではありませんよ。ですが僕がいなくなった後の後釜があの子たちを大切にすると言い切れますか?」
「それは……」
そう、僕が懸念している事はそこなのだ。
アニメではそんな描写無いのは当たり前だとして、なんだかんだでマリアちゃんたちを想っていたナスターシャがレセプターチルドレンたちの事を気に掛けない訳ないし、勘の良いナスターシャなら櫻井了子がフィーネだとは気づかないにしても何か秘密があると気付くだろう。
でもあの一期のフィーネの事だ。自分の秘密に勘づいた人間は消すか自分の言いなりにさせるだろう。おそらくアニメのナスターシャは自分がいなくなる事でマリアちゃんたちに被害が行かないようにしていたに違いない。僕の改革も無いからもしかしたら今の時期は二人とも目も当てられない状態だったかもしれない。だったら尚更二人や他の子たちを置いて消える事なぞするはずがない。
それは今のナスターシャも同じだ。マリアちゃんとセレナちゃんは主に僕に懐いてくれているが、他の子たちをはナスターシャに懐いている。幸い他の研究員もいるがその中でも筆頭は間違いなくナスターシャだ。
そして僕なのだが。
(あのOTONAの気持ちが分かりますねぇ)
OTONA……装者たちの司令であり、倒せるのはノイズと父親にあたる風鳴訃堂のみだと思うシンフォギア屈指の最強キャラ「風鳴弦十郎」。
キャロルやアダムとかあんたが出ればええやん?と思うけどあの人は「司令官」。現場に行く事は難しい立場ではあるが、もし彼が命令違反して司令を解約、その後ニ課やS.O.N.Gに別の司令が来ていた場合、もしかしたらもっと悲惨な未来になっていたかもしれない。まぁ勿論良い未来になってた可能性もあるけどね?
そして奇しくも僕も似たような立場になっている。
可能ならナスターシャに今の地位を譲渡したいけど、残念ながらそれを局長に言ってもその上が許可を出さず、別の人間が僕の後釜になるだろう。そいつがマリアちゃんとセレナちゃんに酷い事をしないとは言い切れない。もしかしたら今までの僕の頑張りを全て壊してしまうかもしれない。そうなれば、下手をしたらG編にマリアちゃんも切ちゃんも調ちゃんも出てこないような最悪のルートに入る可能性すらある。
「今のあの子たちを守る為には今が最善です。自信過剰かもしれませんが、僕と貴女が最後の防波堤のようなものなのですよ」
「……
「ええ」
ま、僕の言う我慢はG編が始まるまで、という事ですがね。
「さて、長話をしていたら少し時間が危ういですね。少し急いで」
「ドクター!」
「ハンニバルッ!?」ペキン
完全に油断していた背後からの突然の衝撃!ウェルの首と腰に致命的なダメージ!!!後絶対折れた!?
「セレナ!急にドクターに飛びついたらダメでしょ!?大丈夫、ドクター?」
「だ、大丈夫ですよ。ちょっと首と腰が死んだだけです」
「大丈夫じゃないでしょ!?」
おおぉぉ……やっべ首が動かねぇ、腰は背筋伸ばしたままじゃ無いと少しでも曲げたら砕ける。うん、さすがセレナちゃんだ。僕になんの恨みがあるのかな?
「せ、セレナ?きょ、今日はどうしたんだい?」
「ドクター!今日は私も新しい子たちに会いたいです!」
セレナちゃんから僕やナスターシャの役に立ちたいという気持ちが伝わってくる。後ろにいたマリアも控えめだけどセレナちゃんと同じだ。
「ですが今日来たばかりの子供たちは急にここに連れてこられて混乱した子ばかり。貴女たちに危害を加えるかもしれませんし、見たくも無いものを見ることになりますよ?」
痛みで話せない僕の代わりにナスターシャが喋ってくれる。
今日来たばかりの子は中には気性の荒い子もいる。たまに研究員の中から怪我人が出るほどだ。それに、情緒不安定で不快にしてくる子もいる。僕は慣れたけどね。
そして中には、目を逸らしたくなるほどの大怪我や病気を持った子もいる。そんな子たちを見て二人がトラウマにならないか僕は心配で仕方ない。
でも、二人の瞳は全く揺るがない。
「分かっています。私たちもその中の一員だったんですから」
「私たちみたいだからこそその気持ちも分かる。だからお願い、私たちもドクターやマムのお手伝いをさせてください!」
二人揃って頭を下げてくる。んーこれは負けたかな。
「しかし……」
「いいじゃないですか。二人が望んでいるのですから」
「……はぁ、貴方はマリアとセレナには甘いですね」
「ははは」
ナスターシャの言葉を聞き流すように僕は笑う。
そして僕たちは新しいレセプターチルドレンたちがいる場所へ向かった。
……なんでマリアちゃんとセレナちゃんは僕の両サイドで僕の手を繋いでくるんだろうか?
ウェル博士じゃなくて良くね?と思う方々。確かに今はウェル博士ではなくてオリキャラでも良いですね。
……今は。