シンフォギアの世界に転生し……って、こいつかよ!? 作:ボーイS
切歌ちゃんと調ちゃんがF.I.S.に連れてこられて一週間が経とうとしていた。
二人や二人と共に連れてこられたレセプターチルドレンたちは既にここに慣れ始めているようで何よりです。ナスターシャたちの頑張りには脱帽ものですよ。僕だけじゃ到底出来ない事です。僕が治療は無駄だと判断してしまった子たちも最期まで幸せを感じながら逝って欲しいものですねぇ。
そして。
「ウェル……さん」
「おや。どうしたんだい、調ちゃん?」
僕は自室でパソコンをいじっていたところに調ちゃんが後手に何かを隠し持って少しそわそわして視線を逸らしながら話しかけてくる。でもなんだろう、幼女がそわそわしながら部屋で二人きりとか警察案件待った無しな気がするけど気のせい……じゃないよね。うん。
調ちゃんは何度か僕を見て何か喋ろうとして、でも言えなくて俯いてを何度か繰り返すけど僕は気長に待ってあげる。こういう時はあまり急かしたらダメだし折角仲良くなり始めてるのにまた離れちゃうからね。
それから五分ほどして調ちゃんがやっと決心がついたのか、少し顔を赤くしながら持っていた物を僕の前に突き出して来た。一瞬包丁か何かかと思ったけどこれは……確かレセプターチルドレンたちのオヤツのクッキー?
「ウェル、さんがおかしがすきだってセレナさんが言ってたから……」
お礼の代わりか何かのつもりかな?まだ幼いのによく出来た子だ……客観的に見たら幼女に赤面させながら物を貢がせているクズ野郎に見えなくもないですね、これ。
「ありがとうございます。ですがこれは貴女の分ですから僕の事は気にしなくて良いんですよ?」
「でも……」
「それとウェルさんじゃなくてみんなと同じようにドクターと呼んでくれても構いませんよ。むしろ僕自身そちらの方で呼び慣れすぎていましてね」
「うん……ありがとう、ドクター」
調ちゃんの頭を優しく撫でながらそう諭すけど、最後に原作でも切歌ちゃん以外には見せないような、極稀に見る笑顔を僕に向けてくる。天使かな?お迎えが来たのかな?昇天しちゃうのかな僕?
「ドクター!」
調ちゃんの頭を撫でていると勢いよく扉を開けながら切歌ちゃんが入ってくる。危ないのでもう少しゆっくり来て欲しいんですが何度言ってもハイテンションで行動する切歌ちゃんを止められる気がしない。というより僕に懐いているのを良い事に押しつけられているような気がしないでもないんですよねぇ。
「こらこら。もう少し落ち着いて入って来なさい。僕は逃げませんよ」
「えへへぇ」
切歌ちゃんの頭をセットが乱れるくらいくしゃくしゃっと撫でてあげる。今の切歌ちゃんはワンパクガールだから調ちゃんみたいに優しく撫でるよりこっちの少し雑な撫で方の方が嬉しそうなんですよねぇ。
まだ幼いから男の子と言われても十分頷けるくらいワンパクなんですよ。セレナちゃんに負けず劣らず不意に突撃してくるから最近首と腰へのダメージが甚大で……まだ小さいから衝撃が小さいから助かってると思いたいけどセレナちゃんと違い全身で体当たりするから実際あまり変わらないんだよね(遠い目)。
「ドクター!ドクター!これあげる!」
「おやおや、貴女もですか」
切歌ちゃんも調ちゃんと同じく……ちょっとまってこれどう見ても調ちゃんより多いよね?調ちゃんのと比べると五、六倍くらいの量があるんですけど!?
「はぁ、切歌ちゃん。食欲旺盛なのは分かりますがちゃんと決められて配られた分で我慢しなさい。貴女だけがわがままを言ってはダメですよ?」
「あう……ごめんなさい……」
ああ、切歌ちゃんが分かりやすく落ち込んでるぅ!?ごめんね!?でもさすがに他の子もいる中で君だけが沢山貰うのはダメだから!だからそんな涙目にならないで!!??あ、これヤバい、大声で泣き出しそうだ!?
「ん、んん。でも、気持ちは有り難く貰います。ありがとう、切歌ちゃん」
「……おこってない?」
「ええ。怒るわけがないでしょう?」
若干震え声になっている気がするが今は切歌ちゃんを落ち着かせるのが先だ。ここで泣かれたら事案だ。G編どころか原作開始前にウェルが檻の中だ!!!
切歌ちゃんのご機嫌を取るためにゆっくりと優しく、丁寧に頭を撫でてあげる。調ちゃんもだけど持って来てくれるだけでありがたいのは本当だからちゃんとお礼の気持ちも込めてね。
「むー。きりかちゃんだけずるい!」
「おっと、これは失礼しました。おいで」
頬を可愛く膨らませて怒ってますアピールをする調ちゃんに空いていたもう片方の手で撫でる。調ちゃんも子猫のように頭を僕の手に擦り付けるようにくっついてくるから可愛い。天使だな(確信)。お迎えが来たんですね(確信)。昇天してしまうんですね、僕(確信)。
「ドクター!ここにいたんですね、って」
「ハァ、ハァ……せ、セレナ?貴女ってそんなに早く走れたかしら……?」
またもや僕の部屋にお客さんが訪れたようだ。というか走って来たみたいだけどセレナちゃんは全く息が上がっていないのにマリアさんが今にでも死にそうなのは何故だ?そんなにセレナちゃんって体力あったっけ……。
切歌ちゃんと調ちゃんが来てからというもの、身体が休まる時間が少ない気がしますよ……よくよく考えたら一週間完徹とかしてるからあまり変わらないか。それよりもセレナちゃん。そんなハイライトOFFな瞳で僕を見ないでもらえます?マリアちゃん助けて!……マリアちゃんの方が助けが必要か。
「どうしたんですか二人とも。そんなに慌てて」
「え、あ、えっと、今日はオヤツにクッキーを貰いましたのでドクターと一緒に食べようかな、と……」
「おやおやそれは嬉しい事を。ですが今二人にも言いましたがそれは貴女の分なので貴女が食べなさい。ああ。ここで食べるのなら特に問題はないですよ。マリア。水ですよ」
「あ、ありがとう……」
セレナちゃんに笑みを向けながらこの部屋に来てからセレナちゃんたちに振る舞う時以外使っていないキッチンに用意されているウォーターサーバーの水をコップに入れてマリアちゃんに渡す。ちょっと顔が青くなっているのが心配だ。どれだけ走ったんでしょうかねぇ。
「おや、コップを間違えたようですね」
「えっ」
「どうやらそれは僕がコーヒー(という名の黒砂糖水)を入れるのに使っているもののひとつのようですね」
セレナちゃんとマリアちゃん、そして最近来るようになった切歌ちゃんと調ちゃん用のコップも僕の部屋にあるので種類が多いんですよね。前世から一人暮らし(おそらく)が長かったので誰かといる生活というものになかなか慣れないものです。
「な、え、そ、それってかかか間接っ!?」
「え、関節がどうかしたのですか?」
走って何処か痛めてしまったのだろうか。青かった顔も急に赤くなってしまいましたし……最近は無理をさせるような実験などは無かったはずなので病気か何かにかかってしまったのでしょうか?
「……姉さん。私も喉が渇いたのでお水を貰えますか?出来ればそのコップで」
「い、いやよ!わ、私もまだ喉が渇いてるし……」
セレナちゃんはニコニコと笑みを見せながらマリアちゃんの持つコップを物凄い勢いで奪い取ろうと手を伸ばしますがそれをマリアちゃんはギリギリで回避。回避されたのでセレナちゃんは追撃し、それを、マリアちゃんは回避……っていつの間にか戦闘訓練みたいになってる!?ふむ。どうやら姉妹の空気が悪くなってしまいましたね。なにかありましたか、今の会話の中で?
「クッキーおいしいね、きりかちゃん」
「うん!とってもおいしいね!」
「天使か!天使だった……ハッ!」
少しずつ激化していく姉妹喧嘩、か分からない謎の攻防が目の前で繰り広げられている中、切歌ちゃんと調ちゃんは空いている椅子ではなく、何故か椅子に座っている僕の両足に腰掛けてお互い美味しそうにクッキーを頬張っている姿に、思わず心の声が表に出て来てしまったけど幸い誰も聞いていなかったようだ。
(……もうすぐセレナちゃんとマリアちゃんの定期審査、か)
今の楽しい空間を味わいながらも僕の頭の中では別の焦りがあったが、今はそんな暗い気持ちを抑えて笑おう。それがこの子たちの為になると信じて。
5〜7歳くらいの子供の表現の為に平仮名使ってましたが、さすがに幼すぎる雰囲気かな……?