最強になる必要はない。最強を創れればいいのだから。 作:アステカのキャスター
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活動報告にて最強募集してます。最強じゃなくても実用的だと思ったものでも構いません。
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○月○日 曇天
………思った以上に深刻だった。
頭を抱えている俺に九十九センセーもそれを聞いて俯いている。マズイな。ある種の願望機と同じ力を持つ人間。俺は燃費が悪いから反転の分解術式を使えなきゃクソ弱い術式とばかり思っていた。
そもそも気付ける要素はあった。
村正(偽:改)は鉄パイプで出来たとはいえ、結構頑丈で切れ味のいいものになる筈がない。刀は厳密に言えば、玉鋼で出来るものだ。鉄パイプ程度では強度などたかが知れてる。
俺はその事すら忘れて刀を創った。
足りないものと思ったものを構築術式で埋めた時、俺の想像した刀の性質を勝手に構築術式は生み出したのだ。
ナイフだって持ち手は革に近いものだ。
七夜のナイフみたいに創りたいと望んだ故に生み出された。元素から構築するならそんなものまで意識するはずがないのに。
思えば、なぜ魂があるものが呪力になるのか考えた事がなかった。魂が分解された時に生じるのがエネルギーだけじゃない理由、この世界でいう呪力は俺からしたら
………これ、思った以上に深刻じゃない?
二回目だよこの台詞。だがそう言わざる得ない。ヤバいよ。この実態がバレたら上の連中どころか呪術師、呪詛師が血眼で俺を利用しに来る。
仮の話だ。
全人類全てを犠牲に呪霊の無い世界を生み出せるか。
………答えは多分、
望んだものは呪力によって決定される。魂を持つ人間全てが犠牲になるなら莫大な呪力を生み出せるし、その呪力で新しい世界を生み出すと言うなら多分不可能ではない。
これ、思った以(ry────
○月☆日
○月♪日 曇り
昨日台風で来れなかった。
とりあえずこの情報は九十九センセーと信用出来る人間の間で秘密にする事にした。一応、暗い気持ちの中だが幻灯の魔物は完成した。呪力を溜め込み、核となる部品を取り付け、幻灯機に構築術式と夜蛾先生の傀儡術式を組み込む。俺にしか使えないように応用を利かせて、投写した。
映ったのは赤い猫。
傀儡術式によってある種のコマンドを入力した。構築術式によって実体を得る。猫は幻灯機が壊れるか、溜めた
しかも、利点が二つ。この幻灯機は機械と呪術を組み合わせたものだ。コイツは物体の分解で生み出せるエネルギーで動力を賄える事。そして、実体はあっても本体がそこにあるわけじゃない。あやふやな構築で存在するからこそ、エネルギーの消費は少ない。
またとんでもないもの創ったなお前と呟くセンセー。こればかりは俺も思う。コイツもそこそこヤバい代物だ。
ああ、これが蒼崎橙子と同じものか。
赤い猫を撫でると、本物の猫のように喉を鳴らし、気持ちよさそうに反応する。ヤバい、癒される。
九十九センセーがそれを見て撫でようとしたら赤い猫が噛み付いた。それに吹き出した。まあ、その猫本来なら人間の胴体すら容易く食い破る奴だから、嫌いではないのだろう。
まあ戯れにしては結構強く噛んだと思うが……歯形が意外と深い。涙目のセンセーに反転術式をかけてあげた。
○月◎日 晴れ
自分の願いに応じるなら身体を生み出す事が出来るはずなのだが、圧倒的に呪力不足。流石に呪術師登録をしてない俺が任務に行けるはずが……えっ?行けるの?しかも一級?
九十九センセーに鍛えられ、体術もそこらの奴には負けないだろうが、実戦経験ゼロの俺がいきなり一級?「危険じゃね?」と聞いたら「お前、頭大丈夫か?」と言ってきた。
失敬な、俺はマトモだ。螺子が大分ぶっ飛んでいるだけだ。あれ?矛盾してない?
九十九センセーが骨みたいな呪霊を使って呪力の砲弾を撃ってきた。俺は咄嗟に分解する。そこで、九十九センセーが構築と分解を融合させた力場を体表に張れと言われた。あれ自分の身体に張るとなると結構、呪力食うんだが、とりあえず張った。その状態で再び撃たれた。3カウント待った無しで。
分解された呪力は霧散しなかった。力場を張った中で保有されている。……あれ?もしかして、俺攻撃された術式も分解して自分の呪力に変換できる?
ちょっと?これ相当の呪霊キラーじゃない?
なんなら呪霊が攻撃している間のみ張ってしまえば呪力回復も余裕だし。攻撃と防御で分解し呪力回し続ければ長期戦ならクソ強いぞこれ?
……これ、もしかして最強になれない前提少しだけ崩れてないか?最強に近づいてきた?五条さんのように自己補完の範疇でずっとは無理だが、戦う時のみなら需要と供給さえ考えて使えば……
おい、今気づいたのかとか言う顔やめて。ボクかなり傷ついちゃう。
○月◆日 晴れ
九十九センセーが禪院から呪力を保管する呪具を持ってきた。それをトランクケースに入れて俺に渡してきた。とりあえず、呪霊を利用してしまう事は割り切ろう。命あるもの全てを気にしていたら保たないと言われたし、そこは仕方ないと割り切った。
九十九センセーは死にそうだったら助けてやると丸投げしてきたが、ありがたい。正直自分がどこまでやれるのか知りたかった。
出会った一級は触手の化け物だった。
毒を分泌する触手で俺に襲いかかるが、その前に触手ごと分解する。長引くと呪力が融合した力場にもってかれてしまうので、一気に倒す為に手を合わせた。
それは神様に祈るように……俺は領域を展開した。
★★★★★
『お前の領域展開は不完全だから強いな』
『はい?』
不完全だから強いってどういう意味?
確かにまだ不完全だ。使い始めて、漸く必中効果が得られたが閉じ込める感覚はいまだに難しい。
結界で閉じ込めながら生得術式を同時に解放することが難しいのだ。なんなら分解しか出来ず構築をする余裕がない。
『お前の本質は構築と分解。だが、それを突き詰めれば創造と破壊に行き着くと思わないかい?』
『……まあ、間違ってはいないと思いますけど』
『正確にいうなら、領域展開と呼べる代物じゃない。不完全で不細工、創造と破壊なんて大層な在り方には行き着いていないが、本質の工程は間違っていない』
『??』
言っている意味がわからない。
俺の領域展開は確かにまだ不完全だと思う。対象を閉じ込めるだけの完璧な術式ではない。本質を捉えていないという事か?工程は正しいけど、使い方が違う?
分解しか出来ない中、領域は間違いなく不完全。構築は精々分解したエネルギーに指向性を持たせる程度にしか生み出せない。物質や物体は創れない。
『お前は呪術を分解し、生得術式の基盤を知れる上に呪力まで手に入れる事が出来る』
『はい、間違ってないですね』
『お前の本質の究極は恐らく『なんでも生み出せるしなんでも壊せる力』が具現化したものだ。だが、領域展開でやっている事は分解したエネルギーに指向性を生み出したりする事だろ?』
『まあ、そうですね』
『そこがミソだ』
『はい?』
分解したエネルギーに指向性を持たせる。
領域を使わなければ真っ直ぐにしか飛ばないし、結構周囲に影響する。パチンコ玉一つでも結構な破壊力を生み出すのだ。
だが、それとこれはどう関係が……?
『言ってしまえばお前は領域で何かを生み出そうとはせずに、分解のみを使ってそのエネルギーだけで圧倒出来る。これでは領域展開の本質からはズレている。お前は創り出す者で破壊する者ではないからな』
『でも、現在の既存の兵器とか呪具を生み出すより手っ取り早いし』
『だから強いと言ってんだよ。分解のみに特化し、分解したものだけで圧倒出来る。なんでも分解してしまうんだ。人も呪術も物質もな。不完全だからこそ、その領域は呪力を持つ全てに特攻を持つ』
あっ、言われてみればそうだ。
この不完全な領域は領域同士の押し合いになれば相手の領域を分解し、自分の呪力に変換してしまう。
なんなら、領域同士で僅かでも自分の領域が保てていれば、長期戦で有利になるのは俺の方だ。
『分解する事のみに特化した不完全な領域展開。それが逆に強いのさ』
九十九センセーが言ったのはその使い方。
不完全ゆえに強いその領域。分解を極めたソレは何よりも
★★★★
「やあああああめええええろおおおお!!!」
一級呪霊は呪力が上がった荒夜に猛攻を仕掛けた。
荒夜の呪力量は中の上だが、呪力の質と操作力は他の呪術師と格が違う。領域の展開と術式の発動のみに絞り、完成される不完全な領域。
荒夜の本質に聖杯のように全ての可能性を叶える力があるならば、まだそこまで至る事は出来ない。
無からの創造ではなく有からの再編。
いずれ全へと到達を目指す荒夜の最奥の手前。
「領域展開」
世界が紅く染まっていく。
空は夕焼けより紅く、地面は影よりも黒く塗り潰される。行き着く先は全の構築、ソレに届かない不完全だとしても、それが不完全とは思えないその世界に一級の触手呪霊は愕然とし、恐怖した。
それは分解のみに力を置いた不完全な領域展開。故に荒夜はこう名付けた。
「──創始再編式」
全ての始まりを再編する。
創られたもの、生み出されたもの全てを自分の形に再編する。荒夜が現在使える最大の領域。
「いいいやああああああだああああああ!!!!」
恐怖で体が震える間もない。
ただ、危険と判断し逃げようと思う事は間違っていない。呪霊も負の感情から生まれたものだ。感情だって当然ある。
だが、逃げようと思っただけで荒夜の領域から逃げられる程、彼は甘くない。
ただ、バラバラにされていく。
塵のように身体が分解されていく。何者であろうと領域の中にいる彼を止められない。
呪霊は声を上げる間もなく領域で消え去っていた。
「こんなもんか一級呪霊。よっと」
トランクケースを開け、呪具に手に入れた呪力を注ぎ込む。今ので自分の呪力の30倍は手に入った。魂の分解をした呪力量は半端じゃない。二級と比べてもやはり一級は格が違うと思ったが、これなら肉体を生み出す時の呪力も賄える筈だ。
「終わったか。やっぱ凄いなお前は」
「いや、あれ不完全ですよ?」
「それでもだ」
ポンと頭に手を置かれて撫でられる。
その顔は少しだけ、悲しそうだった。どうして、そんな顔をするのかわからない。
「お前は凄いよ。自慢の弟子だ」
「九十九センセー?」
「ああ、本気でお前が私の願いを叶えてくれるんじゃないかって、そう思えるよ。同時に悔しいって思ってしまうくらいにな」
九十九センセーに呪霊に対して何かがあったのか。俺にはこの人の過去がわからない。けど、もしかしたらこの人は呪霊に大切な人を奪われたのかもしれない。それとも、才能か。俺の術式を見てそう思ったのか。
「なあ荒夜」
「はい」
「お前はさ、私より先に死ぬなよ」
いやこの人何言ってんの?
そうなると少なからず、俺が死ぬなら渋谷事変の後じゃん。そもそも、俺は老衰でしか死なないって呪いを両親にかけられてるし。
それとも俺が早死しそうだからか?
「大丈夫ですよ。老衰で死ねって家族に言われてますから」
「……そっか。うし!じゃあ飯行こうか。何が食べたい?」
「えっ、じゃあハンバーガーとか?」
「寿司行くぞ寿司!」
「聞いた意味!!」
この後、めちゃくちゃ高い寿司食べに行った。
★★★★
早朝に目が覚めた。
今日、呪骸創りに取り掛かるからだ。人間の身体を再現した後に、俺が強いと思える術式を組み込む。
思い浮かぶ最強は創っていいか迷うものだが、抑止力としては充分だろう。研究所まで呪力操作で強化した身体で走っていく。
「おっはよー!センセー!」
いつも変にベッドで寝汚く眠るセンセーを起こすのは俺がよくやっている事だ。ドアをノックしてわざとらしい叫ぶ。あの人寝る時、全裸だから一度入った時、マジで気を失うかと思ったもん。
「……あれ?」
ノックしても反応がない。
仕方なく意を決して開ける。ベッドにはセンセーが姿がなかった。あの人、早起きしたのか?
布団はいつも通りぐちゃぐちゃになっているけど、センセーがいつも持っていく荷物が全く無い。
「朝飯でも食べに行ったのか?」
ガラケーでセンセーに電話を入れる。
時間が経つと、繋がった。どこに行ったのか聞こうとしたのだが、ガラケーから聞こえた声はセンセーの声ではない。別の人間の声だった。
『もしもし』
「………?アンタ、誰?」
『私は夜蛾正道……君は荒夜君か』
「夜蛾先生?この携帯、九十九センセーにかけたんだけど」
『落ち着いて聞いてほしい』
何だ。何かがおかしい。
夜蛾先生の口調、九十九センセーの失踪。
嫌な予感がした。優秀な頭は嫌というほど最悪な現実を叩きつけようと、受け入れられなくて心が警鐘を鳴らす。
「何か、あったん…ですか?」
震える手で携帯を握りしめる。
一体何があったのか、夜蛾先生は告げた。
「九十九由基が……死んだ」
「………はっ?」
それは唐突に告げられた。
眩しいくらいに朝日が昇る冬の終わりの事だった。