最強になる必要はない。最強を創れればいいのだから。   作:アステカのキャスター

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 今回日記形式じゃないです。
 ミミナナ編です。前編、後編に分けます。すみませんが明日はバイトがあるのでお休みします。

 それではどうぞ。


二十一

 

 

 

 原作の美々子と菜々子は九月頃、牢屋に閉じ込められていた。それを機に夏油さんは呪詛師としての人生を歩き始めた。

 

 今は五月の後半、そろそろ六月だ。 

 原作通りなら後三ヶ月はある。この二人は虐められてはいるが、牢屋に閉じ込められていない。いや、閉じ込められている事前提で話してもアレなんだが……

 

 

「なんだよテメー!そのヨーカイのみかたかよ!!」

「あ"っ?」

 

 

 ああ、そう言えば村での環境は最悪だったか。

 確かにこれはウザイな。自分が虐められる立場なら加害者の鼻の穴に指突っ込んで背負い投げしている。もしくは蹴り潰す。その経験者が畏怖を抱くからだ。

 

 実際やった事はない。

 この世界ではやれる自信があるけど。

 

 

「おいガキども。さっさと帰れ」

「うるせっ!!ヨーカイのなかま!!」

「やっちゃえ!!」

 

 

 投げられた石の全ての力のみを分解する。

 壁に遮られたかのように石は止まる。石を二つ拾い、呪力で強化した肉体で思いっきりガキどもの足下に投げる。石は地面にめり込んでいた。

 

 

「こうなりたくなかったら失せろ。それか死ね」

 

 

 バキッ!!と握りしめた石が砕けて手の平から落ちるのを見て、ガキどもは恐怖で叫びながら逃げ帰った。なんか不快なものを見た。この世界、呪術師の扱いが酷くない?呪霊と戦っていつか死ぬか不当な扱いをされるかの二択じゃん。

 

 

「……大丈夫か?」

「………」

「……わたしたちを、ころすの?」

「なんでさ」

 

 

 二人の頰に触れ、反転術式を施す。

 女の子が殴られたりするクソみたいな村はここだったのか。そりゃあ夏油さん闇堕ちするわ。

 

 

「痛くないかい?」

「あっ、えっ?いたくない!」

「もしかして、わたしたちとおなじ?」

 

 

 そんな事を考えてるとツボミさんが騒ぎを聞きつけてやってきた。まあ、非術師に対しての威嚇のような事をしたのだ。焦ったような様子で此方に走る。

 

 

「ちょっ!?荒夜くん、何してるの!?」

「ツボミさん。今日の任務ってここだけだったかい?」

「えっ?う、うん。任務はもう無いし後は君を送ったら終わりかな?」

「ちょっと緊急事態だ。この二人、呪術師の才能がある」

「!」

 

 

 ツボミさんが目を見開く。

 この二人からは呪力を感じる。恐らく、原作で夏油さんに救われる筈だった二人だろう。

 

 

「君たちの両親はいる?」

「いない……でもばあばがいる」

「すまないが、案内してもらってもいいかい?」

 

 

 ばあば。この言葉は知らない。

 両親は居ないのは知っている。二人を身篭っていた頃から、両親は呪霊が見えていたようだ。

 

 ……誰か、この子達の味方がいたのか?

 

 でも、それなら納得出来る部分がある。

 牢屋に入れられず、親が居ないのに生きている理由が誰かに育てられたのなら、説明がつく。

 

 

「なんで……?」

「君たちの力について、心当たりがある」

「!」

「……!ほ、ほんと!?……あっ、これ言っちゃダメってばあばが」

「大丈夫。少しだけお話ししに行くだけさ」

 

 

 二人はお世話になっている人の所へ案内してくれた。道中にツボミさんが私に質問する。

 

 

「どうするの荒夜くん?」

「ツボミさんは案内してもらった後に一度車に戻って外で待機。車のトランクからアレ持ってきてもらってもいい?」

「ああ、新しい呪具だよね?いいけど、説得私がした方がいいんじゃない?」

「一応外にいてください。ばあばって事は御高齢の可能性がある。余り多くの人が押し入っても困るだろうしね」

 

 

 大抵の予想は出来る。

 もし、この予想が正しいなら、牢屋に入れられた時には育てていた人が既に亡くなっていた可能性が高い。あの神社も信仰から来る負の感情と、この村の認識から撒き散らされる嫌悪感。呪霊が再度現れる可能性だって当然ある。

 

 

「ここ……」

「おせわになってるばあばの家」

「入っていいかい?」

「いいけど、さわがないで」

「大丈夫。そんな事はしないさ」

 

 

 家は大き過ぎず小さ過ぎない少し昔を思い出すような造りで、玄関を通ると独特の木の匂いがして、何処か懐かしさを感じる。転生する前の自分を思い出させてくれるような、そんな場所だった。

 

 そこに、育ての親代わりになってくれている人が布団の中で眠っていた。歳は恐らく80代後半くらい。かなり御高齢の方だ。

 

 

「ばあば、お客さん」

 

 

 美々子が軽く揺するとお婆さんは軽く目を開ける。その様子だと殆ど目も見えてないだろう。輪郭が僅かに見える程度かもしれない。魂に一度だけ干渉したことがあるからボンヤリと分かるのだが、この人はもう長くない。魂の核が小さいように感じるのだ。

 

 

「……ん……おや、これまた可愛らしい…お客さんだね……」

「ああ、そのままで結構です」

 

 

 身体を起こそうとするのを止め、その状態のまま話を聞いた。

 

 

「貴方は……見えていますか?」

「呪霊…と呼べるものは見えない。けど、見た事はある…」

 

 

 その意味を上手く理解できなかった。

 呪霊を知ってはいるが、見えないのに見た事がある?

 

 

「昔、アタシも…呪霊というのに襲われた事があってねぇ……呪術師に助けてもらった時に…色々と知ったよ」

「……ああ、成る程」

 

 

 襲われる時、見える事がある。

 呪術師が助けてくれた時に、呪霊や呪術師の事を知ったのか。力を言いふらさない事を二人に忠告したのもこのお婆さんだろう。異端は毛嫌いされる事がある。他人との違いを理解出来ない。

 

 

「……だから、この子達を?」

「……この村では、酷い扱いを受けてしまってるこの子たちを放っておけなくてねぇ……親が死んでしまった後、アタシが引き取ったが…今じゃこのザマさ……」

 

 

 恐らくその当時でも八十歳くらい。

 美々子と菜々子が何歳か聞いてみると七歳らしい。つまり一個下か。七年もこの二人を老い先短い人生の中で育てていた。

 

 大体わかってきた。

 美々子と菜々子の両親は恐らく早いうちに村の奴らに殺されたのだろう。そして、二人ぼっちになった時にお婆さんが引き取って一緒に暮らしていた。

 

 原作が開始する前、正確にはこの後の三ヶ月以内にお婆さんが亡くなって同時に美々子と菜々子の味方が居なくなり牢屋に閉じこめられた。呪霊の起こした怪奇現象が二人の仕業だと思い込んで。そして九月、

 

 

「……そうでしたか。今まで本当に頑張りましたね」

 

 

 この二人が殺されていなかったのも、このお婆さんのおかげなのだろう。もう歳だ、長くはない。下手したら数週間で息を引き取る可能性が高い。

 

 

「……坊や、頼みがある」

「私に出来る事なら……」

「坊やは…この子達の味方をしてやってくれ……」

 

 

 この人は善人だ。

 恐らく、自分の死期を悟っているのだろう。最後まで、この二人の事を思っている。思っていて、居なくなってしまった時の事を考えているのだろう。

 

 ここは地獄だろう。

 だからここに居れば二人がどうなるかわからない。お婆さんはその事を知っていても動けない。

 

 

「はい。必ず」

 

 

 お婆さんとの会話はここで終わった。

 無理に押しかけた謝罪を述べた後に外に待っているツボミさんからトランクケースを受け取り、二人に渡す。

 

 

「これ、何?」

「これを君たちに渡しておく。あと、これ私の電話番号。もし、お婆さんが起きなくなったら私に電話してくれればいつでも駆けつける。もし、君たちが怖い目に遭った時は、このトランクケースを開きなさい」

「荒夜くん!?」

「いい。少なからず、今は無理」

 

 

 二人はお婆さんから離れたくないだろう。

 私も無理に二人をお婆さんから引き離すのは余りお勧めはしない。三人を移動させる方がいいかもしれないが、お婆さんは御高齢の方だ。長距離の移動も体力を考えて厳しいだろう。

 

 トランクケースには幻灯の魔物の移動用擬態が入っている。何があれば、村から出れるようにコマンドを打ち込んだ。

 

 

「これだけは覚えておいてくれ。私は君たちの味方だよ」

 

 

 夏油さんに救われる筈だった子供に手を差し伸べるのに罪悪感がある。本来なら、闇堕ちしていた夏油さんの所で二人が幸せだったのに、それを奪っていいのか。

 

 夏油さんの闇堕ちを回避するためと打算的な感情で優しい言葉を吐く自分が、気持ち悪い。

 

 けど、救われてもいい筈だ。

 救ってもいい筈だ。死ぬよりマシなら、手を伸ばした方がマシなのかもしれない。

 

 

「……あの」

「ん?」

「えっと、ありがとう」

「あの時、助けてくれて」

「どういたしまして」

 

 

 二人の頭を軽く撫でて、車に向かう。

 二人とも、無理矢理連れ出してもいい。それなら夏油さんの闇堕ちする事も無くなるだろうし、連れ出される事自体は悪くないと二人は思うだろう。ただ、ここで連れ出してしまえばお婆さんはひっそりと死んでいくだろう。

 

 それでも、今は連れて行けない。

 此処は漫画の世界でも、現実なのだ。目の前にいる人達は生きているのだ。原作だからといって簡単に連れて行けない。それに、此処にはお婆さんがいる。

 

 心に傷を残す事は悪い事かもしれない。だけど、いつか来る別れは心に刻みつけなきゃいけない時だってある。

 

 そうしなきゃずっと後悔するからだ。

 あの時、自分が居たらと思って後悔する事は私もあったから。

 

 

「……うーん。ままならないなぁ」

「何が?」

「なんでも……」

 

 

 死期が分かるからと言って死ぬまで放っておく自分はクズだ。だが老衰に対しては、どうあがいても自分に出来る事はない。死なせないという選択肢はないのだ。

 

 だからこそ、あの擬態型の幻灯の魔物を渡した。それでどうこうなる問題かどうかはまだ分からない。 

 

 少なからず、差し伸べられる手を今はまだ出さない。ただ、打算的な考えで二人を救おうと考えてる自分に嫌気が差した。

 

 

 

 ★★★★★★

 

 

 一週間が経った。

 東堂と(うるる)が戦っているのを眺めながら戦い方を指摘をしたり、自分も闘ったりしている中で、携帯から着信音が流れた。

 

 番号は不明。

 もしかしたらと思い電話に出ると、泣きながら助けてと言ってきた美々子の声が聞こえた。

 

 

「何があった?」

「ばあばが、目を開けてくれないの!!」

「わかった。直ぐに行く。家から絶対に出ないで!」

 

 

 電話を一度切り、地図を広げる。

 距離的には遠過ぎないわけじゃない。研究所に置いてある『幻灯の魔物《蒼鷹》』を開いて上に乗る。擬態用ではないから一般人に見つけられる可能性はあるが、この際仕方ない。

 

 

「東堂、悪いが今回の修行は中止だ。私は行かなくちゃいけない」

「マスター、何かあるんだな?」

「ああ、(うるる)は先に帰ってくれ。パック、フードの中に入ってろ」

「気をつけて、くださいね?」

「りょーかーい」

 

 

 センセーが使っていたバイク用のゴーグルを付け『幻灯の魔物《蒼鷹》』に乗って、美々子達が居る村まで向かった。

 

 この後、どうなるかなんて関係ない。

 救えるなら救いたいし、出来る事は全部やっておきたい。助けた後に二人とどう接していけばいいかもわからない。

 

 転生者でもこの世界を生きているのだ。

 本当に未来が変わったとしても、助けたいと思うのが悪い事なのか。

 

 

「……とにかく、無事でいてくれよ」

 

 

 呟いた言葉は本音だったのか。

 今は、それすら少しだけ曖昧だった。

 

 

 





【作者の気持ち】
原作を台無しにしないように、救えるだけ救いたいと思う事に葛藤している荒夜くん。普通にどうしたらいいと思う?闇堕ちしても幸せだったら、見逃した方がいいのか。でも、救えさえすれば別の人が救われる。救ったからと言って幸せになるとは限らない。

この変な葛藤……分かる?

★★★★★
活動報告にて最強募集してます。最強じゃなくても実用的だと思ったものでも構いません。
良かったら感想評価お願い致します。
明日はお休みします

ミミナナの視点、いる?長くなると投稿が遅れる可能性があるけど。

  • 投稿が遅れてでも欲しい。
  • いや荒夜視点だけでいいから投稿優先
  • どっちでもいいけど、あったらいいな程度。
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