最強になる必要はない。最強を創れればいいのだから。   作:アステカのキャスター

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暫くモチベが下がってきてる。
と言うより、やらなきゃいけない事が増えたり、コンテストを考えてオリジナルを考えなきゃいけなかったり多忙だぜ。

更新が少し遅くなりますが、頑張っていきたいと思います。では行こう!


二十六

 

 

 

○月○日 晴れ

 

中学生になった。

夏油さんが呪詛師になってから四年が経った。中学生になって、任務も増えた。出来る事も多くなった。まだ、負を正に変える呪具は創れない。分解ならまだしも、理論がふわっふわした状態で構築の領域展開が出来ない。どうしても既存のものしか生み出せない。

 

構築術式がある種の願望機なら出来ると思ったのに、出来ないと言う事は私自身のイメージが足りていないと思ったのだが、構築の最奥に届いていないのだろう。知っているものなら理論が曖昧でも創れるが、一から全く新しいものまでは創れない。行き詰まっている。

 

構築術式の最奥。

分解を用いた領域展開はあくまで破壊の力だ。構築の副産物に過ぎないし、領域展開で構築できるものは既存のもの程度だ。

 

まだ、『何でも創れて何でも破壊する』の半分しか至れてない。領域展開が出来るし、呪力の核心は多分誰よりも迫っているのに、一体何が足りないのか理解出来ない。

 

いや、むしろ理解度が足りてないのか? 

概念や事象の把握をすれば可能なのだろうか。

 

………無理☆

幾ら構築術式でも理解が遠過ぎるもの、人間が触れられないものには限度がある。空間はどうして存在するの?と言われたら空間は空間としか言えないのと同じ。

 

概念って具体的には何?

事象とは具体的には何?

どうやったら再現出来るの?

 

ふっ……まだ遠いようだ(白目)

 

 

 

○月¥日 晴れ

 

任務だ。やべえ社畜が染み付いてやがる。

私の戦闘スタイルはもう確立しつつある。ヒトガタの苻一枚で大体の呪霊は祓える。操作可能範囲は約200メートル。現在は109枚まで同時に操作可能。

 

そして道具は全部トランクケースに入っている。

最大二つ持っていくが、基本的にヒトガタの苻。幻灯の魔物。太腿にはホルスターが付けられ、改良黒閃銃が仕舞われている。内包領域展開のトランクケースは基本的に自分で領域展開すればいいから余り持ってこない。

 

とりあえず、呪霊の呪力を呪核に貯めて帰る。

最近は依頼が多くなった。特に知り合いと知ってるキャラから。冥冥さんから改良した斧、日下部さんから刀の新調、御三家の五条家を除いた二家から退()()()()まで依頼してきやがった。

 

二つは問題ないが、問題は退魔の剣だ。現在創れたのは()()()()()だ。アレは単純な創りじゃ生み出せない。莫大な量の正の呪力を馴染ませ、半永久的に留めなきゃいけない。生半可な構築では正の呪力は逃げてしまう。創るのに三ヶ月かかる。量産は流石に無理だ。

 

 

 

○月¥日 晴れ

 

最近、妹たちが思春期に入ったようだ。

私が言う事ではないが、小五までべったりだったのに、最近は素っ気なさがあったり、もう子供じゃないもんと2人揃って言ってきた。友達も増えて、兄に対して少しだけ冷たくなるソレを見て、少しだけ大人になったと成長をしみじみと感じた。おい、ジジくさいとか言うな。

 

現在、二人も呪術を学び、二級程度なら余裕で祓えるようになっている。なんなら準一級はあるんじゃね?2人がかりで東堂に勝った事はあるし。

 

師匠の時の自分と、日常の時のスイッチを切り替えて教えているが、日常の時は少し兄離れを見せてくるから、逆に嬉しくて泣いた。

 

メカ丸は天与呪縛が弱まったとはいえ、準一級の力は健在だ。範囲こそ狭まったが、呪骸と呪力出力は変わらないし。

 

(うるる)に至っては一級くらいはありそうだ。黒閃で地面を弾く瞬歩モドキと、武芸百般をある程度使いこなせる胆力と自由さに師匠の私はもうこの子天才としか言えなかった。

 

そして東堂だが、最近初めて負けた。

油断はしていなかったのにも関わらず、領域展延で力の分解が入る前にブン殴られた。全分解にしていなかったとは言え、それでも殴られたのだ。特級クラスまで上がっていきそうな気配がする。

 

やべえ……やべえよ……東堂やメカ丸が原作より強くなってないか?

 

 

 

 

○月☆日

 

 

 

○月♪日

 

 

 

○月%日 雨

 

インフルエンザにかかった。

久しぶりに病気なんてかかったな。最初の二日は苦しかったが、薬飲んで寝たら一気に暇になった。

 

持ち歩いていた日記くらいしかやる事がないし、流石に外に出たら怒られるので今日は大人しくしてる。

 

パックの肉球が冷たくて、ヒンヤリした。

 

 

 

○月*日 晴れ

 

風邪の菌の分解。

まだ熱はあるので、身体の中にあるインフルエンザのウイルスだけを分解出来ないか試そうとしたが、やめた。

 

何となく出来ない気がした。

無から有は出来ても、有から微細とも呼べるものは不可能だ。菌を分解しようとしたら血も分解されかねないので、大人しく寝る事にした。分かりやすい毒物なら問題ないと思うんだけどね。

 

 

 

○月〒日 晴れ  

 

美々子と菜々子がお粥を作ってくれた。

普通に美味しかった。そういや婆さんがいた頃から家事やってたっけ。あと二日は家に居なきゃいけないので面倒である。

 

持ってきたポカリを飲んで、私は惰眠を謳歌した。

 

 

 

★★★★★

 

 

 夢を見た。

 夏油さんと最後に会った新宿の夢を。

 

 

「私と一緒に来い。荒夜緋色」

 

 

「この腐った世界を私と変えよう」

 

 

 手を差し伸べられた。

 ああ、ダメだ。この人はもう止まらない。きっと、優しさに押し潰されてしまったのだろう。

 

 止められなかったことは何度も考えた。

 どうにかすれば止められるって、また楽観視していた。

 

 

 けど、()()()()()()()()()

 

 

 

 

「……悪いけど、その手は取れない」

 

 

 だから、拒絶を示した。

 かつての私だったなら頷いたかもしれない。

 

 

「私は最初はただ最強になりたかった。幼稚な目的で呪術を学んで、最強を創りだそうとした」

 

 

 本当にそれだけだったから。

 この世界に転生して、自分がやりたい事のついでに呪術師になった。この世界を知っていたから、最強を超えたくて最強を創り、万能な人間になりたかった。

 

 だけど……今はそれだけじゃない。

 

 

「でも、今の私があるのは、センセーが居たからだ。あの人が居なかったら、きっと貴方の手を取っていたかもしれない」

 

 

 センセーがいなかったら、愉快犯で最強を創っていたかもしれない。夏油傑の夢の為に、人を殺す事に特化したものを生み出していたかもしれない。

 

 

「けど、もうその手は取れないよ。取るには目指した夢も護るべきものも増え過ぎた。夢が叶わなかったとしても、大切なものが溢れ落ちてしまうかもしれなくても……手は、あの時既に取ったんだ」

 

 

 あの時、あの公園で、あの人に出会った。

 手はもう取っている。死んでもなお、忘れる事はない約束(呪い)だ。忘れちゃいけない偽りの無い()いはもう結んだ。

 

 だから……

 

 

「──()()、あの人が目指した夢を信じるよ。貴方とは行けない」

 

 

 あの人が通る筈だった道を進む。

 それがもう、俺が進みたい道になったから。

 

 

「……そうか」

 

 

 夏油さんは皮肉にも悲しい顔で笑った。

 今にも泣きそうな顔で、笑いながら告げた。

 

 

「私は君が羨ましいよ」

 

 

 どうしようもない自分を呪うように嗤い、背を向けて新宿の人混みに紛れるように歩き出す。ここで逃がせば、多くの人間が死ぬ。見逃すのは甘過ぎる話だ。心を鬼にして、両手を合わせる。

 

 

「領域──」

「ヒロ兄さん……?」

「っっ……」

 

 

 だが、それも出来なかった。

 呪術は秘匿のものだ。ここまで大通りでは使えないし、領域展開をして閉じ込めても、後ろには三人がいる。(うるる)はともかく、二人の前で殺しをするべきでは……

 

 

「……クソッ」

 

 

 考えが纏まらず、引き留めようと手を伸ばそうとした時には既に夏油傑の姿は人混みに紛れて消えていた。選択肢を誤った。無理矢理でも拘束しておけばよかった。

 

 伸ばした手はダラリと下がり落ちた。

 私はまた間違えたのだ。結局、何も見れていなかった。

 

 ただ、あの時止められなかった自分を今も呪っている。きっと、笑い合えた未来があったはずなのに。

 

 

 荒夜緋色はまた、間違いを繰り返した。

 

 

 

★★★★

 

 

「………っ」

 

 

 気が付けば私はベッドの中にいた。

 背中はべっとりと汗で滲んで気持ち悪い。窓を開けると涼しい風が部屋を吹き抜ける。

 

 

「?」

 

 

 左手が上がらない。

 目を向けるとそこには私の手を掴んで眠っている美々子と菜々子の姿があった。一応、まだインフルの菌があるからあまり部屋に入らないように言っていた筈なんだけど。

 

 

「インフル移るよ……全く」

「少し魘されていたからね」

「マジ?」

「マジ」

 

 

 パックの返答に軽く驚きつつも、2人に毛布をかけて、枕を床に置いて倒れさせる。汗ばむパジャマを脱いで、別のパジャマに着替え直し、ベッドに座る。

 

 

「……この子達を救えたのに、あの人は救えなかった」

 

 

 夢の事を思い出した。

 あの時どうすればよかったのか今でも悩んでいる。その呟きにパックが答えた。

 

 

「全部は救えないよ」

「……けど、救えたかもしれなかっただろ?」

「後悔したって変わらないさ。君は人間だ。神様なんかじゃない。いくら卓越した存在でもね」

 

 

 どこまで行っても、人間が出来ることは限られている。知識があっても心までは理解できない。だから間違えた。

 

 

「……やれる事をやるしかない。パックはそれが答え?」

「やるだけ全力でやって、無理だと分かったなら後悔はしないかな?」

「……そう」

 

 

 呟いた納得は窓から吹く風の音に掻き消される。

 きっと、後悔したくないから全力で護ろうとするのだろう。自分勝手に誰かを救えたらと思っていたのだ。

 

 

「……あと、二年か」

 

 

 高校生になるのにあと二年。

 それまでに、私が出来る事をするだけやってみて、後悔しない。

 

 それが、今私がすべき事なのだろう。

 とにかく頑張ってみよう。出来る事を増やして、領域展開を完璧にして、呪霊を祓う装置を生み出す。

 

 やる事は山積みだ。

 けど、そんな忙しい日々も嫌いじゃない。

 

 

「あー、暑い」

 

 

 また夏がやってくる気配がした。

 呪霊が蛆のように湧く、予兆が聞こえた気がした。

 

 

 

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