最強になる必要はない。最強を創れればいいのだから。 作:アステカのキャスター
「うっし、やるか」
「殺す気で来なよ」
交流会が終わり、結果は東京の勝ち。
五条のルーティーンが嫌いという理由からくじ引きで選ばれたサッカーも負けた。誰がイナズマイレブンを再現しろと言ったのか真希の無双で幕を閉じるはずだった。
荒夜は五条に対して直接対決を申し込んだ。
正直な話、荒夜の研究は今はあまり進んでいない。呪霊に対する抑止力に関しては最近目処がついてきた反面、最強になるという目標が未だに達成出来ている気がしない。
現在の自分と現代最強、その差はどれほどあるのか。
それは五条自身も興味があったらしく、二つ返事で受けてくれた。とはいえ、色々と条件が付けられての戦闘。二人が全力出力で戦闘などすれば東京に壊滅被害を及ぼしかねないとの事。
という訳で過去に作っていた条件付きの帳を十枚張り、五条悟と荒夜緋色が出られない代わりに全ての人間が出入り可能という縛りで森全体を覆った。
勝敗は意識を失うか、お互いのどちらかが参ったというまで。
「……烏めっちゃ飛んでね?」
「冥さんが吹っ掛けたっぽいよ?御三家や有名な家の所に」
「いつか殺されますよあの人」
「冥さんそう言う所キッチリしてるし」
禪院家から連絡があったのはそのせいかとため息を吐いた。こんな事、滅多にないからだ。御前試合は学生でしか行わない。特級同士の戦い、単独で国家転覆が可能な術師の対決は早々お目にかかれない。
「殺したらすみません」
「ははっ、言うね」
開始は体術から始まった。
効率のいい呪力強化による取っ組み合い、強化率はほぼ互角。呪力操作は荒夜も得意としているが六眼を持つ五条がその先を行く。だが体術だけ言えば荒夜は勝るとも劣らない。お互いに手加減無し、殺すつもりでの戦闘。
五条の拳をいなし、荒夜の拳が五条の無下限に触れる。
ビタッと止まる拳に術式反転で分解し、無下限を貫通する。
「おっ」
「チッ」
一秒。無下限に触れてから分解出来る時間。
以前荒夜は五条の無下限を術式反転で貫通した事がある。この時思った事があった。無下限に使う呪力の分解は無限級数の処理に何処まで止まるのか。
特級呪具『天逆鉾』がいい例だ。
アレは術式の強制解除という術式が刻まれている。術式に触れたら術式は消えるが、無下限は触れられない無限級数の概念を持ってきている。触れられないはずだが、展開している術式には触れた扱いとなっている。荒夜の虚式膜は呪力を分解するとするなら『天逆鉾』と虚式膜のどちらが先に消えるか。
呪力を分解するのが先か術式を解除するのが先か。それについて考えた事がある。
分解する攻撃、攻撃を止める無下限、その二つが拮抗した場合は術式を強く保とうとする方が勝つのだが荒夜の分解は呪力に作用する。拮抗した場合勝つのは荒夜だが、分解時間中、一秒もあれば五条は荒夜から離れられる。その一秒は致命的だ。
「(問題は、順転の自動防御に対してこっちは反転だ。分解して呪力を得ても割に合わないな。気をつけないとバテるのはこっちが早いな)」
「『蒼』」
「っと」
引き寄せられた瞬間、虚式膜を張り自身の弾き飛ばされた場所への衝撃をゼロにする。虚構に向かうベクトルを分解し対応する。重力ではなく大気の収束だ。虚式膜なら対応可能。
「(無下限はやはり基点となる場所に引き寄せる力を発揮する。引き寄せは二次災害。呪力を然程得られない)」
五条悟が最強たる所以はその効率の良さにある。
無下限をほぼ出しっぱなしに出来るのは術式の性能の高さ、呪力の質、六眼の呪力操作が相まっている。その上『蒼』を用いた順転術式の効率の良さから最小効率で最大限の術式効果を発揮できる。
無下限の強化。
虚構を作るという事は分かりやすく言えば擬似ブラックホールを作っている。空間に負の数を作る事により引力のような虚構を作る。空いた虚構に対して物質は虚構に向かって圧縮される。それが『蒼』の正体。
「(蒼を消すにはその虚構に触れなきゃ意味がない。いちいち虚式膜で防ぐより呪力の流れを辿って躱した方がまだ効率がいいか)」
言うは易し。簡単には不可能。
呪力分解で攻撃してきた術式から呪力を奪っても先にバテるのは荒夜だろう。『蒼』に対抗出来るだけでは最強の戦法を崩すに至らない。呪力効率、操作力、総量は六眼など才能に依存している。
独力で至れる領域に五条悟は存在しない。
だからこそ笑う。戦闘狂という訳ではないが、この瞬間が何処か愉しいと思う自分がいる事を隠さない。
「やっぱ最強は伊達じゃないな」
「そりゃ当然さ。まだまだ僕は負ける気ないよ」
「そのニヤついた顔はとりあえず殴る」
「おー怖っ、やってみなよ」
トランクケースから呪具を二振り。
重さを考慮した上で今回呪具は最少だ。入れている呪具はそこまで多くないが、どれも五条悟に対応出来る呪具である事に変わりはない。どちらも長剣でそれほど特殊に見えない呪具だが、荒夜は一瞬で距離を詰めて剣を振るった。
「っっ!?マジっ!?」
ギャリギャリギャリ!と無限が削られるような違和感を感じ、一瞬足が下がった。
「チッ、惜しい」
無限を破るというよりは中和しているような感覚。
偶に組み手をする雨の無下限破りと同じようなその違和感。六眼はそれを原因を直ぐに導き出した。
「領域展延を付与した刀か…!」
「苦労はしたけどな。この剣なら順転の防御は崩せる」
単純な無下限なら効果はある。
無限破りの方法は主に三つあるが、領域展延が一番効果がある。必中必殺の概念でなくても術式には容量がある。その容量をわざと開けて敵の術式に割く容量に流し込む事で術式を中和するのが領域展延。
順転を崩すだけの正の呪力で殴る方法もある。拳などでアウトプットすれば出来なくはないが無下限に正の呪力が通じるか未知数である事、そして効率が最悪なので用意したのが、呪力を流すだけで領域展延を自動的に発動出来る名刀『天狼牙』。五条にも有効ではあるようだ。
「いやそれ僕に刺さったらどうすんの!?」
「死なねえだろ五条さんなら」
「うっわー嫌な信頼…っぶね?!」
無限に触れさせずに距離の圧縮によって空に逃げる。
術式の中和に対して流し込まれないように強く保てれば問題はないとはいえ、荒夜の手段や手数の多さが未知数。下手に術式を弱らせる意味はない。
「まあ、近寄らせなきゃいいだけの話なんだけどね」
「っっ!」
順転『蒼』の並列起動。
浮き上がった木々が槍のように飛んできた。気軽に天災を起こせるだけの術式、無下限に対して右手を突き出してそれを放った。
「極ノ番『波旬』」
飛んできた木々を万滅の光で一掃。
威力だけなら五条よりも高い出力を引き出せる荒夜の奥義が全てを塵に還すが、五条の前で『波旬』は動きを止めた。それを用いても無限は破れないことは計算済み。
「いいよ、テンション上がってきた。術式反転『赫』」
「っっ」
無限の発散。
虚式膜で力のベクトルを分解するが、虚構に触れなければ呪力を得られない。『赫』は作り出した虚構から外に押し出される。何もない場所から突如りんごが現れたらそのりんごは空間を押し除けて出現する。それを指向性を持たせて放つのが『赫』。破壊力は蒼の二倍。
虚式膜がある為、効かないにしても呪力の差が浮き彫りに出てくる。
「(無下限呪術は俺と相性が悪過ぎる。使い手が別なら話は変わっていたかもしれないけど)」
現代の最強は伊達じゃない。
五条悟だからこそ相性が最悪。これは覆せない事実だ。最強と万能の戦いは加速していく。
★★★★★
烏から映し出された映像を見ていた京都組と東京組、先生達は目を疑っていた。五条悟が最強である事は理解していたが、それに勝るとも劣らない荒夜の立ち回り、万能である事は知っていたが、此処まで強いとは歌姫でさえ思ってもいなかったようだ。
だが、客観的に見てもどちらが有利不利かは明らかになっていた。
「やっぱ荒夜の方が不利そうだな」
「そりゃ相手が悟だしな」
荒夜の虚式膜は時間制限ありに対し、五条は自己補完の範疇に収まっている。つまり戦い続ければ持久戦で荒夜が負ける。
「でも荒夜さんも無傷で互角なんじゃ」
「確かに体術や呪力の扱いなら悟に引けを取らないが、基礎性能が違い過ぎる」
「五条さんが遠距離から攻め続ければ負けるのは荒夜の方だな」
「やはりマスターが劣勢を強いられてるな」
確かに乙骨の言う通り、二人に外傷はない。
互角ではあるものの呪力量、術式の性能、呪力操作、六眼、あらゆる所から差が出ている。むしろ追い縋っている方が称賛される程の状態だ。呪力量は中の上程度である荒夜では基本性能で五条を越えられない
「勝てるとするならやはり領域か」
「閉じない領域、確かに見たけどあんなのあり得ねえだろ」
「そんなにか?」
真希は呪力を用いない為、その事実に首を傾げるが日下部はあの時見たその神業を見てもあり得るはずがないと思い続けるほどに不可能という認識が強い。
「ああ、あり得ねえ。器が無ければ水は溢れるのと同じ、キャンパスが無ければ絵を描くことが出来ねえのと同じ、とにかくあり得ねえんだけどなぁ」
「金ちゃんからしても?」
「無理、結界を多少動かしたりすることは出来ても領域を結界無しで具象化は無理だ」
「現に荒夜はやってるしな。イカれてる」
ある意味気狂いとすら言えるその神業。
実現していた荒夜に最初見た時は観戦した全員が目を見開いた。あの五条ですらそれが出来ないと言わしめた結界の精度。勝てるとするならそこしかない。
「来るぞ」
★★★★★
無限の攻略法は主に三つある。
一つ、無限を破るだけの専用呪具を作るか。
二つ、術式を切り、領域展延を使うか。
三つ、これが一番単純かつ効果のある方法。
下手な小競り合いに意味はない。そんな事をしても負けるのは目に見えている。二振りの呪具を腰に据えて荒夜は両手を合わせて掌印を結ぶ。それを見越した五条も地面に降りては指を組んだ。
「「領域展開」」
【創始再編式】対【無量空処】
緋色の銀河が無限の世界と衝突し、必中の奪い合いが始まる。
一瞬でも気を抜けば必中が奪われて領域の効果が片方に襲いかかる。領域の中で戦闘を始める二人だが、荒夜が苦悶の顔を浮かべる。
「(結界の精度がクソ高い……分解じゃなければ押し切られてたな)」
緋色の銀河が無限の世界に徐々に飲み込まれていく。領域内の戦闘でも無限は消えない。発動し切らなければ領域展延は使えない。術式反転の分解では焼け石に水。領域内では五条の方が上、次第に五条悟の領域が荒夜の領域を潰す。
だが、それは結界内の話。
荒夜の領域範囲が結界の外に到達する。
「っっ……領域が!?」
閉じない領域、対象を逃す縛り。
範囲が拡張された荒夜の領域は閉じた【無量空処】の外殻に作用する。領域展開の弱点、領域にわざわざ侵入する意味などない為、閉じた結界は
荒夜の【創始再編式】の効果は二つ。
一つは作り出した呪具の攻撃の必中化、そしてもう一つは分解を重きに置いた呪力殺し。呪力で構成された術式、呪具、そして結界は荒夜の前では等しく分解される。
領域展開の衝突から36秒。
五条悟の領域が──崩壊した。
「あはっ」
領域展開後、術式は焼き切れて使用不能となる。
五条は無下限呪術を使えない。荒夜は領域の設定を切り替えて懐から『黒雷』を握り撃ち始めた。分解に重きを置いた領域では呪力消費が激し過ぎる上、五条を殺すわけにもいかない為、自身の呪具に対しての必中に切り替え、臓器や重要部位を外しながら撃ち続ける。
「っ、ぐっ…痛っ……!!」
「さっさと降参してくれませんかねっ!」
すぐさま五条は反転術式で回復。
だが必中は消えたわけじゃない。分解した呪力と設定を切り替えた事によりあと三分までは展開し続けられる。仮に逃げたとしても術式込みなら荒夜の方が早い。
「シン・陰流『簡易領域』」
必中を避ける弱者の領域。
必中に対してすぐさま回避するように展開した簡易領域。だが、展開した簡易領域に対して荒夜は首を傾げた。
「? その程度で防げると思う?」
圧倒的な速度ですぐさま剥がされる。
バリバリバリッ、と簡易領域が消えては必中を取り戻す。『シン・陰流』の術はあくまで弱者が対抗する為に考案された術が多い。両面宿儺などが使える閉じない領域や圧倒的に洗練された領域には時間稼ぎにしかならない。
「魔眼起動」
「っっ!?」
荒夜が此処で畳み掛ける。
束縛の術式を内包し、呪具化した瞳が五条の動きを止めた。簡易領域で必中は逸らしてもこの魔眼は見たものを束縛する。簡易領域も剥がれて動けない五条に荒夜は新たな術式を刻んだ。
「術式刻印『
「っ、それヤバ──」
仮想の質量の圧倒的な破壊力。
体術に対してこの術式に乗せられた質量に防いだ腕が容易く折れ、五条は木々を折りながら吹き飛ばされていく。
「ごっ、がぁ……!」
「逃さねえよ」
荒夜の蹴りが吹き飛んだ五条を領域の中心まで蹴り飛ばす。質量の破壊力に逆らえずに反転術式を使い続けてもダメージが残る。分解を使える殺し合いであったのなら、荒夜が勝っていたかもしれない。
「術式無しでもアンタは強いが、この状況なら私の方が上だ」
弾き飛ばした場所に無数の遠隔式神。
真希や秤と同じ。放電による気絶を狙い荒夜は術式を発動した。
「呪法『雷天』」
「っ──!!」
轟音、目に見えるほどの雷光。
圧倒的火力が至近距離で音よりも速く、五条悟に炸裂した。
「これで決まれば楽なんだけどなぁ」
バチバチッ、と目の前で帯電する音が聞こえた。
肉が焦げたような臭いが鼻に届いた。
あれだけの放電。人が即死しかねないほどの電圧。幾ら呪力強化で肉体を底上げしても無視出来ないほどの圧倒的火力をぶち込んだというのに。
勝鬨は上がらない。
「っ、はぁ……! っぶねぇ……!」
「どうなってんだよアンタは」
五条悟を下すには足りなかった。
あれだけの火力で何故意識を失わないのかという僅かな疑問は目の前の光景を見て直ぐに理解した。
「『落花の情』か」
「正ッ解!」
必中で張り付く式神に対して呪力を纏い、自動でカウンターを施す御三家の秘伝。五条悟は『落花の情』と同時に脳内に反転術式を掛け続けて電圧を凌いでいる。並列で行えるだけの精密な呪力操作に舌を巻く。荒夜も出来なくはないが、並列で行う場合はどうしても発動が遅れてしまうというのにそれを戦闘中に行った。
五条悟の領域崩壊からから131秒。
「あー、しんどっ」
五条の術式が回復した。
無限による高速移動により、領域範囲の外へ一度離れられた。
「チッ、もう回復したのか」
「……今のはマジ死ぬかと思った。まさか領域で負けるとはね」
領域の外に出ればいずれ呪力切れを起こして術式が焼き切れた荒夜は確実に負ける。勝利は確実だ。
だが、それは雑魚の思考。
領域展開に対して敗北を認めたと同義、如何に技量が超えていようが何も出来ずに逃げる事しか出来ないと認めてしまうのは癪だった。現代の最強としての意地と自負を持って告げた。
「それ、ぶっ壊してやる」
緋色の銀河を破壊する。
領域に付与された術式は意味をなさない。仮に緋色の銀河を攻撃しても領域は消えない。閉じない領域を実現させた荒夜から受けた勝負から逃げずに再び掌印を結んだ。
「っっ!?」
「領域展開」
急接近からの領域展開。
領域が荒夜を包み込み、閉じていく。無量空処との必中の奪い合いを悟った荒夜は領域の設定を分解に変更。領域外から分解すれば先に五条悟の領域の方が崩れ去る。
だが……
「仕切り直そうか」
「なるほど、分解されないように条件を変えたかっ!」
必中が更に強くなった。
対外の結界の条件を変更。外からの攻撃に強く中からの攻撃に弱い領域設定。結界の外殻の分解が今まで以上に遅い上に強固すぎる。
「(範囲を狭める縛り、領域内での術式の発動を不可能にした縛りで必中効果を更に引き上げたのか。確かにこれなら外殻を分解し切る前に当たる)」
五秒もあれば外からの分解より早く【無量空処】が荒夜から必中を奪う。リスキーな賭けに出た五条の策略は最良の選択である。先に当たれば無量空処の効果で領域の維持も難しくなるだろう。
だがそれは……
バキバキッと領域が嫌な音を立てて分解されていく。
「はっ?」
五条は呆気に取られた声を出した。
縛りの条件で強度を増した五条の領域が先程よりも早く再び崩壊する。
「私の分解は、分解したものから構築理論を知る」
構築の反転は分解。
いくら構築術式が構造を知らずともある程度の知識があれば作れる術式であろうと漠然とした物は識らなければ作れない。作る物質の一定以上のプロセスは必要だ。その逆であるならば、分解したものから構造理論を逆算し知る事が出来る。
「二度同じものが出たなら、分解時間は短縮される」
知らないものの分解より知っているものの分解は遥かに簡単だ。
「両手両足を奪わせてもらう」
五条悟の四肢の付け根が分解された。
すぐさま反転術式で治すが領域にいる間は分解から逃れられない。そして分解している今なら五条悟の肉体の分解から呪力を得られる。本来なら即死も出来る以上、勝負自体は勝っている。
「っっ、『簡易領域』」
反転術式と簡易領域の併用。
繊細な術式を同時に行える技量には素直に称賛する。しかし……
「
二秒。簡易領域が剥がれた。
分解から呪力を得ている荒夜の領域は未だ解けない。分解は呪力に作用する為、『落花の情』の自動防御でも防げない。簡易領域が展開されても次は一秒も掛からないだろう。
「(しかもご丁寧に全体の分解から僕個人の分解に設定し直してる。此処まで細かく指定する事は僕でも無理だ。呪力の消費を抑えるためとはいえ結界術の精度が此処まで強いなんて)」
夏油傑を乗っ取った呪霊の結界術。
個人指定の結界効果を使う事で呪力の消費を防いでいる。五条悟の【無量空処】は引き摺り込めば確実に必中を与えてしまう。触れている人間ならまだしも、触れていない人間に必中を付与する事が出来ない。
「簡易領域」
再び必中を回避するべく発動する。
「だからそれじゃ意味も……はっ?」
一秒で簡易領域は剥がれ、無限が分解を一時的に阻んでいる。術式が焼き切れ、回復する時間は領域の展開時間に比例するが幾ら何でも早すぎる。
「(どうなってる…術式が戻ってやがる……!?)」
反転術式では焼き切れた術式の回復は不可能。
故に荒夜は新しい術式を外因的に刻む事でそれを補う事が出来ていた。冷却出来ない装置のサブとしての装置を持ってくる事で回復するまでの時間を稼ぐ事が出来る。
だが、それが出来るのは荒夜のみ。
例外を除いてそれを補う事が出来るはずがない。術式の焼き切れは簡単に言えば脳の一時的なオーバーヒート。壊れているわけではなく、正常に戻すための措置であり、怪我を治すとは訳が違う。
だとするなら、なぜ術式は回復するのか。
術式が使えない状況で行える術式の戻し方。それに気付いた荒夜は絶句する。
「脳を破壊して焼き切れた術式を!?」
一度だけ考えた事はあったがやった事はない。
術式が刻まれている脳を破壊して反転術式で再生。術式を使える装置を一度破壊して回復させる事で焼き切れた術式をリセットするなんて脳に多大な負荷がかかる。だがそれでも確かに理には適っているし、術式が回復出来ても不思議ではない。
だが脳と術式はブラックボックス。怪我の修復とは訳が違う。
「それ、リスク高いだろ…!」
「領域展開」
五条悟、再び領域展開を発動。
結界は荒夜の領域を覆うほどに巨大に展開される。外殻を分解してしまうなら覆うほどの大きさにすれば外殻に分解を届かせないで済む。だがこれほどの大きさだ。領域範囲から逃れても内側から必中を奪われたら意味がない。
「これじゃ精度は下がるし、内側の必中は私の方が上だ」
「だからお前を先に倒す」
蒼による引き寄せ。
領域展開中の必中の押し合い、呪力消費量が膨れ上がる。だが一瞬で領域の必中を押し付けなければ領域は内部からでも分解していく。精度が下がった分、必中を完全に奪えるのは荒夜の方が早い。
だが、それは荒夜が領域内の戦闘に不利に立たなければの話。呪力総量から領域内で自身の術式を用いない荒夜に対して五条悟は特攻を仕掛ける。
「10秒もあれば充分。ボコす」
「っっ!がっ……!?」
蒼の並列起動。
領域に呪力を割いている分、虚式膜まで使えば呪力があっという間に底をつく。領域展延での無限攻略の前にこの引き寄せが厄介過ぎる。領域展延の刀『天狼刃』で対応するが、体術が押されている。
「ごっ……!」
殴り飛ばされたと思った瞬間、引き寄せられて拳が腹に突き刺さる。血反吐を吐いて吹き飛ぶ。『天狼刃』も引き寄せで手放してしまった。領域が維持できないレベルのダメージではないが、これ以上優勢に進まれると領域が壊れる。すぐさま体勢を立て直し、呪力を練り直す。
「っっ、シン・陰流『五行界』!」
シン・陰流『五行界』
簡易領域の改良結界。領域に術式付与した以上、結界術の併用は可能なのは知っている。ただし、いくら改良したと言えど展開した『五行界』では時間稼ぎにしかならない事を知っている。
だが、荒夜にとって数秒も稼げれば充分だった。
領域内で起きた異変を五条悟は感じ取る。
「(っ、なんだ!? 領域内の必中がオフになった!?)」
縛りによる設定の変更。
五条悟の【無量空処】内部の必中を受ける代わりに領域の範囲を更に広める。覆っていた五条の領域の外殻に触れ、再び外殻の分解が起きる。領域内で起こる必中は『五行界』で回避。
分解は既に二回行われた
外殻に触れさえすれば数秒も掛からずに【無量空処】は崩壊する。
「ははっ……!」
「っ、ああああああっ!!!」
五条悟が【無量空処】の必中を当てるのが先か、荒夜の【創始再編式】が外殻を破壊するのが先か。領域内での戦闘が続き、近接戦闘では荒夜が押されている。
三度目の領域展開。
バキバキッと結界が割れる音が聞こえては弾けた。
「クソッ……マジかよ!?」
「これで五分、仕切り直そう」
二人の領域が──崩壊する。
「(クソッ…!展延も無しの戦闘だと維持出来なかった!焼き切れ対策の刻印も……!)」
お互いに術式が焼き切れて使用不能。
シン・陰流『五行界』展開中は生得術式を使えずに、術式刻印が間に合わなかった。お互いに術式無し。荒夜は反転術式では焼き切れた術式を回復出来ない。それに分解する事で呪力を得れる荒夜の領域がない今、反転術式に使う呪力すら今は惜しい。
「ぐっ……」
此処で呪力量の差が浮き彫りに出る。
二人の拳が加速していく中、殴られているのは荒夜の方が多くなっていく。そして、領域の展開時間に比例して術式の回復も長くなっていく。今まで領域を拡大し続けた荒夜と領域展開をしてからすぐに崩壊させた五条では術式の回復は……
「術式反転」
五条の方が早い。
「『赫』」
「っ、やばっ──」
無限の発散をモロに受けて数十メートル吹き飛ぶ荒夜を五条は逃さない。荒夜の術式は未だに回復していない中、五条は更に掌印を結んだ。
「領域展開」
「っぁ……」
四度目の領域展開。
その回数に目を見開いて手を合わせるが、反転術式を施した時間の差で僅かに五条の方が速い。五条悟の領域が荒夜の領域展開よりも速く襲った。
「【無量空処】」
荒夜に必中が当たる。
無限回の強制が始まり、荒夜の動きが完全に止まる。たった一秒の領域展開、荒夜の約二年半の生きる行為の経験が脳を圧迫した。術式効果は複雑で『落花の情』では防げない。領域の掌印をしたまま荒夜はただ意識を失うことしか出来ない。
「────」
領域展開から36秒。五条悟の領域が解かれる。
瞳孔が開いたまま動かずにただ立ち尽くす荒夜に五条は近づいた。
「……これが殺し合いであったなら君が勝ってたよ。荒夜」
立ったまま気絶している。
これでは意識を失っているか分からないため、額を押して倒れさせようとしたその時だった。
「残心って知ってる?」
「はっ?」
黒閃。
五条の顔に突き刺さる拳に黒い火花が微笑んだ。術式は焼き切れて使用不可の中、気を抜いた分の隙を荒夜は見逃さなかった。
「っ〜〜!!」
「ちっ、当たる瞬間に呪力全振りで対応したか」
「このルッキングガイな僕の顔を……!」
「言ったろ。そのニヤけ面は殴ると」
荒夜は『無量空処』を間違いなく食らっていた。
必中の感覚は間違いなくあった。なのにどうして動けているのか。意識の回復が早過ぎるというよりも、必中で当たっていたはずなのに効いていない事に目を疑った。
「……っ、間違いなく当たった筈だろ」
「ああ、必中は受けて術式効果は当たった」
【無量空処】は無限回の生きるという行為の強制。
知覚情報を加速させて脳に多大な情報を送り込んで圧迫させる。言ってしまえば食らって損傷を受けるのは脳。大量の情報を送り込んで処理落ちさせる術式。何度も分解している為、そこは理解出来ている。
「領域を広げてたら間に合わないから、私は全神経を使って
あの瞬間、荒夜は領域展開を肉体内で発動した。
必中が当たれば領域の維持は絶対に不可能である為、荒夜が術式を底上げする為に用いた賭け。領域を敢えて広げずに肉体内で完結させる事で術式の底上げを可能とする縛り。
「無限回の強制の影響を受けるのは脳。だから体内で領域を展開して脳の保護と、術式の底上げで無限回の強制に用いた呪力を分解し無効化する」
「っ………!」
必中に対して術式で守る。
それ自体は不可能な話ではない。だが虚式膜だけでは複雑な効果を持つ【無量空処】の必中には対応し切れず、必中の強さから虚式膜を貫通する恐れがあった。領域展開に於ける術式の底上げで虚式膜の強化、必中を受けても脳に当たるまでの体内で分解し切る。
領域展開を肉体内で完結させる事によって呪力放出の起こりをギリギリ欺けた。こんな前例がなかったからこそ五条悟を誤魔化せたに過ぎない即興ではあったが。
「すっげえ無茶じゃん」
「出来るか不安で賭けではあったが私は勝った」
結界術に秀でた荒夜の経験からの咄嗟の即興。最強はその所業に笑い、認めた。
荒夜緋色は天才──そして此方側に来ている事に。
「けど、術式は当たったならより強く必中を取り戻せば当たるって事だろ。次は確実に当てる」
「やってみろ最強」
荒夜の呪力は残り三割。
分解から得た呪力総量は心許ないが、それでもお互いに敗北を認めない頑固者。掌印を結び、再戦に走る領域勝負。
「「領域展開」」
外殻に触れさせなくとも三度も分解した以上、内部から呪力を分解して領域を喰い潰せる。呪力を得れても根こそぎ持っていかれる為、虚式膜の応戦が出来ない。領域展延を発動し、五条の無限に対応するが領域内での戦闘のアドバンテージは……
「っ……!?がはっ…!!」
五条の方が大きい。
呪力量の差、術式の性能の差、そして生きた経験の差。領域展開中に起きる身体能力の底上げでさえ五条と荒夜では比較出来ないほどに変動している。
此処が荒夜の術師としての限界。純粋な勝負で追い縋れているだけ奇跡と思わせるほどに五条悟は強すぎる。
「っ、と!」
「展延じゃキツイな……!」
領域展延の戦闘は術式を使える五条に対して不利過ぎる。
押されれば押されるほどに荒夜の必中が維持出来なくなる。そして五度目の領域対決。
「ぐっ……!!」
「あははっ!やるじゃん!!」
二人の領域が同時に崩壊する。
呪力を拳に纏い、再び近接戦闘が始まる。傷が多く、反転術式を使わずに対抗し続ける荒夜の方がやや不利。
「(条件は五分、此処で締め落とす…!)」
これで両者術式無しの勝負、条件は五分に戻ると思っていた五条は目を見開いた。
「はっ?」
六眼はハッキリと捉えていた。
荒夜から新しい術式の情報が浮かんでいた事に。
「術式が……!?」
「『
領域展開後の焼き切れは
術式は脳の前頭前野辺りに刻まれている。
領域展開後の焼き切れは反転術式では治せず、前頭前野を呪力で破壊して治す事で五条悟は焼き切れをリセットしていた。
荒夜が刻む術式刻印は生得術式が存在する右脳の前頭前野に刻まない。術式が焼き切れた場合、生得術式と同じ所に刻んだら術式が扱えない事を知った荒夜は左脳の頭頂葉に刻んでいる。
当然、今まで使っていた場所とは別の箇所からの操作は簡単には慣れず相性もある為、劣化になってしまう。右利きの投手にいきなり左で投げろと言っているようなものだ。それでも焼き切れた箇所とは違う場所である以上、領域展開直後でも荒夜は術式を使える。
「がっ……!?」
「領域展開直後なら私の方が……!」
九十九の『
ガクンッ、と追いかけようとした荒夜の膝が地についた。
「えっ……?」
力が抜けたように膝をついた。
眩暈と息切れ、多大な汗が体から溢れた。
無意識だったが、領域展開を何度も使い続けて反転術式や術式刻印を併用した戦闘。呪力量の底が見え始めた。その上で負荷が尋常ではなく身体に掛かっている。
「(もう領域を展開できるだけの呪力が……)」
呪力量の差が此処で浮き彫りに出る。
対呪霊戦であるなら五条よりも有利かもしれないが、対人の殺す事を禁じられた戦いでは勝てない。五条の肉体や領域の分解から得ていたからこそ追い縋れたこの状況も終わりが見えた。
「っっ……クソが!」
領域展開の予兆。
荒夜は素早く掌印を結び、対領域の結界を構築する。
「空性結界『六道公殿』」
「【無量空処】」
『シン・陰流』の簡易領域や五行界では必中を逸らせない事を見越した荒夜は素早く対領域の屋城型結界を展開する。一瞬早く展開出来たおかげで術式効果は逸らせたが、根本的解決にはならない。
「流石……結界術なら僕より上だね。けどそんなもので次の攻撃にどう対応する?」
必中を中和する事を可能にしたが、複雑な結界展開中は生得術式を使えない。対して領域展開をした五条は使い放題。『赫』は既にこちらに向いていた。結界から弾かれれば【無量空処】の効果が作用する。かと言って避けた所で結界を物理的に破壊される。
詰み、五条は『赫』を発動した。
無限の発散は荒夜へと向かい──消滅した。
「………マジ?」
「ハァ……ハァ……!」
術式の回復はまだ分かる。
だが、
「(どういう事だ……?此処まで複雑な結界術だ。生得術式を展開できるだけの容量なんてあるわけ)」
では何故?六眼はその原因を捉えていた。
荒夜が出していた二振りの内の一つが地面に突き刺さっている。
「成る程、
「バレんの早ぇよ……!!」
剣が刺さった所を基点に結界術の必中回避の付与。領域に術式を付与するように、必中回避を重きに置いた結界術の効果を付与。肉体ではなく剣に付与した自立型の結界を創り上げられている。
一つは領域展延を底上げする『天狼刃』。二つ目は刺した場所に結界術を展開し、必中と必中回避の二つの効果を引き出す『天結刃』。結界を自立させ、生得術式を使える容量を戻した。
対領域の場合は簡易領域や展延では生得術式の併用ができない。故にそれに対する弱点を潰す為に考案された対領域の切り札。元々メカ丸が使っていた簡易領域を内包する武具からそれを元に魔改造したのが『天結刃』だ。
突き刺さった場所を基点に必中回避の結界を自立させ、一定領域範囲の必中を完全に中和する事を可能としている。
だが……
「(もう呪力一割もねぇ…!)」
対して五条は少なくとも三割以上。
あれだけ領域を展開したのに何でまだ残っているのか。『六道公殿』も一分もすれば必中を奪われて無限回の強制が始まる。
「(せめて…領域は破壊してやる)」
領域から脱出する為、荒夜は両手を重ねた。
呪術を極める事は引き算を極める事、術式の発動に対しての時間の省略、掌印の省略をする事で呪術を戦闘に持ち込める。
「"冠位"」
これはその一切を省略しない
両手で維持される僅かな範囲の虚式空間に呪力が集中していく。構築術式は生産系で攻撃に向かないのが玉に瑕。呪詞などあるわけもなく、それに見合ったものは存在していなかった。
「"極光"」
なので荒夜は呪詞を作り上げた。
無限の可能性を持つ構築術式を理解した上でそれに見合う言霊を探し続けた。荒夜の攻撃は威力は出せても火力に物を言わせて込められた呪力は少ない。燃費最悪のこの術式に見合った戦い方ではあるが、それでは恐らく『無量空処』を破ることが出来ない。
「"開闢と終焉"」
構築術式。
それは可能性の開闢と同時に可能性の終焉。創造と破壊の二つを行えるこの術式は使い方によっては世界を滅ぼせる力を秘めている。例えるならそれは……
「"第六天魔王"」
冥府すら蹂躙する魔王の名。
出力150パーセントの厄災。呪詞は紡がれ、込められた呪いは右手の上で弾けて放たれた。
「極ノ番『波旬』」
万物を滅する破壊の光が領域を満たした。
★★★★★
轟音が帳から響いては映像が光に包まれて途切れた。
外に出て帷の張られた結界を見ると、内側から罅が入っていた。
「うお、映像が!?」
「烏が巻き込まれて死んだね」
冥が直ぐに他の烏を向かわせるが、肉眼で見てもその轟音から中の二人はどうなっているのか。考えたくもない程の被害が予測できた乙骨は顔を青くした。
「最後の帳に罅入ってんだけど……」
「一枚だけでも壊すのに苦労しなかったアレ?」
「十枚が一気に壊れたのか……末恐ろしいよ」
加茂は一度実験の為に付き合った事があったが、一級術師レベルでさえ全力で殴ってもビクともしない結界が十枚あった筈なのにそれが一瞬にして砕けた。荒夜の極ノ番は基本的に無限火力、被害を考えなければああなるのは知っていたが、目の当たりにするとやはり異常だった。
「うっ、わっ……」
「森が更地じゃねえか」
「二人とも生きてるよね!?」
森は跡形もなく消滅し、更地に変わっていた。
西宮が不安になって叫ぶが、烏が映し出した映像には二人の影が映っていた。
「あっ、よかった。二人ともちゃんと居る」
「流石にこれ以上は止めるぞ」
「止められるの?あの二人を」
「「…………」」
西宮の言葉に夜蛾も日下部も終始無言だった。
★★★★★
極ノ番『波旬』
森全体が更地になり、煙が湧き上がる中で二人は向き合って立ち続けていた。アレだけの攻撃でさえ五条は無傷。無限の防御は力任せでどうこうなる訳もなく、破壊出来たのは領域のみ。
「……驚いたよ。領域を無理矢理破壊するなんて」
「呪詞は元々禪院家から知ったんだ。まあ探すのに苦労したけどね」
「続けるかい?」
「いや」
ため息をついて両手を上げた。
「私の負けだ」
荒夜は敗北を認めた。
帳が破壊された以上、これ以上の戦闘は無理な上に荒夜にはもう呪力が残っていなかった。『波旬』は無限火力ではあるが、攻撃に乗っている呪いが薄い。呪いの質を高めた呪詞で攻撃の質を高めたが、効かなかった為無駄な話ではあったが、アレが最後っ屁で呪力を切らしていた。
「呪力がもうないし、あった所で『赫』の傷が思った以上に深い。これ以上やっても目に見えてる」
その上、直撃した『赫』の傷がまだ痛む。
肩が弾き飛ばされると思うほどの衝撃波をマトモに受けて意識を飛ばしかけていた。反転術式を使ってもまだ痛む。これ以上の戦闘は不可能だった。
「いや、マジの殺し合いだったら荒夜が勝ってた。正直驚いたよ」
「小細工の呪具で足りない差を埋めただけなのに?」
「最強になれないなら最強を創ればいい。そう言ったのは荒夜じゃん、見事君は僕に届いた」
疲弊から荒夜は地面へと座った。
呪力が無くなって気を失いそうな所ではあるが、流石に矜持があるのか気を失わずにただ座ってその言葉を聞いていた。
「僕に呪術師として勝とうって挑む奴は居なかった。けど、今日ので分かった。僕の隣に立てるくらいに強くなった」
わしゃっ、と頭を撫でられた。
こういう人だから本気で憎めない。人間としては最低なのに強さは本物、現最強に及ばずとも殺し合いなら負けていたと本人が認めていたのだ。僅かに頰が緩んだ。
「成長したね」
「……あー、クッソ悔しい。勝つつもりだったのに」
「まだまだ最強は譲らないよ」
そう勝ち誇っていた五条の鼻から血が垂れた。
両手を広げては、地面に寝そべって疲れたと愚痴をこぼしていた。
「つーか、僕も結構限界……」
「やっぱり?脳破壊からの術式回復は流石に……」
「脳の修復なら日頃からやってるし、一回だけだから問題ないっしょ。僕、最強だから」
「この後硝子さんに怒られるのが目に見えてるけど」
「それな」
あはは、と笑う二人。
この後、被害の事で夜蛾から拳骨を受けて家入から盛大に怒られた。
未だ最強にはなれない。
呪具をもう少しだけ持ってくれば勝てていたかもしれないが、術師としての限界は理解した。此処からは這い上がっていくだけだと荒夜は決意しては笑っていた。
※最終回ではありません
術師としての荒夜を書いたので。
今後はリクエスト頂いた物を作っていくぜ。