「すみません。」
紅白の目立つ巫女に話しかける。
「うん?」
彼女は、境内の掃き掃除を中断しこちらに目を移した。
「なにか用?」
「いえ、あの、人を探しているのですが…。」
「ふーん。どんな人?」
「性別は男性、こう、髪の毛がツンツンしていて、全体的に真っ白。右手に赤い刺青を彫ってています。」
ジェスチャーを混じえた説明をしていると、彼女は眉をひそめた。
「刺青って……かたぎの人じゃなさそうね。」
「あっいえ、……何といえばよいのでしょうか……。」
「……?」
明らかにハテナマークが浮かんでいる。どう説明したものか。
そう悩んだ後、口を開いたのは相手の方からだった。
「ま、いいわ。探しておいてあげる。」
「ありがとうございます。…お名前伺ってもよろしいですか?」
再び、眉をひそめる。何か変なことを言っただろうか。
「………博麗霊夢、よ。」
「博麗霊夢、霊夢さんですね。よろしくお願いします。」
お辞儀をし、自分でも再度探してみようと意気込み、鳥居へ向かう。
「…あなたの名前は?」
振り返り、名乗る。
「マシュ、マシュ・キリエライトです。」
ひたすらに歩いて、歩いていた。
ただ瘴気の波が渦巻くこの森を抜けるために、歩く。
木漏れ日すらも希望の光と思えるほどに寒い。本当に9月なのだろうか。
空気を吸うと、埃の混じった気体を吸った時のような苦しさを感じる。
息を吐くと、純粋な水素や二酸化炭素が抜け出ていくのを感じる。
瘴気が身体を蝕んでいくのを実感しながら歩き続ける。
「おい。」
肩がはねた。
振り返ると大きな黒い帽子を被り、いっぱいにきのこを詰めたカゴを下げた少女が立っていた。
まるで魔女。仮装かなぁ……そういえば、もうすぐ…………はろ、うぃん………。
視界が暗転する。
遂に瘴気にのまれたか………それとも。
混濁する意識の中、大丈夫か!という声が聞こえた気がするので、多分魔女(仮)さんが助けてくれるだむぐぐ。
なにか口に入れられ、思わず飲み込む。
「よし、帰るか。」
聞き捨てならない言葉を聞いて、起き上がり少女に詰め寄る。
「おいてくんすか!普通助けますよね!?」
「落ち着け落ち着け、ほら元気になったろ?」
「………あれ?ホントだ。」
「悪症消しのきのこ食わせてやったんだよ。……貴重なんだぜ?」
頭一つ下からの上目遣いが良心に響く。
「……ありがとうございます。それと、すいません。」
「いいってことよ。」
先程の表情とは打って変わってニカッと笑う。
「……そういえばあんた、里の人間……じゃなさそうだなぁ。」
どうやら人々が暮らす集落的なものがあるらしい。
「それは複数個あるんですか?」
「…いいや。一つだ。」
それを聞いて、内心ホッとする。
彼女は馬鹿じゃない、無駄に歩くことはせず現状安全そうな里で待機しているだろう。
「…なんですか?」
右手をジロジロ見てくるので問いかける。
「その赤い……なんだ、そのぉ……刺青か?それ。」
「え?ああ、これですか。契約の印みたいなもんです。」
「へぇ。」
興味があるのかないのかわからない返事をしてきた。
「で、こんなとこ歩いて一体何が目的なんだ?」
少し、当たりが強くなった気がする。こっちが素なのだろうか。
「人探しをしていましてね。」
「……どんなヤツ?」
「性別は女の子、こう、右目を薄紫色の髪で隠してて、おとなしい雰囲気。眼鏡をかけています。」
ジェスチャーを交えた説明を終えると、彼女は大きく頷いた。
「なるほど、探してやってもいいぞ?」
腕を組み、胸を張り、えっへんを絵に描いたような仕草をする。
「お願いします。…それと、里の場所を教えて下さい。」
「ん、そのまま真っ直ぐで大丈夫だ。十分もあれば着く。」
「ありがとうございます。ではまた。」
軽く会釈をし、再び歩き始める。
「あたしの名前は霧雨魔理沙だ!アンタの名前は?」
振り返り、名乗る。
「立香、藤丸立香です。」
「今日、変なやつに会ったんだよ。」
「ふーん、どんなやつ?」
「こう、髪の毛がツンツンしていて、全体的に白くてさ、右手に印が彫ってある男なんだけど…人を探しているらしい。」
「……?それどっかで聞いたな。…そういえば私のとこにも人探しが来たわ。」
「ほーほー、どんなヤツ?」
「右目を薄紫色の髪で隠してて、おとなしい雰囲気が出てたわね。眼鏡をかけた女の子よ。」
「うーん。これ聞いたな。」
「……それ多分ね。」
「……それ多分な。」
「おっと、先どうぞ。」
「どうも、その特徴ね私が会話してた女の子にそっくり…いや、本人と見ていいわね。」
「探されせている男とあたしが話した男も、同一人物だろうな。」
「……しっかし本当に変なやつだったなぁ、里の個数聞いてくるし、魔法の森にただの人間が策もなしに入ってきたり、初対面で死にかけだったぞ?この森のことを知らないヤツなんか幻想郷内にいるのか?」
「そりゃあいるでしょ。外側に住む人間よ。」
「はん、まさかなぁ?」
「目覚まし代わりになってくれたわ。二つのなにかが、侵入したと結界が教えてくれた。普通に幻想入りしてくれればこんな反応しなかったのに。」
「さてと、厄介事か、退屈しのぎにはなるよな?」
「知らないわよ。……もしかしたら危ないかもね。」
「あたし達が、か?そこまで強そうにはみえなかったけどなぁ。」
「私達が、じゃなく彼らが、よ。強引な侵入を奴が気に入るはずがない。」
「ああ…紫かぁ。」
「きっと、私達の会話も盗み聞いていたでしょうね。今すぐ行きましょう。」
「応ともさ。」
終わり方に難あり