高い城の鬼   作:サイデツキー

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1 黒歴史外来本

私は瑞木一家の姉だ。

優しい両親に10歳になる弟。

人里の中では普通ぐらいの家系に産まれた私は平凡な日常を送っていた。

 

私の趣味は読書だ。小遣いを貯めては、貸本屋の鈴奈庵で本を借りる事が私の楽しみだ。

最近はアガサクリスQ作の小説にはまっている。

新刊がいつも待ち遠しい。

 

今日は新刊が来てないか確認するのも兼ねて鈴奈庵に行く。

里の中央の道は人通りが多い。

通りを歩いていると、向こうから九尾が来るではないか。

数週間に一度、里へ降りてきて上げ豆腐を買うのだと言う。

人々は九尾の威厳に圧倒されて自然に道を譲っている。

ほんの少し九尾を見ていると、目があってしまった。

うわぁ、怖いなぁ、

私はそさくさと早歩きになる。

 

その次は寺の僧侶だ。一緒に買い物に来た毘沙門天と楽しげに話して

どれを買おうか選んでいる。

 

他にも子供を驚かせようとしている傘妖怪や、人形劇をやっている人形使いなどもいる。

 

そうしているうちに私は鈴奈庵に着いた。暖簾をくぐり、中に入る。

 

 

「いらっしゃいませー…あ、まさっちゃんじゃないの!新刊は無いわよ。」

 

 

そんなぁ…(´・ω・`)

 

私は小さい頃からここの常連だった。なので、小鈴との付き合いは長い。

私は借りる用事が無くてもよく鈴奈庵に行っては小鈴と雑談して楽しんでいる。

 

 

「~んでんで、この本はまた新しく入った外来本よ!」

 

 

小鈴はその本を持って笑顔で言う。楽しそうだ。

 

高い城の男?なんそれ、

 

 

「英語っていう言葉で書かれてるわ、でも正直内容が難解であまり面白くなかったわ。」

 

 

あらそう、この本はなんなの?

 

 

「あぁそれ!確かそれは外の世界の恋愛小説よ!」

 

 

恋愛かぁ、なんだかなぁ…

 

本を選びつつ、明日の用事、好きな小説、楽しみな事、読書の魅力、愚痴

色々と語り合った。

立ち読みしつつ、どの本にするか決めている。

そんでもってお小遣いが許す限り本を選んだ。

 

小鈴ちゃん、この本にするわ。

 

 

「五冊ね、値段はーーーーよ。」

 

 

私はがま口から銭を取り出す。

 

はい、これね。

 

 

「毎度あり~。」

 

 

じゃあねー、小鈴ちゃん。

 

 

「さようならー!」

 

 

空を見るとどよんでいる。これは雨が降りそうだ。

私は雨が降る前に家に帰るため、またも早歩きで帰っていった。

空の色が怪しいからか人通りは行きよりも少なかった。

 

 

「ひぃ~こりゃ降るなぁ。」

 

 

「いかんいかん、傘なんぞ持ってきてらんぞ。」

 

 

人々は急いで家に帰ろうとしている。

 

家まで後少しのところで小雨が降ってくる。

このままでは本が濡れてしまう!

私はついに走って家へ駆け込んだ。

 

 

「あら、お帰り。雨に濡れなかった?」

 

 

少しね、でも大丈夫だわ。服も、借り本も。

 

私は手で頭の水を払う。

横に置いた本を脇に挟むようにして部屋へ向かう。

ザザザザザっと雨が強くなっているのが分かる。

 

薄暗い私の部屋にある机に一旦本を置き、

座布団を持ってきて、姿勢正しく本を読む。

読書をしていると時間を忘れてしまうほど熱中する。

 

ふと肘をひっかけてブックタワーが崩れてしまう。

拾い集めていると、一冊だけ借りた覚えの無いものが挟まっていた。

「東方俺強伝」

と書かれた表紙が真っ白な手書きの本である。

中身は走り書きの小説である。

私は早速中身を読んでみた。

 

 

「俺の名前は白澤連夜、ごく普通の高校一年生だ。」

 

 

なんじゃこりゃ、これも外来本なのかしら。

正直言って完成度の高い小説を見すぎたせいで、相応的に低クオリティに感じてしまう。

うわぁ、痛い内容だぁ、これこそ男子にありそうな

俺つぇぇぇぇ!系というものなのか…

はっきり言ってクソ(ド直球)なのだが、逆に手が止まらないっ!

 

 

「うーん、ここは?は!まさか幻想郷?!」

 

 

んんん?

どういう事だ?これは外来人の体験談を書いた物なのか?

 

 

「私の名前は上白沢系音だ。よろしく。」

 

 

誤字ってる。見るに耐えないが好奇心は私の手を止めない。

私はなんだかんだ最後まで見てしまった。

恐らくこれは設定集なのだろう。一人称と三人称視点が入り交じっている。

 

 

「それは本当の自分なのか?真実に気づく必要があるのでは?」

 

 

「フ、かかってきなさい。私のスキマ能力を攻略できるのならね?」

 

 

恐らく使いたかったセリフを書き溜めたであろうページも出てきた。

うわぁ((、これは黒歴史ノートだぁ……

私は哀れみの目でそれを読み続ける。

この前医学本で見たことのある、共感性羞恥と言うものか…

 

コンコンコン

 

雨の中扉を叩く音が聞こえる。

 

 

「まさっちゃん!まさっちゃんいますかー?!」

 

 

小鈴だ。私はドタバタと走って玄関へ行く、

ガララ!っと勢いよく扉を開ける。

そこにいたのは傘をさした小鈴だった。

 

小鈴ちゃん、どうしたのよ?

 

 

「えっとね、実は欠陥本を間違えて棚に並べちゃってね、

その本がないからもしかしたらーってね。」

 

 

その本の名前はもしかして東方俺強伝?

 

 

「そう!それよ!」

 

 

分かったわ、ちょっと待っててね。

 

私は部屋にあるあの本を取りに行く。

そして、手にとって小鈴の所へ戻る。

 

はい、これ。

 

 

「いやぁ~ありがとう。それじゃあまた会おうね!」

 

 

さようならー

 

私は扉を締める。裸足だったので足裏の土を払い落としてから上がる。

 

 

「また小鈴お姉ちゃん?」

 

 

うん、そうよ。わざわざここにまで本を取りに来たらしいわ。

私が早く気づいていればよかったわ。

 

居間でくつろいでいる弟の智丸が話しかけてくる。

 

私はそのまま部屋に戻り、読書を再開した。

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