いつか天魔に棲む幻想 ~宮阪高校生徒会は幻想郷へと踏み入らん~   作:暁葵

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プロローグ ――彼方の幻想郷

 宮阪高校生徒会――ここにはあらゆる妖魔、神々を撃ち滅ぼす能力を持った少年少女が集っている。

 

 彼らは《聖地》と呼ばれる場所を基点に出現する妖魔どもからこの地を護る為にその刃を、拳を、魔術を振るっている。その「執務」は途轍もなく過酷で、時には己が実力を凌駕する存在と対峙することもある。

 

 だが、彼らはそんな存在にも打ち勝ってきた。

 

 そんな宮阪高校生徒会の本拠地――生徒会室にて、鉄大兎たちは平和に過ごしていた。

 

 彼らを阻んだ《預言》は新たに書き換わり、世界の終末は無に帰した。精々やることと言えば、この《聖地》に引き寄せられる魔を祓うことぐらいだ。今までの出来事に比べれば、拍子抜けするような平和ぶりだ。

 

 そして今日もまた、魔が襲い掛かる。

 

「うおっ!? 結構でっかい……けど、これくらいの奴だったら貂魔で何とか出来そうだな……」

 

 大兎は現在、自分よりも遥かに巨大な蜘蛛と蠍と烏賊を融合させたような醜悪な怪物の前に立っていた。

 

 普通の人間であれば一秒足らずで喰われ、素人だったら十秒くらいでお陀仏な代物だ。彼——大兎も最初の頃は腰を抜かして、何度も殺されていただろう。

 

 ――「何度も殺されていた」という言葉に疑問を抱くだろう。何せ人間は一度しか死ねない。

 

 しかし、彼は違う。彼は《最古の魔術師(ヴァンパイア)》サイトヒメアの《犠者》となり、七回までなら死ねるという《毒》が身体に宿っている。だから何度殺されても復活する、というわけなのだ。

 

 そんな実質的な不死身である彼は、右手から白い炎を生み出す。

 

 ――《貂魔(テンマ)の炎》。

 

 それは、貂魔と呼ばれる存在以外が触れると、一秒足らずで蒸発してしまう超高温の炎。本来であれば纏わせるだけで消滅する危険な代物だが、大兎が使うとそれは武器に変わる。

 

 彼の不死の力によって、最大六回は使用できるのだ。

 

 そんな《貂魔の炎》が宿った右手を思い切り怪物の方へと振り翳す。

 

 すると怪物は口から蜘蛛糸のようなものを吐き出し、大兎の動きを封じようとする。それを彼は横へと咄嗟に疾走し、回避する。そして思い切り床を蹴って、

 

「うおりゃああああっ!」

 

 と、その右の拳を怪物の胴体に思い切り撃ち込む。

 

《キアアアアアアアアアアアアアアアアア――》

 

 すると怪物はけたたましい断末魔を上げ、消滅する。

 

「うっし、とりあえず終わりーっと」

 

「お疲れさま、大兎♡」

 

 と、何処からともなくコーラを差し出してくるのは、薄桃色の長髪と真紅の瞳の絶世の美少女だった。

 

 彼女の名前はサイトヒメア。大兎にこの不死の呪いを与えた張本人であり、《最古の魔術師》と呼ばれる人外の存在だ。

 

 そんな彼女の微笑みに、大兎も笑顔を向けて、

 

「あ、ありがとな、ヒメア」

 

「おい雑魚。何を勝手に他人のものを飲もうとしている? それは俺のコーラだ。勝手に盗るな、蛆虫が」

 

「は? いやだってこれ……」

 

「そこの頭ふわふわ女が勝手に盗ったんだ」

 

「え、そうなのヒメア?」

 

「だって大兎は頑張ったんだよ? ご褒美を上げて当然じゃないの?」

 

 純朴なその真紅の瞳で大兎の顔を覗き込むヒメア。

 

「いいよ、俺はいらない。大した敵じゃなかったし、そこまで喉渇いてないからな~」

 

「飲みたくないの? ……大兎?」

 

 何処か寂しそうな目になるヒメア。大兎は困惑しながら、

 

「う~ん……まぁ別にいいけどさ」

 

 彼は蓋を開けてコーラを喉に流し込む。そして「ぷはぁ!」という声を零した瞬間。

 

「全くもってよくないッ!」

 

 という声と共に、大兎の腹が思い切り殴られ、彼は宙を舞って床に倒れ伏す。

 

 大兎を殴ったのは、紅月光。宮阪高校の生徒会長だ。彼の外観は一見すれば普通のイケメンなのだが、彼の横には一本の剣があった。

 

 ――凶剣(スペル・エラー)。あらゆる魔を切り伏せ、祓う魔剣。彼はその剣に選ばれた存在で、その実力は中々のものだ。

 

「お前、俺のコーラを飲んで許されると――」

 

 説教をしようとした月光だったが、一人の少女が生徒会室に入り、

 

「ねねねねねねねねねゲッコー! 買ってきたよおおおお!」

 

「やかましいッ!」

 

 月光は稲妻のような黄金の髪の少女に怒鳴り付ける。彼女はそんな怒鳴りにも動じず、片手に提げたビニール袋を机に置いた。

 

 彼女は安藤美雷。月光と契約を結んだ(インドラ)の末裔の悪魔だ。ちなみに余談だが、月光と美雷は正式な契約を交わした、まさしく「夫婦」と呼んでも過言ではない関係だ。

 

「ほらほらほらほら、ゲッコーの大好きなコーラも買ってきたんだよ!」

 

 月光は彼女のうるさすぎる言動を無視して、ビニール袋からコーラを取り出す。

 

 と同時に、またしても生徒会室の扉が開かれる。

 

「ただいまです」

 

「やっほ~大兎きゅん、ヒメちゃん、月光ぽん♡ みんなのアイドル、泉ちゃんだよ~」

 

「ったく、入る時ぐらい静かに入れよ」

 

 黄金の髪の優男と、青みがかった紫紺の髪の粗雑そうな少年と、髪を染めた短髪の少女が入ってくる。

 

 一人目の名前はセルジュ・エントリオ、二人目はハスガ・エントリオ。彼らは封・解呪師(スペルブレイカー)と呼ばれる者で、それぞれ封印と破壊の能力を持っている。

 

 三人目は碧水泉。この生徒会の中では唯一の一般人枠。魔術を使えないし特別な能力もない、平凡な女子高校生……だったのだが、実は彼女の脳内には時雨遥と呼ばれる大兎の幼馴染がいたり。

 

「おかえり~。で、お前ら何処行ってきたんだよ」

 

「カラオケです」

 

 セルジュが微笑みながらそう答える。すると大兎は口を大きく開き、

 

「ええええええええ、いいなぁ。俺も行きたかった~」

 

「ちなみにメンバーは私たちの他にテンペロン・クローリーの人たちでした」

 

 セルジュがさらっとそう言うと、月光が眉を顰めた。

 

「おい待て。お前ら三人はテンペロン・クローリーの連中とカラオケに行ったのか?」

 

「なにもしかして月光きゅん、もしかして参加したかった~??」

 

 ニヤニヤと笑う泉に、月光は鼻で笑った。

 

「ハッ、そんな愚民どもの娯楽に俺が興味を示すとでも思ったか? 俺は何せ天才だからな」

 

「うわでた」

 

「うわでた」

 

 大兎は月光を呆れた表情で見つめて、溜息を吐く。それに便乗してヒメアもそう言う。

 

「……それよりも、だ。全員揃ったようだな」

 

「ん? 何かすんのか?」

 

 大兎が首を傾げて問いかけると、月光は読んでいた本を閉じて、席を立つ。

 

「ああ。……つい先程、《軍》から連絡を受けた」

 

「《軍》から…………また何か厄介ごとなのか?」

 

 ハスガは月光の方に視線を移して、問う。そして彼は頷き、

 

「いや、そこまで厄介なものではない。簡単な、赤子でも出来ることだ」

 

「なんなのそれ?」

 

 泉が小首を傾げる。

 

「何でも、突如としてこの日本に最も近い次元の世界が観測されたとかなんとか。そこにはどうやら途轍もない魔力が感知されたとか……まぁ、これは些細な事だ」

 

 月光はコーラを飲み干して、その空きボトルをゴミ箱に投げ捨てる。

 

「要するに、上は俺たちにその次元の調査をしてほしいのだそうだ」

 

「ああ、それね。それなら私も感じていたわ」

 

 ヒメアが月光の言葉に反応する。彼女は《最古の魔術師》だ、次元が近くに出現したことくらいは把握できるだろう。

 

「そんなことはどうでもいい。とにかくすぐ行くぞ」

 

「はぁ!? 今からかよッ?!」

 

 大兎が嫌そうな顔でそう叫ぶ。

 

「貴様の意見など聞いていない。雑魚は大人しく留守番しているといい」

 

「あ? 誰が雑魚だ。行けばいいんだろ行けば!」

 

「怒ってる大兎ってホントに可愛い♡」

 

「からかうなよ~、ヒメア」

 

 そんなバカップル二人は置いておいて――

 

「準備の必要はない。どうせ調査だ、戦うつもりはない……が、あっち側はその気かも知れないからな、気は引き締めろよ」

 

「ええ、勿論です」

 

「わーってるよ」

 

 ハスガとセルジュが応答する。月光はホワイトボートの対面の壁に立って、告げる。

 

「《聖地》よ、《道程(みち)》を開け――」

 

 すると、壁に《道程》が開かれる。この先に、彼らが向かう未知の次元――世界がある。月光と他の六人はその前に立つ。

 

「ちなみにその世界の名前はなんていうの?」

 

 ヒメアがそう訊くと、月光は「ああ」と反応し、

 

「《軍》から届いた資料によると、その世界は――〝幻想郷〟というらしい」

 

「なんか桃源郷とかに響きが似てるね。もしかしてその親戚かな~?」

 

 と、呑気な独り言を呟く泉。

 

「ま、とりあえず行ってみますか~」

 

「……よし、お前ら行くぞ」

 

 そう言って、彼らは〝幻想郷〟へと続く《道程》を潜っていった――




なーんか東方の二次創作書きたいなーって思って、ふと鈴仙とか永琳とかを思い出して、それで合うかもと思ってやったのが、これです。
いつか天魔の黒ウサギ、結構マイナーな作品(偏見)なので、もっと日の目を浴びてほしいな……って。
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