いつか天魔に棲む幻想 ~宮阪高校生徒会は幻想郷へと踏み入らん~ 作:暁葵
宮阪高校生徒会の面々は、《聖地》による作られた《
広がるは雄大な自然。草木や花が生え、とても空気が暖かい。周囲を見渡すと、建物があり、知性のある生物が住んでいることが判る。
「ここが……〝幻想郷〟」
「見る限りだと、地球とそんな大差ないわね」
ヒメアはこの世界の空気を吸い込んで、そう述べる。彼女の言う通り、この世界は地球と変わらない……否、寧ろ地球なのかもしれないと思う。
「でも、やっぱり違うところはあるみたいだぜ?」
ハスガが蒼く澄み渡る蒼穹を仰いで、ふと呟く。
「え? ハスガきゅん、何が違うの? どう見ても地球っしょ。別に何も……」
「泉は一応魔術を知らない人間だからな、見えないのも無理ねーよ。少なくとも、お前らは気づいているだろ?」
と、泉以外の五人の問いかける。
「ええ、分かってますよハスガ。この世界には途轍もなく強力な結界が展開されている」
ハスガの質問に、セルジュが真剣な表情でそう答える。知性のある存在が住んでいるのだ、そういった魔術を覚えていても不思議ではない。
するとヒメアが目を瞑って掌を空に翳す。
「……確かに結界は張られているけど、知らない術式だわ。この世界独自のものなのかしら?」
「へ~ヒメアでも知らない魔術ってあるんだな。てことは結構厄介?」
「そんなことはないよ大兎。見たことがない術式ってだけで、破れないわけじゃない。……多分だけど、この結界の構築には人間も関わっていると思う」
「そこまで分かるもんなの? ヒメア」
「この術式の一部がね、人間の魔術に似てるんだよ。まぁそれ以外の要素はぜーんぶ別のナニカだけどね」
ヒメアは腕を下ろして、大兎に天真爛漫に微笑む。
「ふーん」
「おい、何をぼさっとしている。とっとと行くぞ雑魚ども」
「へいへいわーってますよーだ」
大兎は鼻を鳴らして月光の背中についていく。
歩くこと数十分――やっと平たい地域に到着した一行。
そこには、あり得ない光景が広がっていた。藁葺き屋根の一軒家が並び、道は舗装されていた。そして、その道を歩く
「ねねねねねねねねゲッコー! ニンゲンだよ、ニンゲンがいるよっ!」
「見れば分かる」
「ねねねねねねねねねゲッコー! お団子売ってるよ!」
「うるさい、少し黙れ美雷。少し状況の整理を……」
「ねねねねねねねねねねゲッコー! あそこに――」
「黙れと言っているんだッ! 団子が欲しければそこらへんで泥団子を作って喰えッ!」
月光自身、状況が整理できていないのだ。何故こんな場所に人間が住んでいる? 何故文明が後退している? そんな疑問が脳内を駆け巡っている。
何せ彼が今まで見てきた異世界というのは、獰猛なバケモノや理不尽な神や敵うはずのないナニカが支配する混沌の極みのようなものばかりだった。
ここまで平和な異世界は初めて見るのだ。混乱しても何ら可笑しくない。
「おいおい紅君、なーにへたり込んでんだよ。今更地球に近い異世界を見て混乱したのか? 俺とは比べ物にならないほどの場数を熟して来た会長様が、まさかここで立ち止まるんですか?」
突然、何処からともなく大兎が厭味ったらしい笑顔で月光を煽動する。
月光はその言葉に少し青筋を浮かべながらも。
「ふん、何を言っている? むしろ貴様こそ恐れ戦いているんじゃないか?」
「何だとテメェ!」
と、いつも通りの痴話喧嘩をしていると――
「へい兄ちゃん嬢ちゃん、見慣れない奴らだなぁ」
突然誰かが話しかける。振り向くとそこには、法被を着た中年の男がいた。
「あ、えっと、こんちゃっす」
一瞬戸惑うも、挨拶をする大兎。
「珍しい服装だなぁ。そんな服着てるやつなんざ、ここらへんの妖怪くらいのもんだぁ」
「妖怪? おい、この世界には妖怪が居るのか?」
「んあ? いるに決まってら。ほうら、噂をすりゃなんとやらだ。あれ見てみな」
と、男が空を指さす。その方向に視線を移す七人は、見る。
漆黒の翼を生やし、天狗のような小さな烏帽子を被った少女の姿を。
「……あれは一体?」
「文屋だよ。ここら一帯で起こった異変やら噂やらをなーんでも記事にしちまう輩さ」
「異変……?」
月光が眉を顰め、考える。異変とは何だ? 具体的にどんな事象が発生する? これはもう少し調べる必要がありそうだ。
「あんたら、その様子だとこの〝幻想郷〟に来るのは初めてか?」
「え!? 何で分かったのおっちゃんっ!」
泉がわざとらしいリアクションで驚く。
「幻想入りなんざ、珍しくもねーよ。……っと、そろそろ俺ぁ行くわ。達者でな!」
そう言って男は向こうへと走り去っていった。
「幻想入り……異変……だーもう! さっぱりだぜ!」
「馬鹿が知恵を絞ってもただのカスだ。無理に考えるな、ミジンコ」
「んだテメェ!」
「それよりもだ。ここからは手分けして情報を搔き集めろ。固まって情報捜査など、愚の骨頂だからな。三グループに分かれよう。俺と美雷、サイトヒメアと鉄、ハスガとセルジュと碧水でいいな?」
「それで構わねーぜ」
ハスガがそう答える。
「やったー! ゲッコーと二人っきり~♡」
「やった~! 大兎と二人っきり~♡」
と、狂喜乱舞する奴もいるが、それは置いておいて――
「では集合場所はここにしよう。もし目ぼしいものを見つけたら、携帯で連絡しろ。ちなみにお前らの携帯に魔術をかけてある。連絡は可能だ――では、一時解散!」
そう言って、彼らは別々の場所へと走るのであった――
† † †
時は遡って、生徒会が〝幻想郷〟に入ってきた直後――
とある山奥の神社の一角で茶を啜っていた少女が、鋭い眼光で立ち上がった。
「……何よ、今の気配」
何か悍ましい気配。今まで対峙してきた妖怪とは比べ物にならないほどの途轍もない圧。彼女は靴を履き替えて境内の方へと歩いていく。
すると、そこには日傘をさしていた金髪の艶美な女が立っていた。
「紫、これって…………」
「ええ、貴女の思っている通りよ。……何者かが、結界を破って侵入してきたわ」
「……一応、他の連中にも知らせておいてくれないかしら。もしかしたら戦闘力として必要になるかもしれないからね」
「分かったわ。伝えておくわ」
と、女はそう言って、謎の「裂け目」を生み出し、その中へと入っていく。直後彼女の姿は消えていた。
「……さーて、どんな大物かしらねぇ」
投稿遅くなりました! 申し訳ありません。次も宜しくお願いします!