「ビーフ・シチューだと・・・?!俺にパンでも食わせる気か・・・!?」
『 ・・・了解 』
帰ってきて、夕食のメニューを聞いたロー船長はピキ怒って先輩にそう云った。
彼女は特に文句も言わず、厨房めざして歩いてく。
エー?意外だー! もしかしてベジタリアン・・・いあ、ご飯派かぁwww
まー、確かに米ガツガツ食ってるほうが男らしいっちゃー男らしいもんな!
アタシはニク食えればどっちでもイイけど。
ここの海賊はコック以外、全員でご飯を食べる。
その夕食時、クルミ入りのパンとメインのビーフシチューが配られたんだが・・・。
船長のだけ、遅れて出てきたんだ___
それを見た時の、心中察することが出来ない顔ときたら!
「・・・・・・・・・・!!」
かなりの衝撃を受けたのは間違いない。
ベポが持ってきた皿の上には・・・、
様々なポーズでワラワラと戯れるベビーパンダのおにぎり!??
殆どキャラ弁ワールドじゃねぇッスかぁあああ!?
ちょーカワイイ・・・!!! てかもうあれ、一皿のアートだわ!!!
「キャプテン、これアンジーが作ったんだよ!」
「・・・・・・・、中身はなんだ。」
「シャケ、ツナマヨ、明太子、こんぶにオカカだって。」
「・・・・・・・ならいい。」
せ、センパイが!?めっちゃ芸が細けぇ!!
アスパラガス細工の竹とか!アンタどんだけ器用なんだぃ!!?
バクバクとそれを次々、頬張りだした船長。ビーフシチューそっちのけじゃん・・・;
あ、でも。ちゃんと最後にはメインであるそれは食ってた。
ん・・・!?
船長が食い終わって席を立って行った後、皿を下げに来たアンジー先輩が
皿の上に残った、たった一個の子パンダを黙視して・・・チッ!と舌打ちカマした!?
『 気付かれたか 』
一体ナニを盛ったぁああ!??
似合わなさスグるから、そーゆーのダメ!!アンタほどの美少女が!;
てゆーか、自分トコのせんちょーだろ!?お、恐ろしい・・・センパイに逆らうことなかれ。
「センパーイ、お邪魔しやがっていいすか!?」
下っ端としての激務を終えたアタシはそんなコトすっかり忘れて、先輩の部屋をノックしてた。
女部屋のお風呂を使っていいと云われてるので、すっかりソレに甘えていたのだ。
『 おつかれ。いいぞ、入って 』
ガチャ、とドアを開けてくれた先輩もたった今フロから上ったとこらしい。
テレビなんかで良く流れる、
”ワーォ♪”って云うエッチな効果音が聞こえても良さそうなイデタチw
バスタオル一枚身に纏い、濡れ髪をタオルで巻きあげてた後ろ姿。
いつも見とれちまう、あの肩から細ェ腰にまで流れる様な・・・彼岸花そっくりの花模様。
最初はかなりビビったが、俗に云う”モンモン”ではなくアザなのだそうだ。
どうやったら、あんなキレイなアザになるんだ・・・・?
『 サイズが合えばいいが・・・新品じゃ、そんなものしかなくてな 』
「・・・・・・・・・!」
フロから上がると、先輩が着換えを用意してくれていた。
だが毎回、その着換えの下着とか寝巻的なものに関しちゃ・・・なんてゆーか・・・。
そのソレを手にするまで・・・ドキドキ、ハラハラするっちゅーか・・・。
身ヒトツで来たもんだからアタシには特攻服しかなかったわけで、
贅沢言える身分じゃない事位、解ってはいるんだが。
昨日はかされたのはタンガだったな。おかげさんで今日は何か一日もぞ痒かった。
(今日は何だ、エエイ、バッチコイだ!)
覚悟を決め、折り畳まれたパジャマの上に置かれたぱんつを手に取り、バッと広げた・・・!
アレッ・・・案外フツーだな、今日のは。とか思いつつ足を通し、はいて見た。
鏡を見て後ろ姿に絶句する。
(オィイイイ!ケツワレがスッケ透けじゃねえかぁあああ!!!?)
ゴーン!!
ある意味、タンガとタメ張れるぐらいイヤラシイ; なんでこのセレクト!?
「いあー・・・大丈夫ッスー。ゼンゼン問題ないッスよぉ・・・。」
センパイがアタシ如きに気を使われておられるのだ、言えねーよ;
チョット小さいカモとか、このエロ下着は一体ダレの趣味だゴルァ!とか(忍)
『 私も体1つ来たからな。お陰でローが好みじゃ無い物を色々買って来るんで困ってた 』
エエエ!!ってコトは、
今までアタシに提供されたイヤラシすぐる下着は・・・まさかの船長セレクト!?
『 ぱんつでさえ、あのマークを入れさせるんだ・・・着る気がしない 』
ナニ・・・・!?
アッ・・・、確かに!良く見ると、腿近くにウチの旗印がプリントされてる・・・!
そうとなれば、ハナシはベツだ。アタシはもうココの一員になったンだからな!
「そういやセンパイ、マークの着いた服とか着たの見たことないっスね。」
『 身に付けるとすればワッチぐらいだな・・・ハルト、服は自分で選べばいい 』
「え!?」
『 明日着る服だ、好きなのをいくつか持って行け 』
あ、特攻服が汚れてきたからか。
アタシがパジャマを着て出てくれば、センパイは壁一面のクローゼットを開け放つ。
恐る恐る覗けば、ロー船長が買って来たであろう服はだいたいの見当が付いた。
ゴシック・パンク調のセクシー&キュートが好みか。ミニワンピが多いな;
さすがにアレはキャラ的に無理だ。無難に、サロペやシャツを借りといた。
「あれ、これってまだ一回も着てないんじゃ・・・?」
『 ぱんつならまだいい、よく見ろ 』
「アウ!ホントだ!見過ごすとこだった!!」
どこかしらにウチのマークがさりげなーく、入ってんだもんな。
どんだけ彼女に印を着けときたいんじゃ、船長・・・・。
______
「・・・・・・・・・それ、アイツのか。」
「あ、おはようございます!ハイ、先輩からお借りしてるです!」
翌朝、アンジェラスの服を着て朝の甲板掃除をしてるハルトに声を掛けた。
アイツめ、がんとしてウチのマークを背負う気がないらしい。
「お前。スキでそれを選んだのか?」
「え・・・、そりゃもう!だってこれー、ウチのマーク入りじゃないっすかー。デヘヘ」
他の船員はだいだいそうだ。だがアイツは・・・
心はまだ____赤髪ンとこに残してやがるんだ
「せ、船長?」
背中で聞いたハルトの声も霞む。
何とも思わねェと云えば嘘になる。
腹が立つと云うより・・・・認めたくない気持ちが俺に溜息をつかせた。
女々しいこった、そんな事はアイツを攫って来た時から覚悟してた筈だ。
薄い感情で有りながらアンジェラスは俺を憎んでいるんだ___
2度目の破損を招いた俺を・・・。
その命を掬い拾った後も、海軍を寄せ付けない為に外部への連絡を一切禁じてる。
本人も火の子を被らせまいと俺達を気遣い、そこは我慢しているんだろう。
昨夜の握り飯だってそうだ・・・俺が死ぬほどアレが嫌いだと知っていながら
”梅干し”を仕込んでやがった・・・・!!!
『 ロー 』
「・・・! なんだ。」
不意に現れたアンジェラスは俺の買って来た黒のゴシックパンク調のミニ、
それに合わせたタイツ、ブーツを履いてる。着替えてきて出かけるツモリか・・・?
『 ハルトを連れて買い物に行く。少し抜けてもいいか 』
「・・・何を買う気だ。」
『 身の回りのものだ。間にあわせるにも限度があるだろ 』
「・・・・・・そうか。じゃぁ、アイツにも用意させとけ。」
女の買い物に付き合うガラでもねぇが、女2人だけで出すと云うのもアレだ。
それに下っ端如きのことでアイツに金を出させる訳にも行かねェしな・・・。
手短に済ます事を条件にベポと云う荷物係を連れて4人で街へ出た。
「なんかスマセン、いろいろ買って貰っちゃって・・・。」
「しれている、気にすンな。」
ハルトは特に体型にも問題がないお陰で店をあちこち回らずに済んだ。
腹も減った事だし、少し早い目のランチを取ろうとオープンカフェに立ち寄る。
「トロトロ・オムライスのLっす!」
『 同じく 』
「おれ、ハンバーグプレート!」
「じゃぁ・・・トロトロ・オムライスのL1つ、M2つ、ハンバーグプレートを頼む。」
「エ・・・!」
パン!と無慈悲にメニューを閉じ、店員を行かせた。
「ハルトはLを食え。アンジェラと俺はMだ。」
「エー、そんなぁ・・・!アタシの買い物でお金使いすぎちゃったとか???;」
「違う!・・・アンジェラ、理由は解ってんだろ・・・?」
『 カロリーオーバーなのか? 』
彼女を見遣ると首だけを傾げてる。俺はまた溜息だ。
構わねェ、どうせ憎まれついでだしな。
「お前の体に必要なホルモン・バランスは普通の人とは違う。
正確なデータを取るのに、出来れば血糖値や他の数値も同じに保って貰わねェと困る。」
「な、なんだかセンパイの体って小難しくできてんですね;」
毎朝の診察で食べたものをイチイチ白状させてるのはそれも理由の1つ。
アドレナリンだけが必要だって訳じゃねぇんだ。
『 たまにはお腹いっぱい食べたい 』
「我慢しろ」
「でもキャプテン、朝ごは」
「うるせェ・・・!黙ってろ。」
ベポが余計な事を云う前に遮っといた。そして俺はまた
アイツの”あのトラップ”に引っかからない様、腕を組み目を閉じて置く事も忘れない。
「お待たせ致しました。」
「ワーイ! イタダキまーす!」
ウェイトレスがやっと全員の食事を運んでくると3人共がガツつくのに対し、
アイツはお祈り中でまだスプーンにも手を出していない。
こんなアンジェラスを見ていると、ミホークの教育の仕方をいつも謎に思う・・・。
「オイ!テメェ!虫が入ってんじゃねーか!!責任者呼んで来い!!」
それは、俺達が完食し、猫舌の彼女がやっと半分を食べた頃だった。
見たくれで解る、どこかの古臭い海賊の風体の男達。
呼ばれた店長らしき男が、あり得ないデカさの虫を突き付けられてボコられ始めた。
金ぐらい持ってやがるだろうに。アソビのつもりか?・・・下衆め。
「オイオイ! あんな虫、皿に入ンのかよ!?」
『 ・・・・・・・・・・ 』
「・・・・、!!?」
食事の手を止めたアンジェラスの左手を見ていた俺に衝撃が走る。
テーブルから落ちた右手が俺の左手をギュ・・・!と握ったのだ。
彼女がする、その行為の意味を知っていたが・・・俺が選ばれたのか・・・!?
迷わず、その小さな手に指を通して握り返したのは言うまでもない。
「≪ROOM・・・!≫ お前、そこから出ろ・・・!」
「ひィッ!」
「・・・・・なんだ?この膜・・・・!?」
「ウアアアッ!?」
俺は空いた右手を浮かすとその場で空間を作った、ベポが刀を用意する。
店長を逃がすのも、座ったまま一閃を放つのも、
分解した奴らを端っこのプランターと入れ替えるのも右手だけで十分だ・・・・!
「今、一体何が・・・!? とにかく、有難うございましたァアア・・・!」
そいつらはショックだったのか絶句し、他の客は悲鳴を上げて一斉に逃げた。
ハルトはあんぐり口を開けたまま呑もうとしてたコップの水を膝に零し続けてる。
覗き見るウェイトレス達、・・・・店長は腰を抜かしつつも大声で礼を云ってた。
「アンジェラ、ゆっくりでいいから残さず食べろ。言っとくがオヤツはねェんだからな。」
『 外食するといつもこうだ・・・・ 』
「フ、贅沢いってんじゃねぇ。」
俺は頬杖をついて、無表情の中にも微妙にスネたかの様な眼の色を見せる
彼女のその手を何気にテーブルの上に置いてやってた。
あの時・・・、アンジェラスには迷いがあったんだ。
こんな場所で、旗印も背負わない自分が俺達を巻き込んで良いものかと。
そして、それが軽いストレスを覚えさせ・・・思わず俺の手を握った。
___その方法を彼女に教えたのはあの男だ。
”ストレスを少しでも感じたなら___俺がいない時でも誰か、一番信用できそうなヤツの手を
握るんだ。その手をちゃんと握り返す様なヤツなら、ソイツはお前を裏切りはしねェ・・・!”
ロロノア・ゾロの手を握っていたのもそう。
聞けば、あの時は逆にゾロ屋を心配して彼女がソレをやった様だ。
『 なぁ、ロー? 』
「ん」
『 たまには梅干し、食べないとダメだ。疲労回復にはいいんだからな 』
「・・・・・・・・・、あァ。」
その帰り道、隣でそう言い俺を見上げてるアンジェラス。
人知れず深刻すぎた己の被害妄想を鼻で笑っていた・・・。
その夜_______ダレもいなくなった食堂で。
「オエェエエエエ!!!」
と、船長の悲鳴に似た叫びが聞こえたとか・・・・。
+end+