『 まったく・・・治療するたんびに傷が増えて行くな 』
「・・・・・・・・・気のせいだ」
貫通した弾の後・・・、背中のタトゥに余計ハクが着いてしまう。
何があったかなんて聞くだけ無駄だ。
昼下がりの午後、カモメの声が時々聞こえる位の静穏な海の上
潜水艦らしからぬ船医室にて、
診察台に全裸で寝そべる男の後ろ姿にただ黙々と鍼を刺して行くだけなのだ。
____”次の島に着く迄に鍼を打ってくれ”
ローがそう云いだす事は何も珍しい事じゃない。
かと云っていつも、触診すればドコが悪いと云う訳でもないのだが・・・。
『 電気を通す、暫くそのままに 』
「あァ・・・。」
疲労回復程度に頭から足まで、全身に鍼を打ち終えた。
タイマースイッチを入れてから形だけのカルテに記入する。
「コレが終わったら次はお前の番だ___」
『 ? ・・・・・・朝の検診は受けただろ 』
「特殊ファンデを塗る・・・アザを隠さねェとな・・・・。」
・・・・私も連れて行く気か?どうせ泳げないのに。
アザを隠すのは水着を着る時、そして露肩の服が用意されている時だ。
ペンギンとシャチがさっき、妙に浮かれていたのは知ってる。
ローがまた気紛れでリゾートホテルの予約をしたとかしないとか。
『 誰か見張りをつけた方がいいんじゃないのか 』
何より不安があるのは、そのファンデを塗る”作業中の事故”だ。
悪魔の実のデメリットがこんな形で姿を現すとは2人とも思いもよらなかった訳だが。
「息を止めてりゃ大丈夫だろう」
『 止めてられるのか?腰まであるんだぞ 』
暫くしてタイマーが終わり、鍼を抜かなきゃならなくなった。
あと頭部分だけ抜こうかという頃にはもうタオルを腰に巻き台から足を降ろしてる。
寝ていてくれた方がラクに取れると云うのに・・・。
手にしてたトレイを置くと「座れ」と促す。
彼に背中を向けて座るとミニワンピのジッパーを降ろし、背中のホックを外した。
髪を左側に寄せさせ、小瓶を手に取る。まずは鎖骨に伸びるツタから消すらしい。
そして肩に移動していく冷たい感触_____ふと思い出すのだ、あの時の事を
_______ 右肩後ろ、濃紺のシルクの上にツ・・・と滑り出した彼のヒトサシ指は
アザの花びらをなぞっている様だった
たった一度だけ見たものを服の上から・・・?私が知る限り、彼はとても正確になぞっていた。
顔を動かさないように視線を上げれば
首ヒトツ分以上、私より背が高いローの顔は左に傾いていて戸棚のガラスに映ってる。
変わらない私の表情を時々盗み見て、イタズラ書きでもするかに楽しそうだった。
【オレはお前の主治医であって敵じゃねえ・・・解るな?____ 】
忘れもしないあの一件で関わり、シャンクスがスカウトした臨時の船医・・・
あの頃のローは今よりももっと高慢で___、・・・!?
『 ロー!? や、め・・・ウ・・・! 』
云わんこっちゃない、性格上、丁寧に塗り過ぎて息が持たなかったのか?
それとも、息止めててもダメだったって事なのか???
肩甲骨辺りにある模様に、まるで齧り付くかの激しい”雄の行為”。
拙い、背中にぴったりと添う様に後ろに座られた・・・
あっという間に片方の腕が腰に回り切り、もう片方はがっちり左肩へ。逃げられない状態に。
「駄目だ、止まらねェ・・・・・・・・!」
『 ・・・・! 』
耳元で苦しげに云ったついでか、美味そうに耳まで食んで行く。
時々首筋に髭が擦れるのも手伝い、丸まりそうだった体をビク!と揺らしてしまった。
いよいよ拙い。
それがスイッチになったか、切なそうな息を吐きながらその行為を一層エスカレートさせる。
『 イ、ヤ・・・・・だっ!!! 』
「ツ・・・・・・・・!!」
キーンンンン!! 私の発したノイズが耳鳴りとなり、オカシクなったローの鼓膜を震わせた。
それが鳴り止むと、呼吸を整えながらお腹に巻いてた腕を肩に移し替え、首を抱いてる。
戻ったらしい・・・正常に。
「あと、少しだ・・・・!もう少しで塗り終わる・・・・!我慢しろ。」
『 出来るか!モー自分で塗る! 』
よくもヌケヌケとそんな事が云えたもんだ。ホント、微妙に天然だな・・・;
もう少し我慢したら今度は確実に押し倒されてアンナコト・コンナコトされるに決ってる。
だからローは・・・そんな意味も含めて、アザは絶対見せるな(特に異性)と云うんだ。
___________________________
サブリミナル効果みたいなものか___?
だが、前にも増してフェロモンが濃くなってやがる・・・・。
服を着た状態でも、女でさえドキドキさせられたってヤツが今ウチにいやがるんだ。
俺は何度もアイツのカラダを診てきてるが・・・・・・・。まァ・・・昔の話はさておき。
悪魔の実の能力がこんな形で出てこようとは・・・俺はとんでもない事をしたのかもな。
アンジェラスの体は隠語で云う所の”ハーブ”に値する。
さっきもそうだ、気が付いたらもうあの痣にむしゃぶり付いてた。
いや_______これはヤツの言葉のせいだ。
【あの痣に噛り付いた者は・・・あの男然り皆、完全にその毒にやられる】
若かりし日の俺は、その言葉に誘発・・・いや、だからもうその話は止めとこう。
とにかく、実を食わせる前からアイツにその要素が有り過ぎたのが原因と言わざるを得ない。
【 _________かの大剣豪が思わず手を引いて屋敷に連れ帰り、
あの大海賊がウッカリ船で連れて行こうとした、”魔性のロリータ”とはアイツの事だ 】
【それ・・・両方とも誘拐って云うンじゃねえのか?】
【まー、そうとも云う。】
そしてヤツは__当時、別の船に乗っていたアンジェラスを船長に賭けさせた・・・
彼女が任務遂行中だったとは知らずに___
『 ロー? 』
「・・・ぁ?」
『 着いたらどこか、娼館でも探して行った方がいいんじゃないのか 』
「・・・・・!!!?」
____何を言い出すかと思えば!!! あまりの衝撃で言葉を失った。
俺の腕からスルリと抜けて、アンジェラスは服を整えるとドアに立つのだ。
『 ツラそうだしな、___ソレ 』
俺の顔も見ず、人差し指を2度↓に向けてから出て行きやがった。
____ ハッ・・・・!
あぁ、ソレって俺のコレか・・・チッ、光栄に思え、女名利に尽きるってな。
たったアレしきの行為でこの俺を・・・・! 全く・・・ムカツク女だぜ。
フフ、だがアンジェラ。
右胸から波打つ鼓動がイヤに弾んでたじゃねーか・・・・?
お前にアレさえあれば___俺には、なんの罪悪感も無くなるだろうにな__。
______________
「お、アンジー!いいとこに来たな!」
・・・と、甲板に出て来たアンジェラに声を掛けたのはいいが。
(何だ、シャチ。私はたった今、ローにえっちサレ掛って機嫌が宜しくない。)
「エーーーーーーッ!?? マジか___!!!?」
『 まだ何も云ってないだろ 』
「いや・・・すまん、お前の目がナンカ、危ないコトを俺に訴えてた気がしたから;」
気のせいか・・・・。俺は最近になってようやく彼女の目の表情を読めるようになってた。
仲間内ではベポでもまだそれが出来ないらしく、俺にとってはちょっと自慢だったのに。
「ア・・・、いやあのな。今、下に行商が来てんだ。お前もなんか買うかなーっと思ってさ。」
『 こんな海域にも来るのか 』
「ごく稀だから云うんだって!ハルトも行って見てるぞ?」
『 ・・・・解った 』
そう言って彼女はハシゴを降りて行った。
確かにこの海域での小船で商売しに来るなんてのは命がけだ。
だけど彼らはそれでもやって来る。
アンジェラの事だ___あまり欲しく無い物でもお買い上げするだろうな。
アイツのイイトコって云うのはそう云う所で
行商が、例え遊郭の女を連れて来ても彼女はけして悪くは言わない。
” ご苦労様___、行儀の悪かったクルーがいたら私に言ってくれ。アトでブッコロス ”
船に上げた女達にそう声を掛けるぐらいなんだからな・・・。 ブルッ
マァ・・・戦闘用クローンなんて言う割には案外優しい。
「行商か・・・。」
「あ、今下に___』
「・・・・・あぁ。」
そんなタイミングで現れる船長。特に変わった様子はないものの
さっきの”読み”が気になって俺は慌てなくてもいいのに、後に着いて行った。
丸い救命用の大き目のボートに群がる小舟。
買い手にお目当てのものが無ければ諦めて去って行く。
『 ハルト、いいじゃないかソレ 』
「ウーン、でも自分、こんなん着た事ないしー・・・。」
パレオ付きの水着を手にとるハルト。確かに似合いそうだ。
ん・・・・?
船長が降りて行った途端、行商達が何か現地語で言い合い何隻が近づいた。
「え!?女ァ!??」
初めて見る光景にハルトが素っ頓狂な声を上げる。
あまりキレイとは言えない小舟のそれぞれには着飾った女が1人ずつ乗せられてた。
『 ハルト。こう云う時、女は黙ってこうしとくんだ 』
「は!?エ?こうっスか!?」
両手を前に突き出しハルトの目を隠すアンジェラ、ハルトも同じマネをしてる;
露骨にイラっとした視線で互いに目を隠し合った彼女らを横目に見てる船長。
アンジー・・・・?言いたいコトは解るけどさぁ・・・・。
「_____________ 。」
「ヒ!!!?」
刀を抜いた?と思いきや、ソコに居た行商の舟をブった斬った船長オォ__!!?
女達の乗った小舟は現地語の悲鳴を上げ、他の舟に慌てて泳いで行ってる。
「___それは侮辱か?
俺は海賊だぞ__ましてガキでもねェ。金で買えるもンに興味はねェんだよ・・・!」
せ、船長!!! か・・・・カッケェエエエよ!!
ア・・・、じゃ、俺も反省しなきゃ; ←買った事のある人。
「奪えるものは何でも奪う・・・!」
「・・・・・・!?」
今・・・納刀しながら戻ろうとする船長は
少し歩を止め、アンジェラを悪党丸出しの悪い
アイツは今ハルトとあんな感じなんで、気付かなかっただろうけど・・・。
「お前らの世話にはならねェよ・・・!・・・・シャチ」
「ラ、ラジャー!」
そして背後に居る俺の名を呼んだ。追い払えと云う事だ。
俺はその意を酌み、ゼスチャー込みで奴らを追っ払った。
”ナニが気に障ったんだ?”
”アンジー、仕方ねぇ。奴ら、船長のキゲンを損ねたんだからな。”
アー;そりゃシャーねェわな。
こっそり声を飛ばして来た彼女には一応言ったがコイツには多分、理解しがたいだろう。
船長は・・・・かなり、本気だってな・・・・。
+ end +